※この作品はR-18です。

チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった   作:水性さん

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実は某ドMの柴犬変態勇者は、ハイくんを酷くした感じにして設定考えてたんぜ。

ちなみにハイくんが寿命で死んだ後、元々三等分の内一つとして欠けていたハイくんの分の魂が砕け散って消えちゃったけど、欠片だったとはいえ1つの魂としてティアちゃまが認識した為、魂の型ができました。

魂の型って言うのは、世界を作る時に定めた魂のデフォルト設定みたいなもの。パターン1とか2、そんな感じ。例えば1つの魂が消滅して新しく魂が自然発生したとして、その形を世界がオートで決める時に使われる設計図って訳です。元が勇者の魂なので、特別な魂として使われます。その型を使われて存在している魂はたった一つだけ。

そうして型ができた後、新しくできた魂が某変態勇者でございます。実質ハイくんの生まれ変わり。

つまり某変態の魂が消えない限り、ハイくんの魂の型を持った魂は新しくできないって訳です。





勇者、不安になる

 

 

「はぁ~~……」

 

 大きなため息を付きながらベッドの上でゴロゴロしているフォルは、渡しそびれたプレゼントを手に持ち、眺めていた。結局あの後は渡しそびれ、炎上する前にハイドが謝って鎮火。女の子を一人で帰らせるわけにもいかないという事で、意外にもしっかりと送り迎えされていた。その後、研究に没頭していた掃除嫌いな両親の代わりに家の中を掃除し、現在に至る。晩御飯はいつも少し遅いので、お腹が減ってもまだ食べていない。もう他の家では食べている時間帯だろう。

 

 帰っちゃうときとか、唐突でもいいから「これあげる、また明日」って言って、すぐに家の中に避難しとけばよかったわ。

 

 そう思い後悔していたが、今更また渡しに行くのは迷惑だろうと思い、本当は勇気が出ないことを棚に上げて言い訳を作る。

 

 プレゼントは当たり外れのない、お菓子の詰め合わせ。プレゼントなので物の方がいいような気もするが、あいにくロイダンツ家には必要以上のソール(この世界での人間が使う通貨名)がある。なので欲しい物や必要なものは全てあるので、前に欲しいと言っていた物が今はもう持っていることが多い。なのでフォルはお高めなお菓子をチョイスした訳だ。

 

なぜ作らないのかって? ハイドの好きなお菓子が渡せそうなもので、チョコだけだったからだ。作ってしまえばそれはバレンタインデーのようなものだ、決して料理とお菓子が作れない不器用だからなのと、ダークマターを量産してしまうからではない。

 

 絶対に違うもん! チョコ、づぐれるもぉん!! 

 

 選んだチョコの詰め合わせは綺麗に可愛くラッピングされており、これはエリオと昨日一緒に移動魔法の”ムーヴィ”で村から離れた街へ行ったときに購入していた。

 

 その際に早めだがエリオの分も購入して渡してあり、ハイドの好きそうな甘いものを選ぶのを手伝ってもらっていた。数時間は悩んでいたように思う。だが、結果的に渡せなかった。お菓子だけであそこまで悩む必要もないかもしれないが、その時間は今日の為に用意した物。今日渡さなければ意味がない。それにやはり食べ物なので、早く渡さなければ味が落ちてしまう。悪くなった物を渡すことになるのは、絶対に避けたい。

 

 だが、こうなってしまっては高いお菓子が勿体ないので自分で食べるか捨てるか、いっそ明日勇気を出して渡すか、今渡しに行くか。

 

「あぁもう、ほんっと意気地なし!! ……何してんのよ、私は!」

 

 考えた結果、フォルは今すぐ渡しに行くことにした。紙袋を出すと、ペンでなるべく綺麗に宛名を書いた。しかし、宛名など今までにほとんど書いたことが無かった上、あの幼馴染に贈るものだ。ただ”ハイドへ”と綺麗な文字で描けばいいだけの話だというのに、フォルはやけに緊張して心臓の鼓動がうるさくなっていたからか、納得のいかない字になってしまい、新しい紙袋を出す。とても勿体ない。そして何回かリライトしながら納得いく字がようやく書け、家から出ることにした。二階から降りると、母親がフォルを見てから特殊な魔道具(アーティファクト)に目を戻す。父親は完全に没頭しており、フォルが階段を下りた時の足音に気が付いていなかった。

 

「どこ行くの?」

 

