チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
神様の力ってすっげー!
追記 やーね、誤字脱字って……。困っちゃうぜ全く。
ウィリアムは最初、初めてノエルを見た時。まさかあの皇族の血を引く娘を勇者が連れてくるとは思いもよらなかった。その為、頭の中ではまさかそんな偶然が起こる筈が無いと考えたが、400年前以降から遠くなった勇者の血が、体の本能が告げていた。
この娘こそが、自分が求めていた存在なのだと。
約70年ほど前、ウィリアムが若かりし頃。実はウィリアムは気色の悪い鬼畜ロリコン野郎などではなく、普通に大人の女性が性の対象であり、歳上な正妻との後継を残す為の行為に明け暮れていたショタ時代があった。
その頃も王室では女続きであった上、男が全く産まれなかった。なので純粋な王家の血を引く王室の者は、性転換薬を使う事でなんとか王家の血筋を保ってきたのである。
そんな中、ウィリアムは久しく産まれた男児であり、それはもう姉達や母に甘やかされた。要領が良く、幼いながらもすぐに王の仕事を覚えた為、その甘やかしは更に度が過ぎていった。そのように育てられれば、どうしようもない子供に育つのも必然であった。しかし当時はまだ、ただのクソガキの範疇ではあった。
そしてウィリアムは9歳にして精通を迎え、沢山の妻達に子種を撒いた。正妻はあまり子ができにくい体質だった為、彼女は正妻という立場にありながら13番目に子供ができるという自体に陥り、更には女であるエリザベスを、男ではなく女を出産した。その為、彼女は側室の妻達にはとても下に見られていた。
産まれた時から結婚が約束されており、物心着く前から婚約者として会っていたウィリアムは、なんとか彼女に跡継ぎを産んでもらおうと体の回復を待ち、再び種を仕込んだが、精神的な負担やプレッシャーなどで彼女は生理不順になってしまい、更に子供ができないようになってしまった。
彼女は正直、3つほどしか年の変わらない少女であった為、顔立ちはまだまだ大人とはいえず、体も未熟であった。当時のウィリアムにとって好みではなかったのだが、下の方は誰よりも名器で互いに気心が知れていた。
なので他の妻達には無い安心感があり、ウィリアムはよく彼女の立場を回復させる為にもよく抱いていた。……その数十年後、ある日ウィリアムは跡継ぎを残す為に側室の妻達と、当時妊娠していた妻達を除く12Pをしようとしていたのだが……。
不思議な事に、側室の妻達にまるで興味をそそられなかった。確かに10年は経ったが、彼女達はウィリアムに気に入られようと、美容にはとても気を使い、昔と変わらず美しいままだった。それどころか、昔よりも魅力が増したと言えるだろう。
しかしウィリアムは勃たなかったのだ。
それどころか、本来は好みでは無かった筈の正妻がとても魅力的に見えるようになっていた。彼女はいわゆる巨乳の合法ロリに成長したのだ。最初はウィリアム自身も性の対象が変化したのだろうと思っていた。
だが変化はそれだけではなく、如実にその影響は現れていた。まず欲というものが絶えず溢れ、人間の本能の3大欲求がとても強くなった。
いくら若かったとは言え、誰の目から見てもそれは異常だった。そして次に現れた変化は、精神面である。元々甘やかされて育った結果、ちょっとした事で怒り、その末に人格や人間否定をするような誰がどう見て感じてもクソみたいな人間性ではあったが、更に悪化したのだ。おまけに情緒が酷く不安定になり、傲慢に振る舞うようになった。その為少しの粗相をした側室や、罪もない国民や嫌いな姉達を処刑したり、欲望のまま気に入った幼い娘を無理矢理娶ったり、奴隷にするようにもなった。
そんな状態が続き、ウィリアムは時々ふと我に返ると自分がまるで恐ろしく感じた。
まるで自分の中に自身さえでも知らない極悪そのものの第二の自分が居り、理性をゆっくりと酸で溶かして欲望というものを解放していっているようだった。人が言う、悪魔だの悪鬼だのに取り憑かれたかのよう。その前にお前はもう元々それだろ、と言われても仕方ないようなクソさ加減ではあったが。
一体自分はどうなっているのだと、ウィリアムは正気に戻る度に恐怖した。だがウィリアムは数え切れない程の罪を犯し、誰もが彼を非道な暴君だと認識しており(元からだが)もう取り返しがつかない自体に陥っていた。
