チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
ハロウィン絵はまだかかりそうとの事。でも段々完成に近づいてるよ。
今回はNTRによって前世をぶち壊されたノエルさんが、脳破壊させられる話。
「(……どうやら徹底的に情報を隠しているようだな。流石にテロがよく勃発する時世に、第一王子が攻撃され突然盲目になるという情報が外に漏れるのは避けたいだろう)」
ノルトは今日も日課の新聞を読み、セバスチャンの仕事が上手くいっているのを確認していた。テロ犯に余計な情報を与えない為か、オリバスについての情報は一つも出てくることはなく、テロの事や行方不明者についての情報が出ていた。行方不明なのは女性のみならず男性も数多く、男どもの場合は大体がマリエッタの仕業なので女性被害者の方を見る事にした。
いくらマリエッタが巷で噂の連続殺人鬼だとはいえ、身体能力はそこらの一般人女性とあまり大差はないのだから。……一応ノルトが護身術を教えた上に、元々の天才的な演技力で弱く見せるのは誰よりも上手いので、返り討ちにしてしまいそうだが。ヤバい奴にはヤバい奴をぶつけるとは、よく言ったものである。
とはいえ万が一ということもある。その場合ノルトは絶対に駆けつけるつもりだが。
ノルトが次のページを捲るとそこにはワークブルク学園の文武学祭についての記事が書かれており、そこにはモザイクが入りそうな内容ばかりが載っていた。どうやら生徒達によるソープランドについての広告であり、一面あられもない姿をした女子達が載っていた。ノルトはすぐに次のページを開いた。……今度は男子だ。
「……全くこの世界の住人、特にフェリラ出身のガキ共は」
ゲンナリとした様子でノルトは更にページをめくると、今度は教師まで出てきた。
相変わらずどうなっているんだこの学校は、まさかゲイルもこの中に載ってはいないだろうな。生徒という名のガキ共に、無理やりこんなふざけた物に参加させられてはいないだろうか。そんな風に思いながら見たくはなかったが、ノルトは一応記事を端から端まで確認し……案の定居た。
「……無駄な出費が増えてしまった」
ノルトはゲイルにお仕置きする事を決め、そして次のページ。
ミスコンやら他にも目白押しの屋台や出し物が載っていた。なのでノルトはその半分のページを犠牲に、さっきのソープランドの記事を燃やして見なかった事にした。更に次のページ、ようやく剣技・魔法大会についてのことが書かれている記事が現れた。そこには注目の選手としてデカデカと娘が写っており、パパは思わずそれにニッコリする。
やはりうちの子は可愛い、世界一可愛い天使だな。そういつものように親バカを発揮していると、突然テーブルの上に置いていたスマホが振動する。確認するとどうやらセバスチャンからの通話であり、スマホの画面をスライドして通話に出た。
『おはようございます、アーノルト様』
「あぁ、おはよう。それでセバスチャン、何か用か」
『はい、実は文武学祭に関するノエル様の良い情報を先程入手致しまして』
「……ほぅ、話せ。聞いてやる」
~・~・~・~
「お願いします!!」
「いや、よりによってここで土下座までしなくても!! 二重の衛生面的にやめてお願い!!」
「でもイメージと合うのはノエル先輩しか居ないんだ!! お願いします!!」
校舎の女子トイレにて。ノエルの前で美しいDOGEZAを披露しているのは、演劇部のエースだというお宝の塚あたりに出てそうな顔も見知らぬ、ノエルとは違う部門に所属した美形の王子様系後輩女子。どうやら彼女いわく、文武学祭で完璧な演技をして良い劇にしたいのだという。
しかし彼女はこだわりとイメージ力が強いタイプらしい。台本やら、オリジナルではなく有名な演劇であれば事前にその演技を見て自分のイメージしたキャラクターの容姿と役者(の容姿)が合っていないと、演技中に「誰だお前」となってしまい、気になりだして誰の目から見ても良い演技ができなくなってしまうそうだ。
