チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
えー、めちゃくちゃ遅くなり、申し訳ない……マジで難産&クソ長長文になってしまったが故に……。そして我氏、つい最近(25日)にSwi○ch2を手に入れた故……もっと投稿頻度が落ちる。
これがボーナスパワーッ!!なんて強い!!
あと挿絵の色塗りも完成してない……とりあえず、後々色塗りが完成したのを出す。ただまぁ、エアにライダってるから更に遅くなるだろうけども……が、頑張るよ。うん……。さっさと本編書かないとなのに……ゲームをする手を止められないッ!!
あ、そういえば、今月の26日がちゅぷ氏の誕生日でして。その日はおまけのメガネも一緒に、新宿のめちゃデカ猫カフェでエンジョイしてきました。長毛猫比率が高くて、とてもちあわせでした。本物のメインクーン(真っ白)見てきたけど、顔がちっちゃいライオンみたいでイケメンですた……よき。
猫ちゃん貯金、頑張って貯めなきゃ……。あとママ上に借金してる学費を早く返して、なんとか一人暮らしして猫ちゃんを飼うんや……。個人的にモフモフなパステル長毛三毛とか飼ってみたいね……。
帰りがいつも遅いし、一匹だけだと寂しいだろうから、二匹飼えるとこがいいな……その為にお金貯めなきゃ。
あ、次回は本編の予定です。執筆速度的に来年の1月の半ばから2月あたりに投稿されると予想し、今のうちに言っておきます。
あけ(てないが)おめ、らい(年も)よろ。
「美味しい!」
ティアラはかぼちゃの入れ物にいっぱいに詰められた学校で貰ったお菓子を貪り食い、ヘレンの目を点にさせていた。何故ならティアラは大人66人以上の屋台の食べ物を食べ歩き、その上でお菓子を食べているからだ。一体食べ物は何処に消えたのか。体格を考えると胃袋が破裂しそうな程の量を食べているが、腹回りが大きく膨れる事もなく食べ続けている。
なんなら、目に付いた屋台の食べ物を先程から5つ程頼んでまだ食べている始末。思い返すとノエルもノルトも常人の3倍以上は食べていたが、流石にそこまで食べてはいなかった。
ここまで食べられるとなると、もはや人間を辞めている。……まぁそもそも人間ではないのだが。
「でもお兄様、ズッ友が居ない……」
「ティアラ、これで正解だ。これでいい」
「……お兄の場合、これがいいの間違い」
アルダは何故かノエルとノイルの間に挟まって両腕に白薔薇を二輪纏っており、無表情ながらもめちゃくちゃ喜んでいた。何せ、うちの子とのデートなので。ノエルとノイルは困惑でしかないが。その様子を見ていたヘレンは「顔が良いッ! 親戚かしら!?」となりながら、Gペンを走らせる。
「え、えっと……神様?」
「なんだ、聞きたいことがあれば俺が知る限りの事全てを答えよう。ただの人間には知り得ないこの世界や他の世界、禁忌、
なんだかヤバそうな気配を感じ、ノエルは頭をブンブンと横に振る。
「(この神様、言ってる事と思考が邪神だ……絶対この後「嫌いな存在を消しても構わない」とか言うつもりだった……)」
「あぁ、俺の本質は
心を読まれている事にノエルは更にビビり散らかしながら、過保護ってレベルじゃねぇ神に頭を撫でられる。
「本当はお前達に、同種を殺せない制約を与えさせてしまうつもりは無かったんだが……吸血鬼の血と力を得るにあたっては仕方が無い。母上が作った呪いだからな、いくらこの俺でもそれは解除できなかった。だからもし、本当に消えて欲しい存在があれば俺に言ってくれ」
ノエルは頭にアルミホイルでも巻いた方がいいのだろうかと思いながら「結構です」とハッキリ断った。この神なら世界征服したいとだとか世界を破滅させたいという願いも叶えそうなので。
するとノイルは何でも答えると言ったアルダに一つ聞いた。
「〘……ずっと気になっていた事がある。何故僕の声に衝撃波を産むようにしたのか……神様が僕に与えたんだろう、その力を。その理由が知りたい〙」
ノイルの力は産まれた時からあった物であり、その力はアルダの加護によって得た能力だ。いくらノイルが喋らないという事に昔から不本意ながら
何故、
「お前が初めて命を救い、自身の
アルダは浮きながらノイルの頭を撫でる。
「(そうだったんだな……)」
「だが、やはり不便だっただろうか? 別に言葉を交わす方法を取らずとも、意思疎通ができる方法があるとはいえ……。今からでも制御できる程度の力にする事もできるが」
アルダはそう言うとノイルは頭を振った。
「〘……いや、いい。僕が2時間以上喋ると大勢のリスナーが死ぬらしいからな、それにターキンを持ち歩く口実が無くなってしまう〙」
そう言うと、ターキンという名前が付けられていたらしい、愛嬌の塊であるぜっきょーチキンを「プピ」と鳴らせた。
「そうか、ならこのままにしておこう」
アルダはノイルの意思を尊重し、撫で続ける。やはり俺の子は可愛い、親バカヤンデレ神はそう思いながら心の中でニッコリした。するとノイルは手を離して離れる。
「〘もうそろそろ発表の時間だ、僕はもう会場に行かなくてはならない。とても名残惜しいが……〙」
「そっか、じゃあノイ兄の番になったら見に行くよ」
ノイルはいつものようにノエルを抱き締めると、魔法で転移し発表会場に向かった。するとティアラは持っていた食べ物を全て食べ終えたので、ノエルはそろそろ次のアトラクションの提案をした。
「ご飯食べ終わったし、次は何処行こうか? まだ他のアトラクションやってないよね」
「なら妾はあれに乗りたいのじゃ!」
するとティアラはビシッ! という効果音が出そうな指差しをして、目をキラキラさせながらそう言った。指を指したのは、コップの形をした乗り物……。
「ティーカップに乗りたいの?」
「乗る!」
「じゃあ一緒に乗りましょうか~♡」
ヘレンは目を輝かせたやっぱりかわゆいのじゃ系幼女にメロメロ状態になり、普通に手を握って一緒にティーカップに向かった。何故かティアラは歩かずにふわふわと浮いている事実には心の中でツッコミを入れながら。まさかその小さなおてては、大体の物ならちょっと強く握るだけで粉砕できるほどの力を持っているとは知らずに握っている。
「死神くんは? 何処か行きたい所とか無い?」
「黒血に染まりし彼岸の者に、運命を紡ぎを委ねるのも悪くはない……そう考えていた所だ」
なんか無駄にポーズをキメて言うアグネスにノエルは口の端から血が垂れてきたのを感じ、ハンカチで口元を拭った。
「(今まで空気だったのに気を使って遠慮する辺り、死神くん我慢強いんだよね……肋骨折れるくらい痛いけど)」
普段のレイゼルへの対応が見に染み付いてしまっているノエルは、なんだか普通とは違う感想を抱きながらも、一緒にティーカップに向かう。
「それで、何人で乗る?」
ノエルは見回して、7人になってしまい割り切れない人数に困る。とりあえず4と3なのは確定だが、問題はどう分けるかだ。あの柴犬達が居ないだけ全然マシではあるものの、いきなり初対面と一緒なのはどうなのか。
この場で最も良い分け方は当然、3はダサT、厨二病、オタ王女の犬共を除いたイツメンだが、アルダはノエルにくっついて離れる気配が無い。俺と乗るのは至極当たり前の事だと言わんばかりである。
「……じゃあ一緒に乗りますか」
「あぁ当然だ、他に乗る相手も居ないしな」
「(まぁ貴方がこの世界からBANして亜空間に追放しましたからね、その相手は)」
「何の話だ……?」
絶対に自分の意思を曲げない事を察したノエルは、ワガママモード中のアルダと一緒に乗る事になってしまった。何故か二人で。結局2・2・3の組み合わせになり、ノエルとアルダ、レアとアリス、ヘレンとアグネスとティアラという感じで乗る事になった。一体何故なのか。
ティーカップに全員が乗り込むと、カップはくるくると回り始める。
「……えっと、神様は酔ったりとかします?」
「人間と違って三半規管が乱れる事は生涯無い、いくらでも回してくれ」
「そ、そうなんですか……」
そう返事したノエルは至近距離で隣からじっと見つめてくるアルダの視線がなんだかこそばゆく感じて、他のメンバーの方に顔を向けた。
「これを回すと……ほら、回転が速くなるんですよ。やってみますか?」
「おぉ! ほんとじゃ! 速くなった! 妾も! 妾も回したい!!」
「黒血ノ者の力……この血濡れの死神が見定めてや──」
3人チームのメンバーであるティアラが自分もとハンドルを持ち、捻った瞬間。グインッと、カップが急激に回転スピードが速くなった。普通ではありえない速度と加速で回転しており、一般的な女の子のフィジカルをしたヘレンは遠心力で吹っ飛ばされそうになっていた。もはや災害である。
「きゃ~~~~っ!! ……ふ、おぇぇぇぇ」
「あははっ! はや~い! このまま一番速く回転させちゃお~!」
「っ!!」
「ティアラ、やめなさい! 人間が危ないでしょう!?」
この回転の中、何とか耐えきれていたアグネスは、自分の体が吹っ飛ばないようにヘレンの隣に移動すると、力が抜けて吹っ飛ばされそうになっていたヘレンを腕で引き寄せ、足を開き、広く場所を取ってしっかりと吹っ飛ばされないよう踏ん張った。周りから見たら──いや、今はあまりよく見えないが、抱きしめているように見える。アグネス本人はかなり必死だが。
「えっ、えッ!? ティーカップってこんなに回転するっけ!? ちょっ、2人とも大丈夫!? って、ヘレンちゃん若干ゲロりながら気絶してない!? 全然大丈夫じゃないよこれ!!」
「結果的には平気だろう、ケガもなく終わる可能性が高いからな」
「(いやそういう事じゃないでしょ神様!!)」
ノエルは助けに行こうとするが、隣の神が手を掴んで離そうとしない。アルダの悪い癖であり、基本的にどうでもいい相手には確率で助けるか否か、トラブルが起きる前にもどの程度の酷さか、可能性の確率で身の置き方、関わるか否かを決めてしまう。
いつケガをしてもおかしくはないこの状況下で、例え頭を打ち脳に重大なダメージが入ったとしても、結果的に生きている可能性が大きければ助ける事は無いのだ。
