「───っはぁ……はぁ……まってユフィ……ちょっと、っはぁ……休憩……」
パレッティア王国。今日も平和で何も無い日だった。ただひとつ言うのなら、珍しく今日は気温の高い日だった。農作業をしている国民や、魔法省を駆け回る貴族達が沢山汗をかくほどに暑い日だった。アニスフィアの『前世』でいうなら真夏日に近しいものだった。休暇を重ねた二人は、午前中にイリア達と買い物を済ませて、落ち着いた昼下がりに買い物疲れで気だるい午後に床で重なっていた。
「今日……暑っついからさ、もうちょっとゆっくりしようよ」
「それは……そのつもりなんですが、こうして触れるのも久しぶりなので」
「珍しく休み重ねられたもんね。それは分かるんだけど、にしても暑っついよ。今日は」
うだるような暑さが鬱陶しく感じられる今日。アニスフィアはユフィリアの熱を受け止めきれなかった。少し物足りなさそうに自分の胸を触るユフィリアに少しアニスフィアは性欲魔人だと呆れていた。
「おっぱいすき?」
「はい。好きです」
「…………そっか」
その即答は喜んでいいのかどうか分からなかったが、アニスフィアはちょっと嬉しかった。でも、その胸を揉んでいる手は止めて欲しかった。その美しい素肌のネグリジェの天使はずっとアニスフィアの体を触っている。まるで大きな赤ん坊だ。アニスフィアはまた呆れたようにため息を吐いた。それと同時にそんなユフィリアも愛しいと感じる事に頬が緩んだ。イリア達には今日はもう休んで良いと伝えてあるのでこれ以上二人を邪魔するものは何も無い。
「アニス、もう一度……」
「ん……」
口元が寂しくなったユフィリアを迎え入れる。こんなふうに啄むだけのキスは久しぶりで、濃く絡んでくるようなことは無い。ユフィリアも少し遠慮がちなのが見て取れた。壊れ物を抱くように大切にされてるのも実感できた。
「なんか今日は大人しいね?」
大人しいと言いながらユフィリアはアニスフィアの胸を吸っている。キスマークを作った所でユフィリアは目を合わせてきた。
「いえ、なんでもないんです。ただ……」
「ただ?」
「……ゆっくりシたいだけです」
そう言いながらユフィリアは再度アニスフィアにキスをする。不思議に思いながらも、アニスフィアは受け入れる。アニスフィア自身もいきなり食らいつかれるよりはこうしてゆっくりなペースで食べられる方が良い。
でも、ユフィリアが言うゆっくりシたいとはなんだろうか。アニスフィアは考える。ユフィリアの愛撫を受けながら、確かにそこにいるユフィリアを感じながら。
最近思うのは、吸血鬼の事件以来、こういう風に抱かれるのが増えた気がする事だった。前のように塗りたくるようにではなく、すくい上げる様に抱かれている。今その時を大切にしているような、そんな感覚に。
「んっ……やっ……そこ……」
「ここ、良いですか?」
「音、出さないでよ……恥ずかし……んんっ……!」
アニスフィアの太ももの内を舐める。口から鳴る音がいやらしくてアニスフィアは顔を伏せる。わざと音を鳴らして舐める。それが恥ずかしいのも相変わらずで、太ももにキスマークを一つ。いくら隠れる所と言えど付けられたらたまったもんじゃない。何故なら着付けの時に必ずイリアに言われるからだ。逆にそれはユフィリアも同じ事で背中の知らず知らずのうちに刻まれている爪痕は必ずレイニに指摘されている。
「ちょっ……とぉ、そこ付けないでよぉ……」
「見えませんよ。これぐらい」
「誤魔化さないで……んっ」
口封じに唇を押し付けられて、そのもどかしい服を盲れる。顕になったアニスフィアの大きな胸が揺れてユフィリアは熱を帯びた吐息を吐く。その微熱に解けた瞳を当てられて、アニスフィアの瞳も少し垂れてきた。
「ユフィ……その顔ずるいよ」
「アニスだって……そんな物欲しそうに見つめないでください」
ユフィリアを服を脱ぐと下着だけの姿になりアニスフィアに覆い被さる。髪がユフィリアだけにして、部屋の温度なのか二人の温度なのか、この熱の正体が曖昧になり、口付けの湿度、絡む指、触れる肌の心地良さ、立方体の中で二人の空間を作る全てが出来上がっていた。
「あ……んっ……」
首筋にキスを添えて、胸に触れる。膨れ上がった胸の突起を指先で弄び、その反応を楽しむユフィリア。くりくりと指で転がされてるだけなのに全身にじんわりと浸透するような快感がやってくる。アニスフィアは抑えていても愛らしい喘ぎ声が小さく漏れる。
「これ、好きですよね」
「う、ん。くりくりされるのすきぃ……」
ゆっくりされてるからだろうか。なんだかいつもより素直に好きと言える。スローセックスなんて言葉があるが今日はそんな雰囲気だ。