なんとめんどくさ──いや、プロ気質な後輩だろう。顔がこれ程良くなければ、そして王子様系で演技が上手くなければ、さぞ部活の先輩や仲間達に煙たがられているに違いない。
後輩曰く、次の劇には森の妖精なるキャラクターが居り、そのイメージとノエルは全く同じらしい。髪が地毛で白く、淡く虹色に輝く所や森を思わせるエメラルドのような目がまさにイメージとピッタリハマるのだとか。
「そう言われても、私も剣技・魔法大会があるからちょっとでも魔法の研究をしたり剣の技術を上げないといけないし、時間が足りないから無理だよ。それにもう学祭は2週間後なんだよ!? 劇なら衣装だって用意しないといけないし、もし緊急で代役とか必要になったら衣装を使い回せないよ!?」
「それについては問題無い! 服はエンチャントを施してあるから、自由にサイズ変更できる!」
後輩、あまりにも準備が良すぎた。
だからといっていきなりトイレでDOGEZAをキメるのはよろしくないが。王子様系女子のイメージ崩壊が激しい。ノエルの脳内で王子様系女子はトイレでDOGEZAをするというイメージが新たにゆっくりとできあがっていくのだった。
ノエルはどうにかこうにか諦めさせようと理由を述べるが、それでも相手は諦める気配は無い。
「それに私、演技とかできないし……逆にクオリティ下げちゃうだけだからやめた方が」
「そこは大丈夫、セリフは無いキャラクターだから安心して欲しい!」
いやそういう問題じゃないんだよ、私のせいで劇を台無しにしたくないんだよ。どうして私に頼むの、絶対失敗するよ。
ノエルはそう思いながらも、また断ろうとする。
「歌いはするんだが……」
「……えっ、もしかして演劇ってミュージカルなの?? なら余計に無理だよ、私歌にも自信無いよ!?」
「大丈夫だ、先輩にもできるようにはしてある!!」
「そういう問題じゃないよ、ハードル高いよいきなり!!」
劇は小学生以来だというのに、いきなりミュージカルは無理がある。更にノエルは嫌がり、DOGEZA少女を立たせた。が、再びイケメン後輩女子はDOGEZAした。
「お願いします!! せめて見るだけでも!!」
「いや、だから無理だって!!」
「ノエル〜、トイレ長いけどでけーのでも出──……え、何で女の子土下座させてんの? ……何で俺にはさせてくれねぇの?」
~・~・~・~
『今から遡る事約1万年前。内乱が絶えない小さな島がありました。その島には沢山の国があり、長い間戦いは続いていましたが、ようやく一人の将軍が天下統一を果たし一国の君主として君臨しました。ようやく人々は戦乱の時代が終わった事に安堵したのです。
しかし彼は人々にとても理不尽で残酷な法を作りました。その法とは、性交渉についての取り締まり及び厳罰化。人々は自由にセックスを楽しむ事ができなくなってしまったのです』
「(おぉぅふ……開幕直後のナレーション内容が凄いな)」
『そして海外では長い間ずっと戦争が行われていた為、君主は戦火から逃れる為に外国との物流や交流も断ち切り、200年あまり鎖国を行っていました。人々の不満は高まり、再び争いが産まるのも当然の結果でした』
「上様、民達が無謀を起こしたとの伝達が」
「うむぅ……予想以上に早いな。臣下達も遊郭で花魁達を孕ませる事も無くなった故、後継者問題も落ち着く良い法策だと思ったのだが……。全く、民達は己の右手で我慢できぬものか」
「(いや、そんな事言ってるけど思いっきり上様フェ……されてるけど? 説得力皆無だけれど? というかナチュラルにAVみたいな事しないで!? いや、これ演技だよね? 何故生で実際にやるの!? まさか本番でもするの!? というか私普通に見てるけど、この世界に染まっちゃってる事に今初めて気付かされちゃって凄く複雑な気分なんですが!! 気づきなたくなかったよ、こんな事実!!!!)」
