チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
本当は母の日に出したかった話。まぁ内容的に父の日の方が良いんだけれど、それだとかなーり間が開いちゃうので……。
今回はとうとう、ノエルさんの過去回です。
追記 若干設定変えました、もし気づけたらすごい。我氏が褒めてやろう。それからあとがきの最後の方にも追加で前世でのちょっとしたエピソードと2話でのノエルさんの心理を書きました。20250518
「ふぐぉぉ……」
「ノエル、へーき?」
「これの何処が平気だと……」
まだ生理による痛みのピークが来ていないというのにこの有様。ノエルはイライラしながら、月に一度の最悪な期間がやって来た事に絶望した。ベッドの中で包まり、ホルモンバランスの乱れと出血による痛み、怠さに耐える。
「でも始業式の日じゃなくて良かった……」
「良かったなー」
レイゼルはノエルにくっつき、スリスリクンカクンカしながら今日もノエル成分とノエルの血の匂いを摂取する。このでかい柴犬は、毎秒ノエル成分を摂取しなければ、禁断症状が出てしまうので。
そういえば作者はちょっと前、変態はノエルが使った後の生理用ナプキンとか集めてそうだよな的な会話をちゅぷ氏としたのだが、確かにあの変態なら絶対にやるなと思った。まぁノエルは月経カップ派なので、この場合レイゼルはそのカップを興奮しながらハァハァペロペロと舐め回すという実に気色悪い行動に出るのだが。
そしてノエルは過去に何度かやられた事があり、前のサマーホリデーでもレイゼルは性欲に負けた結果、ロープで亀甲縛りにされ、吊るされ1時間ほど放置された事がある。ノルトに。本当は一日中放置しておきたかったが、あまりにも五月蝿く情けなく惨めな泣き声に、近所の住民達に迷惑をかけるのと虐待を疑われそうだという事で、一時間という事になった。
「それよりレイゼル、ちょっとどこかに行ってて欲しいんだけれど」
「えっ……」
レイゼルは明らかに「何で? 倦怠期……?? まさか他に男ができて俺が邪魔になったとかじゃないよな????」と言わんばかりな表情とになり、メンヘラクソ勇者はヘラり始める。実に面倒くさい男だ。リアルだと8から9割の人間が絶対に関わりたくないタイプである。
「いや、なんだか今回のはいつもよりヤバめだから、普段あまりない筈のイラつきが半端ない。理不尽にキレ散らかしたり八つ当たりしそうだから、避難して欲しいんだけど」
「あ、そーゆーこと? なんだ、じゃーいつもの事だし別に気にしないけど」
「いや、八つ当たりと怒りの鉄槌を一緒にしちゃ駄目だから!! 全然別物だからね!?」
「俺としてはむしろもっとやって欲しいまである」
「レイゼル、その理不尽な暴力を欲しがったらもう終わりだよ。それやってる側もされてる側も人間としてどうかしてるから。というかツッコミさせないで、本当に。本気でイライラしてきちゃうから、ソーシャルディスタンスを保って!!」
「えー……。今日のノエル、なんか意地悪だな……」
「どこが!? どこら辺をどうしてそう感じたの!? むしろ愛の塊でしかないと思うんだ……け、ど」
するとレイゼルはニヤニヤと腹の立つ顔をして笑う。ノエルはハッとしてプルプルと顔を赤くさせると、ノエルは逃げるようにしてベッドの上からリビングへと逃げた。
「今日は徹底的に離れて生活してやる!!」
という訳で、ノエルはイライラでレイゼルを理不尽に八つ当たりしないようにする為、徹底的に避けることにした。愛故に。という訳で、ノエルはイライラを軽減するのとレイゼル除けで
「……どうした?」
「月一の地獄が来たから、私の精神安定剤になってください……」
「あぁ、今日だったのか。どうりで最近は食べる量が増えたと思っていた」
「(お父さん、そんなところまで見てたんだ……)」
ノエルはちょっと嬉しく感じたものの、一体どこまでその翠の目には見えているのやら。ノエルはテーブルで馬鹿共がバカをやらかして、その後始末をした時に自分が載った新聞を読みながらコーヒーを飲むノルトにくっつくと、ノルトはコーヒーを置いてノエルを抱き寄せる。
