チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
心配症で世話焼きなパッパと、よく世話を焼かれるゲイル先生の話。
追記 20250705 23:50
よく見たら不完全なまま投稿しちゃってたわ。なので直したぜベイベ。それから応援が引き続き決まったぜベイベ。我氏は一体いつ元の施設で働く事になるんだべイベ。
「ありがとうございます、ゲイル先生! 今日も凄く勉強になりました」
「それなら良かったよ、分からないことがあったらいつでも聞いてね!」
午後の授業を終えた後、個人的にノエルはゲイルに魔者語を週に一度一時間ほど教えて貰っており、今丁度終わった所である。
「やっと終わったぁ~!! なぁなぁノエル、早く帰ろ! めちゃくちゃ腹減った!」
「はいはい……」
「にゅーっ!」
自分もお腹が減ったとばかりにキノコ臭い使い魔は意思表示をすると、ノエルはニョッキをプニプニする。
「ニョッキもお腹減ったんだね、じゃあ一緒にいっぱい食べようか。……あっ、先生も良かったら食べていきませんか?」
「えっ、いいの? でも僕は一応教師だし、あんまり生徒とプライベートな事は良くないというか……それに僕、いっぱい食べるし」
立場的に、いくら好意でもそれを簡単に受け取れないのが教師というもの。いくらヨダレがダバダバと滝のように流れていても、我慢しなくてはならない。
「いえ!! 本当にいいんです! それにこれから行く場所は寮じゃないので」
「えっ?」
「なんかお義父さんがさー、先生の事心配してるっぽい」
横からバラしてきたレイゼルにノエルは両頬を片手で挟むようにして掴むと「なんでバラした訳??」と詰め寄り、レイゼルはハァハァして「じ、事実だしぃ……♡」と答えた。
「お父さんの気持ちを考えろバカ」
「俺ふぁノエルの事しか考ふぇふぁふふぇーふぉん」
そのやり取りを聞いたゲイルは、もしかするとノルトは自分の事を心配してくれているのかもしれないと思い、嬉しくなる。未だに初恋を拗らせているゲイルにとって後輩の家に行くのは辛いが、それ以上に2人に会える事が嬉しいのだ。
「受講料って事にしといてください」
「で、でも……」
頑なにゲイルは断るが、食欲は限界寸前。それを察していたノエルは「今なら即完売するお母さんのケーキ食べ放題なのに……勿体ないなぁ……お母さん張り切っていっぱい作るって言ってたんだけどなぁ……」と呟くと、ゲイルの理性という砦は陥落どころか爆散した。
「やっぱり行くよ」
「ですよね!! じゃあ行きましょう!」
ノエルはガッシリとゲイルの手を握りながら転移魔法で3人は一瞬にしてフルタ村に行くと、実は初めて来た村を見回す。教師になる前は有名な傭兵ギルドで一番強い人材として駆り出され色々な場所に行っていたので、田舎特有の街並みや城下町、超重要人物のボディーガードなどもした事があり、城や屋敷の中にも行った事があり、色々な景色や場所を見た事があった。
「……?」
「ゲイル先生、どうかしました?」
「どーかした?」
「ううん、なんだか……変わった村だなって」
「にゅ」
「……そうですか?」
「ふつーじゃね? それよりノエル、何で先生の手繋いだままなんだよ」
ノエルとレイゼルはここが産まれ育った場所なので、何の違和感も感じない。しかしゲイルにとってはとても異様に見え、感じた。
「なんというか……土とか草とか、ここらの生物達が強い意志を持っている気がして」
「そうなんですか?」
「ノエル??」
「うん、それで……その意思が全部、あっちの方を中心に向かってるんだ」
そうゲイルが指さすのは、正しくヴェリカ家の方角。ノエルは「うちと同じ方角だな……」と思いながらも家に案内した。ヴェリカ家に近づくにつれてゲイルは生物達の意思が向けられる中心に近づいていき、冷や汗をかきながらノエルに手を握られたまま連れられる。そして誰かさんの趣味丸出しで大きな屋敷に着いてしまったゲイルは、2つのベクトルがそれぞれ違う緊張を味わっていた。