それから我に返る頻度や時間は徐々に短く、少なくなっていき、満たされない欲に翻弄された。
欲の矛先はノルーアに向かい、ノエリアがブチ切れたり、ウィリアムがしつこく手紙や縁談を持ちかける、などがあった。ただウィリアムは自分自身でさえ、何故か不思議とノルーアに強く惹かれ、もし結婚した暁には妻達を全員処刑し、正妻として王室に迎えるつもりであった。それは叶う事は無かったが。
そして完全にウィリアムの理性が溶けてなくなった時、唐突に気付き感じたのだ。
この変化は予兆であり、また再びのこの世界に400年もこの世に生を受けていなかった勇者が、感情の神が戻ってくる。
自分の欲が急激に増加し、抑えきれなくなったのは聖力を使う神特有の影響によるものであり、自身の感情が制御不能に陥ったのは、感情の神の血が流れているからなのだと。
そして勇者が産まれた事が、理性ではなく本能で分かった。
つまりその神を手中に収め、その力を手に入れ操る事が出来れば欲をいくらか制御する事ができる上、長年のフェリラ王国の悲願を達成する事ができる。ただそれは詭弁であり、ウィリアム自身の本当の願いではない。国の悲願を達成したその先にあるのだ。
ウィリアムは国を上げて、レイゼルを兵士達に探させた。国民達には、勇者を連れて来た者には報酬を与えると約束した。
だが、何処にも見つからなかった。
確かに勇者はこの世に存在している、しかし全く何処に居るのかまでは感じ取れなかったのだ。
一体どういう事だ?
ウィリアムはそう思いながらも兵士達を更に捜索に当てた。そして一ヶ月と経たず、数日後に突然驚くべき客人がやってきた。
『愚かなるニンゲンの王よ、勇者から手を引くがよい。そして二度と手を出さぬと誓え、勇者は妾が魂諸共消滅させる。さすれば業火で灰塵と化すべき国と、うぬの這いずる虫の如き命を見逃してやろうぞ』
長らく人の前に出ることはなく、沈黙の意思を通してきた魔王が現れたのだ。その姿はとても美しく、妖艶な色香を放つ大人の女であった。しかしその表情や目は絶対零度かのように冷え切っており、実際にその場は感情の昂りで抑えきれなくなった彼女の魔力によって吐いた息が白くなる程に冷えきっていた。終わりを迎えた筈の冬が、再び現れたかのように。
この時ウィリアムは一度了承し、勇者には手を出さないという建前を伝えたのだが、秘密裏にはずっと兵士達に探させていた。そしてヘレオスは何度か見つかりそうになりながらも、無事にレイゼルをメーヌの元へ託した。
ヘレオスは魔王によって死んだ事にされていた為、魔者達は故郷にレイゼルを託すとは思わないだろうと考えた。そして何か起こっても、アルダの使徒が居る。だが一番の理由は自然の神に愛され、常に見られているマリエッタも居た事と、まだ精神が育っておらずほぼ自我の無い赤子の時だったというのに、魂が無意識に自身の使徒であるあの村に居たノエルを求めていたからだ。
あの村には自然の神が常に居り、あの存在感は傍に居るだけで、神格や力があまり高くないレイゼルの魂はその陰に隠れる事ができたからだ。自然の神の神格や力が強いのはマリエッタや、マリエッタの先祖達が沢山の人間を贄として捧げてきたのが理由だ。
そして自然の神はマリエッタを心底気に入っていた。なのであの村から離れる事は一切に無いとティアラは考え、普通なら危険な親の故郷に隠すという事を実行したのだ。
それまでティアラが傍に居て権能を使っていた為、魂を隠す事はできていた。しかし仮にも神であるレイゼルの魂を完全に隠すのは不可能、そして絶えず24時間能力を使うのは流石に無理だった。その為、自然の神を利用する事にした。
しかしその帰り、ヘレオスは村の森で兵士達によって殺された。一応村に勇者が居ないか探させようとして駆り出された兵士達だったが、森には肉食うさぎ達が居た。
正面から村に入ろうとすれば元皇太子であったノルトに不審に思われる為、森から村へ向かおうとしていた。ただ何処からやって来ようが魔力を感知されて結局警戒されていたので意味は無い事であったが。
兵士達の大勢は肉食うさぎと、入り組んだ自然の神が居る魔の森によって遭難し僅かな人数しか残らなかった。しかし偶然にもヘレオスはその兵士達と