(この後、この新聞はマリエッタによってノルトが載っている記事を切り抜かれる)
「痛み止め飲むか?」
「飲む……」
ノルトは魔法でヒエリカ製の市販薬を出すと、ノエルの口の中に入れて水魔法で飲ませる。そして
「……」
じっとノエルはノルトの横顔をアオリの角度で「我が父親ながら、本当に美術品かってくらい綺麗過ぎる顔面だ……」と思いながら見ていると、その視線が気になるのかノルトはノエルの布団を引っ張って顔に被せる。
「わぷっ」
「……見過ぎだ、気になるだろう」
皇族は視線に対して敏感だ。なのでそうじっと見つめられると、気になってしまう。ノルトはその視線を学校生活で培ってきたスルースキルがある為、問題は無い……筈だったが、娘からの視線には耐えられなかったようだ。
「だってお父さんの顔が良過ぎるんだもん……。今からでも男の子に生まれ直したい、生理も無いし。
(それに
「……今からでも前のように薬で男になる事はできるが、そういう事では無いんだろう? どちらかと言うと、変身願望だな」
「うん。だから本当に男の子として生きたい訳じゃ、無いよ」
「そうか、なら無理をせず焦らずゆっくりと理想の自分になっていけばいい。俺も昔はそうした」
ノルトはそう言いノエルの頭を撫でる。
「……」
するとノエルはゆっくりと起きて「ちょっとの間だけトイレに行ってくるから、まだここに居てね。絶対だからね……待っててね、絶対だよ」と言い、生理痛に耐えながら月経カップに溜まった血を捨てに行く。
「分かった、ここに居るから早く行ってこい」
ノエルがトイレに行っている間、レイゼルが「ノエルぅぅぅううう!!」と言いながらニョッキに傘で拘束されながら名前を呼んでいた。そしてノエルが何とか部屋に戻って来た後、まずノルトにくっついてからベッドで横になる。
「……撫でて」
「珍しいな」
「……そう?」
「ノエルは直接言うよりも、まずは相手の表情を見るからな。癖なんだろう?」
「そうなんだ……」
「あぁ、それで大体諦める。相手が何かをしている時には話しかけない。俺が
「……うん」
「いい子だ」
ノルトはまたノエルの頭を撫でると、リラックスしてきたのか、生理と薬の効果と布団の暖かさで眠くなってきたのか、ノエルはうとうとし始める。
「……でも、今だけだよ。いまは、ホルモンバランスがみだれてるから、じょうちょが……へんになってて……ちょっと、さびしいだけだから」
「なら、定期的で自主的で徹底的に俺が甘やかしてやる」
「……よかった」
そしてノエルが寝た後、ノルトは娘の貞操を狙う駄犬から守る為に傍に居た。
~・~・~・~
『■■は優しいから私から離れていかないよね、ねぇ!?』
『……大丈夫だよ、ママ』
幸せな気分で寝た筈なのに、どうして私は嫌な夢を見ているんだろう。こういうのはもっと幸せな夢を見るものだと思うんだけれど。夢を見ながらそう思っても、これは過去の記憶が出てきちゃってるんだから仕方ない。どうせ過去の夢を見るなら、幸せな夢の方が良かった。
『私は絶対にママの傍から離れないし、傷つけたりしないから……』
『……嘘つき』
『えっ』
『嘘つき!! じゃあどうして最近帰りが遅いの!? 本当は私の事が嫌で、関わりたくないから……!!』
『ち、違うよ! おばあちゃんに会いに病院に行ってたの、きっと寂しいと思って……』
嘘だよ。本当はおばあちゃんじゃなくて、友達に会いに行ってた。病院に居る友達に。居心地の悪い家に帰りたくなくて……。
『それに今は■■が居るでしょ? だから……大丈夫かなって』
『■■が懐いてるのは■■だけなの知ってるでしょ!? 玄関の前でずっと■■の帰りを待ってる……』
違う、■■は人が大好きだし、ちゃんとママの事もちゃんと好きだからよく撫でられに行ってる。だから私だけ懐いてるなんておかしい。でもまぁ、それくらい精神がおかしくなってたんだろうね。
『そんなこと、ないよ』
あぁ、そうだ。この後ビンタされたんだ……嫌な思い出だな。
「!! ……ご、ごめ……ごめんなさい!! 私、なんて事を……!! これじゃ、アイツと、同じに……!!」