「ただい──」
「ノエル!!」
「ま゙っ」
ノエルがドアを開けようとする寸前、ドアは開かれてノエルは思いきり安心する匂いに包み込まれる。
「おかえり、一週間ぶりだな。今日の授業はどうだったんだ? もしノエルにふざけた態度をするガキが居たらすぐに教えてくれ。
「お父さん、そこまでしなくても大丈夫だよ……」
出会い頭にノエルを抱き締め、クソ重ヤンデレパパとなったノルトにゲイルは「手紙の時も凄かったけれど、こうして間近で見ると……うん、凄いな」と思うのだった。あまりの愛の重さに。
「それでね、今日は先生を連れてきたよ。ほら!」
ノエルは繋いでいる方の手を見せると「そうだな」と言いながら1本1本ノエルの指を剥がすようにして2人の手をベリっと引き剥がす。マジックテープを剥がすような要領で。
そしてノエルの手を自分の手にくっつけると、くっついていたゲイルの手はポイした。
「ところで、まさかとは思うが……ずっと手を繋いだ状態で来たのか?」
「うん、先生が一人で何処かに行って迷っちゃわないようにね」
「ノエルさん、なんだか僕を小さい子供扱いしてない……?」
「ノエル、俺にもやって 」
レイゼルはそう言いアピールするが、ノルトはノエルを抱き上げ、ノエルの荷物を魔法で部屋まで転移させるとそのまま家の中に入る。
「何故9ヶ月以上俺と手を繋ぐ事はなかったというのに、ゲイルにはするんだ??」
「せ、先生が見知らぬ場所で一人で居たら(貞操が)危ないからです!!」
「そうか、今度の休みは2人で出かけよう。丁度俺も非番だからな、なんとしてでも休日出勤は阻止してみせる」
ノルトは転移魔法でノエルの靴を脱がし、靴棚にしまうとゲイルの方を向いた。
「……いつまでそこに立っているつもりだ、早く入ってこい」
「あっ、うん。お、お邪魔します!」
初めて想い人が住んでいる後輩の家に入り、ゲイルは緊張しながらキョロキョロと落ち着きなく部屋の中を見回す。部屋もロココなデザインになっており、完全に貴族の屋敷のよう。家主の趣味が全開だ。
「ただいまー! そんでさお義父さん、俺ノエルとすげーイチャイチャしたい気分なんだけど、代わって」
「黙れ駄犬」
このやり取りにゲイルは「いつもこんな感じなんだろうな」と思いながらも、ノルトの後ろから広い屋敷の中を歩いていくといい匂いが漂ってくる。そしてリビングへ行くと、マリエッタが沢山の料理を作ってテーブルに並べていた。ノエルの妹弟達は既に席に着いており、目の前に並べられたご馳走をジッと見ながら我慢していた。
「あら、おかえりなさいノエル♡」
そしてノエルに気がつくとエプロンを脱ぎ、ノルトに抱えられたノエルを抱き締める。薔薇の匂いがするのでスーーーッと深く娘吸いをした後で離すと、ノルトにキスをした。とても仲がいい家族の、何気ないワンシーン。だが、ゲイルにとってその光景は古傷を抉られるかのように思えた。
こうなると分かっていたのに、それでもゲイルは来た。確かに2人が夫婦として仲睦まじい様子を見るのは苦しいが、それ以上に2人に会いたかったからなのである。……食欲の影響も多少入っているが。
「そしてお久しぶりです、先輩♡ 春の文武学祭以来、元気でした?」
「うん、マリエッタさんも元気そうだね。あとルトさんとエルマー君も」
「お久しぶりです!」
「ん、父の友も元気だったか」
すると「わん!」という鳴き声と共に床に爪が当たる音と走る音が聞こえ、ゲイルの前に白いモフモフがやってきた。
「わん!」
(どなたですか! どなたですか!)
「わんわんっ!」
(はじめまして、ぼくはロロです! げんきです!)
「わんっ! わんっ!」
(となりにいるのは、ボスとごしゅじんと、ボスのおっかないつがいです!)
「わわん!」
(ぼくのしっぽがむいているほうにいるのは、ぼくのきょうだいと、いつもぐーたらするエルです!)
