※この作品はR-18です。

チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった   作:水性さん

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これはチューチョロの元になった作品。

チューチョロ世界の魔王である、ティアラちゃまのパパ……つまり元勇者であり、成り行きで魔王の夫になったアレスくんが主人公の話。シリーズをハーメルンで新たに作るのが面倒なので、いっそここに出す。

(なんか随分前から勇者大失格より話数多くなったな……)

性格や能力は勇者向きではないものの、某半人半神の金髪碧眼地雷系ヤンデレメンヘラドMストーカー勇者よりはよっぽど勇者してる。




チューチョロの元になった話 「勇者大失格」
勇者は、朝に弱い


 

 

 錆びた臭い。冷たくなっていく体温。それとは反比例して触れる水は生温かく、夜だというのに辺りはとても明るい。

 

 熱気と熱風も感じる。パチパチ、ごうごうと唸るような猛炎。何もかもを焼き尽くし、無に帰さんばかりだ。

 

 

「ゴホッ、ゴホッ……」

 

 

 何とか生き延びようと呼吸は自然と荒くなるが、その度に胸に激痛が走る。そして煙を吸い込んでしまったので咳きこんでしまい、折れたあばらが肺に刺さっているのでまるで追い打ちをかけるかのよう。自分が死ぬよう、確実に。咳と一緒に血も口からごぽりと鉄の味がする水が溢れ、自らを溺れさせようともしていた。吹き出すように脂汗が浮き、炎の熱気で汗が徐々に蒸発して体力が奪われる。なんとか鍛え上げてきた精神力で今も血と共に失っていくなけなしの意識を留めた。

 

 彼は腕を動かせるかどうかを確認するため、手を上げて開いたり閉じたりしようとする。

 

 

《しかし手は上がらなかった》 

 

 

 何故なら腕は付け根から先が、そもそもなくなっているからだ。そこからも血が流れだし、体には残り僅かな血しか残されてはいない。そして視線をさまよわせていると、自分の腕が地面に転がって、ただ炎に焼かれているのが見えてしまった。

 

 反対の左腕を上げ、試みようとする。すると、まだあと少しの間だけなら動かせられる事が分かった。

 

 そして温かい水だと思っていた物は、自身の血。冷たくなっていく手に赤黒い己の血がべっとりと付いているのが見えた。こんな状況だというのに、やけに頭は冴えているように感じる。迅速に死へ向かっているのだと、血の気が少なくなってきた頭でようやく理解した。闇色に染まった空は雷雨が降りそうで、本当に縁起が悪い。こういう雨はRPGでは定番の演出だ、だがそれによって自分の死が確定してしまった事に少年は知る由もない。見えない概念の旗が揺らめいた。

 

 

「(……このままでいいのか? 何もできずに終わってしまうのか? あの努力は、何のためだった?)」

 

 

 だが少年は立ち上がろうとする。もう体は限界だとわかっている。それでも、すぐ背後で急かすように死が自身を包み込もうとする事へ抗い、右腕を地面につけて立上がろうとした。しかし体は当然のことながら思い通りに動かない。

 

 

 すると、こんな時だというのに今までの記憶が頭に思い浮かぶ。家族の事や、何気ない日常、辛かったことや、どうでもいい事まで。いわゆる、走馬灯と呼ばれるものだ。大人たちの半分すら生きていない、短い人生の道が倍速をかけられたように再生される。

 

 

 そんな中少年はふと、頭の中でとある言葉を思い出した。

 

 

 ‶勇者は奇跡を起こす″

 

 

 

 —————————

 

 ——————————————

 

 ——————————————————

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

 

 目が覚めると、そこはいつもの家の中だった。部屋は薄暗く、カーテンのかかった窓からは太陽の光が淡く漏れているのが見える。部屋もおそらくはまだ夜が明けてきた頃だからだろう、主役は家族の中で一番寝起きが悪い。耳を澄ましてみると、下からも家事をしている母親の物音もしなかった。

 

 

 普段から騒がしく早起きな長男よりも早く起きているあたり、早朝ということを理解した。

 

 

 

「夢、か」

 

 

 何かとても、悪い夢を"また"見ていた気がする。ただ、どんな夢だったのかはまるで思い出せない。悪い夢を見た、という感覚だけが残っているようで、スッキリしない状態だった。