「もう、濡れてますね」
「あうっ……」
胸の突起はそのままに、今度は太ももに垂れてきた愛液を指で絡めとる。粘り気のある音と共にユフィリアの指に絡みつく。それを楽しむようににちゃにちゃと音を鳴らす。
「ねぇぇ……それやめてよぉ……すんごい恥ずかしいからさぁ……」
「貴方の体から出ているものなのですよ。私に触れられて嬉しい、って」
「っ〜〜〜!」
アニスフィアは恥ずかしさが頂点に達し枕で顔を隠した。声にならない声を上げ、さっきまでお淑やかに開けていた股を閉じる。
「アニス、閉じてしまっては触れませんよ?」
「見せつけてくるから、やだ……」
子供のように拗ねるアニスを見てユフィリアは小さく笑い目を細めるとアニスフィアの後ろから抱き着いた。
「そうですか、ではそのままで」
「っ……!」
太ももの隙間から指が入ってくる。ギュッ、と締めてもその長い指は簡単にアニスフィアの洪水の元へたどり着いてしまった。そして、枕を抱え顔を隠したままのアニスを他所にユフィリアはゆっくりと入口を撫でている。
「っ……あっ……んっ……っ!」
「〜♪」
二回、三回、と指で入口を撫でる度にアニスフィアは体をピクンピクン、と弾ませ甘い声を漏らす。少し胸の突起をこねくり回して刺激を強くする。アニスフィアは相変わらずされるがままの方が好きなようだ。ユフィリアが耳元で妖しく笑うと、余計に入口の洪水が酷くなっているのが分かる。そこからもっと恥ずかしくなって余計に体が丸まっていくのも分かる。
それが堪らなく可愛くて仕方がないユフィリアはすぐにでもいぢめたいと思ってしまう。なので、今日はゆっくりスるつもりだったが、すぐさま入口に指を差し入れた。
「あぁっ!?」
ずぷぷ、とゆっくりと、でも確かに入ってくる感覚を味わった瞬間アニスフィアは枕から顔を出してしまった。ユフィリアの長い指が二本もあっという間に咥えてしまったアニスフィアの膣はずぶ濡れなんてものではなかった。
「こんなに濡れてます。指がふやけてしまいますよ」
「言うなぁぁ……っあっ、まって、そこだ、めっぇぇ……!」
膣の天井をグリグリと押し付けるように撫でるとアニスフィアは喘ぎながら力が抜けてユフィリアの方へ体を傾けてしまう。ついでに唇を塞いで舌を絡めてやる。快楽に蕩けたアニスフィアを見るとユフィリアの体にもゾクゾクと何かが走った。
「ごめんなさい、アニス。やっぱりもう我慢できないです」
「ふぇ? ───ひぁっ!」
ぐちゅり、と音を立てアニスフィアの膣に入れている指を動かす。
「まっ、ゆふぃ、それ、それだめぇ……!」
閉じた足を持ち上げて、膣の中を掻き出すように指を動かして、アニスフィアをいぢめていくユフィリア。待てと言われても膣を弄れば弄るほど愛液が溢れてくる。足を持ち上げられて動けないアニスフィアは枕で顔が隠れているために息苦しく軽い酸欠状態になっている。
「っ───! っっ──!?」
パチパチ、と頭の中が弾けるような感覚でゆっくり白目を向き始める。そんなアニスを気に止めることなくユフィリアの手は止まらない。
「ま───ゆふぃ、も、だめ、だめだめ───! もうイク、イクから、ぁ……!」
なんとか顔を出して息を吸おうとするも今度は快感が襲ってきて息が吸えない。ユフィリアを止めるものは誰もいない。ぐちゅりぐちゅり、となるアニスフィアの膣はユフィリアの指の動きと共に限界を迎えていた。
「ゆ、ふぃ……! ゆふぃ!」
「はい。いつでもいいですよ、アニス」
「ィ、クっ───イクっ……! っ〜〜〜〜〜!!!」
絶頂と同時にアニスフィアは体を縮こませる。絶頂の余韻でまだ少し続いていたが、それが終わり、体を伸ばすとシーツがぐしょ濡れになっている所を見ると、アニスフィアは顔をもっと赤くして枕に隠れた。
「もぉぉ〜……またイリアになんか言われるぅ……」
「可愛かったですよ。アニス」
「誤魔化さないで。いきなり激しくするなんて酷いよ」
「可愛い反応が見たかったので。いっぱい出ましたね♪」
「うぅぅ〜……ばかにしゅりゅな〜!」
「は〜い。一旦おねんねしましょうね〜」
「ばーぶー!」
ポカポカ、と可愛く叩いてくるがはいはいと軽く受け止めてアニスフィアを横に寝かせる。
「ある程度は私が綺麗に出来ますから」
「どうやって……?」
「水魔法で」
「えぇ……」
魔法ってそういう使い方するものなの? 、とアニスフィアは首を傾げるが、体にやってきた眠気に負けてユフィリアの隣で眠りについた。
…………
「ん……んぅ……」
ふわりと目が覚めた。ユフィが私の隣で寝ている。外を見ればいつの間に夕方だ。本当に今日はなんでもない一日だった。お出かけして、一緒に寝て、ずっと一緒に居れた。ユフィの寝顔見たの久しぶりだな。