「ちょっとやり忘れたことがあって」

 

「そう」

 

 この両親は放任主義なところがあり、あまり子供がやることに関与しない親だった。なのでまだここは平和な村とはいえ、娘が夜に出歩こうとしても特に注意することもない。フォルはそれから走ってハイドの住む家に行くと、着いたころには息が絶え絶えとした状態になっていた。

 

 着いた、着いちゃった。

 

 そう思いながらフォルは息を整え、走っている時よりもドキドキと鼓動が早いことを全身で感じながら深呼吸をすると落ち着かせようとする。しかし一向に収まる気配もなく、深呼吸する前とさほど変わらない状態のまま自分の髪をいじったりして触れていた。ここまで来てチキってしまい、一秒二秒と過ぎていく時間に焦り始める。女は度胸と誰かが言っていたような気がするが、全くその度胸が沸いて来ない。

 

「(あ~~~~っ、もう!!)」

 

 結局フォルは紙袋を置いてドアをノックして隠れていた。するとガチャリと音がして、紙袋が拾われる音がし、家の中に戻って行った。その間は無意識に息を止めていたらしく、勢いよく息を吐き出してすぐに息を吸う。

 

「本当に私、何してるのよ……」

 

 そう呟くとフォルは走って家に戻って行った。一方ロイダンツ家ではハイドがその紙袋を両手で抱えていた。

 

「見てお母さん!!」

 

「あら、ハイドその紙袋はどうしたの?」

 

 エレイミアはそう優しく聞くと「俺への誕生日プレゼントっぽい!」と子供っぽく喜んでいるハイド。

 

「よかったわね~」

 

「外に置いてあったんだよ、一体誰が置いたんだろ~な~!」

 

「ふふ、そうね。誰が置いたのかな?」

 

 そうワザとらしく言い、ニコニコにやにやする2人。魔人族は魔力量によって、どこまで微量な魔力を感じ取れるかが変わる。ハイドは3人の中で一番魔力量が少ないとはいえ、しっかりと誰が置いたのかはすでに分かっているのである。エレイミアは魔力が無いので魔力を感じ取ることはできないが、それは女の勘だ。今はもう自分の部屋にいる他の兄弟たちも気づいているだろう。ハイドからしてみると欲を言えば、直接貰いたかったが……幼馴染が可愛いのでよしとした。

 

 ハイドは自分の部屋へ持って行くとワクワクドキドキな状態で紙袋を開け、綺麗なラッピングのされたチョコの詰め合わせに目を輝かせていた。魔人族は魔法を使う種族なので、基本的にお菓子が大好きな甘党ばかりだ。自分の好きなチョコが沢山入っていたので、勿体なさを感じるものの一つだけならいいかと思い、食べてみる。

 

「なんだコレ、うまぁ……。絶対これフォルが作ったやつじゃないだろ、まぁ……嬉しいし、その方が良いけどさ」

 

 その後ハイドは夢中になって食べていたら全て食べてしまい、勿体ないことをしてしまったと思いながらも満足していた。そして次はフォルの誕生日が来年の夏に来る。ハイドは「フォルの誕生日には何渡そーかな、んー……」と、今から頭を悩ませていた。

 

~・~・~・~

 

 外は分厚い雲が空を覆い、果てしない暗闇を生む。嫌な天気だと外を見ていればそう思うだろうが、勇者の住む家には誰もが俯き、静かな夜を魔道具(アーティファクト)仕様の時計の秒針が動く音をBGMにして過ごしている。もう時刻は8時過ぎだ、時間が過ぎるごとに空気が自分たちに重くのしかかる。母親のエレイミアは顔を青ざめて、何度も夫がナッツに託していた手紙を読んでいた。

 

 ナッツはいわゆる伝書鳩の代わりや、ハスリオドの移動手段として普段から背中に乗ったり、荷物を運ぶための旅の相棒でありペットだ。しかし伝書鳩でもなければフクロウでもない。竜、つまりドラゴンだ。といってもまだまだ赤子のようなものであまり大きくはなく、何万年も生きる竜にとって39年という月日はあまりにも短い。

 

 この世界における通貨は1ソール1円だが、普通はドラゴンを買うと何億ソールもかかる。何故そんな高額のドラゴンを買っているのかというと、それはハスリオドが幼い頃の話になるので割愛。

 

 そして名前の由来はくるみ割り人形の代わりに殻を砕いてもらっていたから、というシンプルな理由だ。

 