 

 

「(……何だったんだ?)」

 

 

 冷や汗が頬を伝う。

 

 

「(考えていても仕方がないな……)」

 

 

 気分を入れ替えるために起き上がると、窓からはまだうっすらと夜が明けきっていない青が見える。窓を開けるのはもう肌寒くなってきた時期だが、カーテンと窓を開けて深呼吸。自分の部屋は少し危ない草花たちが観葉植物として並んでいるので、部屋の中だが空気はかなり綺麗だ。とはいえ、気分を切り替えるならこうした方がいいのだろう。

 

 山の連なり、木造の家屋達、早朝を告げる鳥たちのさえずり。美しい田舎の風景や音、空気の匂い、熱を持った太陽の光、向こうからやって来た自由な風などを全身で感じる。だが、風は胸の中に滞留している物を飛ばしてくれるわけではなかった。

 

 目覚めは悪いが、外は天気がよさそうで良い朝ではある。

 

 その後は汗で体が冷えたので、少し震えながらも制服に着替えて、身だしなみを整える。そして机に置いておいた、昨日も読んでいた兄の本を手に取る。昔からずっとあるものだ。とても大きくて分厚く、全て読み切っていない。

 

 読み終わって暗記していないものが、あと5冊もある。

 

 

「(……眠い)」

 

 

 彼はそう思いながら目を擦り、片手で本を持ちながら開く。そして目を擦っていた手は花に人差し指を指すと、指先に小さな橙色の魔法陣が構築させる。魔法陣と同じ色の水がシャワー状に葉に当たり、パラパラと音をたてて降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 この物語の主人公が住んでいるのは、コズモという世界で1番繁栄しているクロウリア国の、ごく普通の田舎村だ。主人公はクロウリア国の王、ヒッシーから「勇者達よ。人々のため、我が国のクロウリス学園で文武両道になり、世界を救ってほしい」という指示で国1番の歴史ある、国立クロウリス国際学園に無償で通っている。

 

 しかし、これをとても悪く言えば……。

 

 勝手に王様からの使いがやって来て、家に図々しくもズカズカと入り込み、訳が分からないまま馬車で長時間も、吐きそうな体験をしながらも(帰りに吐いた)城まで強制移動をさせられ、やっとの思いで着いたと思えば、「絶対世界救えよ! 絶対だ!! そもそも、お前らのような庶民でバケモノが俺という国王が迎えに行かせてやったんだからな!! 勇者として当然の事だ、本来ならこの城に居れる事を光栄に(以下略)」と、言葉裏の圧力を念入りに何度もかけられ、古臭くて無駄に大きい学校に、今日も学校に通わなくてはいけない。

 

以下、主人公の王に対しての不満タラタラな文をお楽しみください。

 

 

 世界を平和にしたら、したで「世界を救った勇者が通っていた学校」というふうに、学校を売り出すんだろう、そういうところはわかっているからな。

 

 そもそも勇者の役割を持っているのだから、必ずなさなければならない事だ。言われなくてもやっている、その為に日々強くなるように辛い日々を送っているのだから。

 

 それなのにだ、世界のためだとか言っているが、保身の為にわざわざ使いを出してまで城の方まで移動させ、釘を刺したのか。

 

 ふざけるな、髪の毛を必ず一本は残すようにしておく魔法をかけてやる。

 

 

 ……以上が主人公の思っていることでした、ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました、暇人の皆様方。

 

 ちなみに国と学校の名前が紛らわしいと有名であり、もう少し名前変えろよと生徒たちから言われている。クロウリス学園は主にエリートや名家、貴族や才能のある子供や学習意欲のある大人ばかりを集めた学校で、年齢もバラバラ。なりたい将来の為に必要な施設や備品が全て揃っており、靴屋やシェフを目指したい者や、邪悪な魔物から剣で戦い、盾で人々を守る騎士や戦士。

 

 得た知識を元に、魔法で人々を救う魔導士を目指す者達が、分野を問わず幅広くクロウリス学園には通っている。

 

