チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
クリスマスに出てくるまんじゅうの回も出しておこうと思ったので、pixivから引っ張り出してきたぜ。
とあるお昼頃近く。
ティアは夜更かししなくても大体昼食頃の時間に目が覚めるアレスに無断で、何か面白い物が無いか探していた。
「そろそろ帰ろうかなぁ」
……今回は特に収穫はなかったようだ。
ティアは来た道を戻ろうとすると、近くに何かの気配を感じてキョロキョロと周りを見回す。
するとガサガサという、草をかき分けて移動するかのような音が聞こえ、そちらの方を向くと……。
「ティアッ」
なんということだろうか。何故か自分にそっくりで、頭に自分と同じミニシルクハットを着けていて、自分の名前が鳴き声らしい一頭身のまんじゅう的な生き物がそこに居た!
まんじゅうも、自分にそっくりで自分よりも体が大きくて強そうな魔者を見つけた!
ティアとまんじゅうに電流走る。
「「!!」」
そしてまんじゅうはあろう事か……。
「まぁま!!」
ティアを自分の母親だと勘違いした! バカだ! どう見たってまんじゅうとスタイル抜群のティアでは全く違うというのに!
ティアはすぐさまそのまんじゅうを抱えて走り……そして丁度起きたらしい寝癖だらけのアレスの元に走った。
「ゆーうーーしゃーーークーーーーン!」
「……ティア?」
朝から元気だな……なんてアレスは思っているが、とっくに時間帯はお昼である。充分寝たのにまだ寝むたげなアレスがうとうとと、目を閉じたり開けたりする。そんなアレスにティアは謎のまんじゅうを顔に突き出した。
「見て見て! ボクにそっくりな子が居たんだ! だからこの子飼うよ!」
「ティアッ!」
「……。
…………は?」
思わずアレスの眠気もぶっ飛んだ。
「名前は……ちゃまぁ! 何となくだけど、今日からキミはちゃまぁだ!」
「……はぁ」
そしてすぐに諦めた。
眷属である以上、主人であるティアにあくまで決定権があるからだ。こうして人外パーティーにまんじゅうが追加されたのである。
ただ問題になるのはナッツだ。ナッツは過去の事があり、とんでもなく人見知りでビビリ。
「きゅ、きゅー!!」
「ティアーーーーッ!!」
ビビって泣き叫んでいるちゃまぁを前にして、ナッツはビクビクでへっぴり腰、アレスの背後に若干隠れていながらも、ドラゴンとしての本能なのか鱗を逆立てて、体を大きく見せながら精一杯の威嚇をしていた。
ドラゴンの幼体ではあるものの、人型の魔者よりずっと体が大きいので、ドラゴンの威嚇はかなりの迫力があったのだろう。威嚇をしていたのがナッツでなければの話だが。
まだ鳴き声が幼体特有の高い声なので、余計に怖くない。むしろ心にキュンと、ときめかせてくるものがあった。
「ナッツ、今日からちゃまぁは……僕にもあまりよく分からないが、何故か一緒に旅をする事になった。だからなるべく、少しづつでもいいから慣れてくれ」
「きゅ……」
「ティアーーーーーーッ!!!」
この世界のドラゴンこわい。
まんじゅうしゃべるこわい。
しかしお互いにそう思っていたのも最初だけ。数日経ったある日、ナッツとちゃまぁは気がついた。
ひょっとしてコイツ、大した事ないのでは? ……と。
「きゅー!」
「ティアッ!」
それに気がついたビビり達は珍しくあっという間に仲良くなった。
「……案外、早かったな」
「オトモダチができて良かったね、ちゃまぁ」
「ティアッ!」
~・~・~
でっかい方のティアが変なまんじゅうに命名して「ちゃまぁ」を拾ってから1週間が早くも経過。飼うことになったはいいものの、実際に世話……というより、面倒を見ているのはティアではなくアレスが多かった。
しかしちゃまぁが懐いているのはあくまでティアで、アレスは……何故か某水色のプルプルと同じように"まぁま"であるティアの奴隷扱いしていた。
まぁまの手下イコール、自分の手下。
そんな訳で、ちゃまぁはよくアレスを自分の散歩という名の大冒険に連れていこうとするのだった。普通であれば付き合わされる方は面倒でしかないのだが、相手はアレスだ。
散歩をすれば多少とはいえ地図の完成が近づく上に、珍しい植物やまだ知らぬ毒を持つ生き物に出会うかもしれないので、案外アレスはその散歩に特に不満もなく、むしろちょっとノリノリで付き合っていた。……それにちゃまぁを見ておく為の保護者として近くに居ておかないといけないので。
ただ、ちゃまぁの大冒険には少し問題があった。
「ぜぇ、はぁ……はぁ……」
「……またか」
ちゃまぁは頭だけのゆっくりボディなので、ぴょんぴょんと跳ねるようにして移動しなくてはならないのだが……なんと! ちょっとぴょんぴょんするだけですぐにへばっていた!