『不自由な生活を強いられた一部の人々は自由を求め、密かに国を出たのです。荒れる海を船で渡り、北の方角へ進みました。徐々に冷たくなる風を肌で感じ、分厚くなっていく雲を見上げて。長い船の旅の途中、人々は大海原を進む事に春になったというのに骨の髄まで凍えるような風を感じました。
人々は寒さを凌ぐ為に身を寄せ合い、国を出た事により得た自由で目的地に着くまで体を重ねました』
「ん゙ぉッ♡ほぉ゙ッ♡♡ お゙ッ♡♡しゅごいぃッ♡♡♡リューくんのよりしゅごいッ♡♡♡デカチンポしゅごいのぉッ♡♡♡」
「このまま種付けして俺のガキ孕ませてやるよ♡おらイけッ♡♡」
(どちゅんッ♡♡♡)
「お゙ッ♡♡♡……そ、それは、あぁッ♡♡らめぇッ♡りゃめなのぉッ♡♡お゙ぉッ♡♡♡ほぉッ♡♡おほぉ゙ッ♡♡♡イグッ♡♡イッ♡♡イグゥゥゥゥゥゥウウッ♡♡♡」
「……」
《ノエルは唐突なNTRシチュ公開生セックスに脳破壊され、乙女にあるまじき白目の状態になっている!》
『こうして人々がセックスを楽しむ中、舟は辿り着きました』
「(今の描写要る……?? え、なんだったの今のシーン、何の意味も無く脳破壊させられたんですけれど。テロ?? なにかの陰謀????)」
~数十分後~
「私は今ここに宣言する! 私は必ず、皆を導く皇帝へとなろう! 皆の者、私の元に着いてくるがいい!」
ノエルは演劇部が普段使っている、生徒達の教養を高める為に学園が外部から劇団を呼び寄せ劇を披露させるのを目的に作られたステージにて、演劇部の劇を見ていた。
イケメン後輩の演技は正しくエースに相応しい物であり、演じていたキャラクターは国の主だったが、まさに後輩はこの場の空気を全て掌握した支配者と言えた。ただ、ノエルの目には少しやりづらそうな、納得していない印象を受けていたが。
通しではなく途中までの劇が終わり、ノエルはぱちぱちと拍手を送っていた。そして何故か着いてきたレイゼル、そして気まぐれでやって来たニョッキはノエルの隣で演技が始まるなり鼻ちょうちんを生成しており、今もなお変わらず生み出していた。スヤァ……。
「どうだろうかノエル先輩」
「えっと……、私こういうちゃんとした舞台とか見た事なかったから、素人の月並みな感想しか出せないけれど……色々と、うん……凄かったよ。あの、だから私居なくても」
「それはダメなんだ!!」
王子様系女子の後輩はズイッとノエルに詰め寄り、肩を掴んだ。
「その顔立ちと人目を引く髪、そしてその目の色!! やはり先輩以外には考えられない!!」
「いや、それはウィッグとかカラコンでどうにかなると思うけど」
「ノルン役は、先輩以外に考えられない!!」
「いやそれ主役~~っ!!」
そう、演劇部が文武学祭で披露するのは、とある国の主でもある主役は主は主でも
「(もしかしてこの後輩、自分の想像してた声優さんと実際に声を当てる声優さんが違ってたら脳内が不満まみれでアニメを集中して見れない、又はそもそも見ない病を患ってるタイプの人間……!?)」
実は歴史物の中でも(あまりにも昔の事なので、もはや伝説のような扱いだが)ヒエリカの伝記は歴史好きの人々にはかなりの人気を博しており、演劇・歌劇では定番と言われる程だ。それ程までにノルンの生き様というのは多くの人々を魅了させ、今も尚魅せ続けている。そして今回の演劇は、他ではよくあるノルンの物語とは違い、史実に忠実に再現して演技するというコンセプトなのだ。
ならばノエル以上にベストな配役は無いだろう、何しろノルンの直系卑属なので。
「森の妖精の役は!?」
「良かった、引き受けてくれると思ったんだ! いや本当に良かった! 皆、ノエル先輩が引き受けてくれるそうだ!」
「いやいやいやいやいやいや!! 私何も言ってない!! とりあえずどんな感じか見に来ただけで、やるとは言ってない!!」
「ノエル演劇やんの……? じゃあそれは見よ~……」
すると起きたのか寝ぼけながらも、うとうとしながらノエルに聞くレイゼル。思わぬ伏兵にノエルの表情は「そうだコイツが居たんだった!!」というふうになった。
「私達演劇部全員がノエル先輩の協力に感謝するよ!」