 今日も勇者として生まれた使命を全うする為、自分と同じく勇者の使命を背負った兄弟2人と一緒に通っていた。勇者三つ子兄弟は戦闘部門なので、5年通うことになっている。13歳の頃に入学して、今年で2年が過ぎた。ただ勇者は魔王と戦うことが使命であり、今は大人しいが魔王が遣わしてくる魔獣からの侵略はいつ起こるかはわからない。一秒でも時間が惜しい、なので3人は早期卒業を目指していた。

 

 

 

「起きろってば」

 

 

 次男は目を覚ますと、目の前に顔だけが似ている兄を見る。

 

 

「う~ん……あ、おはよう……」

 

 そしてベッドの隣を見ると、自分よりも寝起きが悪い弟が今日も隣でベッドに座っている事に気がついた。

 

 

「起きたか」

 

 

 弟にそう話しかけられ、エリオは聞いてみる事にした。

 

 

「最近、起きるのが早いんだね」

 

「……それよりも、遅刻するぞ」

 

 

 話をそらすようにアレスは言うと、ハッとしてエリオがしまったという顔をして思い出す。

 

 

「今何時?!」

 

「もう少しで8時だ」

 

「急げ急げー! お前が移動魔法を使わないと、俺達遅刻だぞ!」

 

「まだ時間の余裕あるし、急がせないでよ~!」

 

「俺は早く学校に行きたいんだ!」

 

 

 エリオは魔法に秀でており、ハイドとアレスも人並み以上に十分魔力はあるのだが、瞬間的に移動する魔法はかなり高難易度で、距離によってもむつかしさが変わってくる。

 

 そもそも魔力が足りないので、2人で力を合わせれば使えなくもない。

 

 しかし魔力というのは波長と性質があり、人の数に比例して波長と性質の種類がある。性質とは種族などによっても異なり、相性が良くないと複数人での魔法は使えないが、かといって波長を同じにしなければいけない。

 

 そして、人間関係の良さも関わる。

 

 しかも波長を完璧に合わせるのは、兄弟だとしても何度か練習をしなければ使えない。

 

 例え2人の魔力の波長を全く同じにして、同じタイミングで同じ魔法陣を組み合わせて展開することができたとしても、発動させるために必要な時間は、30分も必要だ。

 

 9時30分までには着席していないといけないので、とっくに遅刻なのである。

 

 

「わかってるよ、だから焦らせないでってば!」

 

 

 長男は弟の服を着替えさせ、末っ子は次男の魔導書を立ち読みしている。

 

 

「よし、下いくぞ!」

 

「待って! まだズボンと上着が!」

 

「歩きながら穿けばいいだろ!」

 

 

 ドタバタと音を立て、なかなか騒々しい朝がいつもの登校準備だ。そしてエリオはどんくさいので、ハイドの言う通りにしようとしたところ、ズボンの裾を踏んでずっこけた。

 

 

「あ~、もうホント仕方ないヤツだな。お兄ちゃんが手伝ってあげるから、早く着替えろよ?」

 

 そう言うとハイドは上着を着せ、エリオはズボンにしっかりと足を通す。……少し違和感を感じたが。制服はとてもシンプルで、男子は指定の黒。特殊な糸を使った指定のシャツとズボン。

 

 そして部門によって違う差し色と、戦闘部門では個人ごとに違うデザインの学生服。そして、クロウリス学園では必ず付けなくてはいけない、星型のバッヂだ。

 

 エリオは魔法特化の戦闘部門者なので紺色のケープを着ており、緊急時でも動きやすい。魔法を使用する際は常時魔力消費と重力増加、弱体化の魔法付与(エンチャント)が施されており、実際は見た目よりも軽い。ただローブに付いている防具技能(アーマースキル)が発動している場合だと、とにかく重くなる。

 

 用語について説明しておくと、魔法付与(エンチャント)というのは道具や武器を作る際、装備した時に自身の魔力で発揮する効果を追加する事などを指す。そして、魔法付与(エンチャント)がされた物の事をこの世界では魔法具(アーティファクト)と呼ぶ。

 

 ハイドも部門は同じで紺だが、役回りはステータス的に見れば防御力が高いのでタンクだ。

 

 しかしハイドの戦い方はは盾と片手剣を使う、王道な勇者スタイル。3人の中では身体能力のポテンシャルが一番高いので、ステータス通りに大きな盾を持ち、守りに徹するよりこっちの方がいいからだ。よく見るブレザーに弱体化と重力増加の魔法付与(エンチャント)が施されているが、2人のものより少し強い。

