チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
皇居にて、とある親子はプルプルと震えていた。借りてきた猫のように、一体どうすればと頭の中で考える。それもそのはず、何故なら親子の前には、国のトップが居るのだから……。
「急に集まってもらっちゃって、ごめんなさいね! いらっしゃい、今日は沢山ご飯食べて沢山遊んでいってちょうだい! カラオケとかボードゲームとか、色々あるわよ!!」
「あ゙っ、ハイッ……ありがとうごごgggggございます」
「いつになく今日の母上はテンションが高いな……」
「ここまで人が集まる事は無いからな、仕方がない」
伯父2人はそう言い、ノルトはスンスン泣いているスラのすけをプニプニしながら精神的に虐めていた。
「ピキ──!! (誰かこの悪夢からぼきゅを助けて欲しいのねん!!)」
スラのすけは「ゲイル助けて! 欲しいのねん!」と泣いているが、残念な事にゲイルは本日教師としてのお仕事である。サマーホリデー中でも、ゲイルは忙しいのだ。スラのすけは魔者だしスライムという訳で、ゲイルがその分も仕事をせざるを得なくなった結果だが。
仕方ないね、魔者は基本的に食べ物とトレーニングの事しか考えていないので。
「今日も相変わらず良い触り心地ですね。ところでスラのすけ先生、私の妻が育てている野菜や果樹園には厄介な雑草が生えていまして。とても大切に育てている畑なので、きっと雑草もいい栄養を吸って美味しいことでしょう。食べ尽くしてもご心配なさらず。フルタ村は農村でして、他にも雑草が生えている畑は広くあります。
家に住んでみる気はございませんか? 是非、歓迎致します」
「ピキィ……」
「(お、お父さん、スラのすけ先生を飼う気だ……!!)」
「おー! スラのすけ、良かったではないか! 美味しい草が食べ放題じゃな!」
「いや、明らかに嫌がってねェか?」
レイゼルの友達、そしてレイゼルの2Pカラーのような姉とその保護者という事で、ティアラとレイネル、他人の家でも関係なくこういう時は会話に入らずダラダラと寝っ転がっているネロ、そして「け、結局来ちゃったわ……ど、どうしましょう、こういう時はどうすればいいか分からないから苦手なのに……」と、困り果てたルナフィリアも皇居に招待されていた。
「2人はヒエリカ帝国民だから自己紹介はするまでもないでしょうけれど……。あたしはノエリア・
「こっ、こここここ、こちらこそ、初めまして……すっ、すすsssssssスタイラー・プリストです……」
「あ、アグネス・プリストです……は、初めまして」
そう言う2人にノエリアは「あら?」と、不思議そうな顔をする。
「何言ってるの、この前もその前のコミケでも会ったじゃない」
「えッ……も、もしかして、覚えていらっしゃったので……?!」
「うぐぅッ!!」
どうやらこの皇帝陛下はコミケでうちの子グッズを買いに来た国民達の事は全員覚えているらしい。すると、推しに認知される事が解釈違いなアグネスは心臓に大ダメージを受けた。まぁ、ノエルに関わるイコール、認知なのは至極当然の事だが。
しかしアグネスにとって推しと自分の世界線(そもそも同じだが)は決して交わる事があってはならない。なので顔を覚えられないように、傍から見れば不審者かのような格好でいつも長蛇の列に並んで買いに行っていた。まぁ、ノエリアからすれば顔を隠した所で魔力で分かってしまうのだが。
「すっかり緊張しちゃってるみたいね……」
「(それはそうでしょうね、一国の主でしかも推しの家に居て、目の前にはご尊顔が見えるんだもの……こうなるのも仕方ないわ……)」
ヘレンはそう思いながら、ノエルとレイゼルの方を見る。すると初めてドリンクバーを見て興奮するレイゼルが視界に映り、ニッチャリした。
「すげー! ちょーでけー! いろんなジュースある!!」
「た、タピオカミルクティーまである……」
「凄いでしょう!? これ作った人に頼んでレンタルしたのよ!」
「一体どうしてこんな巨大ドリンクバーを作ろうと思ったのか……」
「じゃー俺タピオカミルクティー飲も! なんだかんだ飲んだ事ねーし!」
レイゼルはワクワクした表情でコップをセットしてタピオカミルクティーのボタンを押すと、タピオカミルクティーがコップに注がれる。
「おー! そんで、この超太いストローで飲も!」
ちゅーっ、すぽんっ!