 そんな話はさておき、肝心な手紙はというと、こんな内容だ。

 

『ハイドとエリオの誕生日、午後8時に帰ってくる。夕飯は用意しておいてほしい。 PS.3人は毎日鍛錬を怠っていないか? 怠けていたら、無理やりにでもやらせておいてくれ』

 

 とても短い文だが、とてもハスリオドらしい手紙だ。毎回面白みは皆無だが、毎週やってくる。本人もそれを自覚しているらしく、今日あった事を日記のように書いていたりしてネタを作ろうとするものの……。やはり面白みが欠けてしまうが、それでも欠かさずに手紙を出すことが大切だろうと考えている。

 

 そしていつも帰ってくるときには、手紙に書いてある時間通り……しかも秒単位でぴったりで帰ってくるのだが。

 

 ~回想~

 

 時計の秒針が約束の8時を指し示そうとしている時、エレイミアは少しソワソワした様子でドアの前に立つ。あと数十秒もしたら、あの愛しい夫が帰ってくると思うと待ちきれなくて仕方がない。そんな様子を見ていたハイドは、時計を見ると「うげー……」という表情になる。

 

『あー、そろそろクソ親父が帰ってくる時間か~』

 

『だからお母さんがドアの前で待ってるんだね……』

 

 そしてエリオはナチュラルにハスリオドの事をそう呼んだハイドに「本人の前では言っちゃダメだよ、絶対」と言っておく。あと帰ってくるまで、既に5秒以内だ。

 

 カチッ(7時59分57秒)

 

 カチッ(7時59分58秒)

 

 カチッ(7時59分59秒)

 

 ガチャッ(8時00分00秒)

 

『『(うわ細かっ)』』

 

 ~・~・~

 

 

 今まで1秒たりとも遅れることがなかった。もしかすると、時間に合わせてドアの前で待っていたり小走りで間に合わせようとしているのかもしれない……。

 

 なのにも関わらず、あの夫が遅れるという連絡もなしに30分も待たせるだろうか? そう考えるとやはり、何かあったと考えるのが妥当だ。大怪我? いや、あの人に限ってそんなことはない。いや、職業は傭兵なので怪我をしないことは無いだろうが。そうすると、その場から動くことができない状況だと考えられる。3兄弟にとって父親はあまり関わりたくない人物で、その中でハイドとしてはむしろ、もう帰ってくんなと言いたいところではある。

 

 ただ子供に対する態度は少し悪いが、仮にも父親だ。成長期の(たいして伸びないけど)思春期の子供が魔法やら剣をぶっぱなしたり、振り回したりするのだから相当エネルギーを消費する。つまり食べる量も相当だ。それに生活用品など、趣味にもお金が必要だ。鍛錬をし過ぎていては、いつかふとした時に燃え尽き症候群にかかってしまう。それらの金銭問題はやはり、ハスリオドのおかげでわが家が成り立っていた。

 

 なのでそう簡単に帰ってくんなとは言えない、というか言ったらやばい。

 

 そしてこんな状況の中、心の底からハスリオドの身を案じて不安そうにしている母親に対して、声をかけることができずに時間がただ浪費されていく。

 

「どうしたんだろうね、お父さん。……今までこんなことなかったのに。……でも、もしかしたらひょっこり帰ってくるかも!」

 

 エリオはこの空気に耐え切れずに、言葉を絞り出す。あまり元気よくは言えなかったが。エレイミアはいつまでもこんな表情を息子たちに見せるわけにもいかないので、なんとかいつもの笑顔を見せようとするがうまくいかない。

 

「……そう、よね! でも、やっぱり不安だわ。最近は森に居る魔獣も増えて危ないし、他の国でも魔獣が出てきて混乱してるじゃない? だから……ね、心配なの。それにあの人はああ見えて、寂しがりな人だから」

 

「「……え?」」

 

《二人は文字通りに固まった!》

 

「私には凄く甘えん坊さんなのよ〜? あ、これ内緒ね。すごく恥ずかしがって怒っちゃうから! でもそこが可愛いの〜! 2人っきりの時はよくチューして欲しそうに私を見てきたりとかして~、それで……うふふっ♡」

 

 後半から惚気を聞かされていたが、それを息子達は聞かなかった事にしていた。3人はテレテレしながらプンスカしている父親を想像して「ハズリオド……」と思ったのは流石兄弟と言ったところである。