「やらないから!!」
「やんねーの……?」
しょんもりした無駄に整っている顔とぺたーんと倒れたイマジナリー犬耳がノエルには見えた気がした。
「ぐっ!! ……分かったから、分かったからそのしょんもりした顔はやめて。……はぁ、仕方ないからわざわざ時間を割いて参加してあげるよ!! 本当に感謝して!! 私に!!」
「良かった! 本当にありがとうノエル先輩!」
ノエルは今更ながらに理解した、だからレイゼルまで一緒に見せたのかと。
ノエルとレイゼルが恋人関係なのは、学園中どころかヒエリカ以外の国では娯楽がセックスくらいしか無いこの国では、大きな娯楽のイベントである剣技・魔法大会を見ている国中、又は毎年海外から見に来る人々は皆知っているのだ。だから断られるのを考えて、レイゼルを使って説得しようとしたのだ。
「(うわぁぁぁぁあああ!! どうしよう引き受けちゃったぁぁぁぁぁぁあああ!!)」
レイゼルが寝ぼけてスリスリスリスリしてくる中、ノエルは「あぁ、トレーニング時間の計算とスケジュール調整しなきゃ……」と考えるのだった。ノエルはレイゼルの純粋に残念だったり寂しがっている小柴のようなしょんもり顔に弱い、そこを突かれたのが今回の敗因だ。何処かの誰かに似て、ノエルはなんだかんだ甘いのである。
こうしてノエルはイケメン後輩女子と演劇に出る事となった。ちなみに後輩の名前はシャーロットであり、なんとも可愛らしい。
「でも二つ条件を付けさせて。私はNTRシチュはNGだから、あのシーン消して!! あと途中にちょいちょい出てきた公開セックスシーンも全部無くして!! お願いだから!! じゃないと私は絶対に引き受けないから!! NTRは絶対に、私は許さない!!!! 絶対に、許さない!!!!!!」
こうしてすぐにNTRシチュはもちろん、AVかのような生の公開セックスシーンは無くなった。
~・~・~・~
「セリフ多いなぁ」
ノエルは寮室で台本を読み、自分のセリフの多さに泣きたくなった。もう既にセリフは覚えてはいたが、それらを全て演技しながら行うとなると難易度は格段に上がる。
「……うーん」
「ノエル、どーかした?」
「そう、レイゼルのせいでね」
「んへへぇ♡」
何故か喜び、くっついてこようとするレイゼルを放ってノエルは「違う」と言いながらベッドに横になり、渡された台本と図書室で借りた初代皇帝について書かれた歴史書をじっと交互に見つめていた。
「何が?」
「セリフ、何となーく合ってない気がして」
ノエルは今日見た演技を思い出しながらノエルは自分の感じた事を言う。
「初代皇帝ってこんなに仰々しい言い方、しない気がするんだよね……だって元々は普通の人だった訳だし」
何故ノエルが歴史書を見ているのか。それは、演劇のコンセプトが忠実に忠実、だからだ。それでノエルは初代皇帝の人物像をより確実に完璧に再現する為、知ろうとしていたのだ。
「ふーん」
「こう、普通の人が考えるような、国のトップ像とは違うと思う」
ノエルは初代皇帝の歴史書を見ながら「中々破天荒な逸話が載ってるし、この人」と、数々の逸話に、所々何故か苦笑いが出た。例えば、当時のフェリラの王から届いた「シバかれたくなかったらさっさとそのドラゴン寄越さねぇか」という手紙を即刻燃やして無視し、再度送られた手紙も再び無視して寝ていたら、兵士達が送り込まれたり。
その際に全員殺すのではなく戦闘不能にして捕虜にした挙句、ついでとばかりに捕虜全員をドM化させていたが。他にも様々な逸話があり、初代皇帝は仕事の内容上で国から離れるのはとても難しい状況下だったが、多くは無いものの国外を出た事がある。まだまだできたばかりの、国とすら世界ではあまり認められていない頃のヒエリカの代表として、招待されたので仕方なく。
そして某隣国のパーティに参加した時には、当時の王族が飼っていた番犬や警戒心の高い猫、遠い国のコレディアでは猛獣のトラなどが。外で行われた王族の結婚式、幸せや新しい門出としての象徴として飛ぶ筈の鳩が。国一番で気性が荒い馬が。
