※この作品はR-18です。

最果ての鎮守府で   作:黒猫クル

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 書き貯めが無いと週1投稿がキツイ……。
 次回、R-18込みになると思うので遅くなるかもしれないです。


決意と真実

 薄暗いオレンジ色の照明が室内を照らしている。時計を見たら日付が変わる境目ぐらいの時間を指していた。

 

 あの後、何度も交わった。何度求めてもアイツは受け入れてくれた。3回目から先は覚えていないけどそれでも、私という女を受け入れてくれたのが嬉しかった。

 

 全身が汗がベトベトしていて気持ち悪い。今すぐにでもシャワーを浴びたい気持ちだったけど、体がだるくて力が入らなくて仰向けで寝そべっている。アイツも同じらしく、息を切らしながら、私に背を向けて寝そべっている。

 

「ねぇ」

 

 アイツに声をかけた。

 

「何だ?」

「もう少し何とかならなかったの? やるにしてもゴムぐらいつけなさいよ」

「すまん、買いに行ってる時間が無かった……」

「はぁ……何をやってもダメね」

 

 下準備のいい加減さに思わずため息をついた。普段、照月とは生でやっているのだろうか?

 避妊をしているとはいえ、いい加減すぎる。本当にできたらどうするつもりなの?

 小言を言いたい気分だったけど、聞きたい事があったから辞めた。

 

「何で泣いたのか話してくれる?」

「みっともない話だぞ……」

「いいから話しなさいよ……」

「自分が嫌になっていただけだ。正直に話すが、お前を犯す事に興奮していた。許されない事をしていたのにも関わらずな……。加えて、照月に助けられていたばかりの自分が情けなく思った。自分のやった事にも後悔していたしな……」

「相変わらずね……」

 

 予想した通りの答えに内心ため息をついた。

 後悔するぐらいなら初めからやるな。どうせやるなら過程や結果がどうであれ、最後まで開き直って最後までやりきれ……

 

 言いたい事は沢山あった。だけど、口に出そうとすると言葉にならずに詰まってしまう。

 改めて確信した。コイツは馬鹿だ。

 臆病で根暗で力不足なくせに正義感は強く行動力だけはある。加えて、勢いがあってもコイツは後の事を考えられていない。

 

 良い事をやりたいと思うけど能力が見合っていない。理想が高すぎる。それだからこそ、無謀なことを平気でやる。

 

「殺したいなら殺せよ。それだけの事をしたしな」

 

 ろくでもない一言にまた、ため息をついた。

 本気で殺すつもりなら、言われるよりも前に私の手で首を絞めている。それぐらいアイツだって分かるはず。そう考えるとアイツのセリフはわざと言ったとしか思えなかった。

 

「私がそんな事できないって分かって言ってるでしょ?」

「バレていたか」

「アンタの考えることぐらい分かるわ。図々しいわね」

「やっぱり君には勝てんな」

「私に読み合いで勝とうなんて100年早いわ」

「そうだな……」

「それで、なんでこんな事をしたの?」

「君を助けたかったのと自分のやったことの責任を取りたかっただけだ。こんなクソみたいな方法しかできなかった事は許して欲しい」

「本当にどうしようもない男ね」

「すまん……」

「バカみたい。私みたいな女なんて自業自得なんだし、黙らせて放っとけばいいのよ」

「確かにバカだったかもしれないな」

 

 そんな事は無いとか、もう少し気の利いた言葉は無かったのかと言いたくなったけど口にはしなかった。間接的に私の事を悪く言っているということにアイツは気づいていないのかもしれない。

 

「バカだったかもしれないって……過激とはいえ正しい事をやったんだし、もっと胸を張りなさいよ」

「すまん」

「ほら、そういうところ。それで、照月とはどうするの?」

「ここまでやっておいて悪いが離れられない」

「そう……ワガママね」

 

 聞くまでも無かった。

 

「別れなきゃアンタを辞めさせるって言ったらどうするの?」

「好きにしてくれとかしか言えない。照月と別れる事だけは絶対に嫌だから……」

「どうして、あの子の事がそんなに好きなの? 本来の方はともかく別人格のあの子は、アンタの事を都合のいい人間としか思ってないわよ」

 

 本来の照月がアイツの事をどう思っているのかは私も知らない。だけど、別人格の照月は都合の良い相手としてしか見ていない事は疑いようのない事実だ。アイツがなんでそれを受け入れる事ができたのか知りたかった。