アルダは善神などではなく、気が向いたら人間を生かし気に入っている存在にだけ過保護で、守る対象に害のある存在は無意識に殺す魔神なので。そんなアルダはじーーーーっとノエルを見つめて、一言。
「……やはりよく似ているな」
「誰とですか!?」
ノエルは父親の事かと一瞬考えたが勘で違うと気づいた為、すぐに誰の事だろうかと再び考えようとする。しかしここで頭がほわほわーんとするフィルター機能がオンになってしまい、ノエルは考えるのをやめた。
「……あぁ、そうだったな。危うくノルトの催眠の魔法が解けてしまう所だった……いいかノエル、それ以上は
アルダはノエルの顔を自分の方に向け、絶対に自分の顔から反らせないようにすると、もう一度命令を与えた。
「さっき俺が言った言葉は
一瞬アルダの瞳孔は大きく更に鋭くなり、アルダはノエルの目の瞳孔が自分と同じように少しの間だけ縦に鋭くなり元に戻るのを見ると、頭に手を乗せた。
「……いい子だ」
そして困惑するノエルを撫で回して「勘が良すぎるというのも、厄介なものだな」と、アルダは今は亡きノルンの事を思い出していた。本当にノエルはノルンにそっくりなので。
「いいか、その勘の鋭さは武器にもなるが、自らを蝕む猛毒にもなる。……気のつけようは無いが、気をつけろ。分かったか?」
「は、はい……?」
どういう意図で言っているのかは分からなかったが、とりあえずは自分の身を案じているのだろうと判断し、それからなんとか魔法で転移させ、2人を救出した。
「ティアラ!! 人間は弱い生き物なので、あれ程手加減しなさいと200年前に言ったでしょう!!」
「ごめんなさい……」
「兄様も!! 見ていないで止めてください!!」
「必要なかったならいいだろう」
救出し回転が終わった頃、ティアラはレアにこっぴどく怒られていた。その途中でアリスは、日本のテーマパークでよく見るスタッフの水で書かれたラクガキをしゃがんでじっとマイペースに見ていた。……が、途中でレアはふと周りを見て表情を変える。
「……どういう事ですか、これは」
「お姉様?」
気づいていないティアラは頭にハテナマークを浮かべると、しゃがんでいたアリスは立つと「レアもやっと気づいた……」と、首に下げた懐中時計を開いてレアに見せた。
「ヘレンちゃん、大丈夫!?」
「……」
「あ、その……えと、どうする?」
アグネスは気絶したヘレンを抱えたまま、思わず素になって困っていると、ノエルはなんとか起こす方法を考え始める。今の状態だと、もしヘレンを狙う変質者が現れたら一番危険だからだ。
「とりあえず、何処かに寝かせておきたいけれど、思いつく場所が保健室しかない……。でもそんなの絶対に危ない」
この世界的に考えて、絶対保健室でピーーッ!! な事をされる。ノエルはそう考えて、一瞬自分の家のベッドに寝かせようかと考えたが……。助ける為であろうとも結果的には王女の拉致なのでボツ。一体どうすれば──。
「きゅぁん」
ノエルが考えていると、足元に謎の生き物が居た。黒いモフモフした、二本の鳥類のような足をしている。それを見て、ノエルの勘がけたたましい警告音のように反応した。
「……何、このモフモフ。ヤバい」
「初めて見る生命体だ……」
ノエルとアグネスはじっと謎の生き物を見ており、謎の生命体はアルダの方をじっと見てから、アグネスの方を見ていた。一方レアに怒られていたティアラも気づいたのか、そのモフいキュートな生き物に視線を向ける。
「なにこれ……私知らない」
「なんでしょう、あの生き物。不思議な生態をしていますね」
「……見た事ない、可愛い。でも変」
3柱の神が初めて見る生き物に気になると、近づこうとして謎の生き物にようやく視線を向けたアルダが急いで止めた。
「全員、そいつから離れろ。距離を置け、今すぐに」
「兄様?」
「モフりたい……」
「絶対に触るな、背も見せるな」
全員がアルダの言う通りに従い、特にノエルはすぐに駆け出したいのを我慢しながらゆっくりと、そして一番距離を持つ。
「……死神くん、ヘレンちゃんを絶対に離したら駄目だよ。何がなんでもちょっとでもヘレンちゃんが危ないと思ったら逃げて」
「あ、あぁ……?」
アグネスは気絶したヘレンをノエルに交代すると、アルダは「流石俺の子だ、よく分かっている」と言ってゆっくりと謎の生き物に近づく。
「きゅぅん」
「ふん……貴様、
そしてアルダは気絶したヘレンに視線を向けると、それから服の下に肌身離さず持っているネックレスに付けられた瓶を見せる。
「……なら、この魂はさぞ美味い馳走に見える筈だ」
その瞬間、謎の生き物は腹まで裂けた口を大きく開け、涎を滝のように垂らしながらアルダの持っている瓶の中に入った、眩いばかりに輝く魂に飛びかかる。
「……だがこの魂は害獣ごときにくれてやるようなものではない、見る事すらも烏滸がましい。よって──」
魂を喰い砕こうとする直前、アルダは魔法で自分の軍刀のような刀を出し、抜刀した。
「ギッ」
「貴様には死を与えよう」
一瞬で斬り落とされた生き物の体が真っ二つになってボトリと落ちた。既にアルダは音もなく納刀した後である。
「トオン」
そして確実に殺す為、アルダは翠を帯びた黒い炎で燃やし尽くす。死体が灰塵となり、燃えカスとなった跡を見て、辺りを見渡す。本来であれば、燃えた跡は必ず残る。しかし地面は高音で溶けた訳でも、焦げたような跡ができた訳でもなかった。 何より、魂だけがその場に残る筈だったというのに、まるで消えてしまっていた。それどころか、学校で突然炎が出たら大騒ぎになったというのにも関わらず、辺りは冷えきったように静かだ。
それもその筈、人間どころか他の生き物すらも周りに存在していなかったのだから。
「……ふむ、これは
「ここら一帯だけ空間が切り取られ、出口の無い複製された亜空間のようになっていますね。しかも特定の生物、又は魂とその器である肉体だけが入れるという条件付きで。外は何事も無く、人間がごった返していると思いますよ。おそらく、外からは私達が突然消えたように見えたでしょうね。
外に出られないか試してみてはいますが……。未知の力によって閉じ込められているせいで、突破口が分かりません。今の所は、ですが」
「しかも時間の流れもずっと遅い……完全に時間を支配してる。何あのモフモフ、小さいのにレアと私とティアラみたいな能力持ってて……ちょっとやだ。それに魔力も感じない……見るからに聖力でもない」
要するに、この場はあの正体不明なモフモフの狩場となったのである。
「魔力でも聖力でもなく、これ程の力を小動物ごときが行使できるという事は、多少は知能がある筈だ。だというのに、俺達を1人ずつではなく全員一箇所に集めた。それは俺達を侮っている上に喰う魂胆だという事に他ならない。……俺達を、見くびっているな」
その瞬間、辺りにアルダの殺気が満ち溢れる。皇族達は皆、プライドが高い。元来の性格による者も居るが、性格は因子と加護の影響を多大に受けている。その
「……おそらく、俺達が一箇所に集まった事が原因だろう。ここには、神の魂と変質者の人間が居る」
「えッ!?」
アルダがそう言い、ノエルは何故か常に装備している鞭とブローチ状態の魔法剣をスッ……と取り出す。
「もしかしてヘレンちゃんを狙う例の変態……!? どうしよう、ついでに半殺しにするか、あのモフモフのエサにするしか……!!」
「いやそういう意味では無い、魂が変質した人間の事だ」
「あ、そういう……(ゲイル先生から魔物の事を教えて貰ってて、ちょっと思ってたけれど……紛らわしい意味の言葉とか単語が多いな)」
ノエルはポケット(一体どこにあるのかと聞いてはいけないぞ)に鞭をしまうと、魔法剣を剣の形態に変形させる。
「あの特定外来生物の本体は小賢しくも隠れている。先程の小動物の器には魂が無かった。おそらくクローンのように肉体を増やし、分身を作っているのだろう。この逃げ場のないフィールドに獲物を閉じ込め、分身を正確に操る。分身に魂を食わせた後、本体が取り込むといったところだろう。だが魂が見当たらないあたり、本体はここには無い……実に小賢しい」
「(……某エイリアンみたいだなぁ)」
ノエルの脳内にJ─E─N─○─V─Aが一瞬流れると、沢山の気配がこちらに近づいているのが分かった。
「来るぞ」
遠くからダダダダダッという音が聞こえてくると、あのモフモフが大勢走ってやって来るのが見えた。モフモフの大行進だ。
「かわいい……」
思わず誰かがそう言ったが、その瞬間に口をグパァッと開けてヨダレをボタボタと落しながらこちらへ猪突猛進してくる。
「キモぉいッ!!」
するとモフモフは止まると、うぞうぞと体が波打つように動き……そして犬や猫などに姿を変えた。
「いや、これならキモくないだろ的な思考で姿を変えないでくれません!? 結局口は変わってないからグロいしキモイから!!」
どうやらモフモフ、言葉は分かる程度に知能はあるが、その程度だったらしい。
「にゃあーん」
「わんわん」
「……にゃんことわんこになって戦意喪失させようとしてくるの、凄く不届き」
「うわ、小賢しッ!! あ、でも鳴き声は可愛い!! うちのエルとロロ方が圧倒的に可愛いけれど!!!!」
「小動物を手にかけるのは気が引けますが……もしここで仕留め損ねたら、私の使徒どころかこの世界の生き物全てが食われかねません。仕方ないですね……」
アリスは少し眉を不快そうに寄せると、嫌そうにしながらポケットから小さな丸い魔法陣が刻まれた手鏡を出すと、鏡は勝手に浮いたまま大きくなり、人が入れる程のサイズにまで巨大化する。鏡の中にハンマーが映っており、鏡に手を伸ばすと鏡の中に手が吸い込まれ、鏡の中のハンマーを掴んで引っ張り出すと鏡が粉々に砕けるのと同時にハンマーが鏡の中から現れた。
「……本物のにゃんこモフモフしたくなってきたから、頑張って倒す」
「(凄い謎技術だ……)」
「お、おぉ……!!」
ノエルは一体どういう原理なんだろうかと思い、アグちゃんの方は喜んでいた。そうそう、ファンタジーはこうでなくちゃ。厨二病のアグちゃんは大興奮していた。ちなみにこの武器を作ったのは、某ドスケベ過ぎるダイナマイトぼでぇーで、毎朝寝起きの所を永遠のショタ奴隷で正真正銘の勇者(調教済み)を襲い、100年単位でねっとりと子作り中のイタズラ好きなドSボク系女魔王様である。一体誰なんだ……。