ヘレオスはただの人間であり、寝盗られた男から常に逃げ回っていた元ヤリチン。戦いの心得は1ミリたりとも持ち合わせていなかったのである。
兵士達はヘレオスが生きている事を知り、勇者はこの村に居ると確信した。兵士達は邪魔な存在のヘレオスを殺し、ウィリアムに情報を伝えようと、たった一人だけが城に戻った。
ノエルやレイゼル達は普段平然と転移魔法で移動しているが、本来転移魔法というのは上位魔法の一種であり、ただの人間が魔法を発動するには時間と大量の魔力を消費し、大人数で力を合わせて行使しなければならない。
そのような魔法を使って森を脱出しようとしたら、うさぎ達に全員食い殺されるのがオチだった。
なので兵士達は、魔力をうさぎの撃退に使い、なんとか命からがら帰還したのだ。しかし戻った者は意識がかろうじて残っている状態であり、うさぎの気を引く為に自ら腕などを切り落としていたり、うさぎに大量の血を流していた。まだ生きていた事は奇跡であった。
そして兵士は勇者の事を伝えようとしたが、その前に兵士は病室のベッドの上で殺された。
音もなく、目の前で一瞬にして頭が消えたのだ。それはまるで、転移魔法によって起こる死亡事故の現象そのものであった。
だが本来、それはおかしい事なのだ。城の中ではそもそも限られた人間、つまり宮廷魔法士か王族のみが魔法を扱える。しかし宮廷魔法士が何故そのような事をしなければならないのかという動機がない。それはウィリアムを除く王族にも言えた。
その上、そもそもそのような事故が発生しないよう、城や城下町、村などには周囲にある空気中の魔力を少量使い、少ない魔力で自動的に特殊な事故防止の魔法がかけられるようにする事ができる、箱庭の内で適用される
だがその理や、行使者の制限をする魔法を無視した芸当ができる存在は、この世界でたった一人。
ヒエリカ帝国の歴代皇族に使えてきた、この度後釜ができた使用人、セバスチャンのみであった。
フェリラ王国の王族は長年神について研究し情報を集めていた為、すぐにセバスチャンが犯人であることにウィリアムは気づいた。
元々ノエリアからは数年前、もしマリエッタの神の加護を利用しようと手を出そうとするなら返り討ちにすると言外に言われていた。その為、なるべくあの村には手を出さないつもりではあったが、それ以上に勇者を手に入れる事の方が重要であった。
しかし結果はこの通り。兵士は医師達の目の前で殺された。
図らずともセバスチャンはレイゼルの居場所を漏らすことなく、勇者ではなく身内を守る為にセバスチャンを使って兵士を殺したとウィリアムに認識させることができた。
皇族はあくまで身内や国民だけを守る。そしてマリエッタは基本的に、自分の利益と自分が好きだと思う人の為だけに動く人間だ。
そんな彼らが、厄介者である勇者を守るとはウィリアムには思えなかったのだ。皇族の事をよく知っているウィリアムだからこそ、そう考えた。そしてノルトもマリエッタも、もし勇者が村に居るのかと聞かれたら、実際に多額の金と引替えに情報を渡していただろう。まぁその金を使い、メーヌとレイゼルをヒエリカに移住させていただろうが。
そしてウィリアムは兵士達を村に送るのは無駄だと考え、フルタ村には兵士達を送らず、密かに世界中に兵士達を派遣させた。レイゼルが神としての力に目覚め、ウィリアムがレイゼルの居場所を感じ取るまでは。
結局兵士達には聖力に目覚めたレイゼルは手に負えず、何も出来ずに城へ帰ってきた。その兵士達も再びセバスチャンによって死に、後日ノエリアからは直接釘を刺されたのだ。次はお前の身内だと。
ウィリアムは仕方なく無理矢理レイゼルを手に入れる事は諦め、娘達をレイゼルにあてがう方法を取る事にした。しかしレイゼルは娘達に誰一人として興味を示さなかった。
きっと好きな女が既に居るのだろう。
そう考え、直接レイゼルに連れて来させたのだ。こうしてウィリアムの目の前に現れたのがノエルだった。
一目見てウィリアムは理解した、自分はこの娘をずっと求めていたのだと。
しかし深く考えなくてもその理由の答えは単純だった。感情の神が求めている存在を、その血を引く自分が求めない筈が無いのだ。
だからウィリアムは強くノルーアに惹かれ、エリザベスは心身共にノルトだけを執拗に執着し依存していた。そしてやっとの思いで産まれた自身の後継者、オリバスもノエルに惹かれた。