 

 末っ子は剣を使うため、素早さと攻撃力を重視し、ブレザーではなくベストだ。なのでかなり軽量化した紺色の上着を着ており、兄と同じく弱体化と重力増加の魔法付与(エンチャント)が入っている。

 

 何故そのような魔法付与(エンチャント)がされているのかというと、重りや制限装置のようなものを服として身に着けることで、ステータスを座学の途中でも、上げる為だからだ。

 

 そして制服という名の魔法具(アーティファクト)は、持ち主の魔力で徐々に強力になっていき、制服も体の大きさに合わせて変化する。

 

 常人であれば、手に持つだけですぐに体が倒れてしまうほど。しかしハイドとエリオは慌てながら階段を降り、末っ子は本を読みながら階段を降りていく。

 

 ……かと思えば、足を滑らせて階段からちょっと落ちていた。ゴンッという鈍い音が階段で響き、兄達は「またどこかで転んだな」と階段の方をチラリと一瞬だけ見た。

 

 (読者の暇人たちは階段を降りながらのスマホは絶対に気をつけよう)

 

 ごく普通に生活をしているようにしか見えないが、実際には悪〇のギブスを制服として着ているようなものだ。防具技能(アーマースキル)を発動させないようにするには”防具技能(アーマースキル)、停止(ストップ)”と言えばいい。

 

 下に降りるにつれ、鼻腔をくすぐる美味しそうな香ばしい匂いがしてきた。3人とも食事前なので、自然と食欲が湧いてくる。

 

 

「おはよう、今日もお寝坊さんね」

 

 

 魔人特有の耳をしているが、魔人にはとても珍しく美しい長髪黒髪とエメラルドのような目をした女性が、勇者たちに微笑みかけた。言わずもがな、この勇者たちの母親だ。名前はエレイミア・ロイダンツという。

 

 

「お母さんおはよう!」

 

「おはよー!」

 

「早く食べちゃいなさい」

 

「「はーい!」」

 

 

 2人が元気よくそう答えている間、アレスは兄の本を元の本棚の位置に戻す。すると母親はエリオの恰好が少しおかしい事に気が付いた。

 

 

「ズボン表裏反対よね? それ」

 

「えっ……」

 

 

 エリオは下を向いて確認してみると、確かに反対になっていた。

 

 

「ど、どうりでなんか変だなと思ったんだよ……」

 

 

 少年は顔を両手で覆うと、しゃがみ込む。どうやら恥ずかしいらしい。

 

 

「顔赤くしてないでさっさとズボンだ、ズボン! そしたら朝飯食うぞ!」

 

「まだ朝ご飯食べてなかったの?!」

 

「……」

 

 

 今日の朝ごはんはとてもシンプルで、主食は焼き立てのパン。おかずは生みたて卵のスクランブルエッグ、焼いたソーセージ。副菜はご近所さんに貰った野菜の新鮮サラダ、飲み物は牛さんの搾りたてミルクで、そのミルクで作られたデザートのぶどう入りヨーグルト。

 

 シンプルで新鮮だからこそ、とても美味しい。……が、今は3人には味わって食べる暇もない。本当はよく噛んで食べたいところだが、ミルクで流し込むようにして食事を終えた。                                                                                                                

 

 

「ごちそーさま!」

 

「お母さん、今日の夕飯って何?」

 

 

 朝食を食べ終えたばかりだというのに、ハイドはもう夕食の内容を聞こうとしている。というのも、自分にとって今日は特別な日だからだ。

 

 

「今日は、皆が大好きなシチューよ!」

 

 

 ビーフかホワイトか。

 

 どちらのシチューなのかが気になり、3人とも母親をじっと見つめる。

 

 

「今日はどっちもなの! だって今日は2人の誕生日だもの。それに、明日は大事な記念日が2つに重なった、アレスの大事な日なんだし」

 

 

 そう言い、エレイミアは3人の頭を撫でる。

 

 

「やった!」

 

「じゃあお母さん、行ってきます!」

 

「行ってらっしゃい。あ、そういえば……今日の夜、お父さんが帰ってくるわよ」

 

 

 すると3人の表情が途端に硬くなる。先程の雰囲気もどこか重くなった。

 

 