「つまり妾の丁度良い腹ごなし要員って事じゃな? ふっふっふ……人間の童よ、しかと見るが良い! 妾の超・圧倒的パワーを!」
とか言うティアラも、まだ童で幼女なのだが。
するとティアラの胸から魂のようなものが抜き出て、一気に燃え上がる。その炎の周りに電流のようなものが迸ると、ティアラが炎に手を伸ばす。炎に触れた瞬間燃え移り、一瞬にして火だるまになった。
炎が巻き起こると、魂は炎の周りをグルグルと回り、そして勢いよく炎の中に突っ込んだ。その瞬間炎が消えると同時にティアラが薙刀を持って現れる。
その様子を見てノエルとアグネスはレアの方を見る。……ちょっと期待した眼差しだ。その視線に気づいたレアは2人の方を不思議そうに見つめると、構えをとった。
「((殴るタイプか……))」
でもそれはそれで良いよね。ノエルはそう思っていると、ティアラが「おりゃーっ!!」と言いながら突っ込んでいき、そして盛大に転んだ。
「へぶっ」
「うわーーッ!? 大丈夫!? って危ない!!」
「久しぶりに武器を持ったから転んじゃった……」
すぐ近くにまで迫ったモフモフの前でティアラは和ロリの服に着いた汚れ部分に魔力を流して綺麗にすると、ティアラは薙刀を何故か横に構えて持つ。
「(……薙刀の事はさっぱり分からないけれど、これだけは分かる。絶対持ち方違う……)」
「斬○剣っ!」
「それ剣じゃなくて槍だから違ーう!! あ、いやでも薙刀って突くんじゃなくて薙ぎ斬る武器だから、刃の部分が付いてるし刀……?? でっ、でも! でも違う!!」
ティアラは横にブンッと薙刀を振ると、時間差でモフモフ達の胴体は足と胴がさよならし、キラキラなレインボーエフェクトが出てきそうな感じになった。表現はとても軽いが、実際は血の海だ。とてもグロい。リアルに表現してもいいのだが、作者があんまりグロいのはダメなのであえてしていないだけである。そう、あえて。
「ぅゎょぅι゛ょっょぃ……」
こんなにも強い幼女だが、ティアラの本領は魔法やら神としての能力にある為、まだまだ上手く使えない武器での戦闘というのはティアラにとって最大の舐めプである。
「どうじゃ見たか! むふん!」
すると1匹のモフモフが現れ、死体を食べ共食いをすると沢山の小さな卵を吐き出し、そこから新しいモフモフ達が産まれてきた。
「キッモ!!」
「これ生物の枠超えとるじゃろ!! エイリアンじゃ、エイリアン!!」
「ここの世界の人間の観念で言うと、私達も充分エイリアンなのですが……」
「……どっちもどっち」
一方その頃。
「チッ……潰しても際限なく湧いてくる、小バエごときが鬱陶しい……」
「ギャァッ!!」
ノルトは魔法剣、蒼き狩人の殲爪を振りモフモフ軍団を屠る。断面は稲妻に焼かれて焦げており、モフモフはいきなりステーキとなって転がった。そして炎魔法で完全に灰塵にする。
「"ふざけるなーーッ"!!」
そしてこちらはノイル。マスク無しで声を発しており、衝撃がノルトの方へ行かないよう、そして広範囲にまで届くように魔法で調整していた。どうやら相当苛立っており、鬱憤が溜まっている様子。
「"あの変態共がーーーーッ"!!」
モフモフはモロに衝撃を受けて外や中が潰れ、それから炎魔法によって火葬された。ノイルが何故こうなっているかというと、それは発表時の事に起こった。
ノイルは先にモフモフの遮断空間によって閉じ込められていたノエル達が来ない事に心の中でしょんもりしながらも、自分の作った発明を発表していた。
ノイルが作ったのは人工知能のついた、限りなく本物とそっくりなハムスターである。飼い主の言動や性格、生活習慣をカメラやマイクで記録する。自動的に飼い主に思考が似ていき、ひまわりの種……の代わりに魔石や魔法でできた水で動く。
ヒエリカでは寿命の短い生き物を飼うのには、国からの許可を貰い書類の提出をしなければいけない。なのでハムスターは激レアペット。なかなか生き物を飼うという事に対してハードルが高過ぎると感じた国民達は、ちみっこいモフモフに飢えに飢えていたが、お国柄ハムスターなどの短命なペットは到底手が出せない生き物であった。
もし死んでしまったら即刻撮影しながら火葬し、証拠としてデータを国に提出しなければならない。国民達は自ら、昨日まで生きていた家族を燃やさなければならないという事に絶望していた。
そんな時、国民達の嘆きにとても……それはもうとても哀れに思った可愛い生き物が好きなノイルが立ち上がった。
だったら半永久的に死なないハムちゃんを作っちゃえばいい、と……なんだか神のような視点で「飼い主が死ぬまでずっとこれからは一緒だからね……(病み)」プロジェクトを始動した。
そのプロジェクトを始動するにあたり、まずリアリティの追求が大事だった。ハムちゃんを作るならハムちゃんの事を知らなければならない。その為、ノイルはおもちという名前を付けた白いハムスターを数年前に飼う事にした。
ストレスにならないようとても小さなキャプチャーを時々ハムちゃんに取り付けて沢山のセンサーをケージに設置し、モーションのキャプチャー。そして後から見返せるように沢山のカメラを設置し、国民達も色んな角度でハムちゃんを見れるようにライブ配信した。
小さき命のモフモフに飢えていた国民達は、とても癒された。つぶらな瞳にキュートな丸いお尻とちっちゃい手足、毎日力強く滑車を回し、ご飯を口の中へ沢山詰め込むその姿……。すっかりノイルや国民達、保護者の方々である家族もハートを撃ち抜かれた。あまりにもデカ過ぎる上に尽きることのない愛情を注いでノイルはおもちを世話し、そして虹の橋を渡る姿を見送った。
こうしてノイルは世界初、そして世界一ハムスターに近いペットロボットを発明したのだ。おもちを元にノイルの過剰な愛によって商品化を目的とした第一号、試作品にしては気合いが入りすぎているゴールデンハムスターのきなこが完成した。
もちろんこのきなこもノイルが毎日欠かさず世話をしており、この発表の場はぶっちゃけアーティファクトの発表というより、うちの子のお披露目会みたいなつもりで来ていた。
そして出番になり、何故かノエル達が来ない事にしょんもりしながらも、きなこを出した。全面的に可愛さを押し出し、自前のイケボを聞かせ用意していた写真と動画を見せながら発表をしていると、何故か周りや観客席にVIP席から「お゙ッ♡♡♡」「俺男だけど抱かれてもいい」「耳が孕んじゃうのぉ♡♡♡」という気色悪い鳴き声が聞こえてきたが、無視して頑張って発表した。
それから質問タイムに入り、きなこについてどんな事を聞かれるだろうかとワクワクしながら待っていると、一斉に手を上げた。
『誕生日はいつですか!!』
『恋人居ますか!! 私とかどうでしょうか!?』
『好きなプレイと体位を教えてください!!』
明らかに関係無い質問ばかりであり、あたおかなフェリラの者共にノイルはちょっと……いや、かなりイラッとした。そして中でも極めつけなのが──。
『そのハムスターにおまんこは付いてますか!!』
「"きなこにふざけた事を言うあの猿共を僕は許さない"!! "絶対に殺してやるッ"!! "夢の中で"!!!!」
「(……理性的だな)」
ノルトはそう思いながらも、自分だったなら間違いなく拷問した上で肥料としてプレゼントしていただろうと考えていた。とても愛が重い。
「(それにしても数が多過ぎる。一体どこから湧いて出た? 魔力を感じ取れないのが厄介だ。だがそれよりも──)」
妻と子供達が居ない、この状況にノルトはとても強い不安感を覚えていた。ノルトがトイレに行った後、家族の元へ戻ろうとしたら既にこのフィールドに閉じ込められており、こうして離れ離れになっていた。そしてこのモフモフの軍勢に会い、ノルトの魔力を感じた同じフィールドに閉じ込められていたノイルと合流し戦っていた。
マリエッタは殺しが誰よりも上手いが、別に暗殺者ではないただの一般人(というのには語弊がありすぎるが、一応そう)だ。こういった大勢との戦いでは数の暴力に為す術なく殺られてしまうかもしれない。……たぶん。
「(ノエルなら間違いなく無事だろうが、ルトとエルマーはいくら俺に似て天才であろうとも、まだ魔法について何の訓練も受けていない幼児だ。もし俺と同じような状況になっていたなら間違いなく──)」
と、ここでノルトは今世の自分が幼かった頃の記憶を辿り、想像した。
「この小バエ共を一匹残らず燃き尽くす」
「!」
ノイルはすぐに
そして更に場面が切り替わり、一方心配されているが普通に大丈夫かもしれない妻と双子達。
「死ねぇぇぇぇぇえええ!!!!」
「うぉりゃぁぁぁあああ!!!!」
ルトは炎魔法でモフモフなエイリアンを燃やし、エルマーは風を起こしながら辺りに生えた乾燥している枯れ木を蹴り倒し、モフモフに投げつけた。枯れ木とはいえ、その重さはこのメンバーの体重を合わせても足りない。その木を投げ飛ばすという事は……やはりゴリラなのである。
「二人共凄いわ! 頑張って~♡」
そしてマリエッタは木を大量生産し、一瞬で枯らして魔法で水分を抜いた。その抜いた水分をモフモフ達にかけて蒸し焼きにしたり、マリエッタが草魔法を発動させて寄生させたり。これでもし周りの建物が燃えたら……と考えないのがこの3人のヤバい所である。もう最初から「うちの家じゃないからそんなもん知らねぇーーッ!!」とばかりに焼き尽くしていた。流石インテリ蛮族、最初から頭のネジが存在していない。
(皇族に生まれた時点でアルダの影響によりそういうマインドになってしまうのだが、マリエッタの場合は素で頭がイカれている。ヤバい)
たまたま壊れない空間だったので何とかなっているが、普通に考えてとんでもねぇ放火魔だ。
そして一方、謎空間の外側にて。
「あ゙ーーーーッ!! ノルちゃんとエマちゃんとノイきゅんとエルきゅんとルトきゅんとマーきゅん達がぁぁぁぁあああ!!!!」
「陛下、気をお鎮め下さい」
「これが落ち着いて居られるわけ無いでしょう!?