そんな効果音が付きそうな感じで、いざ初タピ。
「初めてのタピオカミルクティーの感想は?」
「……なんか、ミルクティーに甘い餅が入ったみたいな感じがする! それ以外はぶっちゃけ普通のミルクティー!」
レイゼルはモチモチと口の中に入ったタピオカを食べる。
「……飽きた」
「早いよ」
「だって思ったよりそこまで美味いって訳じゃなかったんだから、仕方ないだろー?」
「はいはい、残すのはもったいないし残りは私が飲んでおくから。ほらそっちにコーンスープあるよ」
「俺、ばあちゃんが考えたレシピのスープじゃないと、スープって認めてないから……」
「何そのこだわり……じゃあ、こっちにカ○ピスモドキあるよ」
「飲む!」
「あ、そっちはいいんだ……」
「とりあえず皆でご飯食べましょ! まぁ、あたしを前にして緊張しちゃうのも仕方ないけれど……ご飯は食べないと体に悪いわ。ほら、食べて食べて!」
料理はビュッフェ形式であり、ノエリアは緊張して固まっている親子に取り皿を渡すと、親子はその皿を受け取った状態でフリーズ。
「重症ね……あたしが魅力的過ぎるばかりに……」
「これ食べても
「た、頼むから全員分は残せよ!?」
「ふふふっ、いっぱい食べてくださいね」
「ノールスお兄様、あーん」
「…………」
「ルーア、そんな事をしたらフロムさんが嫉妬してしまいますよ。今にも僕を射殺さんばかりに見てますし……少々居た堪れないのですが。まぁ食べますけれど」
「……誰ですか、その方は。最近仕事が忙しいとか言って部屋にこもってばかりの人の事など、私は知りません」
「だ、そうですよフロムさん」
「明日は定時で終わらせます!! なのでどうか機嫌を直してくれませんか!!」
~・~・~・~
「……ッ」
エリザベス王女が血走った目で、ヘレンに付けていた小型カメラのアーティファクトが捉える筈だった外の様子をクリスタル越しに見ていた。しかし、クリスタルには何も映らない。微塵も興味が無い上に執着してくる異性というのは、とても気持ちが悪いものである。しかしその気持ち悪いという感覚が分からない人間がこの世に存在するらしいのだが、そいつも相当気持ち悪い人間と言えるだろう。
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして、どうしてなのよッ!! あの人は、私にはあんな表情で笑いかけてくれる事なんて、一度も無かった……!!!! あんな幸せに満ち溢れていて、優しくて、暖かくて、愛おしそうな声と顔をして!! 私様にはいつも冷たくて、そこらを這いずる虫よりも興味が無いような目と表情をしていたのにッ!!」
エリザベスは海で楽しそうに遊んでいる家族を見て幸せそうに笑うノルトを見て、エリザベスは怒りに満ちた顔で、今日の海での様子を再生しクリスタルに顔がくっ付きそうなほど近い距離で凝視する。
「どうして最初からその気が無いなら、どうしてあの時私様に優しくしたのよッ!!!!」
周りからしたらそれは当たり前だと、いかにも呆れた声と視線を向けたくなるが、エリザベスは王女。あの王の娘にして、そしてこの性格だ。誰もそんな態度や指摘ができるはずもない。
『実は今日の為にケーキを焼いて来たの! どれくらい食べるか分からなかったから、お友達の分も合わせていっぱい作ったから、晩御飯の後にいっぱい食べてね♡』
(ケーキ! 妾いっぱい食べる!!)
(やったー!)
(あ、ありがとうございます! マリエッタ様のケーキをまた食べられるなんて……夢のようです!)
『……あなたには特別なケーキを用意してあるから、
『全く、人前だというのにもうそんな話を……誰かに聞かれたらどうする』
(今日は何のケーキなんだろう、夏の果物は……さくらんぼ、スイカ、メロン、ブルーベリー、桃、パイナップルだよね)
(桃のケーキ、ブルーベリーケーキ、さくらんぼケーキ……どれも美味しそうです!)
(全部のせで、フルーツケーキとかじゃね?)
(フルーツケーキ!楽しみじゃなー!)