ロロの言うきょうだいとは、双子の事である。そしてエルはジッと物影からゲイルを観察して見ていた。どうやら警戒しているようだ。
「……えっと、彼は紹介しないのかな?」
「わゔぅ……わん! わわん!」
(あのおおきいイヌはきらいです……いつもごしゅじんにベタベタして、ぼくとごしゅじんをじゃましてきます。ボスにもみとめられていないのに! とてもふけいです! きらいです!)
「そ、そっか……」
動物の言葉が分かるゲイルは苦笑いしていると、ノルトは「ロロはなんと言っていたんだ」と聞いた。
「……えっと、レイゼルくんの事はあまり好きじゃないみたい」
「だろうな」
ロロは今日もノエルに近づこうとするレイゼルの足にまた噛み付いており、いつものようにノエルから引き剥がそうとする。
「ゔぅ~……」
(ごしゅじんにちかづくな、おおきなイヌ! ふけいだぞ!)
「ノエルぅ~、なんか犬っころが俺の足噛んでくるぅ~……」
「犬っころ言うな」
「そろそろ夕飯にするぞ、全員席に着け」
ノルトはノエルを下ろして椅子に座らせると、全員が席に着いたのを確認してから手を合わせる。エルマーはパチン、と勢いよく手を合わせ、ルトはとてもゆっくりと合わせる。
そうして全員が手を合わせるのを見て、ゲイルもそれに習い手を合わせる。
「いただきます」
「「いただきます!」」
「いただきまーす」
「いただきます♡」
「……いただきます」
「にゅーっ!」
「わん!」
「にゃーん」
「い、いただきます!」
そして一斉に始まった食事。魔力を込めると広くなるアーティファクトのテーブルには、所狭しと大量の料理が大皿に乗っており、全員が各々食べたいものを取り皿に乗せる。ヴェリカ家ではほぼ全員が大食らいな為、こういう形式で食べる方が理にかなっているのだ。
「先輩、沢山用意しましたから好きなだけ食べてください」
「いいの? じゃあ頂くね!」
そこにゲイルが加わり、1時間もせずにテーブルの上に並べられていた料理は完食された。しかしそれで終わりではない。第2陣があるのだ。マリエッタはそれを魔法で温め、転移させてテーブルに乗せると、料理達はすぐに口の中へ移動する。そして第3陣、4、5、6となった所でようやく満腹になり、後には大量の皿が残った。普段は3までであり、念の為マリエッタはゲイルの食欲を考えて普段の倍にしたのだが……どうやら正解のようだ。
食事を終えた子供達はすぐさま自分の部屋に行くと、自由に過ごす事にした。気を使っているとも言う。……某勇者の場合は絶対に違うのだろうが。マリエッタは残った皿をキッチンにある大型食洗機に運ぶと、スイッチを入れた。
「……さて、する事が無くなったな」
「えっ、話すんじゃないの?」
「話題など無いだろう、普段手紙で事足りているからな」
「そ、そっか……それもそうだね。あれ、じゃあもしかして本当にただご飯に誘ってくれただけって事?」
「そうだ、他に理由があるとでも? ……いや待て、授業でのノエルの様子には興味がある。それについてなら聞いてやってもいい、丁度時間はある。早く言え、時間は有限だ。だが言えないのなら俺がノエルの事について話してやろう、あれは1週間前の午後8時──」
「ま、待って!!」
明らかに話が長くなりそうな気配を察知したゲイルは、すぐさまノルトに待ったをかける。話を止められた事にノルトは「何だ、まさか俺の娘についての話を聞きたくないとでも言うつもりでわはないだろうな」と、言わんばかりにゲイルを視線の刃物で突き刺す。
「ノルトくん、その話ってどれくらいかかりそうかな?」
「ノエルの事を話すのに、時間に制限を付けてどうする」
思わず「さっき時間は有限って言ったよね」と言いたくなる、この相変わらずな態度。とても懐かしく思いながらも「昔は弟さんと妹さんの話だったな……それがいつの間にか子供の話になってたなぁ……」と、思い返す。うちの子自慢しか内容が書かれていない手紙の数々を。