でも、ちゃんと愛はあった。だからママは泣きながら私を抱き締めて、それからずっと泣き止むまでうわ言のように私に謝った。
『大丈夫、大丈夫だよ……ママはアイツとは違う。だってママは私の事が好きだから……アイツとは、違うんだよ……』
『……ごめんね■■、私は母親失格だよ。きっと神様に祈る時間が短かったから、こんな事に……』
もういい、これ以上はダメだ……見たくない。
『……本当にごめんね』
その先の言葉を、思い出させないで。
『■■を育てるの、失敗しちゃって……ごめんね。ちゃんとした子に産んであげられなくて、ごめんね……』
やめてよ、その言葉は。
大して子供が本当は好きじゃないのに、子供を産んでみたかったとか言って、適当に選んだDVモラハラ男じゃなくて間男と作った私と私の人生を全否定する言葉だから。
……そもそも子供を産んでみたかったから私を作ったって言われた時、結構辛かった。産まれたのは別に私じゃなくてもよかったって言われてるみたいだったから。私に自信があれば、もっと別の感じ方をしていたんだろうけれど。
確かに前世の私の頭は出来がよくなかった、だから要領が良くて優秀なママはついイライラしちゃって私を叩いた事もある。仕方ないよ、前世の私の脳みそが不良品だったから。でも私なりに頑張ったんだよ、ママに喜んで欲しくて……。
小さい頃とかはよく、ママの事が一体どれくらい好きかを書いた……ひらがなでママの好きな部分を書いて、それから特級呪物みたいな、すきという文字の羅列を狂ったように小さい子供特有の汚い文字で書き綴った手紙を何通も送ったよ。手紙を渡したらママは笑ってくれて……凄く嬉しかった。
だってママはただでさえアイツの事で辛い思いをしたのに、仕事でも辛い目にあってた。だから、私は笑って欲しくて小学校に上がってからは勉強を頑張った。でも、頑張っても報われなかった。テストは酷い点数だったし、その頃は嘘つくし誠実ではないけれど、でも変に生真面目な性格が災いしてクラスメイト達には疎まれて、いつも孤立してたから先生は私の扱い方に困っていた。
グループでの話し合いとか、ペアで行う授業には目も当てられなかったね。コミュ障ではないから、コミュニケーションはできるけど、うん……会話からハブられたね。心配性なママも出来の悪い私に困った。
それでママは自分を責めた。ちゃんとした子に産んであげられなかったって。だからママは変な宗教にのめり込んだ。……全部神頼みで、ただ祈るだけ。前世はこの世に神様なんて居ないって思ってたから、私は口では「大丈夫、きっとなんとかなる。ママは神様にいっぱい祈ってるから、きっと神様も助けてくれるよ」って慰めていたけれど……。本当は、心のどこかでママを愚かだと思っていた。
信仰したところで、宗教とかの教えは大体発祥の地の価値観とかルールに基づいた、社会的ルールや美点を無意識に身に付かせるもの。時代によって、これがいい行いだったり、悪い行いだったり、宗教もルールや教え、考えが変わる。時には政治とかが絡んで、政治に都合のいいように改変されたり、争うこともある。
けれど宗教の根本は神を完全な存在、人間の手本として崇め、それに近づく為に心を鍛えて、自分という存在をより良い者にする為のもの……だと私は思う。
……でもママは、ただ変な集団に感化されて祈るだけだった。
あぁ、やっぱり無理だ。思い出したくないのに、どんどん嫌な思い出ばかり思い出してくる。
『──■■、■■、起きて!!』
『……ママ?』
この時、私は小学校から家に帰宅した後、ずっと勉強をしていたから、疲れて机で眠ってしまっていた。晩御飯を食べていなかったからお腹は減っていたけれど、たぶん精神的ストレスと過集中で、眠ってしまっていた。
あの家には、暗黙のルールがあった。
1つ、アイツには逆らわない事。アイツが不機嫌になるから。
2つ、アイツより先に食べてはいけなくて、必ず食事の時には家族全員で食べる事。アイツが不機嫌になるから。
3つ、ご飯の時におかずはあまり食べ過ぎない事。アイツの分が無くなって、アイツが不機嫌になるから。
4つ、何をするにしても音を立てない。大声を出して笑うなんて、以ての外。アイツが不機嫌になるから。