ヒエリカんとこの皇帝様は周章していた。更にその為現在不眠中である。
「陛下、心配なのは私も同じですが、居なくなる瞬間には私達の神が傍に居られました。無事に帰ってくると信じましょう」
「でも、でもぉ……心配なのよぉ~~~~!!!!」
セバスチャンはそう言いながらも自分でさえ生死共に居場所すら分からない事に内心当惑しており、まさに文字通り神頼みをするしかないというこの状況。
「せめて、あちら側から何か信号のようなものが送られてくれば、逆探知も可能なのですが……」
「のののの、のっ、狼煙を見つければいいのねっ?!」
「いつの時代ですか、せめて魔力信号とかでお願い致します」
セバスチャンが少し呆れながら言うと、ノエリアはハッとする。
「……そうよ、セバスチャンが分からないならあっちも分からないのよね?! ならこっちから魔力を発信させて居場所を教えればいいわ! きゃっ! あたしって天才!」
「いえ、それはもう行いました。なので手詰まりの状態でして」
「貴方それを早く言いなさいよ」
「聞かれませんでしたので」
しれっとした態度で言うセバスチャンに「貴方のそう言うところよくないと思うわあたし」とノエリアは言い、スマホを出すと家族のグループチャットのトーク画面に「全員今すぐ平原に集合!!」という文面を送り付けた。その様子を見たセバスチャンは「陛下、何をなさるおつもりですか?」と問うと、三日ぶりの自信に満ち溢れた表情を浮かべていた。目の下には濃い隈がついているが。
「セバスチャンにはできなくても、あたし達ならもしかしたら届くかもしれないでしょう?
セバスチャンはその言葉にかつての決して弱さを他人の前で見せず、自信に満ち溢れた表情を崩すことはなかった友を思い出した。
「……そうですね、では私も諦めません」
~・~・~・~
「数が、多過ぎるにも、ほどが、あるでしょ!!」
ノエルは
そのお陰でアルダの血の影響で肉体が生きたアーティファクトのようになっているノエルの体は、長時間剣を振り魔法を行使しても体力が削られるような事はない。流石、巨匠と呼ばれたジェームズの作品だ。ノエルの要望通り、いやらしい性能をしている。
「おりゃーっ!」
こちらはこちらで素のスペックが別次元な神が猛威を奮っている。ティアラは薙刀で輪切りにしており、ブンブンと振り回していた。
「……えい」
「はっ!」
アリスの方はハンマーでホームラン(ほとんど粉砕)しており、レアはモフモフ達を身一つでぶっ飛ばしている。
そしてアルダは吸血鬼の特性で宙に浮き、高い場所からモフモフの軍団を見下ろしていた。アルダの背後からいくつもの魔法陣が浮かび上がり、魔法陣から大量の銃火器などが稲妻を纏いながら現れる。最後に巨大な砲台が姿を表すと「すごい、ロマンの塊だ……」と、爆発・大砲・ランチャーなどが大好きなノエルさんは心の中でニッコリする。それに伴い表情も秒でニッコリした。
「
するとアルダは攻撃に備えて全員に防御系魔法をかける。どこまでも分厚く、絶対に破れることはない鉄壁の守りだ。そして氷魔法を防御魔法に覆い温度を調節することによって熱を遮断する。
『
アルダは手のひらの上に魔力を込めるとソフトボールくらいの宝玉のような限りなく黒に近い翠の魔石を作り出し、それを
するとデストロイヤーは魔力を一瞬にして吸収し、大きな魔力を変換させることによる黒い
『
「一度、これを使ってみたかったが……こういう場所でなければ箱庭が消えてしまうからな。この機会を作った事だけは褒めてやろう、外来生物共。この俺に消される事を光栄に思い、果てるといい。……
そう言った瞬間、デストロイヤーとその他銃火器から一斉砲火された。時間がほぼ止まっているかのごとく、ずっと遅くなったこの空間でなければ全てが破壊される程の爆発と光線がモフモフ達に浴びせられる。肉が爆発で粉々に吹き飛び、光線によって塵も残らず消えた。魔法障壁の外側では爆発によって巻き起こる熱風は、遠く離れた場所であっても真っ黒に焼く。
「やっぱり、爆発っていいよね……ロマンだよ。今私の目の前には夢が広がっている!」
「どう見ても地獄絵図にしか見えないぞ、ルシファー……」
爆弾魔なノエルはニッコリしているが、剣技・魔法大会で何度か爆弾魔のスイッチが入ったノエルによって過去に吹き飛ばされた事があるアグネスには笑えない発言であった。
「神様最高! 爆発万歳! 大好き!」
大興奮のノエルは思わずそう言うと、アルダは心の中で「俺の子が可愛すぎる」と思いながら瞬間移動してノエルを抱き締めた。頭もナデナデ。
「そうか、両想いだな」
「え、ちょ神様──」
すると口を大きく開けたのでノエルは勘で察知した瞬間にアルダが肩に噛み付いて、吸血をし始めた。魔力が足りないというわけではなく、ただのキュートアグレッション(高レベル)と何処かの誰かに向けてのマウントである。
「い゙っ!? ……あれ、思ったより痛くないな? というかむしろ……──あっ♡ま、待って、これダメなヤツだ!! 神様、ストップ!! それ以上吸われたら
(その原因と理由については、勇者、断捨離され拾われるという回に書いてあります)
「兄様、吸うのは後に──、……!!」
するとレアは空間が波打ち、外から外気の魔力が流れ込んでくるのを感じた。そして、その魔力の中に兄の使徒の魔力が混じっているのを感じ取っていた。
「アリス、私の周りだけ外と同じ時間の速度にしてください! 今の砲撃による魔力と衝撃でこの空間の制御が追いついていないようです、今なら……!」
「ん……
するとレアの周りにドームのような青を帯びた黒い膜の光が覆う。するとレアには周りがとても遅く、ほぼ止まっているかのように見えた。
「(……聞こえますか、セバスチャン)」
レアは唯一の使徒に念じるように心の中で話しかけると、途切れ途切れではあるが声が聞こえた。
「えぇ、お久──ぶりで──ね。たっ──今、私にも、その──が分かり──した」
どうやら声を直接こちらに飛ばしているようだ。レアはすぐにその魔力と座標などを感じ取ると、アリスに魔力の合図を送った。すると外側に居るアリスはすぐに反応して全員の時間を外と同じようにしていた。
「えっ、何!? 時間が止まってる!?」
「違う……周りが遅いだけ。今私達が元の時間で動けてるけど、それは今だけだから……早くしないと、また操れなくなる……」
「さぁ全員、私の体に触れてください! ここから脱出して、本体を直接叩きに行きます!」
「……全てが遅延したこの
「行くぞ」
「おー!」
「えっ……」
アグネスルーを華麗に決め込んだアルダはノエルにくっついたままそう言うと、その言葉を皮切りにレアは全員を連れてこの異質な空間から脱出──しようとした。
「「あっ」」
しかし転移する寸前で歪みが修復されてしまい、脱出は不可能となってしまった。時間の支配権も再び失われ、再びゆっくりになる。
「……予想以上に修復が早いですね」
「お兄、今のもう一回できる……?」
「無茶を言うな、砲台をよく見ろ」
そう言われ全員が砲台を見ると砲台はあまりの威力に火花を散らして自壊しており、嫌な予感がしたノエルは防御魔法で全員の身を守るとそれから爆発した。
「あ、危な……」
「あれは元々、一撃で敵を灰塵にする為の兵器だ。威力を上げ過ぎた結果、人間の想定より遥か上を行く兵器となってしまい、世界を消せる程の物になった。が、耐久性は見ての通りだ」
「じゃあ空間の端っこに魔力を直接ぶつけて、空間に穴を空けるのは……?」
「そうしたい所ですが、その結果が分かりません。一体何処に放り出されるかが不明瞭ですし、魔力の消耗も大きいです。先程のように脱出する方が安全ですね……なので今回は脱出は叶いませんでしたが、収穫はありました。帰り道は分かりましたし、もう一度この空間に外への隙間が少しでもできた瞬間に抜け出す事は可能です。あとはその隙間ができればいいんですが……」
ノエルは魔法を解くと、落ちてきたパーツがヘレンの頭にコツン、と当たる。
「痛っ、あっつ!!!! ……えっ、わ、私気を失って……!?」
「ルシファー、どうやら微睡みの姫君が起きたようだ」
「あっ、本当だ」
ノエルとアグネスは顔を覗き込むと、ヘレンは思わず顔の良い2人が近くで見つめられて再び鼻血を出して気絶しそうになった。ギリギリ耐えると、ヘレンはようやく自分が厨二病にお姫様抱っこ(文字通り)をされている事に気が付いた。
「こっ、これはどういう状況ですか!? な、何故私は
アグネスにヘレンは優しく下ろされると、焦げ臭いに鼻をつまむ。辺りを見てみると何かが焼けた跡があり、地面は全て黒ずんでいる。
「ちょっと色々あってね……簡潔に言うと、変な謎のキモカワ生命体によって作られた時間の流れがおかしい偽物空間に閉じ込められたというか……」
「な、何となく分かりました……?」
分かってないなこれ。ノエルはそう思いながら、これからどうするかを考えていた。
「もしこのまま出られなかったら、まず考えないといけないのは……とりあえず食べ物だよね。またさっきのモフモフが沢山現れたらずっと戦う事になって体力も消耗し続けるし……」
「ノ、ノエル様? 確かにそれは重要かもしれませんが、流石に現時点でそこまで考える必要は無いのでは……?」
「甘いよヘレンちゃん、あのモフモフがこの空間をいつまで維持できるかは分からないけれど、もし凄く長い時間閉じ込める事ができるのなら持久戦を想定しておかないと!」
「た、確かにそうですね……!」
「いや、その前に……第2陣が来たようだぞ、ルシファー」
「「えっ」」
ノエルとヘレンはアグネスが指を指した方向を見た。するとその方向には沢山のモフモフが口を開けて猪突猛進しており、可愛くない姿でこちらへ向かってきていた。
「なんですかあれは、気持ち悪ッ!?」
「もう増えたの!? というかあの爆発で生き残り居たんだ!?」
「さっきよりも数が増えてないか……?」
ヘレンは増えたという発言に挙動不審になると、横からアルダがヘレンの持っていたキュアキュアした玩具のステッキを掴む。すると玩具が稲妻と共にバラバラになった。
「あっ」
「わ、私のステッキが!!」
しかしそのパーツは落ちることなく稲妻を纏ってフワフワと浮く。プラスチックのような質感が金属へと変わっていく。そしてパーツは集まっていき、ハート型の宝石(プラスチック)以外は元通りのステッキとなった。
「お、おぉ……!」
ヘレンがステッキを手に取るとステッキはキラキラと輝き始め、ヘレンの魔力を吸い取るとステッキに付いていた宝石部分が魔石となっていく。
「ち、チープさがまるで無い……チープな感じの味が完全に無くなってる……でも本物っぽくて良い!!」
「身を守れるよう、武器として使えるようにしておいた。だが耐久性が無い、魔力を流した時に耐えられる物質に変換した。そして移動方の砲台として宙に浮いて移動できるようにもした」
「あ、ありがとうございます……」
本物の魔法のステッキになり、ヘレンは恐る恐るそれを握る。するとステッキが輝き始め、桃色の光のパーティクルが飛び始め、ヘレン(と言うよりも服)を纏う。
「(魔法少女だ……)」
「思ったより重くありませんね」
このステッキ、なんと重力魔法で若干浮いており、ナイフとフォークより重い物を持てない生粋の王女(オタク)のヘレンには優しい設計をしている。なのでまるでGペン程の重さ。わぁ、なんて軽い!
