チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
今はクッソ短い。けど、いつか続きを書くので待っててくれたまえ。
再■の悪魔
「一体、何があったのじゃ!?」
「……どうやら来るのが遅かったみたいだな」
ティアラとネロは聖力に満ちた場所を魔力で体を覆うようにして進むと、その先には聖力の塊によって破壊された家、そして……ヒビの入った魂が漂っていた。
「有り得ぬ、何故……。いや、それよりもネロ、早く城に戻るぞ。すぐに準備せねばならぬ!」
ティアラは急いで魂を捕まえると魔法で転移した。その行先は、両親に頼まれて作っていた魂を入れる為の肉体が入った培養ポットのある部屋だ。
そしてティアラは魂を肉体に入れた。本来ならすぐに目が開き、活動を開始させるのだが……。
「……おかしい、すぐに魂が定着しない。間もなく目が開く筈じゃが……。やはり魂が欠けておるせいか?」
「それもあるんだろうが、魂が嫌がっているんじゃないか? 目を開いて外を見たくないってな。魂が定着するまで、こればかりは待つしか無いと思うぜ」
ネロはそう言うと、ティアラは培養ポットに触れる。
「頼む、早く目覚めてくれ……」
それから2ヶ月後。ようやくそれはゆっくりと瞼を開いた。片目だけが赤く、もう片目は白目しか無かった。魂が欠けた影響だ。それから彼──は全てを理解した。今の状況や、今の自分の事、そしてティアラの正体やネロの事も。
「はぁ……まさか、こんな形で再会するとは思わなんだ。感覚はどうじゃ? 元気……とは、言えんようじゃが。答えよ、何があった?」
ティアラは培養ポットに満たされていた魔力の水を抜き、彼──を外に出してバスタオルをかけた。
「……」
「何をされた」
「…………何も、言いたくありません。思い出したく、ない」
彼──は、そう言った。
「じゃが、お主は言わねばならぬ。言うしかない、言う他にない。お主は妾の使徒でもあるからじゃ。言え、何があった」
命令したティアラに、彼──は使徒として無意識に従う。全てを言い終えた後でティアラは顔を青ざめさせた。
「すまぬ……妾が、もっと早くお主達を見つけられれば」
「後悔しても後の祭りだ。それより、あんたはもうアイツに会うな。アイツは一目見ればすぐにあんただって気づくぜ、スペックをフル活用できるからな。理由は……今ならもう全部分かるだろ? 捕まったら最後、一生あんたはアイツに飼われる」
彼──はあの日の事が頭に鮮明に浮かび上がり、体を震わせる。だがそれは悲しみと恐怖から来るものでは無い。ネロは最初恐怖で震えているのかと思ったが、彼──の表情を見て認識を改めた。
体が震える程の、煮えたぎるマグマのような怒りを感じているのだという事に。
「やっぱあんたはあいつの子だな」
すると彼──は肉体が魂に合わせて変わった前の姿から、この世界には存在しない人物の少年のような姿に変えた。
「……今から、
「名前? 名前ならお主が目覚めるまで、妾が沢山沢山考えたから心配せずとも良い! お主の名は……あ、待て……これはちょっと変えねばならぬな。うーん……そうじゃ!