5つ、お風呂もご飯の時同様、アイツより先に入っちゃいけないのと湯船には入らない事。お湯が垢で汚れるのも相まって、アイツが不機嫌になるから。
6つ、アイツより先に寝たらいけない。アイツが不機嫌になるから。
7つ、部屋は常に綺麗にしておくこと。アイツが不機嫌になるから。
8つ、アイツの仕事での愚痴を毎日聞くこと。アイツのストレスが溜まって不機嫌になるから。
9つ、アイツを立てること。アイツの機嫌が良くなるから。
10、アイツが帰って来る前には必ず玄関の前で待っている事。じゃないと……。
『もう帰ってくるよ!!』
『っ!!』
その瞬間、玄関のドアが開いた音がした。
その後の事は……断片的にしか覚えていない。きっと、心の底から怖かった記憶だから逆に覚えていないんだと思う。
けれど、覚えているのは……。
階段を上る音がしただけで、体の奥が凍りついたみたいに冷えて、震えて止まらなかったこと。
髪を思い切り引っ張られて体を若干吊るされながら、服で隠れて見えないお腹を吐くまで殴られて痛かったこと。
そして……許しを乞う為に、自分の口から撒き散らされた胃液で汚れた床の上で土下座をして、何度も言わされて命懸けで覚えた言葉を、アイツの気が済むまで言っていたこと。
『……■■さんの、お金を……食い潰している何の価値もない私が、■■さんよりも先に眠ってしまい……大変申し訳ございませんでした。
ゴミ以下で、下等な生物を……どうか、お許しください……。そして、貴重なお時間を割いて頂き……ありがとう、ございました』
この時、絶対に泣いちゃいけない。
じゃないと、アイツの中では私が悪いのに、アイツは自分が悪者にされたって感じて更に不機嫌になるから。
今だから言えるけれど、子供に言わせていいような言葉じゃないよね。というか、子供じゃなくても人に言っていい言葉じゃない。
この許しを乞う時に使う言葉は、私にとって凄く大きな呪いの言葉だった。これを言う度に、本当に自分が無価値な人間だと思うようになっていって……。
私が中学になる頃、モラハラDVな上、更にアル中だったアイツは、外食するという連絡もよこさず居酒屋で飲んだ帰り、横断歩道橋を踏み外して死んだ。
アイツは、ママと私にお金と大き過ぎる心の傷を残して、あっけなく死んだ。
けれどアイツが死んだ後の前世でも、今でも……呪の言葉は心を縛り付ける鎖として巻きついている。
……あぁ、もうお願いだから良い夢を見させてよ。
そう思っていると、病院でできた友達と初めて会って間も無い頃の記憶の夢が流れ始めた。
『なんか最近あった?』
『なんかって?』
『んー、辛い事とか』
『……特に無いよ? まぁ、仮にあったとしても、この世には戦争とか紛争でもっと苦しんでる人は大勢居るから。私個人の悩みとか辛い出来事なんて、全然大した事じゃないよ』
そういえばその友達は変に鋭かったな、でも……深くは踏み込んでは来なかったから、助かった。けれど、不思議だな……前世の頃は顔には出なかった筈なのに、何で今は思ってる事が全部顔に出ちゃうんだろう。もしかして、レイゼルが感情の神様だから……かな。うん、たぶんそうだ。
『ふーん……』
『それより、これ! やってみてよ、すっごく面白いゲームだから!』
『英語読めねぇ~……』
『ア○ダーテイルっていうRPGなんだけど、知ってる?』
『いや……。俺、あんまRPGとかしないからさ。結構対戦ゲームばっかしてる』
『勿体ない! 神ゲーを保証するから、初見の反応を隣で見させて!!』
『それが狙いかよ』
『それが狙いだ!』
楽しかったよ、一緒にゲームをしたり、隣で見てたのは。何より、嬉しかった。誰かに迷惑かけてばかりの、何も出来ない私が。一人で凄く寂しそうにしてて、今にも消えそうな表情をした彼を……凄く楽しそうで幸せそうな表情にさせる事ができたから。
その相手は私が本当に助けたいと思っていたママではないけれど、誰かの心を救う事が出来た。
まるで、私の存在を必要とされているみたいで、こんな役立たずで出来損ないの私でも、生きてていいんだって言われているみたいだった。いや、自分自身で思えた。