「狙った敵に向けて魔力を放射する事で攻撃が可能だ」
そう聞きヘレンは早速モフモフ達の方を向いて、魔法を使う時のように、心の中で空を飛ぶ自分をと心の中で想像してみると……。
「う、浮きました!」
「魔法少女だ……」
そして絶対に味方に被弾しない高さからモフモフに向かって、ニュー・ステッキを使ってみることにした。
「えいっ!」
ステッキを振りながら魔力を流し込むと、パーティクルがモフモフ達に向かって飛んでいき、そのキラキラに当たったモフモフ達は「ギャーーッ!?」という声を上げて、光に包まれて消えた。
「魔法少女だ! 魔法少女だ!!」
「す、凄いっ! 凄いです!」
ノエルとヘレンはキャッキャと全女児の夢を体験していると、その隣でアグネスは訝しんでいた。
「(それにしても光に当たって消滅って魔法でできたっけ? 唯一できそうな魔法と言えば、闇魔法──)」
そう考えて、アグネスはキャッキャしている2人を見て……その事を伝えるのは止めておいた。厨二病なアグちゃんは魔法のお勉強は苦手だけれども、実は闇魔法の事を調べてみたことがあった。闇という部分にとっても心が惹かれたので。
そして闇魔法を調べた結果、闇魔法はアグちゃんが想像していた物と実態は違っていたがそこまで間違いでもなく、能力の中に消滅という物がデフォルトで付いていた。つまり一歩使い方や使う人選を間違えたら、人間どころか世界が消えるレベルの代物なのである。
可愛く見えて、性能は全く可愛くない殺戮兵器にもなりかねない。そんな物をサッと作って渡したのだから、やっぱりアルダは邪神である。
もしここにあの勇者が居たら、余計な事を言って水を差していただろう。そんなふうにアグちゃんは思いながら、首にネックレスとして下げていた禍々しい雰囲気の十字架を握り締めて魔力を込める。するとネックレスは大きな鎌となり、厨二全開で自作していた鎌よりもずっと豪華なデザインとなって現れた。
これはアグちゃんが受けた依頼料で作って貰った、アーティファクトの鎌である。大分デザイン面でこだわって作ってもらった為、かなりのお値段になったのだが……ぶっちゃけ性能はただの鎌とあまり遜色ない。頑丈で、魔力を込めると修復されることくらいだ。
「あ、それよりもまずはあのモフモフをなんとかしないと」
「そ、そうでした! つい興奮してちょっと忘れかけていました! ってきゃーーっ!?」
そして2人はモフモフの方に意識を集中させると、なんと姿を変える能力で背中に翼を生やし、ヘレンのすぐ近くまで迫っていた事に気が付く。しかしそこでみすみす友達を無くすようなヒロインではない為、モフモフがヘレンに噛み付くよりもノエルの方が先に
突き刺さった白薔薇の追憶は、魔力が無い代わりに血をチューチューと吸収して生命力を吸い取り、それを魔力に変換していく。
「あ、危なかった……ヘレンちゃん大丈夫!?」
「だ、大丈夫です!」
正直に言うと全然大丈夫ではないのだが。それを皮切りに次々と襲いかかるモフモフがノエルによって真っ二つになり、化け物相手とはいえ目の前で本物のグロを見てしまい、大丈夫な訳がなかった。飛び散る血と、噎せ返るような鉄の匂い。前世がただのOLで、蚊やゴキブリくらいの生き物の命しか直接奪った事が無いヘレンには、とてもショッキングな体験だった。
「うっぷ……」
「ヘレンちゃん本当に大丈夫!?」
ヘレンは吐き気が込み上げてくるのを感じながらも、震えた手でステッキを握り締める。そしてふと、ヘレンの頭の中に某少年漫画に出てきたような、違うような気がする台詞が頭によぎった。
戦え!! 勝てなきゃ死ぬ、勝てば生きる、戦わなければ生き残れない!
ヘレンは「うっ」とえずきながら顔を上げると、魔力をステッキに注ぎ込み、ステッキを振ってモフモフにキラキラ攻撃をし始めた。
「プリズム☆マジカルフラーーッシュ!」
「グギャーーッ!!」
するとモフモフ達はでっかいハートのキラキラに包まれ、そしてシュワシュワ~と光の粒となって消える。そしてヘレンは前世で考えていた"転生したら一度やってみたい事"の一つを体験する事が今初めてできて、とても満足げな表情を浮かべた。顔色は青いが。その光景を見ながらモフモフ達をバッサバッサと切り捨てていたノエルは思った。
「なんだかヘレンちゃんが今、毎週日曜日に放送される女児アニメの必殺技みたいな感じで倒したように見えたんだけれど……分かる?」
「奇遇だなルシファー、俺もだ」
「だよね……。それにしても、本当に数多すぎ!! 本当に何でこんな事になっちゃったの!?」
「……ふ、ふふふ、フハハハ!」
ノエルは若干イラつき始めていると、
「え、どうしたの死神くん」
「今なら試す事ができそうだ……」
するとアグネスは何処からか無駄に分厚い、見覚えしかない本を取り出した。
「あっ、そ、それはッ! 私がいつも死神くんに書いてページの余白を埋めてあげている闇の禁書目録!」
ノエルは若干説明口調でそう言うと、アグネスは気分をとても良くした様子で、ノエルの手によってノエルが知らずの内に半アーティファクト化させていた本を宙に浮かせる。中身はノエルがちょっと興に乗って考えたさいきょーの魔法が、ノエル自身にしか分からないようにオリジナルの植物になぞられて暗号化する事で書いてある。
それを使えるのは持ち主の魔力と、書いた本人だけだ。
「この封印されし闇の力を!!」
「(……吐血しそう)」
するとページは勢いよくひとりでに捲られ、止まる。
「さぁ、
「ゴヘェッ」
ノエルは思いっきり吐血しながら魔法を使う。すると白薔薇はその血に含まれる魔力を吸収しようとノエルの口元を拭った。とてつもない共感性羞恥にノエルの精神的ダメージが回り回って肉体的ダメージになっていた。
《ノエルに99のダメージ! ノエルは既に瀕死状態だ》
「(危ない、死神くんの痛さに死ぬところだった……)」
「ルシファーっ!? くっ、HPの低いルシファーを狙うとは、卑劣な……!!」
違う、お前や。ここでツッコミ役が死にかけていなかったら、言い方は違うがそんなふうに言っていただろう。
「地獄の業火よ、悪しき獣を焼き払え。
「ボヘェッ」
ノエル、更に吐血。ダサい謎の技名に0.1程HPが残り、なんとかギリ生きていた。アグネス、もうやめて! ノイルのライフはもう0(に限りなく近い)よ!