(ふっ……罪深き果肉がもたらす甘美……この血濡れの死神がとくと味合わい尽くして──)
『大丈夫よ、みんなこっちの話なんてもう聞いてないもの……♡』
『仕方が無い雌豚だな……』
しかしそう言うノルトの表情や声色は呆れなどではなく、自分の雌に対する雄のものであった。映像は皇居に入るまでの道中までであり、皇居に入った瞬間にカメラは強制シャットダウンされた。ヒエリカの国内はよく動画を取られるので、公共の場以外では身内や許可された者以外の動画撮影は、こうして強制的に通信を遮断させるのだ。しかもただ遮断するのではなく、逆探知機能付き。流石のセキュリティだ。
エリザベスは映像をクリスタルから別の媒体に保存すると、感情のままにクリスタルを壁に投げつけて壊す。後日、この映像を編集させ映った周囲の人間を消してやり、マリエッタを自分と差し替えさせるのだ。
……なんとも気持ち悪い。
昔のエリザベスは(今もそうなのだが)随分と思い上がっており、酷い妄想癖があった。自分はノルトに嫌われているのではなく、ノルトが恥ずかしがっているから自分は無視をされているのだと思い込んでいた。
もしかしたらノルトに会えるかもしれないと、ヒエリカでの交流会には全部参加した。しかし当然ながら皇族からの目はあまり良いものでは無く、ノルトの兄弟達からにも避けられていた為、勘違いが加速した結果エリザベスはノルトが「家族のせいでそういう態度をしなければならない状態」になっているのだと思ったのだ。
しかも太っていたのは自分の体質と運動不足のせいではなく、ノルトの子供を身ごもり、食べ悪阻のせいで太ってしまっているのだと本気で思い込んでいた。更にプラセボ効果でエリザベスの腹は元々脂肪で大きかったが更に膨らみ、生理も止まった。吐き気も感じ、悪阻のような症状が出た。いわゆる想像妊娠というものだ。
行為どころか触れてもいない上、ほとんど会ってすらいないというのに、どうしたらそんな事を本気で思えるのかは不思議だが、思い込むだけで脂肪によってではなく本当に腹が大きくなるのだから、実に人の体というのは不思議な構造をしている。脳内の方も非常に不思議な回路をしているのだが。
……そんな幻想にヒビが入ったのは、ノルトとマリエッタが恋 人同士になり、2人が見るからにイチャイチャと仲睦まじくしている時。より具体的に説明すると、マリエッタが人目をはばからずノルトにくっつき、それになんだかんだ言いながらも無抵抗でそれを受け入れ、しっかりとマリエッタの手を優しく恋人繋ぎで握っている様子をたまたま見てしまった時の事。
その時はノルトも年頃の男である上、浮気くらいしていてもそれに余りある高過ぎるスペックと美貌故に勝手に女が着いてくるのだから仕方が無いと思い込んだ。
しかしエリザベスはノルトが好き過ぎるが故に、皇族の事はよく調べていた。その血のルーツ……体に改造を施した
(血を分け与えた神の肉体的は吸血鬼。魔者は長い時を生きる存在であり、他種族は少なくとも500年という時を生きる。なので淫魔やスケルトンなどの一部種族を除いて、伴侶や家族という存在がより重要になる。元より、魔者は種族は違えど、人間を育てる程には情が深く家族として扱う存在だ。よって、吸血鬼である神に血と魔力を与えられた皇族は、その特徴と神の精神を他のどんな使徒よりも濃く受け継いでいる)
つまりノルトがマリエッタ以外の女に愛を囁く事など、絶対に有り得ないことを本当は知っていたのだ。
そんな状態なので、エリザベスがストー──いや、偶然散歩中にノルトとマリエッタがキスをしている様子を見てしまった時は
2人は(エリザベスの中では)愛人関係なので当然キス以上の事をするのも時間の問題だった。ノルトの性格上、いきなりエロ同人のごとくドスケベ調教セックスをするとはエリザベスは思えなかった。それまでにマリエッタに徹底的に嫌がらせをして、なんとか時間稼ぎをしようとした……が。
数週間後に何故かマリエッタが何もされていないのにも関わらず、息を荒らげる雌の表情をして何かに耐えながら時々「お゙っ……♡」という喘ぎ声を小さく出してノルトの隣を歩いていた時があった。
何故そんな状態なのかというと、31話を見て欲しい。……要するに、そういう事である。