努力が無駄だとは思わないけれど、努力しても報われないのが怖くて、趣味以外何もしなくなって。本当に勉強やママを支える事すらも駄目で何もできない私が、唯一誰かを救えた。人の役に立てた。
これがどれほど大きな意味になったか。どれほど嬉しかったか。
それから私はメンタルが弱めなクラスメイトの愚痴や辛い事を聞くようになった。それで、全部受け止めた。人の愚痴なんて、気が滅入る事もあったけれど……全部話した後は凄くスッキリしてて、感謝もされた。私がやったのは、ただ聞いて共感しただけ。心に寄り添って慰めただけで、一緒に解決はしない。というか、できなかった。
だってそういう人達は家庭環境で問題を抱えている人ばかりだったから。そういう問題は、他人が、しかも子供が何とかできるような話じゃない。
そしてその中で、とある男子が私に告白した。私に救われて、私の事を好きになったらしい。けれど私はその人に対してそういう感情を少しも持ち合わせてはなかった。むしろ、不信さえ感じた。
こんな私を誰かが好きになる筈が無い。きっと裏がある、体目的じゃなきゃ、私にそんな事を言う筈がない。
けれど……こんな私が、断ってもいいの? 何の価値も取り柄も無い私が、私が良いって言っている相手を拒むなんて。何様のつもりなんだろう。私は生きる価値が無いんだから、拾ってくれるだけありがたくて、これは凄く光栄な事。
……それに、私なんかが断って相手を悲しませたり不快にさせるなんて、絶対に駄目。誰かを喜ばせなきゃ、私は存在している価値が無いんだから。
そう思って、私は計3人の男と付き合った。そして全員信じられなくて、試し行動もした。
……あえて、ちょっと性的な会話とスキンシップをした。付き合って初日で、ちょっとビッチ的発言をしてみた。あ、いや、そこまでではないか。とにかく、ちょっと……積極的な感じ?
でも、違うの。本当は相手に「そういう事は早すぎるから今はやめよう」とか言って欲しかった。……大事にして欲しかった。けれどまぁ、思春期の男子高校生が乗り気の彼女に迫られたら……ね。もれなく全員その気になった。
本当に好きなら、結婚とかそういう先を見据えて最後まで責任を取って欲しかった。大事にして欲しかった。だから私はその気になった歴代の彼氏達を、体目的で近づいてきた人達だと思った。
だからデートは数回だけ。おばあちゃんのお見舞いだって嘘ついて、一緒に帰らなかったし……いつも友達の彼に会いに行った。
私にとって一番居心地がいい場所が、あの病室だったから。
私は酷い嘘つきだ。相手をその気にさせておいて、結局何もしないで期待だけさせておいた。相手の気持ちを軽く見た。しかも、日頃から彼氏以外の異性に会いに行っていた。幸せどころか、傷付けた。ママにも、沢山嘘をついた。
私は最低だ、そして酷い虚言癖だ。
私は醜い偽善者だ。
そして、今でも……その偽善心は無くなっていない。心に巣食う無価値感は消えてくれない。お父さんはあんなに、私に自信付けようとしてくれたのに。お母さんは私と離れたくないくらい、私を愛しているのに。
それでも私は心のどこかで思っているんだ。
お父さんとお母さんはもしかしたら、お互いの
転生した後、私はお父さんとお母さんをよく観察した。お母さんはママよりずっと精神的に落ち着いていて、いつも笑顔が絶えなくて凄く幸せそうな人だったし、私が生まれたからその時はほとんど家に居て傍に居てくれたから、すぐに安心できる人だって思った。本当に……ずっと私の傍に居て、私をずっと幸せそうに見つめて話しかけていたから。
お母さんが私に言っていたのは全部、愛の言葉だった。
それでお父さんは……正直、怖かった。まぁつり目で表情がちょっとクールな人だからね。何を考えているのか分かりづらいし、お仕事で休みの日以外、お母さんより家に居る時間が短かったし。あと逆にこっちを見てくるその目が怖かった。まるで全てを見透かすような目が……。
私の悪い所や汚い部分が全部、見えているみたいで。
でも、1番怖かったのは触れられる事だった。アイツの事が、頭にフラッシュバックするから。
それであの日……お父さんは私を抱きしめてくれた。初めて
……凄く、嬉しかった。