「……ごめんなさい、言わない方が良かったわね」

 

「ううん、大丈夫だよ。そろそろ行かなきゃ! "ムーヴィ"」

 

 

 次男を中心に3人が中に入れるだけの足元から深緑の魔法陣が展開され、光り輝く。

 

 そして一瞬にして建物の中に瞬間移動した。

 

 

 

 ここでまず、クロウリス学園に着いたので、学校とシステムについてを説明したい。

 

 クロウリス学園は実力者や素質がある者と、ほとんどは貴族のための学校な為、年齢は関係ない。なので、入学時に渡された星型バッヂの見た目と制服の差し色によって優秀さと学年がわかるというものだ。

 

 バッヂはオリハルコンと希少なミスリル素材で魔法付与(エンチャント)がされている物だ。また、生徒であるという証明であり、特注品。いわゆる、生徒手帳のようなものでもある。

 

 入学したての頃は、オリハルコンの金に近い銅色でメタリックな星型バッヂに、魔力付与(エンチャント)がしやすく、鋼よりも頑丈で銀のような美しさを持つ、ミスリルを凹凸のある模様として作り出した、五重マークの星型のバッヂ。

 

 ……というつまらない見た目だが、良い成績を出すと自動でバッヂに名前を魔法で刻まれた持ち主の魔力を吸い取り、中心から魔力で作り出した結晶ができていくという物だ。

 

 最終的には五重の星型バッヂは、持ち主の魔力で作られた、結晶のついたバッヂに変わる。そして持ち主の魔力色で結晶の色が違い、更に輝き方が性格などでそれぞれ違ったりする。

 

 その状態で学校生活を4年間過ごし、最終的に五重星の状態のまま先生達に認められれば卒業式に参加して卒業する事ができる。しかし、少しでも満たさなかった場合は留年という厳しい制度だ。つまりは何時でも見れる通知表のようなものも果たしており、細工はできないようになっている。2年や1年で五重星になっている者は既に4年で習うところを予習した優秀な生徒という事だ。2年の場合は標準が三十星で、成績が良いと四十星。しかし、戦闘部門の場合はそれとは別に卒業するに値する戦闘力も卒業条件に入る。

 

 ちなみに魔力がほとんどない生徒や貴族、貴族でも将来は戦う道を歩こうとしている者以外は、色違いでミスリルをベースに、オリハルコンが星の模様となり、バッヂが本物の純金になっていく。

 

 校則を破った者、成績が下がった者は魔力の結晶を元の魔力に戻して本人の身体に戻し、段階ごとに宝石が小さくなる。又は、元のミスリルに段階ごとに戻っていく。

 

 ハイドは二重星、エリオは三重星のバッチで、アレスは四重星。ただ単純に成績が良く、沢山勉強をして少しでも勇者として、そして鍛錬をする時間と魔法に費やす為だ。

 

 だがアレスはこの学校に少し疑念や、理解できないと思っている事があった。

 

 彼は国が金を出して創建した国際学校なので、設備や備品もあり、自分の学びたいことや、やりたいことも充実してできるこの学校は、とてもいい環境だとは思っている……が。貴族も通っている学校でもある為、内装や外装も無駄に豪華。広い庭もある上に貴族の中には許可を取ってまでドレスを着て、学校に通うお嬢様も多くいる。この学校は貴族たちにとっては社交の場でもある為、学校の華やかさも自然と付いてくるのであった。

 

 社交界とは、華やかなお嬢様達や爽やかなお坊ちゃんたちの笑顔の裏には、欲と陰謀が隠れている。つまり貴族にとっては戦場の場であり、家の繁栄のための学校(会場)。常に嘘と真実をうまく織り交ぜ上手に使い分け、他者を蹴落とし、欺こうとする者が大半だ。王から賜った領土を管理することはあるが、分かりやすい利益にしか目が行かず、村程度には何もしないことがほとんど。

 

 アレスはその事について、何故そんなこととそんな者たちの為に多額の税金を使うのかが不可解でいた。

 

 学び舎に、豪華さや華やかさや社交などは必要ない。優秀な人材を育てる為の場所だと、誰よりもそう思っているからだ。そもそも、何のためのバッヂなのか、アレスは目的が果たせていないように感じている。

 