「……時間がかかるのが嫌だと言うのなら、お前の話をしろ」
「えっ、でも手紙でほとんど最近の事とかは全部伝えてるよ……?」
「まだ俺に言っていないことの一つや二つ、あるだろう。聞いてやる」
「えーっと……」
ゲイルは困惑した。先程からのノルトの態度や言動といい、なんだか不自然に感じられた。なんというか、ノルトらしくない。うちの子自慢をするのはいつもの事だが……なんというか、言動が矛盾している。そもそもノルトは意味も無く食事に誘う事はしない。しかも家でだ。
絶対に何か用がある筈だというのに、食事をするだけで終わる事など有り得ない。
「……本当に無いのか?」
ノルトの意図がよく分からず、ゲイルは何を言えば正解なのかに困っていると、その内ノルトの方が痺れを切らした。
「なら俺の暇つぶしに付き合え」
「何をするの?」
「模擬戦だ。昔はよくやっただろう、お前の腕が鈍っていないか見てやる。当然、俺の勝利は確定しているが」
「ノルト君こそ、体が動かなくて僕に初めて負けちゃったりなんてしないでね?」
「じゃあ久しぶりに2人の試合が見られるのね! 楽しみだわ!」
そしてノルトとゲイルとマリエッタは家の外に出ると、ノルトは魔法で木の剣を出して一つをゲイルに投げ渡す。
「折角だ、何か賭けておこう。その方が面白みがあるからな」
「何にするの?」
ゲイルは尋ねるとノルトは少し考える様子を見せ、それから答えた。
「……命令権を賭けよう、買った方がどんな事だろうと一度だけ言う事を聞く。それでいいか」
「相変わらずの自信だね……僕、昔より一応成長してるんだよ?」
「なら前と同じように全力で叩き潰してやる」
こうして2人の試合は始まった。マリエッタはキャーキャーしながらノルトの方に視線を釘付けにしながらも「2人とも~♡頑張って~っ♡」と声援を送っていた。
試合を見ているのはマリエッタだけではなく、家の中からノエルや双子達もジッとその様子を見ていた。
「……噂には聞いてたけれど、凄い。凄いとしか言えない……」
「やべ~……」
近所迷惑にならないよう、防音や衝撃対策で展開されたフィールド内では怒涛のような2人のラッシュが繰り広げられており、その手汗握るような試合は見ている側が瞬きひとつできないような感覚に陥る。
やがてラッシュによって限界を迎えた互いの木の剣が折れるや否や、ノルトは距離をとって木の剣をゲイルに投げ捨てると、難なくゲイルはゲイルも同じように向かってくる木の剣を投げ捨てぶつける。木の剣は粉々に砕け散り、ノルトはその破片を魔法で防ぎ、ゲイルはその破片に当たってもかすり傷1つ付くことなく魔法行使のために意識を集中させる。
「「フィジゾーン」」
そして2人は物理障壁を作り出すと、障壁を剣の形にして今度はそれを振るう。
「はっ!」
「ふん、どうやら口だけではなかったようだな。ところで、もし俺に勝った時……お前は俺にどんな命令をするつもりだ?」
突然ゲイルに聞いてきたノルトに、集中力を削ぐ気かと考えたゲイルは、意識を試合に集中する事を考えながらも攻撃を仕掛けた。
「それはっ、まだ決めてないよ!」
「そうか、俺はその命令権を使い、ここで俺と一夜を明かすのかと思っていたが」
その瞬間、ゲイルは一瞬固まった。
「……えッ!?」
当然その油断を見逃す筈もなく、ノルトは一瞬で首元に物理障壁の剣を突きつける。
「油断したな」
「ず、ずるい!」
「油断する方が悪い、戦場なら死んでいた所だ」
「そ、そうだけどずるいよ……」
とはいえ決着を着け、絶対に勝つ為にノルトは心の隙を狙うような事を言ったが、もしその手を使わずに本気の試合をしたらその影響はフィールド内に収まらないどころか、夜が明けるまで戦っていただろう。その場合、勝者は一体どちらだったのか。
「では早速勝者に従ってもらうぞゲイル」
一体どんな命令を下されるのだろうか。緊張しながらもその言葉を待つ。