まぁ次の日に風邪移っちゃったけど、急遽有給で免疫力が元に戻って風邪が治ったお父さんが付きっきりで看病してくれたから、私もすぐに治った。
その時も初めて父親に看病されたし、過保護過ぎるくらい凄く心配してくれたから……嬉しくて思わずまた泣いちゃったな。お父さん、ずっとオロオロしてた。あんなに目に見えて慌ててたお父さん、凄くレアだと思う。
それから私はお父さんに少しずつ近づくようになって、今では家族の中で一番信頼してる。きっとお父さんはどんな私でも受け入れてくれるだろうから。まぁ、そもそもとんでもない母親と結婚している時点で、私程度のめんどくさい女くらい、受け入れられない筈がないんだけどね。気付いたのはつい最近だけど。
それはそれとして……心のどこかで根強い疑心暗鬼心が、勝手に怯えてるのが自分でも嫌になる。
レイゼルの事だって……。
勘と頭の中では分かってる、レイゼルにとって私はどういう存在か。どれ程、想ってくれているのか……。分かっているのに、もしかしたら私じゃなくて別の人を見る日が来るんじゃないかって、怖くなる。心ほど簡単に変わりやすくて壊れやすい物は無い、だから……いつかその気持ちが変わる日が来る。そう思ってしまって、怖くなる。私があげた愛に応えて欲しいのに、応えるどころか気持ちを踏みにじられるのが怖くて。
レイゼルも面倒くさいけど、私も大概だと思う。……人のこと言えないね、これは。
レイゼルは私に毎日
自分が嘘をつく人間だからか、人の言葉を信じられなくなっているから。そんな私が毎日何度聞いても、それで本当に安心する訳じゃないのにね。
だから私は行動で判断するしかなかった、本当に私の事が好きなのかどうかを。
それで何で歴代の彼氏達にあんな試し行動をしていた私が、あんなド変態の幼馴染を好きになったんだろう、とか時々思ったりもするけれど、よく考えてみれば理由は凄く単純だった。
レイゼルは良い意味でも悪い意味でも、ものすごく分かりやすい。たぶん感情の神様だからだろうけれど。
すぐに顔に出るし、態度に出る。寂しい時は4歳児の子供みたいにそれはもう泣き喚くし、嬉しい時はイマジナリーしっぽと耳が見えてくるくらいに目に見えて喜ぶ。他人に嫉妬をする時は、人間には出せないような殺気と殺意を向ける。
極めつけは……本当に、レイゼルにとって特別な存在が、メーヌさんと私だけっていうところ。つまり、今は私だけしか居ない。
心の拠り所で縋れる相手は、私だけ。私だけが唯一無二。私がレイゼルにとっての全て。私の存在が消えたら、レイゼルは壊れる。
……レイゼルだけが、下等な生物で無価値な私を特別にしてくれる。
だからね、もしレイゼルが私以外の女を抱いたり、特別に想った時は……絶対に許さない。本気にさせたのはそっちだし、最後まで責任取ってもらわないと。
……でもたぶん私、凄く嫉妬するだろうけれど、結局「やっぱりそうだよね」って思って、辛すぎるからそのまま自殺するな……うん。凄く悔しいけれど、嫌だけれど……見たくないけれど。見たくないから自殺するだろうけれど……レイゼルが幸せなら、今後浮気しないってその人に誓えるなら、いいんじゃないかと思う。もし浮気したら祟るけど。絶対に呪い殺す。
でもあの独占欲と超重力のお父さんとお母さんとは違って、私がそう思えるのはたぶん、私なんかと一緒になったところで、レイゼルは幸せになれないと思っているからなんだろうけれど。
けれどもし、それでも本当に私を選んでくれるなら。寮生活で料理とか家事だってできるようになったし、結婚してもきっと大丈夫。草魔法の応用で自給自足の生活もできるし、お金が必要な時はいざとなったらギャンブルで当てられるし。労働する必要が無いから、ずっと傍に居られる。居てあげられる。
なんだか、お金の稼ぎの方法がかなり危ない感じがするけれども、レイゼルよりは全然マシだし合法だと思う。……たぶん。
だから、絶対に幸せにするって誓うよ。
まぁ恥ずかしいから、そんなこと絶対に口に出してあげないけれど。
~・~・~・~
「ん……」
「起きたか」
ノエルの目が覚めると、どうやらずっと傍に居たらしいノルトが声をかける。まだ眠いのか、ノエルは目をパチパチしながらぼーっとする。