そして闇の禁書目録を介してアグネスの魔法が発動し、派手で広範囲な青い
「……」
想像以上に攻撃力が高過ぎる炎魔法にアグネスは絶句すると、闇の禁書目録(未完成)と「どうしよう、やっぱりやり過ぎた」と言っている瀕死状態のノエルを見た。
「( 外で使ったら取り締まられるような代物じゃないか……)」
絶対に宮廷魔法士に没収される、いやそれどころかテロが多発しているフェリラでは国家反逆者と見なされて捕まりかねない。アグネスはそう考えて……元々使う気は無いのだが、この空間の外に出たら改めて闇の禁書目録を使わない事に決めた。
「……
ノエルはアグネスからのダメージを治すと、周りをよく見て何か無いかを考える。ゲームではダンジョンのギミックやらなんやらを正確に理解していることが攻略の鍵だ、その為によく見て考えなければならない。そしてノエルは時間がとても遅くなっている植物を見た。
「
胴体が別れたモフモフの死骸に
「毛も残さず食べてきて」
ノエルが指示を出すとハエトリグサは一目散に走り始め、モフモフ達を次々と食べ始める。
「ギェーーッ!!」
「グギャッ」
食べた分だけハエトリグサは大きく成長し、それからハエトリグサはモフモフの頭部分だけ残して種を埋め込むと、埋め込まれたモフモフから新しいハエトリグサがニョキニョキと生えていき、どんどん数を増やしてモフモフを食べていく。こうして死体を無くす事で、共食いを防ぎモフモフの数をこれ以上増やさせないようにする為だ
「……自分で思ったけど、結構凶悪な植物作っちゃったな。もしここから出られない状態が続いた時は、自分だけが食べる側だと思うなよって気持ちだけで作ったら……」
「流石に凶悪すぎるだろう……」
「(お、推し様?? まさかこのモフモフの肉を食べる気だったのね!? タンパク質源にするつもりだったのね!?!?)」
本といい、植物といい……やり過ぎである。でもこれもノルトパパの何事にも全力でがモットーな英才教育による結果、つまりノルトが全部悪い。……たぶん。
「あっ、そうそう。あの植物熱とか衝撃には凄く強いけど、冷気でその防御機能が働かなくなってすぐに死んじゃうから、氷魔法は厳禁だよ」
「了解した」
ちなみにこのハエトリグサ、モチーフは某配管工の髭に出てくる植物と、某宇宙海賊の生物兵器を元にして作られている。だが不確実な刷り込みによる親判定などではなく、魔力に反応して親だと判断する。なのでノエルの言う事は全部聞くようにできているのだ。つまりハエトリグサの植物はあと、3回ほど変身を残している……。
それでもモフモフの方が数は多く、ハエトリグサが増えていく数よりもまだまだ圧倒的だ。
「とりあえず、生物である以上は植物にも魂はあるけれど、ほとんど時間が止まってるこの空間に植物が沢山生えててハエトリグサ達も居るのに、見向きもしないで私達に向かって来るってことは……。ある程度質の良い魂じゃないと、魂を取り込むのに結構エネルギーを使うから効率が悪いって事だと思う」
「やはりあの能力にエネルギーを回してしまっているせいだろう、なんとも……愚かな獣だ。ならば闇の炎に焼かれ、この俺の供物と成──」
ここでノエルは脳内でBボタンを連打する事で、アグネスの厨二発言を聞くのは止めてスキップした。これ以上無駄なダメージを味方から受けるのは避けたいので。
すると心に余裕ができ、ハエトリグサ達の活躍もあって襲ってくるモフモフの数も減り、多少考える時間が増えた。
「(……そういえば、何でこの空間凄く遅いんだろう。私なら自分の時間を早くして、相手の時間を遅くするけど……。まさか、早くしないでこのスピード? 普通に走ってるようにしか見えないけれど……ナマケモノ並に行動を遅くして、肉体の消費エネルギーを少なくしてる。確かに成長する速度が早いとは思っていたけれど……増える為に肉体的エネルギー消耗をできる限り減らしてるって事?)」
普通に考えるとエネルギーどころか、見るからに栄養が全く足りていなさそうなので、そう数を簡単に増やす事はできない筈なのだが……。単一生殖のエイリアンに常識を当てはめるのはそもそも間違っている。とりあえずエイリアンなのでなんでもありだ。それに、この空間は時間の流れが遅い。もし外からモフモフがエネルギーを超常現象的にエネルギーを供給している可能性も無きにしも非ずなので。
「(うーん……このモフモフ、小賢しいけどちょっとおバカだから、どうにかデコイを食べさせて、獲物を食べたって勘違いさせてこの空間から外に出れたりとかできないかな……。私の勘だと本体の元に向かって、本体が共食いして魂を取り込んでエネルギーにする気がしてならないし、わざわざ探さなくても追いかけるだけで簡単に見つけられる。でも、魂に成り代わる物を用意しないといけないし、私たちの姿と魂をどうにか見えないように魔法で細工しないといけないから、無理だよね……。そもそも魂を魔法で操作しようにも、魂に干渉できないからできないし……)」
ノエルはそう考えると、うちの子の考えている事を聞いていないと気が済まないアルダがその思考を読んでピーンと来た。
「中々良い作戦だ、それでいこう。やはり俺の子は有象無象に居る低俗で愚かな人間共とは違うな」
「神様、近いです……」
アルダはよーしよーしとノエルにくっついて頭を撫でながら、流石うちの子(略してさすうち)となっていた。背後からは常に銃火器をぶっぱなしているが。そしてアルダはテレパシーで妹達に作戦を伝える。
「……いいかも」
「良い作戦だとは思いますが、その前にまずモフモフからこちらの姿を隠さなければいけません。その為にはモフモフを一匹だけにする必要があります」
「じゃあやっぱり沢山倒さないといけないんだ……死神くんとヘレンちゃんの魔力が枯渇しないか心配になってきた」
「お呼びしましたかー!?」
随分と高い場所で浮きながらヘレンは光の粒を飛ばしてモフモフ達を文字通り消しながら、今自分の名前を言ったノエルに大声で聞き返した。
「なんでもない! とりあえずいい感じの作戦できたみたい!! たぶんだけど、モフモフが一匹になったらこっちに降りてきてー!!」
「分かりましたー! …………あら?」
ヘレンはそう答え、再びキラキラ攻撃をしようとする。その時、モフモフが急に大軍の中心に向かって移動し始めた。
「あれ、どうしたのかな?」
「何をするつもりなんでしょうか……」
「怪しい……」
普通ならば中心部のモフモフは自ら圧迫され潰れる筈だが……それでもモフモフは集まっていく。それを見たノエルはいつものように勘で察知すると、とりあえず一匹だけ
「ギーッ!!」
「は?」
中から出せと言わんばかりに暴れるが、ノエルはその箱を回収して中のモフモフが死なない程度に自分の背後に投げ捨ててやった。
「黙れよ畜生が」
ノエルは持ち前の勘により、家族もこのモフモフから襲撃を受けている事に気づいていた。そして元凶であるモフモフに威嚇され、イライラがピークに達していたノエルさんは、まるでヒロインとは思えない程のドスの効いた声で吐き捨てる。
「私はさっさとここを出て、家族全員の顔を見て安心したいんだよ」
そしてノエルは巨大なキングス○イムかのように合体して巨大化したモフモフを見上げると、上空でヘレンが「きゃーーっ!?」と叫んで固まってしまっているのが見えた。
すぐにノエルは何故か常備している遺作の鞭を取り出すと、ヘレンに巻き付けて勢いよく引き寄せる。モフモフに食われそうになっていた所を引き寄せて受け止めると、ヘレンは強制的に突然絶叫マシンに乗ったかのような体験した事にプルプルする。
「ノ、ノエル様……こ、腰が……今ので腰が抜けました……」
「ごめん、でも助かってよかった」
「死神くん、とりあえずヘレンちゃんを守ってて。あの巨大なモフモフの相手してくるから」
「……ルシファー、無理はしないでくれ。いくらビーストキラーのスキルがあろうとも、死は一瞬の判断ミスでやって来る」
間違っても、歴代皇帝や皇族のような最期にはならないで欲しい。アグネスはその思いでノエルに言うと、ノエルは鞭をしまって剣を構えた。
「大丈夫、私が判断ミスをして死ぬなんてありえないから。それに──。
死んだらルトゥとマーくんの成長を見れない!!!!」
中々に皇族らし過ぎる理由だ。ハエトリグサ達は全滅し、ノエルの目の前に障害物が無くなった瞬間。ノエルは一気に駆け抜け、モフモフの足を輪切りにする。
「……あれ?」
だが足は一瞬で再生し、再び生えた。
「なんか再生能力手に入れてる!?」
「はッ!!」
レアはすぐさまモフモフを殴り飛ばし、巨体を吹っ飛ばす。その先にティアラが一瞬で移動すると、ティアラはモフモフを細切れにして即座にその場を離れる。
「やーっ!」
そしてアリスがハンマーを巨大化させると、その肉片を一度に全て上方向に向けてフルスイングした。
「……えい」
上方向へ吹っ飛んだモフモフ(サイコロステーキ)はアルダが人間から徴収した、文明の機器で箱庭の危機になりかけたトンデモ兵器のレーザー砲台の出力を発射させた。
「これで死にはしないだろうが……」
先程とは違い、これは威力を任意で変えられるので、やる気の無い戦闘時や、ある特定の種族や思想を持つ大勢の存在を一網打尽に抹消する時にアルダが使用する物だ。
……なのだが。
「やはりな」
「当たる直前に時間を遅くしてる……」
「更に空間に穴を開けて、レーザーを別の空間に転移させているようですね」
「お兄様、油断のし過ぎははよくないと思う」
「……油断はしていない、仕留める可能性は低かったがとりあえず撃っただけだ」
なんか言い訳臭い事をアルダは言っているが、事実である。モフモフ(サイコロステーキ)はうぞうぞと動き、くっつくと元の形へ戻る。
「俺はそろそろこの害獣の相手に飽きてきた、いっそ魔法で爆散させてもいいか」
「兄様、私達諸共吹き飛びますし加減が苦手なんですから、直ちにやめてください」
「やめてくれたら助かる……私の命が」
「お兄様、絶対ダメだよ」
もう既に魔法を発動させそうな様子で魔力を圧縮した真っ黒の玉を手のひらの上に出しており、妹達はそれを総ツッコミでやめさせる。
「……」
アルダとしてはさっさとこんな空間から出て、うちの子達を愛でたいだけなのだが……妹達に止められては、止めざるを得なかった。表情は無でしかないが、アルダは心の中でちょっとしょんぼりした。そんな中、ノエルさんは心の中で「あれ、じゃあ神様が使ってた兵器って力をセーブして攻撃する為の物ってこと? だから絶対に魔力消費が激しそうなのに、大量の銃火器を背後で乱射してるの?」と、勘づいた。
その脳内を読んでいたアルダは正解とばかりにノエルの頭を更に撫で回す。やっぱうちの子可愛いとか思いながら。ティアラはじっとその様子を見ており、兄と兄にされるがままになっているノエルを見ていると、微かに残るズッ友の魔力を感じるアルダの魔石に目がいった。その魔石をじっと見つめる。
……同じく様子を見ていたヘレンは「解釈違いですッ!!」と言っていたが。
「私はレイエルしか認めません!!!! 解釈違いですッ!!!!」
どうやらノエルだけを撫でている場合は、あまりにも近い上にCPみを感じて駄目だったらしい。ヘレンは解釈違いで精神的に死にそうになっている中、横からスマホを取り出しノエルとのトーク画面をアグネスはヘレンに見せた。