 

「初めて君と喧嘩したあの日に気づいたんだ。助けようなんて考えその物がおこがましかった、照月と一緒にいられるだけで満足だって、 照月の笑顔を見れればそれで良かったって……。何もかもを失って、ようやく出せた結論だがな……」

「そう……あんた自身が狂ってもいいって思っているの?」

「かまわない。失う物は何も無いし、照月さえいてくれればいい」

 

 何かの本で死と生のはざまにある人間は真の意味で自由になると読んだ事がある。アイツが経験したのはそれなのだろう。アイツは自由だった。自由ゆえにこの結論を出せた。それなら、私にできることは……

 

「どうしても無理なのね」

「そうだな」

「分かった。あの子との仲を手伝ってあげる。提督として必要なことを全部教えてあげるわ。このまま行き着く所まで走りなさい。ただ、一つだけ約束して」

「なんだ?」

「途中下車は禁止よ。地獄の果てまであの子と一緒にいくの。それだけは、約束して。そうすればアンタを見送れるから」

「言われなくてもそのつもりだ」

「頑張りなさいよ」

「ありがとう……」

 

 既にアイツは引き返すことのできない向こう側の世界にいる。 連れ戻すことはできないし、私にその権利もない。それなら、いっその事その道を進むことを支えてあげるべきだと思った。

 

「外で待たせている照月と話をしたいんだが、いいか?」

 

 大きな欠伸が出た。普段だと仕事が忙しい日以外は寝る時間だし、性行為をした直後のせいか凄く眠い。

 

「今日の執務は13時からでいいわ。それまでゆっくりしていなさい」

「分かった」

 

 アイツが部屋を後にした。残されたのは私一人。部屋に帰らなきゃだけど帰る気になれない。照月が何も言ってこないという事は今晩は寝ていっても良いと言うことだろうか? 後片付けはしてと言われるかもしれないと思って、明日の事を考えて少しだけ憂鬱な気分になったけど、すぐに考えるのをやめた。

 

 アイツは照月に素直になれたからこそ、自分が本当にやりたい事を見つける事ができた。

 いい加減、私も昔の司令官相手に素直になるべきなのかもしれない。彼は許してくれるだろうし、今の私なら縁を復帰させる事もできるかもしれない。

 仮に昔の司令官が私を許してくれるのであれば、遅かれ早かれこの鎮守府から私はいなくなる。そうなる前にアイツには司令官として教えられる事を全て教えよう。

 

 

ー--------------------

 

 

 部屋を出ると照月がいた。

 

「上手くいったみたいですね」

「照月のおかげだよ。ありがとう」

「私は手伝いをしただけですよ」

「いや、君のおかげだよ。僕一人じゃ上手くいかなかったと思う」

「そうですか? 薬を盛って押し倒せば案外上手くいったと思いますよ」

「相変わらずぶっ飛んだことを言うな……」

 

 照月の提案はレイプそのものだ。自分は照月がやったような言葉攻めはできないだろうし、今回みたいに萎縮してしまうかもしれない。弱気な自分だと絶対に上手くいかなかったと思う。

 

「照月は嫌な相手を助ける気持ちが理解できたのか?」

「うーん……あまり理解できなかったですね」

「そうか……巻き込んでしまってすまないな……」

 

 照月には分からなかったらしい。残念な気持ちとリスクが大きすぎることに付き合わせてしまった事への申し訳なさを感じた。

 

「助けるというのは私が言い出したことですし、気にしないで下さい。それに、確かに嫌な相手を助ける気持ちは分かりませんでしたが、叢雲ちゃんを助けて良かったとは思います」

 

 意外な言葉が飛んできた。

 

「何か感じたことがあったのか?」

「私としては叢雲ちゃんが潰れることを想定していました。それを前提として、叢雲ちゃんと提督が両方潰れるなら私にとって都合のいい提督を取ろうと思ってましたが、結果的に誰も不幸にならずに済みました。事が終わった後の叢雲ちゃんのスッキリした顔を見ていて嬉しく感じましたし、結果論ではありますが実行して良かったと思います」

 

 動機はともかく、最終的な結果については良かったと思ってくれたらしい。少しだけホッとした。しかし、僕を優先するとしたら叢雲の事はどうするつもりだったのだろうか?