「おはよう、今は午後の3時だ」
「おはようお父さん……」
そしてノエルはノルトの手を取ると自分の頭に乗せる。
「えへへ……」
「ッ!!」
《ノルトは致命的な精神ダメージを受けた!》
この時ノルトは思った。
うちの子めっきゃわ!! 好き!! 一生守る!!!! (意訳)
えー、実はノエルさんの現時点でのヤンデレ度は10を最高だとすると⒍5ぐらいです。
それからノエルさん、愛されたいよりもどちらかと言うと愛したいタイプ。それで、同じ分だけ返して欲しい。でもすごく臆病だから、相手の好意が信じられない。でもそれを乗り越えると、とんでもねぇヤンデレ女になる。
そういえばご存知だろうか、幼少期に精神的に酷い苦痛を受けると、脳の発達に影響が出るということを。
そして自己肯定感が低い人間が自分の事を何も出来ない人間だと思っていると、本当に何もできなくなってしまうそうで。仕事とかでもミスが起こったりするらしい。
どこ情報だったかは忘れたけれど、どっかで聞いた話を紹介するぜ。
青い目の子供と黒い目の子供でクラスを作り、まずテストを受けさせる。そしてそれぞれ勉強をさせたそうです。そして目の青い子供は優秀な人間が多い、と言い聞かせ、褒め続けながら勉強を受けさせ、黒い子供には黒い目の人間は平均よりも知能が低いと言い聞かせ、お前達は何もできないと言い勉強を受けさせる。
しばらく経ってテストを受けさせた結果、青い目の子供の点数や偏差値は上がり、黒い目の子供は逆に下がったそうです。
それから今度は逆にして、黒い目の子供に「実は黒い目の人間の方が優秀なことが分かった」と伝え、褒めながら勉強を受けさせ、青い目の子供には「実は青い目の子供は優秀な人間ではなかった」と伝え、お前達は役に立たないと伝えながら勉強を受けさせる。
すると、黒い目の子供の点数は上がり、青い目の子供の点数は下がったそうです。
そして褒められていた方の子供は自己肯定感が上がり、逆にマイナスな事を言われていた子供は自己肯定感が下がったそうです。
言葉は、使い方によっては万能の薬になり、劇薬にもなる。
まぁとにかく、ノエルさんにとって言葉は劇薬のようなものだったって事です。
暇人の読者の皆も、言葉には気を付けようね。言葉は人を殺す事もあるので。だからXとかでポストする時も、言葉に気をつけるんだぞッ!水性との約束だ!……あ、もし変な人に絡まれたら即ブロして自分の心を守るんだぞ!
【挿絵表示】
おまけのクソザツ1ページ漫画20250514
以下、追記20250518
ちなみに、ノエルさんが前世の頃に父親関連でマジで心臓がヒュンッてなったというか、本気で怖くなった出来事がありまして。
自分で散らかした癖に片付けないとキレてくる父親が帰ってくる前に、鬱病で動けない母親の代わりで学校終わりに母親が父親に殴られる事態を阻止する為、片付けていた時。
何故か裏面で置かれたDVDディスクがあったので、それをパッケージに戻そうとして表面を見てみると……。なんとそれは自分の名前とまったく同じ名前で活動しているらしい女優のAVで、名前と同じ髪の長さも同じな女優が、でっかくディスクに印刷されていた事です。
そして父親は時々前世のノエルさんがお風呂に入ってる時に勝手に入ってきては、体を見てくるんですね。前は何でわざわざ入ってくるんだろう……湯船狭いのに。なんかやだな……とか思ってました。
でもディスクを見てしまって、何故かお風呂の時に見てきた理由に気がついた前世のノエルさんは思わず落として、うずくまってしばらく震えてました。
2話で前世のレイゼル君に胸を触らせていたシーンがありますが、その頃の前世ノエルさんは結構自暴自棄で危ない状態になっており、もし出会っていなかったら自分で自分の体を傷つけるリスカ行為や、誰かを救う事で自分自身の価値を感じるのではなく、近づいてきた異性と体の関係を持つことで価値を見出すようになっていました。体しか自分には価値が無いと思っているからです。
「…………まぁでもいいよ、別に」