そこにはノエルが一方的に送ってくる双子とわんにゃん達が戯れる画像が大量に張り付けられており、それを見たヘレンは「ヒュゴッッ」という謎の息をして尊さの過剰摂取で大人しくなった。一心不乱にヘレンはスマホの画面を見つめており「ハァ゙ァ゙ァァアアッ!!!!」という奇声をあげて再び気絶。オタクは推しを目にすると情緒が忙しいのである。それを見たノエルは「死神くん、ヘレンちゃんの扱い分かってるな……」と思いながら撫でられていた。ちなみにこの方法、機嫌が悪い時やパニック状態のヒエリカ人を大人しくさせる方法なのだが……。どうやらヘレンにも当てはまるようだ。
「あっ! そうだ!」
するとティアラはノエルの所へ来ると、魔力の塊である首輪に付けられていた魔石を外して手に持った。
「ちょっとこれ借りるのじゃ!」
「え、あっ、でもそれ神様がくれた物……」
「……分かった、使っていい。またノエルに用意してやるから、そう悲しむな」
よちよちされながらノエルは「いや別に元から欲しかった訳では無いし悲しくもないんだけれども……」という思考が一瞬よぎりかけたが、使徒の補正がかかって「まぁ神様がそう言うならそうなんだろう」となった。ある一種の軽度な洗脳である。やっぱり人間は神の影響をクソデカに受けてしまう生き物なのだ。
ティアラはアルダ作"うちの子に手を出す奴全員死ね死ね虫けらが"という魔法を封じ込めた魔石を握り締めると助走をつけて走り、思い切り跳躍した。
「くらうがよい、お兄様の愛の重さを!」
そして魔石を元の巨大フモフに戻ったモフモフの頭上に思い切り投げつける。
……その瞬間。
「ギッ」
モフモフは穴という穴から血を大量に吹き出させて干枯らびる。ついでに「汚物は焼却だッ!!」と言わんばかりに、干物となったモフモフを燃やし尽くす。これこそアルダの愛の重さ(魔法)である。やはり愛はどんな兵器よりも強い。やっぱ窮地を救うのは愛、愛しか勝たん。物語のお約束である。
しかし想定していない衝撃でノエルが実際に攻撃を受けた訳ではなく、強制的に魔法が行使された為、魔力が尽きた魔石は消滅してしまった。
「ここから出たら作ってやる」
よちよちとノエルは撫でられ、ヘレンが解釈違いで九死に一生を得ている中、ティアラは「絶対にモフモフが出てきたら音を立てるでないぞ」と全員に言うと、魔法を行使する。
「
すると手から人魂のような魔力を飛ばして全員の胸の中に入り込む。
それが全員の魂に干渉する闇魔法であり、これでモフモフからは魂が見えなくなった。
その証拠にノエルが捕まえたモフモフの入っている箱型の防御壁はガタガタと揺れており、反応していた。箱で外の様子が見えない為、外で何が起きているのか分かっていないようだ。
そしてティアラは手のひらの上にこの場の全員のメンバーの魂を模倣した疑似餌を用意すると、少し離れた場所に配置してゼェハァする。
「ゼェ、ゼェ……ハァ、お兄様とお姉様達の魂が大き過ぎて、ちょっとしか持たないかも……」
「具体的にはどれくらい持ちますか?」
「3日くらい!」
「ティアラ、十分……」
そしてティアラは疑似魂を遠くに投げつけると、魂、箱入りモフモフ、自分達という並びになった。
「では私は魔力光学迷彩でモフモフからは私達が見えないようにしておきます。その前に全員私に触れてください」
それぞれレアの肩や手、腕を掴み確実に転移されるようにしておく。別に掴まなくてもいいが、やはりその方がより情報を得られる。こういう時なので、やはり確実にしておきたいのだ。
「……
レアは空間を認識すると
開放されたモフモフはキョロキョロと周りを見て、それから疑似餌を発見するとなんだかよく分からない状況に困惑しながら疑似餌に食いついた。全て食べた後、モフモフはこの空間を出て本体の元へ向かおうとする。……その瞬間。
「(
レアが闇魔法でモフモフの転移に干渉した。
~・~・~・~
転移した先、そこに見上げる程巨大な翠の魔石があり、周りには見覚えしかないインペリアルな長男が居た。そしてそこには某皇帝様も当然居る。……が、格好は真っ赤なモコモコしたサンタ衣装を着ていた。どうやらあの謎空間に居る内に約2ヶ月の月日が経っていたようだ。
「おばあちゃ──」
ノエルはノエリアを呼ぼうとすると、ノエルに気がついた皇帝様は
「エルきゅんッ!!!!!!!!」
迫真クソデカボイスで言うと、ノエリアは久しぶりのノエル成分を摂取しようと孫吸いを始めた。
「ほんとぉぉぉぉおおおに、心配……スーーッ、したのよ……スーーーーッ……はぁ、なんだか安心して眠くなってきたわ……あっ、それで、ノルちゃん達は!? 居ないのかしら!? それと、ハロウィンは終わっちゃってるわよ……スーーーーッ、ハーーッ……あ、はいこれ。ティアラちゃんも」
「えっ、お父さん達も?? って、おばあちゃんその隈……大丈夫?」
「やったー!」
ノエルはノータイムでペロペロキャンディをスパチャするノエリアを抱きしめ返すと、元の空間に戻った為に本領発揮したレアはすぐに分身を潰し、本体を捕まえて空間を切り取って閉じ、閉じ込めた為す術の無いモフモフの本体を足元に持ってきて見つめていた。
「さて、どうします? このまま空間を圧縮しましょうか」
「……時間を進めて老けさせる」
「待て、この害獣は放っておいても近い内に死ぬ可能性が出ている。その前にまずは足を切り落とし、それから臓器を引きずり出してから目玉を潰す。死なないよう、再生させながらな。これは決定事項だ」
「デコピンする! ……あ! その前に……」
ティアラはモフモフと目が合うように顔を近づけると、モフモフと目が合った瞬間に暗示をかけた。アルダがノエルにやった暗示のような命令とは違い、これは吸血鬼特有の能力だ。
魔力が自分よりも少ない、又は耐性のない相手を
だがその能力は魂に直接作用するものであり、脳ではない。なので閉じられた空間内のモフモフには使えなかった為、あのような手間をかけさせられたのである。
なんとも厄介なモフモフだ。そして数秒後、一瞬で閉じ込められていた他のメンバー達が戻ってくる。
「戻ってきたようだな」
「……」
ノルトは全く汗もかかず、閉じ込められる前と変わらない様子だが、ノイルは汗やら血やらを身にまとっておりとても不快そうにしていた。なんとも対照的である。これには理由があり、普段喋らないノイルが不満を思い切り叫び過ぎて喉をちょっとばかり痛めた為、普通にフィジカルで戦っていたのだが……。大量のモフモフ達をノルトが
「ノイル!!」
そんな息子を見たノクターンはすぐに駆け寄ると、
「大丈夫か、ケガは無いか!?」
「……」
ノイルは頭を横に振ると、ノクターンはとても安心した様子で血を拭う。
「(痩せたな……)」
やつれている様子の父親を見たノイルは、そこまで心配させてしまった事に申し訳なくなりながらも嬉しく思った。
「……良かった、お前まで失わなくて。本当に、良かった……」
するとノイルは持っていたぜっきょーチキンでノクターンに「ピープピーププププピーピーププピー」と鳴らせた。
「あぁ、おかえり。家に帰ったら風呂の準備をしよう、ノイルが帰ってきた時に色々とお前が好きそうな入浴剤を用意したんだ。使ってくれるか?」
ノイルはその言葉に目を輝かせて強く頷くと、早速ノクターンと一緒に皇居へ転移した。
それから2つのくしゃみが聞こえ、2名ほどプルプルと震える。
「さ、寒っ……!? 推しの供給過多に意識が飛んでいる内に外に出られたのはいいですが、さ、寒すぎませんか……!?」
「ノ、ノルトさん……」
既にプルプル状態のマリエッタをノルトは仮装のマントで包み込むようにして抱き締め、炎魔法で暖めてやるが……それでもどうやらまだ寒いらしい。
「あの生き物に襲われる中、私が怖い思いをしているのに貴方の姿がずっと見えなかったから……。もしかしたら、ノルトさんが食べられちゃったのかと段々そう思えてきて……怖かったわ」
「俺があのような害獣ごときに殺られる筈が無いだろう、それよりもエマが無事で良かった。ルトとエルマーもよく頑張ったな。……すまない、エマを助けに行って安心させてやれなかった」
「いいの、だから……今夜は一緒に居られなかった分を取り戻してくれる?」
「……仕方ないな」
おかしい、さっきまでプルプルと震えて冷えきっていたというのに、既に色々と熱々だ。なんて言ってはいけない。ノエルはいつものその様子を見て安心すると、ゴーストの格好をした双子が爆速で突っ込んでくる。
「姉っ!!」
「姉さんっ!!」
ノエルの腹にダイナミックホールドを双子はかますと、まるでヒロインとは思えない呻き声をあげて抱き締め返した。
「凄く、凄く怖かったよぉ……!!」
「食われるかと思った……慰めろ」
「ルトゥ、マーくんっ!!!! 無事で良かったぁぁぁぁあああ!!!!」
ノエルは双子にスリスリをキメて撫でまくると、祖母(♂)かのようにスーハースーハーした。双子は別に怖くも何ともなかったが、ノエルが心配してくれるので、全力で甘えた。いつもの事である。
「本当に一時はどうなるかと……もうあのモフモフを食べて生き残るしかないとか思ってたから……」
「「えっ」」
双子は「マジで??」と言うような顔でノエルを見ると、ノエリアにノエル諸共抱き締められる。
「皆無事で本当に良かったわっ! ……所で、ティアラちゃんは分かるけれど、あの子達は? 見た事ない小動物をR-18Gにしているけれど……」
ノエリアは吸血鬼兄妹達を見て孫に聞くと、ノエルは苦笑いしながら答えた。
「うーん……えっと、簡単に言うとあの小動物に襲われて、謎空間に閉じ込められて食い殺されかけたから……かな」
「あら、そうなの? ならあぁなって当然ね。エルきゅん達を2ヶ月くらい奪った上に食べようとしてたんだもの、殺すしか無いわ」
一方的に内蔵を引きずり出されている小動物相手でも、うちの子を襲ったのなら慈悲は無い。人間を襲うのなら魔獣と同じような存在、魔獣が相手なら全て殺す。うちの子を襲ったのなら絶許。それが皇族、愛が重い。
すると突然、吸血鬼兄妹はバッと勢いよく空を見上げると、モフモフ(スプラッタ)を置いてその場を離れる。それから数秒後、モフモフに大きな火炎球が落ちてきた。ノエルが「あっ」と声を上げて、視力と動体視力の良いその肉体はハッキリと、ゆっくりとモフモフが燃える様が見えていた。
「きゃっ!? な、なんですか!? 炎っ!?」
上空から降ってきた突然の炎。死にかけでもはや悲鳴すらあげられない中、一瞬で消し炭となったモフモフの焼死体(燃えカス)燃える火炎をヘレンは驚きながら見つめ、妹吸血鬼達は不燃焼気味そうな表情をしていた。
「えーー?? 最後にデコピンして"
「……殺り損ねた」
「こればかりは仕方ありませんね……」
すると強い突風のようなものが吹き荒れ、炎は消される。
「くるるぅ……」
「にゅっ!」
空を見上げるとそこにはとても申し訳なさそうにしているクルミがホバリングしており、ゆっくりと地面に降りた。本来ならもっと大きいが、薬でどうやら小さくなっているようだ。それでも十分に大きく、迫力がある。
どうやら先程の火炎球はクルミの仕業らしい。可能性の能力で予知していたアルダは、やって来たクルミの頭を撫でる。それはもう撫でまくる。
「くる……」
「あれ、どうしたのクルミ」
ノエルはアルダと一緒にクルミを撫で回すと、アニメ調に大量の汗(ドラゴンなので実際に汗をかくことは無いが、表現としてはそのような感じをかいていた。するとノエリアもクルミを撫で始めた。あとニョッキも。ニョッキは相変わらず、男には厳しく(例外あり)手を頭の傘で振り払う。なんて不敬なキノコ……!!