顔にかかった髪を解く。小さく声を漏らしたユフィが可愛くて自然と笑みが零れてしまった。よく見ると爪も少し伸びている。
「爪切りあったっけ?」
体を起こして、ユフィの爪を見る。ちょっと荒れてるな。手入れもできてなかったんだね。少し伸びた爪と透き通るような白い肌に長い指。私いっつもこの手でされてるんだよ……ね。うわなんかちょっと恥ずかしくなってきた。でも、ユフィはずっと綺麗のままでいて欲しいし、手入れはしてあげないとね。
ぱちん。
そういえば、なんで今日ユフィは急にお出かけしようなんて言ってきたんだろう。珍しくてついトントン拍子で話を進めちゃったけど、理由までは聞かなかったな。ちょっと張り切っていたようにも見えたような気がする。
ぱちん。
『今日じゃないとダメなんですっ!』なんてユフィらしくないセリフだな〜って思ってしまった。イリアもレイニも今日はユフィの言う事を聞きましょ〜、なんて言ってきたし、私には何も分からなかった。それからは、城下町に降りて美味しいもの食べて、ユフィが見つけた景色の綺麗な場所を見せてもらってそこでイリアとレイニが作ったお昼ご飯食べて、そのまま帰ってきて、今に至る。
「ふふっ」
なんか、ユフィらしくない日常の送り方だったから逆に楽しかったなぁ。はい。右手終わり。次は左手〜♪
ぱちん。
それにしてもユフィ全然起きないや。こうして見るとほんとに顔は綺麗だし、指は細くてしなやかで…………すっっっっごいえっちというか、なんというか……シてる時のユフィの顔良すぎるんだよなぁ!
髪かきあげたりとかさぁ!
舌なめずりとかさぁ!
平気でしてくるんだもんこの子! そりゃぁ誰だって惚れるわ! もう好きだよ! 好き過ぎてベッドの上じゃ何されてもドキドキだもん! 凄いよ逆に! 髪の毛が体にかかるだけで……か……感じちゃうし……名前呼ばれるだけでビクってなるし……もう私の体ユフィに変えられ過ぎだよぉ……。
「っ〜〜!」
爪の手入れの手は止めず、その場でさっきの事を思い出して顔を赤くする。私はどうしようもないぐらいヘタレで自分からは未だにしたことが無い。くそぅ。悔しいからこの爪すごい綺麗にしてやる。おりゃおりゃ、どうだ。綺麗だろ。はい。両手終わり。
「……」
というか、今日のゆっくりシたいってやつ。爪伸びてるから私を傷つけないようにしてくてたりしたのかな? それだったら……ちょっと申し訳ないな。というか、そんなになってまで私を優先してくれたのかな。なんかほんとに申し訳ないような……。よくよく見ると、ユフィの背中私の引っ掻いた痕もあるし……。
「ん……んぅ……」
あ、ユフィ起きちゃった。
「おはよう、ユフィ。ってもう夕方だけどね」
「あにす……」
整えられた手で頬を撫でられる。まだ寝ぼけてるのかな? 可愛いからいいけど。
「ん〜ふふふっ……ふあふあですね……あにすは……」
髪を撫でる手と……胸を揉む手。
ユフィ、寝ぼけてまで私のおっぱいを揉まないで欲しい。完全にほっぺたの左手とおっぱいの右手でやってる事が違うよ。こういう所で器用さを出さないでよ。
「もうゆうがたなんですね……」
「そうだよ。もう夕方。イリア達が晩御飯作ってるよきっと」
「ゆうがた……夕方?」
「へ?」
急に寝起きの声色から普通の声色に戻った。戻り方が突然過ぎて私も聞き返してしまった。
「アニス……今何時ですか?」
「え……と、18時だけど……?」
さぁぁ……とユフィの顔から血の気が引いていく。わお。こんなユフィ見るの初めてだ。でもそんなに急ぐような用事はなかったはずなんだけどなぁ。だって今日は何も無いお休みの日だし。大事な用事なんてなにも……。
「イイイイ、イリア!! イリアー!!」
「え! ちょ! ユフィ! 服着て!」
下着姿のままイリア達の元へダッシュで駆け抜けて行ったユフィ。私は何が何だか分からずただただ開きっぱなしの扉を眺めるしか無かった。
『イリア! 準備は出来てますか!?』
『はい。滞りなく。それよりもユフィリア様お召し物をしてもらわないと……』
『へ? きゃぁ! すすす、すみません! 今着替えてきますから!』
そう言いながら、ユフィは遅めに体を隠して恥ずかしそうに帰ってきた。
「おかえり、ユフィ」
「はい……さっきからすみません……」
いそいそと恥ずかしそうに着替えるユフィがなんだか面白くて頬が緩む。今日は色んなユフィの表情が見れる。イリアと話してた準備ってなんの事だろう? やっぱり今日なんかあるみたいな動きだよなぁ……。なんだっけ? なんかしたっけ? 今日なんの日だったかなぁ……?