 

「叢雲の事はどうするつもりだったんだ?」

「叢雲ちゃんに関しては自業自得なんだし、提督が復讐しないとしても黙らせるだけ黙らせておいて放っておけばいいくらいに考えていました。本来の私も納得してくれると思います」

 

 合理的かつ冷淡な考えだと思った。彼女は過去の提督に妹の冬月を見捨てられた事を経験していることを思い出した。あの時は提督に反発したし、自分から抗議しに行っていたらしいが内心ではそれが合理的で正しいと分かっていたし、彼女は当時の提督を恨んではいない(もう1人の照月から聞いた話だが)らしい。

 彼女は典型的な合理主義者だ。必要とあれば僕の事も平気で切り捨てるだろう。

 

 合理主義者である事は、時に冷淡な判断を取らざるをえない前線で戦う人間にとっては必要な事だ。だけど、それは軍隊にとって必要な事であっても日常生活においてはあまり良くない事だと思う。

 少しでも変わってて欲しいと思うが今回の件で照月の中の物が少しでも変わっただろうか?

 もっとも、変わって欲しいというのは僕のエゴにすぎないし彼女自身がそれを望まないのであれば強制することはできないが……

 

「これからは、自分から人助けをしてみようと思わないか?」

「気が向いたら、ですかね」

「気が向いたらか……今までは、自分からすることはなかったのか?」

「面倒ごとは嫌いなので基本的には無かったですね。自発的に動いたのはずっと前に深海棲艦に襲われていた子供を助けた時ぐらいだと思います」

「君が最初の鎮守府にいたときか?」

「いいえ、2つ目の鎮守府ですね。とはいえ、もう20年近く前のことだと思います」

 

 20年近く前という言葉が引っかかった。

 

「20年近く前……?」

「どうかしましたか?」

「詳しく教えてくれないか?」

「昔のことですし、いいですよ。私が着任したばかりの頃ですね。客船が攻撃を受けているという報告で緊急出撃をしたんですけど、その時に近くに深海棲艦の気配を感じて命令無視をして単独行動をしたんです。そうしたらイ級が子供を襲っていたので、それを撃破して助けてから戦闘中の艦隊に合流した。ただそれだけの話です。命令違反だったので帰ってからは大目玉でしたね。子供を助けた話は救命艇の人から提督まで伝わってはいたみたいですけど気に入らなかったみたいです。それ以降、本来の私は命令無視をしなくなりました」

 

 僕が幼少期の時のあの出来事と状況が一致している。思い出してみるとあの時に助けてくれた艦娘は茶髪だった気がする。

 

「転覆した救命ボートの近くでイ級に襲われている3歳ぐらいの男の子を助けて救命艇まで送らなかったか?」

「たしかそんな状況の男の子を助けて救命艇まで送りましたけど……でも、なんで提督がなんでそんな事知ってるんですか?」

 

 しまったと思った。確信を持てるわけで無いから、照月にバレたくない。

 

「すまん。なんでもない。忘れてくれ」

「えー、教えてくださいよ! 叢雲ちゃんを助ける手伝いをしたし、いいじゃないですか」

 

 そう言われると自分としても断りにくい。嘘を交えて話す事にした。

 

「確信を持てる話じゃないんだが……」

「それでもいいので話して下さい」

「実は、昔の友人に同じような経験をした奴がいたんだ。今は連絡すら取れていないけどな」

「本当ですか?」

「本当だ」

「ふーん。そうですか」

 

 照月が半信半疑の目を向ける。

 

「その子供の事が気になるのか?」

「気になりますね。そのご友人は何をしているのですか?」

「さあな。提督になってるかもしれないし、海軍とは全く違う別の仕事をしているかもしれない。とにかく俺は知らんな」

「そうですか……。もし、再会する機会があったら会わせてくれませんか?」

「それは、かまわないが……理由を聞いてもいいか?」

「その子がどんなふうに成長したのか気になるんです。私の手の中で子猫みたいに震えてる食べちゃいたいぐらい可愛い子でしたから。それに、本来の私はその時の事を誇りに思っているので、合わせてあげたいです。あの子、元気かな?」

「元気。だといいな」

 

 本来の照月にとって自分が誇りに思われる存在かもしれないという期待に心が踊るのと同時にふさわしい人間にならなければならないと思った。

 

「そういえば、提督。私の相手もしてくれませんか?」

 