感情の神の血を引く者は、皆ノエルやノエルと同じ血を引く親戚などに惹かれる。やはり人間は、神に大きく影響を受ける生き物だとウィリアムは再認識した。
やはり勇者を手に入れなければ。そして支配し、また再び力を得なければ。
だがその為にはノエルとレイゼルを引き剥がす必要がある。しかしそうなると当然、ノエルは何がなんでもレイゼルを取り戻そうとし、あの邪魔な皇帝や皇族が絡んでくるだろう。
ならばまずはそちらの方を潰すまでだ。
……だが一体どうやって、あのインテリ蛮族共を大人しくすればいいというのか。あの国は魔法科学も武力もある。それらが無ければとうの昔に滅んでいたであろう国なのだ。
さて一体どうしたものか。
ウィリアムは昔よりこれでも落ちた体力と精力を発散した後の冷静な頭で考える。昔は賢者タイムなど無かったが、歳をとったせいなのか、賢者タイムがやってくるようになった。
(それでもウィリアムは一度も休むこと無く、今日も朝起きてから昼になるまでの時間をセックスに当てていたが)
ウィリアムは考えるものの、今は全く案が思い浮かばなかった。そして大の字のまま寝た、スヤァ……。
一方で、クソデブ国王が数時間後にそんな事を考えているとは知らないノエルさんはその日の朝、いつものようにレイゼルと教室に向かった。
「レイゼル、そんなにくっつかれたら登りづらいし危ない」
「大丈夫だって、もし落ちても俺がクッションになるし」
「そういう問題じゃない」
階段を登り終えて教室のある廊下に出ると、何故かアグネスを含む早く登校するタイプの同じ部門の男子達が教室の前でたむろっていた。
「何だろう」
「今日って何かあったっけ? 全然覚えてねー」
ノエルはどうしたんだろうと思いつつも歩いて近づくと、気がついたアグネスが慌ててノエルの元にやってきた。
「る、ルシファー、そして勇者よ、今日は、その……早かったな」
「いつもこの時間に来てるけど……?」
「頭ボケた?」
失礼な事を言うレイゼルをノエルはグリグリし、喜ぶ変態と化したレイゼルを無視してアグネスに何があったのかを聞くことにした。
「それよりどうしたの? 何かあったの?」
「……何かが起こったというよりも、そこに現れているというのが真実だ」
「??」
ノエルはなんだか嫌な予感を感じつつも教室を覗くと、なんとそこにはいつもノエルが使っている席で、クッション
「……ルシファー、あのおぞましき悪魔について何か情報は無いだろうか」
「全く……でもどこかで見た事があるような顔をしてるんだよね、それに魔力も何処かで感じたことあるし……誰だっけ」
ヒソヒソとノエルとアグネスは身に覚えのない不審者について話していると、レイゼルはあからさまに不快そうな顔をした。
「キッショ、何でここに居んだよ」
「ふん、勇者の方こそまだ捨てられていなかったようだな。そして、お前が居るという事は……!」
そして不審者は顔を上げて横を見るとノエルを見ては「お゙ッ♡♡♡」と、謎の雄叫びを上げてプルプルしていた。……そして辺りにイカくさい臭いが漂う。
「えっ、何? 何!? なんなの!? 死神くん、私はどうしたらいいの!? あの気色悪い変態を、どう対応すればいいの!?」
「ルシファー、まずは精神と魔力を安定させ、静寂に満ちたものにしなくては。ゆっくり深呼吸を……窓の方でやろう」
ノエルはアグちゃんに言われた通り、新鮮な空気と匂いを取り込もうと、勢いよく廊下の窓を開けた。
「「すー、はー……すー、はー……」」
そしてノエルとアグネスは一緒になって深呼吸している間、レイゼルは不審者をゲシゲシと蹴っており、ギャーギャーと変態同士で騒いでいた。
「痛っ、ちょっ、やめ──、おのれ勇者!! この僕様を足蹴にするなっ!!」
「うるせーっ!! 勝手にクッションになってんじゃねーよ、そこで俺がノエルのクッションになんだよ!! 退け!!」
すると影から謎の人物達が現れる。
「きっ、貴様……よくやった!!」
「今よくやったと言った無礼者は誰だっ!?」
不審者は周りをキョロキョロと
「……待って、今聞いた事ある一人称聞こえたし、見たことある人達が居た気がするんだけれど。……これって現実?」
「ルシファー、これは夢の回廊ではない。逃げる事のできない、確定された現実だ」