「さっきのはやっぱりクルミのくしゃみだったのね、もう……くしゃみは海の方角じゃないと危ないから駄目でしょう?」
「くるぅ……」
「にゅーっ!」
クルミはしょんもりしながら、それはもう申し訳ない様子だが、ニョッキはクルミに遊べと言わんばかりにかまちょする。するとニョッキの体から胞子がフワフワと漂った。
「(……あれ、もしかしてこれニョッキが原因なのでは? ごめんねクルミ……私の使い魔がヤンチャで)」
ノエルは心の中で謝るが、それでも尚クルミを撫でる手を止めない。やはりペットを撫でずにはいられないのだ。
「あばばばばばば……」
「あっ、ヘレンちゃん!! そうだった、寒いよね!? ごめんね、寒さに耐性があり過ぎるから気づけなくて……」
ヒエリカ出身なので寒さには強い耐性を産まれた時からスキルとして持っているアグネスは、雪も降っていない快晴の昼頃なので問題無いが……。ヘレンはそういう訳にもいかない。
「
ノエルはすぐにヘレンの周りに暖かい空気(物理)を作り、寒さに震えるヘレンを温める。
「あ、ありがとうございます……」
徐々に体の震えも止まり、ヘレンはじっと3名から撫でられているクルミを見てつい手が伸びそうになる。一度でいいからちょっと撫でてみたい……。そう考えていると、勘で察したノエルがヘレンの手を取ってクルミの頭に乗せる。
「はわ……硬いです!」
「鱗だからね」
岩のような鱗の感触が手袋越しに伝わる。湯たんぽのように温かい体温に、前世で草の中をかき分けて生活するニホントカゲのような、普通の爬虫類とはまるで違う生き物だと強く実感する。
「冬に一体欲しいですね……」
「ちょっと食費がかかるけど、天然湯たんぽとして凄く優秀だよ」
「きゅー♡」
大体一日に3千ソルする高級湯たんぽは甘えながらナデナデを受け入れると、ふと我に返ったアルダが手を止める。
「あぁ、クルミの可愛らしさに失念していた。新しい魔石を贈る約束だったな」
「(約束はしてなかった気が……)」
アルダが勝手に取り付けた
「今度はあのような害獣にまた襲われても問題無いよう、もっと魔力を圧縮しなければな」
「(あの時点で十分すぎるほどの魔力だった気が……)」
するとアルダの手の平からほぼ真っ黒に発光する翠の魔力が迸り、魔力を感じ取れる者にとってはドン引きする程の魔力の塊を作り始める。
「……まだ足りないか?」
「十分だと思います」
「そうか……?」
アルダは納得がいっていない様子でダメ押しとばかりに更に魔力を圧縮させると満足したのか、当初よりもずっと深い翠の強い輝きを持つ魔石を渡される。
「き、綺麗ですね……」
「(過剰すぎる……)」
「俺の子はやはり魅力と可能性に溢れているからな、虫除けにはこれぐらいで丁度いい」
「……兄様、やり過ぎです」
「(俺もあれぐらいするべきか?)」
ノルトはちょっと本気でそう思いながら一部始終を見て、それから大きな胸を押し付けてくっついてくるマリエッタと家に一旦帰ることにした。
「……ひとまずは解散しよう、ヘレンは一刻も早くフェリラへ帰った方がいい」
「あっ、そうだった!! ヘレンちゃんは王女様だから、今頃行方不明って事で大変なんじゃ……!?」
「(ノエル様、忘れてたわね……)」
完全に普段の様子がプリンセスらしさの欠片も無いのでノエルは忘れかけていたが、ヘレンは王女なのである。ヘレンは王女なのである。重要なのでここは二度伝えておこう。
「……あれ? つまりお父さんはちゃんと護衛してたのにヘレンちゃんが行方不明扱いになっちゃったし、仕事中にお父さんまで行方不明になっちゃったって事になるんじゃ……」
「ヘレン、後で俺と城に行くぞ。俺の給料(妻への投げ銭用)に関わる」
「は、はい!」
そしてノルトは「すまないエマ、家に帰ったらすぐに城に行かなくてはならない。誰がなんと言おうと、なるべく早く帰ってくるからな」と言うと、妻と双子、それからヘレンを連れて一旦ヴェリカ家へ向かった。
「……死神くんも一旦帰る? 家族も心配してるだろうし」
「あぁ、我が契約者の元へ帰還しなければ、契約違反となってしまうからな……また運命が交差する刻に会おう」
そう言い最後までノエルにダメージを入れると、アグネスは
「さて……私もそろそろ寮に帰──」
ろうかな。ノエルはそう言いかけて
「……ろうかと思ったけれど、せっかくのクリスマスだから楽しまないと損だよね」
ノエルはそう言うと、ノエリアの表情が見るからにパァァッと明るくなった。そして周りは太陽がもう1つ増えたかのように発光している。ノエルはあまりの眩しさに目が焼かれそうな気がした。
「それに……よく考えると、帰ったら色々大変そうだし……」
まぁ現時点でこの選択をするのは、問題を後回しにするようなものだが……。一瞬で終わったハロウィンをクリスマスに切り替えて、代わりに満喫するのも悪くはない。ただ、友人達や家族と遊ぶのは流石に今の状況では無理そうだ。やはりこういうイベントは誰かと一緒の方が楽しい。他に誰か居ないものか……。ノエルがそう考えていると、視線と圧を感じたのでそちらの方を見る。
「……」
友人ではないが、
「か、神様も一緒にクリスマス満喫します……?」
「あぁ勿論だ」
「あらそうなの! じゃあ全員分の衣装を用意しておくから待っていて頂戴! そうね……」
ノエリアはじっとノエルとアルダの方を見ると、そして何か思い浮かんだのか表情をほころばせる。
「そうだわ、今年はブラックサンタにしましょ! 国m──悪いヒエリカの人民達にお仕置という名のイタズラをしてまわるのよ!」
「えっ」
こうしてノエルはノエリアに連行され、ブラックサンタノエルと聞いた皇族箱推しオタクな豚という名のヒエリカ国民達は、揃って自分こそが悪い子だと次々に名乗りあげていき、ノエルは強制イタズラ役をさせられた。
「「お願いしますッ!!」」
「ほ、本当にいいの!? 家の壁、スプレーで私のサイン書いちゃうけど、本当にいいの!?」
「「お願いしますッ!!!!」」
「というかこれ本当にイタズラになってる!?」
黒いサンタ衣装を着たノエルは狼のつけ耳としっぽはそのままに、カラースプレー缶を持ってノエルは沢山の家にサインを書くことになってしまったのである。
「……お前は楽しめているか?」
アルダはいつものミリタリーゴシックではなく、
普通の魂であれば、
だから聞こえている前提で、アルダは魂に話しかけていた。
「……ノルン」
毎度の如く、変態は番外編から排除されております。今回は姉と一緒だから寂しくないね。なのでおまけには一応慈悲として出してやる事にしました。
おまけ
ノエル、インベッドにて。
「……何かを忘れている気がする」
おまけ2
「あ゙~~~~ッ!!!!」
「うるせェーーーーッ!!」
アホ毛レーダーでノエルに忍び寄る(違う)NTRの波動(全く違う)を感じ取った変態が精神的ダメージを受けていた。空気はあるが無重力の空間にて柴犬勇者は、姉の黒柴と叫びながらふわふわと漂っていた。
「ノエルがぁぁぁぁあああ!!!! ぽっと出の人外間男にNTRかけてる気がするぅぅぅぅぅううう!!!! ていうか絶対されてるぅぅぅぅぅぅぅううう!!!!!!」
「だろうな!! テメェみてェなゴミクズ野郎がそもそもあんな超激カワハイスペ美少女と付き合ってんのがおかしいんだよッ!! そりゃヤリチンのそこらによく居るチャラチャラしたクズでも、お前よりかは相対的に良いレベルだから簡単にNTRるだろ!!!!」
「はぁーーッ!?!? ヤリチン寝取り野郎の方がクズに決まってるだろーがッ!! 何言ってんのお前!! 何言ってんのお前!!!! 俺からノエルを奪おうとする奴が絶対悪だろ!!!!」
「むしろ救世主だろボケカス死ねッ!!!!」
「お前が死ねよ!! ノエルをエロい目で見てる俺以外の奴ら全員、死ねぇぇッ!!!!」
「オレより雑魚の癖に吠えやがるじゃねェか、いい度胸だなテメェ!! 上等だ3秒で殺してやらァ!!!!」
柴犬共はギャンギャン吠えているが、両者ともアルダの
子供が繰り広げるような程度の低い喧嘩に傍観者が居たのなら、そのやり取りに思わずため息を漏らしていただろう。
ノエルがアルダにキュートアグレッションをされている時、この柴犬共はリアル大乱闘スマッ○ュブラザーズを繰り広げ、シュッシュッと、腕や足を伸ばして横スマをしていた。……当たらないので戦いにすらなっていないが。
おまけ3
「……ぐぎゃぁぁぁぁぁあああッ!!」
とある神の領域にて。アルダが箱庭に来ている為、一時避難しているチキンで色々めんどくせぇ運命の神、アスターは安全圏でアルダのサンタ衣装を覗き見て発狂していた。
「クソォッ!!顔が良すぎんだよ、半神の癖にぃッ!!!!あの元人間ごときの子供の癖にぃッ!!!!クソッ!!!!あの方から産まれやがって!!!!いちいち俺の癪に障る良い面しやがって!!!!」
そしてアスターはもう一度覗き見るとバッチリと目が合い、一瞬でアルダから神の視覚を通じて闇魔法をアスターの方に転移させて飛ばした。アスターが間一髪の所を避けると、避けた事に気づいたアルダはクソデカ舌打ちをして、最悪な気分をうちの子(ノエル)で浄化していた。
「ぶぎゃぁぁぁぁあああッ!!僕ちんの前髪がッ!!クソッ、絶対に許さないもんね!!プンスコエクストリームファイヤーだから!!!!絶対に今回も先に奪ってやるからぁ!!!!」