 能力も人間性も、優秀な人材かどうかを見極めるための物だというのに。いずれ金になるバッヂになるのでは、人の内面までは見ることはできない。結晶として、美しく輝くか濁っているかどうかが、見ることができないからだ。それにただの人間だろうと、ほぼ必ず魔力が微量ながらも存在し、体に負荷をかけずに結晶を作れるほどにはあるからだ。やはり学校も所詮は国に作られた建物だと、アレスは時々思う。

 

 頭上には巨大すぎるシャンデリア、明らかに割ってしまったら凡人には一生払いきれない……。いや、金で解決できるほどの物ではないピカピカに磨かれた年代物。

 

 華やかさと眩しさに慣れたが、それでも時々アレスは目がチカチカしていた。そして今日も学校に転移魔法の発動者と、その同行者専用の魔法陣がある部屋に着く。

 

 足元の魔法陣と部屋全体は移動魔法を使った際に、誰かにぶつからないようにするための物でもある。あとは生徒を守る、セキュリティの役目を果たしていたりもする。

 

 なので学校に行くために転移魔法を使った際は、自動的に必ずその魔法陣の内側に移動することになる。バッヂを着けていなければ、転移魔法を使ったとしても何も起こらない。

 

 つまりはゲーム的で簡単に言うと、安全のためにワープ地点が決められているという事だ。それにしても、それだけの為にある部屋だというのに……高級そうな置物とピカピカに光るシャンデリアがあるのはどういう事だろう。金遣いがとても悪過ぎる、ここは美術館か? と、初めて来たときはツッコミそうになった。

 

 

「よし、着いたな!」

 

「じゃ……じゃあ……早く、ここから出て教室行かないと……!!」

 

 

 次男は羞恥と緊張でプルプルと震えながら長男の肩を強く握りしめる。

 

 

「早くその人見知り直せよ~? もう2年経つんだからさ。あと痛いからもうちょい手の力を落とそうな?」

 

「で、でも……」

 

「なっさけないな~、てかホントに痛いからそろそろ離して」

 

「……早く行くぞ、遅刻したらどうする」

 

「俺の肩の心配は??」

 

《アレスは伊達メガネを装備し、髪型を変えた》

 

 

 長男がドアを開けると、その先には沢山の貴族令嬢たちと、お付きの召使い達。そしてたまたま通りかかったご子息たち。

 

 そこら中から黄色い声が上がる。静かに勉強がしたいので目立ちたくないアレスは、今日も焦げ茶縁メガネをかけている。普段の前髪の分け方も少し変えて、なるべく目や顔を隠すようにしてワザと顔を下に向けて地味を装う。前髪だけでも十分に効果を発揮しているが、念のためだ。

 

 しかし、親譲りの顔立ちはビミョーに隠しきれていない。しかし人はアレスを遠巻きにして見るだけなので、バレていないのであった。流石に体を動かす時は前髪を元に戻さないと前が見えずらいので、戻しているから同じ部門の人はアレスの素顔を知っているものの「コイツまでイケメンな勇者であることが知られて注目を浴びるのはなんか気に食わない」、決してアレスの素顔について誰も口外することはなかった。

 

 これぞ秘技『学校に誰か一人くらい、教室の一番後ろの窓側でとかに居る、地味でぼっちなモブ系クラスメイトになりすます』だ。

 

 ただ勇者であるアレスは有名人な事には変わらない。やる意味は無いように思うかもしれないが、相手がお嬢様でもキャーキャー言われるのが嫌なのである。兄弟にキャーキャーしていても、自分が言われていないのならそれでいい。少しでも、この気配感知の技能(スキル)で大勢からの憧れや異性への感情の眼差し、貴族のお坊ちゃんからの嫉妬の視線を強く感じていたくない。全ては勇者としての使命を果たす為に、アレスは落ち着いて1人で勉強をしていたいのだ。

 

 そして先程出てきた技能(スキル)とは、技術や能力などの事だ。何故そんな技能(スキル)を持っているのかというと、それは過去の修行に関係する。ただ、今はその話をする時ではないので、その時まで待っていてくれ。

 

 

「勇者様たちがいらっしゃいましたわ!」

 

「今日も本当にかわい──、美しいわ……」

 

「まさしく、神の造形ね……」

 

 