深く考えても全然思い当たるものがない。ユフィがそんなに慌てる事なんてよっぽど大事なことのはずなんだけどなぁ。全然わかんないや。
「では、アニス」
「ん?」
着替え終わったユフィは小さく咳払いをして姿勢を正した。
「夕食前にお話があります。食堂で待っていますね」
「うん……わかっ‥た?」
今日は何がなにやらサッパリで私だけ置いてけぼりな感じだ。でも、隠し事って訳でもない。けれど教えたいって思っている訳でもない。中間な立ち振る舞い。とりあえず、言われた通りに普通に着替えて、どっちつかずのユフィが待つ食堂へ。
そして、食堂の扉を開けた瞬間───
「せーのっ、お誕生日おめでとうございます!」
「おめでとうございます! アニス様!」
「おめでとうございます。アニスフィア様」
「…………はぇ?」
突然のお祝いでほんとに驚いて動けなくなった。
そっか、今日は私の誕生日だったんだ。いつからか忘れていたもの。色々あったし、忙しいのもあったけど、別に関係ないと心のどこかへ追いやっていた。知らず知らずのうちに自分の中から消えそうになっていたもの。一年周期にやってくる私が生まれた日。何者か分からなくなりかけた私が、『私』に戻れる特別な日。吸血鬼の女王との戦いであるべき姿が定まらなくなって、まだ不安が残ってた。彼女の言う事も正しいと一瞬でと思ってしまったから、でも、私は私の心を貫いた。取り込まれそうになった心を引き戻してくれたのは紛れもない。ユフィと皆だ。ユフィだって、精霊契約で自分の事もあるのに私の事も思ってくれてる。イリアもレイニも。
すごいなぁ。ユフィは。私よりもずっと。どんなときも。
それなのに私は、こんな大事な日を忘れてたのか。こんなに思われてるのに、簡単に忘れていたのか───。
「あ、あの……アニス?」
「……え? ……あ……っ……」
後悔か、感動か、私の目から零れる雫。呪いを祝福に変えてくれた皆の心にあてられて私はついに泣いてしまった。いくら拭っても止まらない。拭えば拭うほど溢れてくる。こんな私を祝ってくれる皆の声が暖かくて、心配してくれる事が嬉しくて、私を『私』として見てくれる事がありがたくて、不思議な気持ちで止まらない。
「大丈夫ですか? アニス……?」
「うん……うんっ。大丈夫、嬉しい。すっごく嬉しくて、溢れてきちゃったみたい……」
私の言葉で皆はまた笑顔に戻る。このサプライズはズルすぎる。
「その様子では忘れていたみたいですね」
「うん。完全に忘れてたよ。ありがとうユフィ」
「……私もアニスとの一日はずっと、特別な一日にしたいと思っています。なんでもない日でも、大変な日でも、何か意味のある一日にしたいと。大袈裟かもしれませんが、平和になった今ならこれぐらいは許してくれますよね。アニス」
袖で私の涙を拭いながら、許しを乞うユフィの顔は優しい顔で私は何度も頷いた。
「うん。うん。もちろん許すよ。本当にありがとう。ユフィ。なんかほんとに心から感動してるっぽい」
「ふふっ、アニスの方も大袈裟ですね」
「さぁ、アニス様。涙を拭いて皆でケーキを食べましょう。私とイリア様が作りました!」
「ほんとに!? 食べる食べる!」
「色々な味をご用意しました。お好きなものをどうぞ」
「ありがとう、二人とも!」
こうして、私の誕生日会が開かれた。
何でもない日も特別にしてくれる私の恋人は、前に言った通りいつまでも私の隣に居てくれる。最期の最後まで、ずっと。今日この日、この繋いだ手の温もりは私は絶対忘れないよ。ユフィ。愛してる。