 

 両親は思ったよりも仲がいいらしい、ただ3人……特にハイドはその愛情を少しぐらい分けてほしい。とは少しだけ思わなくもなかった。

 

「明日には帰ってくるわよね! 寝る準備をしなくっちゃ。ほら着替えて歯磨き、歯磨き!」

 

 3人はエレイミアにそう言われるがまま2階に上がると、静かに着替えていた。パジャマは母親の趣味だが、着ぐるみ仕様の動物の見た目をしている。ハイドは白い犬、エリオは黒い兎、アレスは茶トラ猫のパジャマを着ている。これは昔からずっと変わっておらず、もう当たり前になっているので特にお互いに格好のことで何かしら言った事が一度もない。やはり母親の血の影響が大きい、やべぇ。

 

 母親の作ったパジャマは大事で本当に気に入っているので、まったく他のを着ようとは思わなかったりもする。3人が戦闘部門の合宿でそのパジャマを持って行き、着た時も『流石勇者だ、俺達には真似できねぇ事を平然とやってのける!! そこにしびれる、憧れるゥッ!!』というふうに同じ部門の人達から噂が広まり、それを聞いた貴族の令嬢たちはとても熱狂し……。

 

 中にはどんなパジャマなのか想像し絵を描き始める夢女子、酷い(毒された)者の中には腐女子達も続出。乙女の神絵師や妄想の限りを尽くした同人誌を描く者達が崇められるようになり、需要と供給が釣り合わなくなったという。今は魔法具(アーティファクト)で撮れた秘蔵ブロマイドという名のモチーフやら模写(無断)が高値で売れるらしい。

 

 ただ、アレスは徹底的に顔の良さを隠しているので、アレス関係の物は圧倒的に少ない。いわゆるマイナーというやつだ。ちなみに今一番熱いと言われるBL本はハイ×エリとの事(とある有名な貴族令嬢の同人作家談)やはり王道が最強という事だろう、他にはエリオとルキの人種と階級を超えた禁断物だったり。

 

 ハイドはフレンドリーなので男女関係なく人に好かれやすいタイプだが、人種が魔人という事もあり、あまり一定の人との交流はない。なのでBL関係では兄弟とのCPが自然と多いが、その代わりにハイドの夢女子が多かったりする。エリオの夢女子も多く、アレスのものは少ない。顔バレしたら必然的に多くなるだろうが。

 

 そんなどうでもいい説明をしている中、3人のいわゆるサービスシーン(主にショタコンしか喜ばなさそうではある)が終わったところだ。

 

 ハイドは白い犬、エリオは黒い兎、アレスは茶トラ猫の着ぐるみパジャマ姿になると、1階に降りて洗面台に向かう。するとエレイミアは蝶ネクタイをしたペンギンの着ぐるみパジャマで4人分の歯ブラシを持っていた。色分けがされており、赤と黄緑と橙と黒色だ。髪の色で統一しているとのことだが、どう考えてもエリオの魔力色は合っていない。

 

 以前に3人はそのことについて当然疑問に思ったが、母親であるエレイミアによると……生まれた当初は、元々そういう髪色をしていたとのこと。この話はまた別の機会の時にしようと思う。

 

「はい、どうぞ」

 

「んー」

 

 3人は母親から歯ブラシを受け取ると、優しく丁寧に歯を磨いていく。実はアレスは別に歯を磨かなくても虫歯にならないのでいいのだが、普通に磨いていた。

 

 そんな中、ハイドはケルをあの時構ってやればよかった……。

 

 エリオは明日ハイドから炎の魔法を教えてもらおう……。

 

 アレスはもしかすると、手紙を書き間違えたのかもしれない……いや、だが。

 

 とそれぞれ思っていた。ただ朝から続く、とても嫌な予感がアレスの思考を妨げる。 口を濯ぐと仕上げをし、うがいをする。寝る前の歯磨きを終えると、エレイミアは3人を1人ずつ抱きしめると「おやすみなさい」と言って隣の部屋に行った。

 

 それを見届けると3人は2階に上がり、それぞれ自分の部屋にあるふっかふかなおベッド様の上で横になる。だがアレスは未だに考えていた……しかし! そろそろ本格的に寒くなってきそうなこの頃、おベッド様はフルに能力を発揮し始める。勇者といえども、おベッド様の魔力には誰にも抗えない。魔物でさえ対抗する手段は無し。