「ティ、ティアッ!! (からだが、おもい!!)」
だがそれもその筈、実はちゃまぁはとてもよく似たまんじゅうの世界から異世界トリップしてきた存在なのである。しかしまんじゅうの世界では重力があまりなく、ちゃまぁのクソザコステータスでも十分にやっていけたからだ。
というか、まんじゅう世界ではちゃまぁが最強だった。一応、最強だった。しかし、ここではその最強も最弱と言っても差支えがなくなっている。
これがちいさくてステータスがかわいそうなやつ、ちいかわということなのだ。
アレスはちゃまぁを抱えて大冒険に付き合っていると、数分くらいしてちゃまぁが暴れ始める。どうやら、体力が戻ってきたから離せという事らしい。
「やッ!!」
「またすぐに疲れるだろう」
アレスはそう言いながらもちゃまぁを離し、ちょっと移動させてみると……3メートルもいかずにちゃまぁは再びへばっていた。ザコである。
そして食事はティアの担当なのでティアが作っているのだが……何故かちゃまぁはティアからのあーんしか受け付けず、しかも食べ方がワイルド。
「おいち!!」
「そっか、良かったねぇ」
これをマイルドに言わなければ、率直な感想で言うとあまりにも汚ねぇ。なので口の周りがとんでもねぇ事になるのだ。
手が無いから仕方ないとはいえ……ワイルドに食べた日のその口の周りを拭く係は大体アレスだ。ただアレスも食べる事に忙しいので、終わった後になってしまうが。
なのでちゃまぁのご飯はティアからのあーんが基本的だ。だがそうするとティアの食事が後になってしまうので、いつもちゃまぁはティアが食べ終わるまで頑張って待っているのだった。ちゃまぁはどこかのオレンジ髪の勇者と同じく、とんでもなく高燃費なのでいっぱいご飯を食べるしお腹が空くのだが、まぁまがご飯を食べ終わるまでちゃんと待てるまんじゅうだった。ちゃまぁは偉い子なのである。
「今日もボクと一緒に寝たいの?」
「ティアッ!」
「甘えん坊だなぁ、いいよ。一緒に寝ようか」
寝る時はティアと一緒に寝ていて、ちゃまぁはアレスと寝る事はない。やはりどの生き物もママが一番である、これの場合は本当のママですらないが。
ちゃまぁはティアとは違い、とんでもなく弱い上に単純でバカだ。この前なんか、野生の果物が実っている背の高い木を見つけて、その果物が食べたいから木をへし折って食べようとしていたのだが……。
それで体当たりをし……見事にぷくりと大きなたんこぶがこんにちはして泣き喚いていたのである。あまりにもザコでバカだった。
ただザコはザコなりにも武器があり、それが泣き叫ぶ時の音量である。近くだと普通に鼓膜がイカレてしまうほどの音量を浴びせられるのだ。まぁ、鼓膜が吹き飛んだ後はその音量も聞こえない訳なので、全く意味が無くなるが。
そして今日はちゃまぁの大冒険に付き合う事もなく、アレスはナッツの鱗を温度を暖かくした水魔法とブラシで綺麗に掃除し、手入れをしていた。以前は移動手段や手紙の配達係として働いていた為、普段会える訳ではなかったとはいえ……ナッツも生き物であり、大切なロイダンツ家の一員だ。
アレスはよく、兄弟達と一緒にハスリオドが帰ってきてナッツがゆっくりできる時には風呂に入れてやっていた。
空気中に漂う砂埃や塵などが鱗の隙間に入れば不衛生であるし、病気になりかねない。そしてドラゴンが持つ、高い飛行能力も落ちる。あとナッツが普通に綺麗好きでお風呂好き。