ジャレッド、というのはどうじゃ? 意味は薔薇、お主にピッタリでその姿にも似合うカッコイイ名前じゃろ?」
「お嬢……名付け、上手くなったな。特訓の成果が出て良かったぜ」
「むふん! 妾は成長できるいい子ですごい子じゃからな! それで、気に入ったか?」
「……はい、とても。凄く嬉しいです、魔王様」
しかしその声には抑揚がなく、まるでロボットのようだった。
それは
怒りという感情は除いて。
「敬語はやめんか、妾とお主の仲じゃし。しかし、あれじゃな。やはりちと魂が不安定じゃ、結び付きが弱いせいでお主の魂を覆う妾の加護の力が弱い。まぁそれは仕方ないんじゃが、このままだと魂が自然崩壊してしまう。……よし、妾の使い魔になるがよい!」
「……分かりました」
ティアラはジャレッドに魔力を与えると、ジャレッドの白一色な左目に使い魔の証である紋様が浮かび上がる。こうして彼──はジャレッドとなり、ティアラの使い魔となった。
「という訳で、早速……着替えたら城の掃除をせい! 着替えは妾が用意させたお主の部屋にある。ネロ、案内するのじゃ」
「ほーい……着いてきな」
ネロはジャレッドの歩く歩幅に合わせて前を歩き、ジャレッドはじっと耳のあった部分を見ていた。
「そんなに見られたら照れるだろ、あんた俺の事が気になるのか?」
「……エルフの耳はどうした」
「あぁ、あれか。あれは俺が擬態して生やしてた偽物だぜ。こっちの耳は本物だ」
ネロはそう言うと、ピコピコと猫耳を動かす。
「何故そんな真似をした」
「面倒だろ、キャーキャー群がられるのは。それに俺は子供には興奮しない、娘がいた事があるからな。丁度あんたと同じくらいの年齢だった」
「……人間の頃の話か」
「あぁ。……いや、今はあのワガママなちびっ子の面倒を見せられてるか。子供のお守りってのは無駄にエネルギーを消費して疲れるぜ、じっとしてられないから目が離せない」
ネロはそれから世間話をした。
ティアラが「ネロ! 見るのじゃ、妾は画期的な物を作ったぞ!」と言って、瞬間移動に空を飛んだり、火炎放射器や武装機能が付いた自動円盤型お掃除ロボットのロンバちゃんを作ったりした。
そしてロンバちゃんが前に城の周囲に居る魔獣をお掃除したり、スライムを吸い込みかけたり、そこらの雑草を全部刈り取って吸い込んだりしてブチ切れたスライム達を吸い込んだり。
他にも最近起きた色々なやらかしエピソードを語った。どれもが、前のジャレッドなら思わずちょっとだけ笑えるような話だ。ネロなりに、明らかに気を使っているのが分かる。
それが分かるからこそ、ジャレッドも時々相槌を打つ。心配をかけないようにする為だ。
「(……普通の人間は最も大切にしている物を奪われた時、壊された時は会話をする気力、ありとあらゆる物への意欲や執着が無くなるんだがな。ましてや本人にとっては、さっき意識を取り戻し、あれは数分前の出来事。てっきり俺は勝手に一人で喋っている状況になると踏んでいたが……逆に気を使われてる気分だ)」
そう思いながらもネロは話し続け、和式風の廊下を歩く。話の途中でジャレッドの部屋に着いた。和とは違う、洋風でシックな黒いドアだ。
「ここがあんたの部屋だぜ。服はタンスの中に入ってる、言っておくが苦情は俺に言うなよ。お嬢のセレクトだからな」
「……もう既に僕は使い魔だ、主人が用意した物を使う義務がある」
「律儀だな、あんたは」
「そうでもない」
和式の廊下に似つかわしくないドアを開けると、そこにはロココ風のアンティーク家具などが多く置かれている部屋であった。
黒、白、そして赤で構成されており、置かれた花瓶には黒と赤の薔薇が挿してあった。ジャレッドはまるでこの部屋は今の自分を象徴しているように感じた。黒と赤は悪魔の色なので、それで統一した結果なので仕方がない事ではあるが。
「……皮肉だな」
タンスを開けるとそこにはゴシック調の服がいくつもハンガーにかけられており、どれも派手なものばかりであった。しかし今のジャレッドは羞恥心を感じていられる程の余裕が無い為、適当に服を選び、着ることにした。
ハンガーを手に取ると、服は光となって自分の体に纏われると、まるで魔法少女の変身シーンかのように一瞬で着替えが終わった。
部屋にある大きな鏡の前に立つと、そこには黒髪の眼帯ゴシックショタが立っているのが見える。ジャレッドは前とは全く違う自分の姿を見て、誰も自分の正体に気づかないだろうと感じた。ある人物2人を除いて。