ノエルはクソデカため息を吐きながらも、確認をする事にした。教室に入り、再びクッションになっている不審者を見ると、視線を向けられた不審者はハァハァと息を荒らげ、目を血走らせる。厨二病である事以外はまともなアグちゃんは、そんな不審者を見て引いた。
「……貴方の名前は4文字ですか」
「ふぁいっ♡」
「名前の最初にオが付きますか」
「そうでしゅっ♡♡」
「この国でとても身分と血筋が良い人ですか」
「はひ♡♡♡」
「ノエル、ア○ネイターやってる?」
「……オリバス殿下ですか」
「ふぁいっ♡♡貴女の豚、オリバスでしゅっ♡♡♡」
完全にチビでデブで気色悪い王子だったあのオリバスが、残念で気持ち悪いチビのイケメンに変化していた事にノエルは驚きつつも、素直に思った事を言った。
「……あんなに太ってたのにここまで自力で痩せたのには正直に言って凄いと思う、相当頑張ったのが分かるよ。それで髪もちゃんと整えてるし、顔立ちも凄く良いとは思う」
「の、ノエル嬢……! 僕様の努力を分かってくれるのだな……♡」
「ノエル?? 今何て言った?? 今コイツのことカッコイイって言った?? 俺が居んのに???? 俺の方がイケメンなのに?! 超絶タイプの顔してんのに?!?!」
レイゼルはノエルの方に自分の顔面をドアップで見せつけ、ノエルは邪魔と言わんばかりに顔を押しのけた。
「あっ♡」
「だからハッキリ言うけど……。
他の異性に目を向けてみる事が一番だと思います。殿下、世界には大勢の異性が居ます、世界中には地位も無く見かけしか良いとは言えない私より、自立していて心身共に立派な女性が居ます。ですのでいつか必ずその努力が報われる日まで、これからも頑張ってください。その気持ちは純粋に応援致しますので。殿下と釣り合いが取れて、その特殊な性癖を受け入れてもらえる素敵な方に出会えるといいですね。
それでは教室にお戻りください、さようなら。素晴らしい出会いが殿下に訪れる事を、心の底から願っています」
真顔で誰がどう見ても聞いても感じてもNOだと言っているノエルの発言に対し、オリバスはプルプルと震える。
「ノエル嬢っ……」
「さようなら」
「そこまで僕様の事を想ってくれていたとは……!」
「は??」
「何言ってんのコイツ、頭イッてる?」
あのレイゼルも、オリバスのおかしい発言にそう言った。
「厳しくも、優しいその言葉!! ノエル嬢は僕様に、もっと自分に相応しい男になれと言っているのだ! 貴様、何故それが分からない!!」
「普通に他当たれって言ってんじゃねーか、門前払いされてんだよお前」
「そしてノエル嬢はたった今、僕様が好みだと言ったんだぞ!! それはつまり、僕様が好きである証拠!! しかし貴様という存在が居るから、ノエル嬢は僕様の元へ来る事を躊躇しているのだ!!」
「好みとか言ってねーよ、お前気色悪い事過去にやったクセにそれでノエルに好かれてると思ってるとかポジティブ過ぎんだろ。脳内ハッ○ーセットかよ」
おいそれブーメランだろ。
戦闘部門のクラスメイト達はそう思った。しかし意外な事にこれはそれほどブーメランではないという不思議な事実。
何故ならレイゼルの顔はノエルにとって超絶好みだし(それを直接ノエルが言ったことは無いが)レイゼルからのセクハラを受けていても事実として恋人同士。なんなら、ほぼ毎晩ベッドの上で愛を確かめ合っている。
なので不思議な話だが、そこまでブーメランではない。ブーメランでは、無いのだ。一応……たぶん。
「とりあえず教室に帰ってください、さようなら」
「いえッ♡ここで貴女の豚はクッションとして過ごしましゅっ♡♡」
「さようなら」
「帰りましぇんっ♡♡♡」
「レイゼル、GO」
「分かった! おら邪魔だ退け!!」
レイゼルは「勇者、貴様っ! おい離せ!! ただで済むと思うなっ!!」と喚くオリバスの首根っこを掴んでズルズルと引き摺り、と、そのまま廊下の開けていた窓からミニブタをポイッと投げ捨てた。……少し遠くの外からグシャッとかベキッという音ではなく、ベチャッという情けない着地音が聞こえたので、レイゼルは「この音って事は、これ生きてんな」とメタ読みしていた。
「殿下ーーッ!! 今そちらへ参ります!! おケガをされているかもしれませんので、そこを動かずにお待ちくださいッ!!