なのでナッツにとってお風呂は必要でとても大切な事なのである。アレスにとっても、その時間は大切な物だった。今では帰ってきた時だけのその手入れは定期的になり、欠かせなくなっている。
だからてっきりいつも大冒険に付き合ってくれるアレスが断ると思っていなかったちゃまぁは、とても頬を膨らませて不貞腐れていた。
「……よし、綺麗になったな」
「きゅー!」
ナッツはプルプルと体を振って水を飛ばすと、ナッツのお風呂の様子を不貞腐れながらも見ていたちゃまぁに水分が飛ぶ。ちゃまぁの顔がびちょ濡れになったので、アレスがちゃまぁの顔を拭いておいたが……。
「ティアーーッ!!」
「!?」
何かが爆発したかのようにちゃまぁは叫ぶと、ぴょんぴょんと跳ねて移動しながらどこかへ行ってしまった。普段はすぐにへばる癖に、こういう時は足(?)が速い。
……どうやら手下であるアレスが自分を優先せずにナッツに構っているのが嫌だったらしい。
結構見た目と同じように器も小さいまんじゅうである。
「あーあ、勇者クンがちっちゃい子いじめちゃった」
「僕のせいなのか……?」
んふふとティアは笑っているが、アレスにしてみれば頭だけの生き物に理不尽に怒られたのである。困惑しかない。ただあの手のかかるまんじゅうを一匹……いや一人? にしておくのも危険。
「(仕方がない、探すか……)」
まんじゅうは全く魔力を持っていないザコなので、アレスは目と気配を頼りにまんじゅうを探していた。
……が、案外早く見つけられる事ができた。
「ティアーーーーーーーーーーッ!!!!!」
「!?」
何故なら鼓膜が吹き飛ぶ程のクソデカ音量でちゃまぁが魔獣に泣き叫んでいたからだ。ザコなので泣き喚く事しかできない。生き物ならひるんでいるだろうが、相手は魔獣……全くもって意味の無い行為だった。
「シアン!!」
アレスは毒魔法を使い、魔獣にそれをぶつけるとすぐに魔獣の体は溶けて無くなる。そしてすぐにちゃまぁを持ち上げたりして360度とケガがないか確認していた。
「ケガは……無いようだな、心配したんだぞ」
グスングスンと泣いているちゃまぁを慰める為にアレスは安心しながら、涙と鼻水でぐっちゃぐちゃのきちゃないお顔をフキフキした後で撫でていた。
「ま……」
「……ま?」
「まぁまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
鼓膜が一瞬でお亡くなりになる音量でちゃまぁはママを所望すると、どうやらずっとその様子を見ていたらしい大きい方のティアが後ろからスッと顔を覗かせる。
全く気配を感じないので、いきなり後ろからやって来たティアにビクッとしてアレスはその様子を主人にニヤニヤされていた。
「よしよし、怖かったねぇ。もう大丈夫だよ」
「まぁぁぁぁあああまぁぁぁぁああああああああああ!!!」
「……一応、助けたのは僕だぞ」
もう一度説明するがこのまんじゅう、アレスを自分の手下だと思っているので、助けて貰って当然だと思っている。
「(……頭しかない生き物は大体"こう"なのか?)」
アレスは理不尽に思いながらも、キャンプ地に二人と一生に戻っていった。
この時アレスは知らなかった、ちゃまぁがとんでもない程のトラブルメーカーであり、そのやってくるトラブルにティアが喜ぶことになる事を……。
まんじゅうのキャラデザは毎度お馴染みのちゅぷ氏やで。