何故かもれなく初代皇帝に集まり、犬や猫にトラが自ら腹を見せては飼い主がジェラシーを感じる程の媚びた様子を見せ、鳴らした鐘の音と同時にここぞとばかりに離した鳩は初代皇帝に集まり、クルッポークルッポーと空高く飛ばずに地面を闊歩し、交流として乗馬をしての狩りをする際、わざと気性が荒く近づくだけで蹴ろうとする馬に乗せようとしたのに、何故かその馬を懐かせた上で乗りこなしたり。
他にも勘で他国からの侵略を察知し、敵軍を壊滅させたり。
フェリラが運営する大きなカジノができた時、恥をかかせる目的で招待され、たったコイン一枚でフェリラから大量に金を巻き上げ一日でカジノを閉店させ、もう二度と現皇帝含む皇族を末代までカジノに入れないと当時の公言させたり。
いつもの勘でノエルはノルンというキャラクターイメージを当てて、想像していく。
「なんというか、あえて余裕そうに堂々と振舞って弱い所を周りに見せないようにしてる、親しみやすくて色んな人の視線を全部集めてる人……って感じかな。一言で言うと、凄くカリスマ性のある人。威厳とか風格とかで人を従わせてる訳じゃなくて、人が自然と着いて行きたくなるような……そんな気がする」
「まー、ノエルがそう思うならそうなんじゃね?」
「適当」
なんとも手抜きな感想を言うレイゼルに、ノエルはお仕置として頬をモチモチ、ぐにぐにプニプニしてやった。
「……それにしても、何もしてないのにどうしてこんなにスベスベなの? 普通に羨ましい」
「ちゃんと毎日ノエルとセックスして風呂入ってるから……?」
「むしろ普通はホルモンの関係で肌が荒れる筈なんだけど」
「俺が勇者だから……??」
「じゃあ勇者補正って事にしておくよ」
そう言い、ノエルは別の歴史書に書かれていた初代皇帝の晩年。初代皇帝が残した、約1万ページに渡る誰かへ宛てた文書の1ページ目を開いた。するとそこには目次が書かれており、何故かそこには○月○日のN・H・Vへ。と沢山の項目が書かれていた。そのうちの一つを見た。その項目の中に、5月8日のN・Vへ。と書かれた項目があった。
「(あ、私の誕生日だ)」
そう思い、ただ何となく開いたページ、しかしそのページに、ノエルは釘付けになった。
『遠い未来のN・V へ。
この本を貴女が読むのは何度目になるんだろう。今はまだ分からないかもしれない、貴女の力やここに書かれていることがどういう事でどういう物かを。
そしてその力がどれ程、残酷か。決してその痛みは誰にも理解されない上、選べもしない。けれど貴女にはその苦痛を貴女自身よりも、誰よりも早く気がついた人が居る。その人は貴女の為に言わない事も多い、けれどそれは貴女を愛しているからだ。
きっと貴女もそれを分かっている、信じている。だからどうか貴女は自分の人生を歩いて欲しい。その道がどんなに苦しく、どこまでも茨で覆い茂っていたとしても。
あぁ、それと劇頑張ってね。世界一有名で偉大な僕の役』
ノエルは最後の一文を読んだ瞬間、思い切り急いで本を閉じた。
「え、え、え??? 何今の待って怖い……」
「どーかした?」
「この本読んだら分かるよ……」
「んー?」
レイゼルはノエルから本を受け取り、目次を見てページを開き読んでみる。
「すげー……」
そして次にレイゼルがめくったのは3月18日L・Hへというページだ。
『死ね』
どシンプルで直球な罵倒であった。しかもクソデカ文字で書かれている……とても懐かしい文字で。
「やばぁ……。ってあれ、これ日本語じゃね?」
「本当だ」
今まで言語の事について説明する事は無かったが、これは一応異世界転生なので、地球で使われていた言語とは全く違う。いちいち説明する必要を作者は感じなかったので、説明しなかったとも言うが。もちろん文字も違う為、この世界に漢字は当然の事ながらひらがなカタカナアルファベット数字、ギリシャ文字にアラビア文字、楔文字、キリル文字……などなど。それらはこの世界には無い。では何故頭文字をアルファベットで表記したのか? 分かりやすくする為である。