このセリフはそういう事で、自分自身はどうでもいい、どうなってもいい、という事ですね。自分には体しか価値は無いと思っていながら、自分を無価値でゴミ以下だと感じているが故です。体も自分という要素の一つなので、どうしても無意識に自分の体も価値を軽く見てしまいます。ゴミよりは多少マシ程度ですが。
ちなみにメンヘラはこれらの心理が働いている為、よくメンヘラはすぐに浮気するしヤリチン(マン)だと言われます。実際にそういう人が多いのも事実ですが、自分にはそれしか価値が無い(と思っている)ので、それ以外に誰かと関わりを持ち、認められる方法が無いのです。
なので自分に価値を持たせる為には、セッ……が一番手っ取り早く、恋人とかに捨てられないようにする為の方法がそれしか無いんですね。それにセッ……の時はずっと構ってもらえるし、相手はスマホとかではなく自分を見てくれる。しかしメンヘラは幸せを大切に保管しておく為の心の箱には大きな穴が開いており、それを常に満たしておく為には恋人だけでは全く足りないんですね。だから浮気をする。まぁ、沢山の人間に愛されているという優越感となどを中には感じたい人も居るのかもしれませんが、そんな不健全な状況と心理で満足できる訳が無いんですが。
そしてレイゼル君の場合は、その心の箱が4次元収納になっていて、いくら幸せになっても全く足りないという。減っている訳じゃないのが救い。しかも感情の神様なので、相手が本当に自分を見てくれているかどうかも分かる。
ノエルさんは歪んでいるので、前世ではよく誰かを救う事で自分の価値を上げ、自己肯定感を得ていましたが(しかしすぐに無くなる)誰かを救いたいのは自分自身が救われたいのもあったものの、だからこそ誰かを救って相手が笑顔になってほしいというのは本心でもありました。
前世の頃は聖力が使えず、神としての力に目覚めてはいなかったものの、なんとなく無意識に前世のレイゼル君はその心を感じとっていました。
そして今では救い救われたい人達同士でくっついたという訳でごじます。まさに割れ蓋に閉じ蓋。
ただ、レイゼル君はこの世界の住民として戻ってきた事で、性欲が暴走してセクハラが止まらないという。
それと前世のノエルさんのママさんは読者の皆が今回の話を見てもらった通り前世ノエルさんに依存しておりまして、前世ノエルさんは高校卒業したら家を離れて一人暮らしがしたいと言った事があります。
普通の親は寂しくあるものの旅立たせるものですが、ママさんは「私を一人にしないで」「どうせ私の事が嫌になったんだ」「寂しいとか思わないんだ、冷たいね」と言って泣きながら怒ったんですね。でも愛はあるんです、愛はあるからこそそれに応えようとしちゃうんです。もちろん父親の件とは違って別のベクトルで精神的にはきついです。
だから前世のノエルさんは自分に決定権は無くて決定権はあくまで母親にあり、自分はどこにも行けないんだなと思って、もう色々と人生を諦めております。
それで前世のノエルさんは前世の父親とは血が繋がってはおりません。ママさんは元々若干メンヘラが入っためんどくさい女なので、子供を作る為に結婚した父親に対して、別に特に好きじゃなかったが関心を持っては欲しかったという。でもお互いに別に恋愛感情がある訳でも無く、利害一致による結婚だった為、お互いに関心が無い。でも相手からの関心と理解は欲しい。
ママさんは会話をしようとしますが、パパはそれを拒否、最終的には怒って責め立てる。
悲しくなったママさんは近寄ってきた他の男と一度だけ肉体関係を持ち、その結果前世のノエルさんができました。すぐバレました。元々前世の父親はモラハラ気質でしたが、この一件でブチ切れて母親を酷く嫌悪。そこからDVに発展し、常習化して最悪の家庭が爆誕しました。
その事実はママさんから聞かされており、ノエルさんはママさんの事は好きだけどそれ以上に凄く気持ち悪い人だと思っています。
なので今のノルトパッパとエマッマが仲良いのを見ると、凄く安心する。二人の間に入ろうとしたり引き裂こうとする奴は絶対に許さないマン。
何があろうと起ころうと、両親の仲を壊すような存在はマジで殺してやろうかと思うくらいにブチギレて殺そうとするレベル。