マリエッタはノルトが好き過ぎるのと、元々性欲が強過ぎるあまり、何かとノルトに誘惑していた。逆セクハラで際どい所に触れたり、胸を当ててみたり、スイーツに何かを混ぜたり。
一方でノルトは全て平気そうな顔をして、いつものように「全く……」と言っていたが、皇族はムッツリドスケベの変態ドS。なのでクールを装っている裏でちんちんは非常にイライラしていた。
という訳でノルトは仕返しとして「学校が終わるまで俺にオネダリせず、誰にも気づかれず、いい子にして1日中耐えきったら沢山可愛がってやる」という条件を出し、マリエッタはまさにエロ同人かのような状況になっていた。
……その夜は大変お楽しみでした。
部屋だとゲイルが居るので、丁度建築が終わった新築のマリエッタの家でそれは行われた。愛する未来の夫に拘束具を付けられて下品なおほ声を披露し、ノルトの圧倒的なスタミナと吸血鬼由来の精力で見事に抱き潰されていた。
朝チュンを迎えたマリエッタは、とってもスッキリとした朝で起床し……そして隣でまだ寝ているノルトのとても性欲をそそられる大きな塔を見て、また発情した。スッキリは即座にムラムラに変換された。
マリエッタはノルトの寝込みを襲い、自らしゃぶり初めては勝手にまたオホ声をあげたのである。素晴らしいアヘ顔で、昨日までは処女だったマリエッタは快楽を貪り、起きたノルトにお仕置としてまた昨晩の時のようにドスケベ調教セックスをされた。若いってスゴイ。
エリザベスは、明らかにギリギリまでセックスをして急いで準備して登校しましたと言わんばかりな様子と二人の服や、髪の乱れ具合、そしてマリエッタが未だに快楽の余韻から戻りきれていない様子から色々と察し、またヘラった。
普段は完璧を良しとし、こだわるノルトが、2人揃ってさっきまでセックスしてましたと主張するかのような事後感と、マリエッタにあまりにも多過ぎて見えまくりなキスマークと歯型を付けていた。
エリザベスにとっては、とても強烈的な出来事だった。
ついにエリザベスは我慢ならなくなり、ノルトに「何故自分を相手にしないのよ」だの「あの身の程知らずの卑しい女ばかり」だの「あんな女より、神の血を受け継ぐ私様の方がお互い神の力を持つ者同士、釣り合いが取れている」だのほざいた。神の力を持つ、という意味ではマリエッタも自然の神から加護を与えられているというのにも関わらず。
そして今までガン無視だったノルトにとうとう言われたのだ。
『いい加減、俺に依存し執着するのをやめろ。尾行をするのも、エマに嫌がらせをするのも、俺にとって全て鬱陶しく気持ちが悪いだけだ。……この際はっきり言っておく。エリザベス、俺は貴様の事が好きでも嫌いでもなく、心底どうでもいい。
何処で野垂れ死にようと、殺されようと、今まで通りに愚かにも傲慢に振舞っていようとも俺にとっては関係無い、興味も無い。そもそも俺は貴様のような女が一番苦手だ。
他者を下に見る事でしか脳が無く、俺に興味を持たせようと自分を変える努力をしようとせず、ただ醜く妬む傲慢さと惰性と嫉妬深さ。既に性欲をぶつけるだけの
俺でなくとも、そのような女を誰が好きになる? 次エマに手を出そうとした時には覚悟しろ』
こうして突きつけられた拒絶という現実に、エリザベスの脆弱でヒビの入った妄想は粉々に打ち砕かれた。以来エリザベスはあの雌の顔をしたマリエッタを思い出すだけで吐き気を催すようになり、汁物しか食べられなくなった。その結果、体はみるみる痩せていき、元々持っていた美貌がようやく姿を現した。
自分はこんなにも美しかったのか、と思ったエリザベスは性懲りも無くまたノルトに近づいたが、当然相手にされる事は無かった。
そしてノルトはワークブルク学園を卒業し、16歳になった後すぐさまマリエッタと結婚。その1年後くらいにノエルができ、18でノエルが産まれた。十数年後には双子にも恵まれ、誰がどう見ても幸せな家族だ。
ノルトはほとんど城下町で仕事をするが、時々会議などで城に居る時がある。その時を狙って廊下ですれ違ったりしたが、やはりスルーをされた。そもそも王女に対して挨拶をするのが当たり前なのだが、ノルトはその行為が王族に対してとても不敬な行動である事を知りながらも、エリザベスを言外に拒絶したのだ。