 

 すぐに今日を一日頑張った身体が夢の世界へと旅立とうと瞼が閉じてきたのだ、流石はおベッド様と褒めてやりたいところだ。そして寝静まった夜、誰もが寝ている深夜2時頃。今晩もアレスは夢を見ていた。

 

 

~・~・~・~

 

 

 視界は狭く、やけに艶やかに燃える家屋は正に悪夢とも言える光景。

 

 僕は夢の中では昨夜見ていた夢を、何故かハッキリと思い出す。何故なのかは分からない、ただ不思議とそうである事が当然かのように感じる。生き物はいつか死に、そしてまた新しい生命として誕生するという、命の流れが循環する事と同じように。

 

 あぁ、昨日の夢か。

 

 やけに落ち着いた思考の中、誰かの気配を感じる。死んでいるかどうか、確認してきたのだろうと察した。だからなんだという話だ、もう体を動かす力はもう残っていない。だんだんとこちらへと近づき、自分を見下ろしている目と視線が合う。ただ顔半分から上は黒い靄がかかったように相手の顔を覆っていて、見えはしないというのに目が合ったと認識した。これも何故かは、全くわからない。

 

 ただ分かることは、自分よりも背が高く。髪の長い女性が、自分を見下ろしているということだ。鈍い炎の光で分かりづらいが、髪が少し光を反射している。

 

 一体何しに来たんだ? 何故ここに人が?

 

 ……僕を、どんな目で見ているのだろう。

 

 勇者としての責務を果たせなかった自分に、絶望の色を映した目を向けているのだろうか? それとも神からの加護を貰ったというのに、役立たずだと自分を責めている目をしているのだろうか。この悲惨な状態と村の様子に、哀れんでいるのだろうか。そう思ったが、次第に視線にはそういった感情を持っている訳ではない事に気が付いた。心配しているような目でもない、これは……なんだろう。

 

 すると口を開いて僕に話しかけているようだが、アナログテレビの砂嵐が流れたようで声が全く聞こえない。途切れ途切れにすらも聞こえず、ただ口をパクパクと開いているようにしか見えない。普通はこんな光景を見せられたら訳が分からずに、気が動転するだろう。前に見た夢は確かに悪夢として今は覚えている、こんな不吉すぎる夢だというのに何故か今回の夢はまったく恐怖を感じていない。

 

 むしろ、至って冷静でいられた。それどころか、どこかこの夢を見た事で安心さえしたような気分。どうせ忘れるというのに、一体何故これ程までに安心するのだろう。そして視界は完全に暗闇へと何もかもが黒に覆われる。暗闇の中、落下しているかのような感覚。いつまでたっても終わりが無い、だが徐々に落ちていく速度は早くなっていく。

 

 すると、頬をするりと誰かの手で撫でられた。先程の女性だろうか、とても現実味を帯びた手の感触を感じていた。ただ手はあまり暖かいわけでも冷たい訳でも無く、温度を全くと言っていい程に感じなかった。多少のむず痒さを感じるものの、あともう少しだけ触れてほしいと思う。気づけば落下は止まっており、浮遊感を感じていた。

 

 夢は一種の願望や不安の表れ、心理的状況を表したりするものだという。だがハイドがこの事と夢の内容を知れば「ストレス抱えてる上に、人肌が恋しいんじゃねーの? なら、お兄ちゃんがかまってやろーか?」とからかわれそうだが(その場合はクリティカルなゲンコツの刑)こんな訳の分からない夢が今自分の心理的状況を表し、なおかつ欲望だと言うのならたまったものでは無い。

 

 そんな不思議で意味不明の夢の途中、これだけはハッキリと聞こえた女性の声。その時、砂嵐の音は突如に消え去っていた。

 

『そろそろ時間だよ、でも起きたら辛いことがこれからいっぺんに待ってる。もしかしたら、死ぬかもしれない』

 

 意味深な言葉に、一体どういう事かを問おうとする。だが、口は針で縫い付けられたように動かない。

 

『大丈夫、キミなら乗り越えられる。だって──』

 

 それから先は聞こえなかった。何故ならどこからか聞こえた僕の声が、それをかき消してしまっていたからだ。

 

『起きろ!!』

 

 それを聞いた時、脳が起きろと強く命令を出す。何故かそうしなければならないという、強い自分の意志によって。

 

 






ノエルさんと違ってフォルちゃんはメシマズ系です。

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