 嫌な予感がした。

 

「何の相手だ……?」

「とぼけないで下さいよ。夜の相手ですよ。まさか、叢雲ちゃんの相手だけして私はお預けなんて事はありませんよね?」

「えっと……それは……」

「悪いですが、拒否権はありませんよ。私だって限界なんです」

 

 照月が僕の右手を引っ張ってスカートの下の下着に触れさせる。彼女の下着はビショビショになっていた。自分と叢雲の行為を見ながら彼女が自慰を行っていたのかもしれないと思うと背筋がゾクリとした。

 

「すまん。叢雲とのやつで限界なんだ……明日付き合うから、今日は休ませてくれないか?」

「薬ならありますよ。いつもよりは加減しますから」

 

 断るという未来は無さそうだ。覚悟を決めるしかない。

 

「分かった……付き合うよ……」

「ありがとうございます。今晩もお願いしますね」

 

 ハートマークが付きそうな甘い声で照月が呟いた。

 

 

ー--------------------

 

 

 朝、照月が提督の部屋で目を覚ました。提督は彼女の横でグッスリと眠っている。

 

「ねぇ、起きてるよね?」

 

 伸びをしながら、赤い目のもう1人の照月が呟いた。

 

(……)

「いつまで逃げていないでそっちも素直になったら? 時間は限られているし、話さないと後悔する事になるよ」

(うん……)

「大丈夫。照月ならできる。提督も受け入れてくれるはずだから」

(ありがとう……私、頑張る……)

 

 本来の自我の照月は何かを決意した。

 

「それと1つ頼みたい事があるんだけど……」

(何?)

「……」

 

 別人格の照月が本来の自我に何かの説明をした。別人格の照月の話に本来の照月は驚いたりもしたがすぐに彼女の頼み事を受け入れることにした。

 

(そうなんだ。いつも世話になってるからそれぐらいならいいよ)

「ありがとう。あなたにしかできないからお願いね」

(うん……)

 

 会話が終わるといつものように照月は服を着て部屋を後にした。

 

 

ー--------------------

 

 

 照月から話を聞いた次の日に彼女に見つからないように明石に連絡をとったら、事の真相をあっさりと話した。なんでも、僕の判断が揺らがないように黙っていたらしい。

 20年前、両親を失ったあの時に命を救ってくれた少女は照月だった。

 

 

ー--------------------

 

 

 数日後、執務室には鎮守府の執務を仕切る叢雲の姿があった。

 

「また、ミスしてるじゃない!」

 

 叢雲が提督に対して怒鳴り声をあげる。

 

「すまん」

「いつまでたっても駄目ね」

「どうすれば間違えなくなるようになるか教えてくれないか?」

「アンタは凡ミスが多いからやり終わったら、間違いがあること前提で2回は見直しなさい。あと、人の話を聞いたらメモを取りなさい」

「分かった……」

 

 大量の書類を捌きながら叢雲が提督を怒鳴りつけるいつもの光景。照月は叢雲の横で黙々と執務をやっている。鎮守府では見慣れた光景だったがいつもの執務室とは違う所があった。

 

「何で私まで……」

「ぽい……」

 

 照月の横に座っている顔を青くした、響と夕立が顔を書類を書きながら呟いた。

 この日は、響と夕立が執務をやるために駆り出されていた。彼女達を駆り出そうと指示を出したのは叢雲だ。響は嫌々とした態度を見せつつも確実に書類を片付けていくのに対し、夕立は慣れていないのか頭を抱えて、照月や叢雲に教えてもらいながらやっている。

 

「私が居なくなったら響も執務をやる事になるでしょ? その予行演習よ。夕立は覚えておけばここを離れてからも絶対に役に立つから今のうちに学んでおきなさい」

「分かったっぽい……」

「勝手に巻き込まないで欲しいんだけど」

「グダグダ言わないで、いいからやりなさい」

「助けなきゃ良かった」

 

 響が小さくため息をついた。

 

「何か言ったかしら?」

「……なんでも無い」

「響、後で臨時給として5000円払うから我慢してくれないか?」

「それなら……まぁ……」

「夕立も欲しいっぽい!」

「金で釣るのは辞めなさい!」

 

 また、叢雲が提督に対して怒鳴り声をあげた。ただ、その怒りには過去の拗れを抱えた八つ当たりではなく、彼の間違いを是正しようとするものだった。

 

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