「……それでノエルから聞いた話だが、あの二流眼鏡に捕まったそうだな」
「え、えっ!?」
「本当はお前が自分で助けて欲しいと言い出すまで、干渉しないつもりだった。デリケートな問題だからな」
「待っ、待って!! ノエルさん、気付いて──というか、ノルト君も知ってたの!?」
教え子や初恋の人にヴェルドとの関係を知られていた事に、ゲイルは情けないやら恥ずかしいやらで赤面する。
「あぁ。大体、おかしいとは思っていた。何故急にゲイルがあのホワイトな傭兵ギルドから、割に合わない教師なんぞに転職したのかとな。大体人を導く程の度量も無い上に、そもそもあまり前に立って話すのは苦手だろう」
「うっ……」
「今ではその理由も分かるが……それで加害に対して耐える事とはまた別だ」
「……そうだね、ノルト君の言う通りだよ」
ノルトは音と衝撃の遮断フィールドを解くと、俯くゲイルに命令した。
「今後はゲイル自身がどうにもできない状況に陥った時、悩んだ時、絶対に俺を頼れ。あの愉快な家族よりも先にな、それがお前に課す命令だ。この俺が何度でも友人として特別に助けてやろう、光栄に思え」
前世の頃、ノルトは唯一の友人に感謝してもしきれない程に人生で助けて貰った。今のノルトが居るのは、今世の家族の影響もあるが、一番は友人の彼だった。彼が居たからこそ、この世を恨んで死ぬような事や精神が腐る事もなかった。そしてノルトがここまで強くなれたのは高め合える程の強さを持ったゲイルの存在あってこそだ。
だからノルトは助けたいのだ。心の中では身内と同じように大切に思っている相手だからこそ、頼って欲しかった。
「……じゃあ、早速僕を助けてくれないかな、ノルト君」
「あぁ、助けてやる」
~・~・~・~
「ここが今日から数日先生が使う家です!」
「……あれ、僕どうして泊まることになってるの?? それに使ってもいいのかな……」
「んー、別にいーけど。今は使ってねーし、もう俺ん家じゃねーし」
レイゼルはそう答え、長らく使われていないいつの間にか綺麗になった家のドアを開ける。
「もしかしてここって、レイゼル君のお家だった所なの?」
「そ、俺とばぁちゃんが住んでたとこ。……ばぁちゃんが死んだ後は、王様の命令でノエルん家に住むことになって、管理とかめんどくせーからお父さんに家をあげてから全く来なくなったけど……。昔はすげー広く感じてたのに……ここ、意外と狭かったんだな。ってか、外も中もめっちゃ変わってる! 知らねー部屋も増築されてるしすげー!」
ノルトが助けると言った数分後、マリエッタは「先輩、今日のお仕事やさっきの運動で沢山汗をかいて疲れたでしょう? うちでお風呂に入ってください」と言って、押しに弱いゲイルを風呂に入れさせると、着ていた服は洗濯し、事前に用意していたフリッフリのパジャマを出した。勿論ゲイルは渋ったが、他に着るものが無いので仕方なく着ると「やっぱり私の思った通り! 先輩凄く可愛いです! 一度先輩にこういう服着せてみたかったんですけれど、本当に似合っています! ノエル達の次に♡」と、マリエッタはとても喜びながら、甘ロリの格好になったゲイルを褒めていた。褒められた方はただただ恥ずかしいが。
そしてノエルに新品の歯磨きセットを渡され、歯磨きを終えた後、家の外に出て案内され……今に至る。
気づくのが今更過ぎる、これだから変態に捕まってしまうのでは。
ノエルはそう思った。
「え、だって先生は教師が使う寮使ってるじゃないですか。そしたら、またあのヴェルド先生に捕まりますよ? というか今夜も部屋に誘われてたんじゃないんですか?」
「ゔっ……」
「これ以上被害を防ぐ為にも、うちとここに居た方が安全です。先生、一人暮らししたら他の変態達に襲われそうですし、気が弱いのでたぶん脅されたら住所教えちゃって自分の首絞めちゃいそうですし」
「……何も反論できないのが情けないなぁ」