ノルトに話しかければ相手をされるが、それはとても業務的な対応であり、冷たさしか感じられなかった。
何故そこまで他人行儀なのか、何故自分を拒絶するのか。その悲しみと屈辱は今や……。
「許さない、許さないわ!!!! 私様の心を踏み躙った挙句、あんな体と力だけにしか価値の無い女にッ……!!」
激しい愛憎の感情へと、昇華してしまっていた。
「……私様を選ばなかった事、いつか絶対に後悔させてあげるわ」
エリザベスはそう言い、自分の部屋にある隠し扉を開け地下を通り、誰も知らない秘密の部屋に入る。そこには沢山のノルトのグッズと写真で埋め尽くされており、中には隠し撮りをされ目の合っていない物もある。中にはマリエッタとのツーショット写真を、自分と合成で差し替えた物や抱き枕、そして部屋の真ん中には大きなノルトの油絵まで。その絵を描かせる為、ノルトの目の色彩を表現する為に沢山のエメラルドを砕いた絵の具をふんだんに使わせた。
本人が見たら流石のノルトも鳥肌モノだろう。
しかしただの絵とはいえ、そんなにも金をかけてエリザベスはノルトを身近に感じていたかったのだ。エリザベスは色々と間違っており、間違えた傲慢な女だが、ノルトに対する気持ちだけは、本物だった。
だからこそ、エリザベスは今更止まらない。止まるつもりが無い。
「だって貴方が悪いのよ……あの時私様を助けずに、見て見ぬふりをしなかった貴方が悪いの。だから、私様がこうなってしまうのも、仕方ないことなのよ。貴方が、完璧過ぎるのが悪いのよ」
エリザベスにとってもう縋れるものが、他にないのだから。だからノルトのせいにするしか自分を保つ為にはそうするより他に無かった。
そうでなければ自分がとても惨めでちっぽけで、醜くて、嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで、自分なんか死ねばいい、周りの誰かもそう思っているのを分かりながらも、それでも誰かに愛して欲しくて、生きたくて……おかしくなってしまいそうになるから。
~・~・~・~
「ご飯も食べ終わった所だし、皆で大乱闘ゲームしましょ!」
「やりますッ!!」
「あっ、ノエルがゲームに反応してる! 可愛い! セッ──」
「(この世界にスマ○ラって存在したのね……というか、未だに初めて会った時とのギャップが激しすぎて同一人物かどうかも疑わしく思えてくるわ……)」
「なんだか面白そうじゃのー! 妾もやるぞ!」
(ププピープピープピープピーププピーププピープピーピープププピーピープピープピーププピー)
という訳でノエル、ノイル、ノエリア、ガッチガチのアグネスとスタイラー、ヘレン、初めてゲームをするティアラとレイネル、それから頬にしっかりと手形が付いたレイゼルで大乱闘をする事になった。ちなみにこのゲームは8人ではなく最大で10人まで参加が出来る為、あと一人参加できる。
「ただ、最初に言っておくわね……あたし、どんな物でも勝負には絶対に手を抜かないタイプなのよ。だから3タテしちゃうかもしれないけれど、大丈夫?」
「大丈夫だよおばあちゃん、手加減とか必要無いから」
「えっ!? わ、私は(この世界のスマ○ラは)初心者なので手加減をして欲しいのですが!?」
「じゃあチーム戦にすればいいんじゃね? 初心者チームと、経験者チームと、ソロの義祖母ちゃんって感じで。もちろん俺はノエルと同じチームがいい!!」
「お前得じゃねェか!!」
「色々選べるのじゃ! 何が良いかのー!」
「(まさか陛下とゲームをする事になるとは……。というか待て……この人、生粋のゲーマーだからほぼ全員で立ち向かった所で勝てる気がしない)」
「(暗黒の喜劇(アニメ)と禁断の書物(ラノベ)は僕の領域だが、悪魔の玩具(ゲーム)は専門外だっ!!)」
これだからメンヘラヤンデレは……まぁ、感情の神である初代勇者の血を引いてるからしゃーないね。ありとあらゆる感情が強くなっちゃうから、どうしても理性が利きづらいっていう。
【挿絵表示】
2025 0407
最近何となく描いてる漫画の1コマ
短しおまけ
「……絶対に最後まで責任を取ってもらわないと許さないわ」
「お、お父さん……なんだか、凄く嫌な感じがしたような気がするんだけれど……」
「奇遇だな、俺もだ」