 どこかの屋敷で暮らしているお嬢様達の視線は、まるで自分が好きなアイドルや推しを見に来たファン、又はオタクのよう。お坊ちゃま達からは見下すような視線と、嫌悪の表情。それと一部の少人数は勇者たち(主に2人)の背後にターゲットオンをして狙おうとしている漢たち。

 

 

《ハイドとエリオは寒気を感じた!》

 

 

 しかし、こんな朝はちょっと昔の少女漫画とか女の子が好きそうなものによく出てきそうな展開だなと作者が思ったのは絶対に秘密である。

 

 

「ハイド様ぁー!!! ご機嫌よう!!」

 

「キャーッ! エリオ様~~!! こっちを向いてくださいまし~~!!!」

 

 ファンの一人である、顔見知りですらないお嬢様は勇者の名前を呼ぶ。エリオの方はプルプルしながらハイドの後ろに引っ付いたままだが。

 

 

《ハイドはどっかしらの令嬢(モブ)に話しかけられた!》

 

 

「おう、おはよ!」

 

 

 長男は自分の名前を呼ばれたので、名前を呼んだ令嬢にニカっと笑ってみせる。知らない女の子であろうとも、ちゃんと挨拶を返すのが紳士である。……たぶん。そしてハイド本人にとってはただの軽い挨拶だが、自分で自覚するほど顔がいいので──。

 

 

「あ゙ッ……」

 

 

《どこかの令嬢に精神的9999のダメージ! クリティカルヒットした! モブは気絶してしまった》

 

 

「お嬢様?!」

 

「お気を確かに!!」

 

 

 気絶する者も多数。

 

 

「「「きゃあああぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

 

 もはや断末魔のような声が長い廊下に響いた。確かにこれは地味系ボーイにカモフラージュをした方が、平穏に過ごせてよさそうである。しかし、見た目で判断する人間も多くいるので、アレスはこの前貴族の男子に絡まれたりもした。その時は完全スルーかOHANASIをしている。皆物わかりがいいからか、それからはアレスに絡むことはない。

 

 

「や、やっぱり無理ぃ……」

 

 

 次男は隠れるように兄の背中にくっついているが、兄弟の中では一番背が高い方(背が高いとは言ってない)なので隠れ切れていない。

 

 

「自信持てって」

 

「う~……」

 

「……」

 

 

 家でもドタバタと騒がしかったが、学校に着いたら今度はその他大勢が騒がしい。兄弟達は目立ちまくりの登校で自分も兄弟の一員だというのに、アレスはまったく自分は関係ないモブです。という様子で、体が小さいことを活かしながら(本人は不本意だが)無言と目を合わせないよう下を向き、早歩きで教室まで移動する事に徹底している。そうした日々の努力の賜物か、上に2人ほどキラキラオーラを放たず、むしろ性格ゆえの近づきにくい雰囲気と精一杯作った地味な印象なので、キャーキャー言われることは無い。

 

 ただイケメン勇者兄弟の末っ子なので、自分達が知らないだけでイケメンなのでは……? 眼鏡を取って前髪を整えるとイケメンらしい。眼鏡があっても角度とか距離によってはイケメンに見える。普段素っ気ないけど、意外と優しいやら、声が美声という真実の混じった噂が出ていたりはするが。

 

 アレスが素顔を隠す理由は理由は3つある。相手にするのが大変なのと、学業に専念したいのと、その中で一番の理由は静かに過ごしたいからだ。ちなみに家でも魔法の勉強・研究と鍛錬をしていて、真面目でガリ勉なところがある。真面目で結構責任感の強いアレスは"勇者として早く強くならなくては"という思いから、休んでいられないと考えてしまい、つい焦ってしまうのだ。

 

 学校では勉強をしに来ているという意識がある為、休み時間にはしっかりと何故か休める。なので休み時間がアレスにとって一番休める時間だ。もしそんな休んでいる時に令嬢たちに話しかけられたら、たまったものではない。なのでとにかく地味に徹していた。本人は気にしているが、幸い(?)にも背は低いので下を向いていれば顔を見られることもないのである意味助かっている。

 

 

「よし、さっさと教室行くか!」

 

 

 そういえば説明し忘れていたのだが……。

 

 クロウリス学園の教師は、少し変わった者達しか居ない。

 






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