「初代皇帝、元日本人説が浮上したなー」
「……だからヒエリカって日本っぽいのかな」
まぁ初代どころか歴代皇帝と皇族達はどういう訳か全員元日本人なのだが。それを露とも知らず、ノエルはまた別の本を持ち、読み始めた。
「ノエルぅ〜、セックスしよ? なーなー」
「しない」
まぁ結局シたのだが。そして次の日、ノエルは放課後に演劇部の部室に赴き、王子様系女子の後輩ことシャーロットに会いに行った。何故か着いてきたレイゼルも一緒に。
「ノエル先輩! いつ見てもとても美しい、昨日よりもずっと輝かんばかりだ! それにしてもまさかノエル先輩が昨日の今日で早速練習に向き合ってくれるとは……感激のあまり、私は──」
「来て早々なんだけれどもちょっと相談したい事があって」
出会い頭にキザったらしい長ーいセリフを受け、途中でボタンをポチポチ押すかのようにノエルはシャーロットのセリフを遮る。レイゼルは隣で「俺のノエルを口説くなっ!!」と、ガルガルしているが。
「なんという事だ! ノエル先輩が私に相談とは! なんと光栄な事だろう、私でよければいくらでも聞きましょうとも!」
「あ、うん……えっと、ちょっとセリフをちょっと変えたくて。具体的に言うと、キャラクターの性格変更なんだけれども……いいかな? もちろん皆の台詞は変わらないように考えてみたから──」
「申し訳ないが、それは無理なんです。他のことならば私もノエル先輩の為に力を尽くしましょう!」
ハッキリとそう言ったシャーロットにノエルは「まぁ、今更変えるのも難しいか」と思い、とりあえず訳を聞く。
「そうかな、難しい事じゃないと思うけれど……」
「そういう事じゃないんです。昨日、私がノエル先輩にノルン役をオファーしたのは、演技の為だと言いましたね」
「そうだね。……ま、まさか」
ここでノエルは察した。この後輩、かなりの曲者なのでは……と。まぁ初めて会った時からそうなのだが。シャーロットは一度こうだと決めたキャラクターの性格や外見すら解釈違いが起きると、演技ができなくなってしまうデメリットを持っていたのだ。
「(色んな二次創作に触れて自己流設定やら妄想をやり過ぎて、もはや原作キャラとは似ても似つかない別人にイメージを昇華させてるタイプの人だ……!!)」
ノエルは素直にめんどくせぇなコイツと思った。しかしノエルもノエルで、原作厨であった。いや、ノエルは二次創作は全然大丈夫なのだが、そういう意味ではなく……今回扱うのは歴史モノなのである。
しかも今回の演劇はなんと、既に広告に出してある。そう、演劇にはシークレットゲストが主役として出るという事と、「史実に忠実な内容だ」という事を。ならばリスペクトを持ってノエルが自分で感じたノルンのイメージ像をそのまま演技で表現したかったのだ。
「い、いや、でもそのノルンってよくある演劇用にキャラクターを改変して演劇でやったらとても有名になって定番化したノルンのイメージプラスシャーロットちゃんのイメージであって、歴史書とかに書かれてる人物像とは違うって言うか……(あと私の勘とも)」
このままだと、分かる観客には「全然ちげぇじゃねぇか」と言われ、大炎上してしまう。ノエルは慌てて説得を続けた。
「いくら自分のイメージがあっても、完璧な劇を目指すなら妥協しないと。特に今回はもう、史実に忠実に再現してるって世間に言っちゃってるし……。今回私の事をオファーしたのもそうだけれど、もうちょっと──」
「……ノエル先輩も、他のみんなみたいな事言うんですね」
その言葉はまるで、ノエル先輩も分かってくれないのか。と言いたげであり、それを聞いたノエルは「はぁ??」と、思わず言ってしまっていた。
「いや、当たり前だと思うけど。演劇とかグループでやるものでしょ? なら当たり前。演劇じゃなくて、ただの歌で一人で歌うとかなら自分の理想にこだわってもいいと思う。舞台の準備とか衣装とか。でも演劇で、史実に忠実に再現してるなら話は違くない?