「あ、それから先生の服とか私物もここにあるので。もし何処にあるか分からなかったら聞いてください」
「待って、さっきから思っていたんだけれど流石に準備が良過ぎないかな!?」
「先生、まだ気づいてないんですか?」
「え?」
「最初からお義父さんがそのつもりで、元々用意してたに決まってんじゃんか」
そう言われてようやく気づいたゲイルはとても深いため息をはいた。
「友達だからってそこまでしなくてもいいのに……しかも回りくど過ぎるよ」
「お父さんは意外とおばあちゃんに似て世話好きで、知っての通り素直じゃない人なので。あ、ちなみにうちに入れても泊まれないのは3年前から防犯対策で家族以外が入ろうとすると電撃が発生するようになったからなんです、私達が開けて通せば問題は無いですが。
お父さん的には先生なら大丈夫だし、うちで泊まる方が一番安全だと思ってはいそうなんですけど、先生が自由に入れるようにするにはお父さんが結構な工事をしないといけないんです。なのでここを使ってください、うち程ではないですけどちゃんと防犯の魔法はしっかりとお父さんが仕込んでるので!」
「……徹底してるなぁ」
そしてノエルは「じゃあおやすみなさい先生」と言って自分の家に行った。……レイゼルはその後ろを着いていき、家に着いた後はノエルに開けてもらって部屋に入った。もはや慣れである、慣れって恐ろしい。まぁノエルが開けなくてもこの変態は強行突破できる上、普通に動けるのだが。
「あれ、それにしても……いつ僕の家族が魔者だってノルト君は気づいたんだろう? ……まぁいっか、久しぶりにゆっくり寝れるし……」
ゲイルは家に入り、きょろきょろと中を見回す。家はしっかりと掃除されており、埃などは無かった。それどころか内装はとても新しいもので、どうやらリフォームしたようだ。家具などは新調したらしく、質の良さそうな家具等が揃えてあった。もちろんヒエリカ製品であり、横になってみるとベッドはとても絶妙な丁度いい硬さであり、枕もジャストな高さ。
用意した人の性格が現れているような、何もかもが完璧過ぎる寝床でゲイルは目を閉じると、そのまま久しぶりにとても安心した気持ちですぐに眠る事ができた。
その次の日。
「さっさと起きろ」
「あうっ、いたいっ、いたいっ!」
久しぶりに往復ビンタをされながらゲイルは起こされ、目を開く。すると目の前に初恋の人が隣に居る事に驚いたが、そういえば昨日から急にヴェリカ家で過ごす事になったんだと思い直す。
「お、おはよう、ノルト君……」
「あぁ、おはようゲイル。朝食はできている、さっさと着替えろ」
「……うん!」
懐かしいやり取りにゲイルは自然と笑みがこぼれると、ノルトは昔と変わらない素直な友人の小動物感に加護欲を感じていた。
「こっちの家で待っている、早く来い」
ノルトはそう言いリビングへ向かい、ゲイルは甘ロリパジャマを脱いで仕事着に着替えるとヴェリカ家に向かい、チャイムを押し、ノルトの返事がした後で玄関のドアを開ける。
するとすぐ傍にはエルが寝そべっていた。
「えっと、通ってもいいかな?」
「……」
エルはゲイルを無視してドアの前を占領し続けていると、元気な足音と共にロロがやって来る。
「わんわん!」
(おはようございます、おはようございます!)
「お、おはようロロ君。今日も元気だね」
「わん! わんっわわん!」
(ぼくはげんきです! でもエルはフキゲンです! きのう、あいさつされなかったので!)
「えっ? ……あっ、そうだったんだ……距離取られてたから人見知りなのかと思って、無理に話しかけたら緊張するだろうから挨拶してなかったんだ……ごめんね」
「にゃー、にゃごにゃご」
(確かに私みたいなメンヘラ女相手にしたくないのは分かるけど、挨拶しないで無視するとか精神を疑うんだけど。まぢ有り得ない、もう一回謝って)
「ご、ごめんなさい……」
「フシャーーっ!!」
(ちょっと!! そんな素直に謝られたら私が悪いみたいぢゃん!!)