……よし、皆の者。あと10分休憩にするぞ」
「「「一生着いていきます隊長ッ!!」」」
一体なんなんだ、この護衛達は。ノエルはそう思いながら見ていると、仕事を終えた柴犬は褒めて欲しそうにイマジナリー尻尾を振って、イマジナリー耳をヒコーキ状態にさせ、ジッと見つめていた。
「……ありがとうレイゼル、凄く助かったよ。偉いね、でも危ないから次からは魔法で転移させてね」
「んへへぇ~♡分かったぁ~♡♡」
「はいご褒美」
「あ~~っ♡♡ノエルしゅきぃ♡♡♡」
頭を撫でてノエルはレイゼルを喜ばせると、それからいつもの席に座る。するとレイネルとソフィアが一緒にやって来た。
「……どうしたんだテメェら、何で教室入ってねェんだよ。あっ、おはようございますノエルっ♡今日も世界一可愛いですねっ♡♡」
「おはようレイネル、ちょっと離れようか」
「おはようございますダーリン♡今日もカッコイイです!」
「ごめん誰? というかレイネル、俺のノエルにくっつくな!!」
そして不審者が居なくなった教室に戦闘部門の男子達はゾロゾロと、教室に入って席に着くのだった。
柴犬系変態勇者の影響力って凄いね。
おまけ
我氏の行っている応援先の職場で話した会話が元ネタです。
夏はホラーという事で、今回は介護士なら分かる恐怖の怪談話。
~メリーさん(老)~
(ピロピロピロン!ピロピロピロン!)
「はい、こちら有料老人ホームのコモレビマーム、施設長のプリストが承ります」
「……もすぃもすぃ、私メリーしゃん。今部屋に居るの」(モゴモゴ)
「何処のですか?あの、失礼ですがどなたでしょうか。ご家族の方ではございませんよね」
(プツン)
「……なんだったんだ、全く……。急に職員が2人も休んだこの日に熱中症で救急搬送された入居者が出て、付き添いで更に職員が抜けて忙しいっていうのに」
(ピロピロピロン!ピロピロピロン!)
「またか……はい、こちら有料老人ホームの──」
「もすぃもすぃ、私メリーしゃん……今トイレに居るの……」(モゴモゴ)
「そんな事をわざわざ電話で伝えて来ないでください」
(プツン)
「本当に忙しい時に、誰がこんなイタズラを……。しかも入れ歯入ってるけど形合ってないからモゴモゴしててあまり呂律が回ってない婆さんの声だし……」
(ピロピロピロン!ピロピロピロン!)
「……はい」
「もすぃもすぃ、私メリーしゃん……今廊下に出たの……」(モゴモゴ)
「あ、そうですか……」
(プツン)
「……もうかけてこないでくれよ」
(ピロピロピロン!ピロピロピロン!)
「スーーッ……はい、もしもし」
「もすぃもすぃ、私メリーしゃん……今トイレに居るの……」(モゴモゴ)
「さっき行ってましたよ?」
「……もすぃもすぃ、私メリーしゃん……おしっこが出ないの」(モゴモゴ)
「さっき行ってましたしね、というか私の声聞こえてますか?」
「え?」
「……」
《獄炎のスタイラーは電話を切った》
(ピロピロピロン!ピロピロピロン!)
《……が、またかかってきた》
「はい……」
「……もすぃもすぃ、私メリーしゃん」(モゴモゴ)
「あの、業務妨害ですのでやめて頂けますか」
「私、今部屋の床で倒れてるのだけど……頭が痛いの」
「ヒィッ……」
《獄炎のスタイラーは震え上がった》