自分にとっての完璧だけにこだわってない? みんなにとっての完璧と観客にとっての完璧も考えてないんじゃない? まさか配役とかも勝手にキャスティングして自分だけ気持ちよく演技してないよね。それただの自慰行為と同じだから」
「ノエル、最後のもう1回言って。俺が寝てるノエルを襲ってる途中で起きた時に」
《レイゼルは3333333のダメージを受けた!》
するとシャーロットは俯いて震えた小さい声で言った。
「……本当は、分かってるんだ。でも、できないんだ」
「(もしかして本人も本人でそのデメリットに困ってるのかな……)」
ノエルは少し考えた後、途中で良い案を思い付いた。
「よし、じゃあ次の休日、空いてる?」
「空いて、ますけど……」
「城下町の噴水広場に10時集合でいい?」
「は、はい……」
「え、何?? 俺今目の前で浮気されてる?? ノエル????」
ノエルはレイゼルからの湿度が高いうざい視線を無視し、とりあえずはシャーロットの理想とするノルンのキャラクター像のまま演技したが──。
「(やっぱり忠実、ではないなぁ……)」
と、心の中では思うのだった。
という訳でノエルさん、演劇やる事になってしまいました。今回は特にオマケは考えてないので、ヴェリカ家のペット達の設定でもここに書いとこ。
エル
種族 魔獣(ミヌエットっぽい)
家で飼われて数ヶ月した頃、人よりもデカい猫になる。今は薬で小さくなっており、子猫サイズ。どう見ても普通の猫とはだいぶ違う。エル自身は「パパとママ達、なんか日に日に小さくなってる気がする」と、気づいていなかった。そんなエルの中身は地雷系メンヘラJKなのですぐ病むしかまちょするし、結構理不尽。忙しいからって理由で相手にしなくても、相手されなかった理由が分かってる癖にすぐ被害者ヅラしてヘラるのでめんどくさい。しかしちゅーるを出されると普通の猫の思考になり、どんなに怒っていても機嫌を取り戻す。好みの味はささみ。皇族達はエルを「大きくても、それでもしっぽの先端以外も家に入れるんだから小さい」と思っている。魔獣なのでとっても長生きする。ノルトにはペットの大きさという感覚がクルミによってあまりにもズレていた為、ちょっと大きくなりすぎじゃないかしら?と妻に言われるまで、そういう大型猫に成長する品種だと思われていた。
ロロ
種族 日本スピッツ
走るのと散歩とご飯が好きな、典型的な犬。自分は王(であるボスのノルト)から受けた使命で変態という名の無礼者からプリンセス(ノエル)を守る、ナイトだと思っている。ただの犬なので、寿命は短い。時々エルに寝床を占領される。三度の飯よりさんぽ。ボスにはいくらでも散歩に付き合って貰い、ノエルには沢山ボールで遊んでもらう。どれくらいで満足するのかノルトが朝から少し休憩挟んで散歩(検証)した結果、夜になってようやくロロは満足する事が判明。ロロは小さいが体力が無尽蔵。その超ロングお散歩コースの日、ロロは爆睡した。スヤァ……。
あ、やっぱ思いついたわ。
《朗報 文武学祭でノエル様がミュージカルに出ます》
イッチ
当然見に行きますよね?
名無しの帝国民2
は?行くに決まってるが??
名無しの帝国民3
ウッ、ウワアァァァァァアァァァアアアアアアッ!!ウワァァアァァァアァァアアアアアンッ!!見たかったァァァァァアアアア!!!!!
名無しの帝国民4
3«« 仕事、なんだな……。
名無しの帝国民5
3««ほら涙拭けよ( ・´ー・`)っ□
6 名無しの帝国民
じゃ、ワイは彼女と一緒に見てくるんでWww
7 名無しの帝国民
6««は?殺す
8 名無しの帝国民
6«« は?殺す
9 名無しの帝国民
6«« は?殺す
10 名無しの帝国民
あれ、お前確か前にアーノルト様のスレで彼女居るって虚言バレしてた奴だろ。
~数分後~
11 名無しの帝国民
逃げたな