「えぇっ!?」
「エル、先生にシャーしないの。今日のちゅーるは無しにしてもらうからね」
「にゃーん♡」
「媚びるの超はえ~」
ドアの向こう側から制服姿のノエルとレイゼルがやって来ると、エルはノエルに近づいてスリスリした。ちゅーるの為に。そしてノエルはゲイルが入りやすいようにドアを開けた。
「おはようございます先生! ……うちで会うのは、ちょっと新鮮ですね」
「あはは……そうだね」
「昨日、眠れました?」
「うん、お陰様でね。安心して寝れるのってこんなにも目覚めが良いなんて思わなかったよ」
「……分かります、本当に。凄く最高ですよね、起きた時に気持ち悪い変態に襲われてないのって」
ノエルは遠い目をしながら話すので、ゲイルはなんだかとても強い親近感を覚えた。そしてその原因はノエルにくっついてスリスリしているが、一体誰の事なのか。
「なのでいつもニョッキには感謝してるんですよ……」
「そうなんだね……」
「にゅ?」
名前を呼ばれたニョッキは転移魔法でやって来ると、やって来たニョッキをノエルは抱える。
「本当にありがとうニョッキ……今度ボーナスでカルパスいっぱいあげるね」
「にゅーっ!」
「えー、ソテーだけずりー、俺にもなんかちょーだい、キスとか」
「レイゼル、引っぱたかれたいの?」
「してくれんの!? じゃ、じゃあ、鞭で……♡」
「ふんッ!!」
ノエルはドアからそのままレイゼルを投げ飛ばすと、とてもスッキリとした表情をしていた。
「(……学校でもそうだけど、家でもノエルさんとレイゼル君はいつもこんな感じなんだなぁ)」
「じゃあ先生、立ち話もなんですし早く中に入ってご飯食べに行きましょう! お父さん達が待ってます!」
「うん、そうだね。今日の朝ごはんもご馳走になるよ」
そしてゲイルはノエルに連れられて、ヴェリカ家のリビングに向かった。
結構ゲイル先生って、愛されてるんだよね。
ちなみに助けを求められる相手はノルトパッパ以外にも皇族全員に面識があり、その全員から小動物扱いされてて気に入られてるので助けて貰えます。
そして皇族だけじゃなく、助けを求めようと思えば吸血鬼家族からも助けて貰えたりします。特にアレくんから……。ゲイル先生は、エリくんの魂の型によって産まれた魂が生を受けた存在なので。実質、エリくんの生まれ変わりみたいなものです。
その影響で動物や魔者さん達の言葉が分かったりします。
(まぁ理由があってアレくんと先生は本編ではまだ一度も会ったことは無いんですが……)
その次にアルダくんです。うちの子の友達で、妹が拾って育てたというなら自分からすると義理の甥、つまり身内なので助ける、といった具合に。
ただ、吸血鬼家族の方に助けを求めると絶対に相手を殺しにかかります。でもゲイル先生はそこまでの事は求めてないし、相手が悪い事をしたからといって死んでいい訳ではないという考え方をする人なので、もしそれで吸血鬼家族に殺されたら自分が助けを求めたから死んでしまったと思います。優しいね。
まぁもしノルトパッパや皇族が人間を殺せるなら絶対にぶっころがしに行ってましたが。
でもできないので、あくまで法的措置を取ります。
~おまけ~
「なーなー、ノエル食べさせて♡」
「はいはい……野菜以外はちゃんと自分で食べてね」
「(いつの間に帰ってきてたんだろう……)」
~おまけ2~
「そういえば、僕の家族の事はどうやって知ったの?」
「あぁ、魔王がヒエリカでお前の事を言っていたぞ」
「ティアラ、言っちゃったんだ……」
~おまけ3~
「ところでゲイル、昨日の模擬戦の話だが」
「えっ?うん、どうしたの?」
「俺はあの時、一夜を明かすと言った訳だが……」
「んぐっ!?」
「お前は一体何と勘違いしていたんだ?」
「えっ」
とても紛らわしく、分かった上で言っていたノルトはとても意地の悪い顔で、あまりよく分かっていないゲイルを見ていた。すると察した様子のノエルが転移魔法で辞書を出すとゲイルに見せた。そしてそれを見たゲイルは赤面し、縮こまっていた。実にノルトは罪な男である。
(読者の皆はGoogleで先生が勘違いしたであろう方の意味との違いを調べてみてね)