「退け、聖霊女。もうお前に用はない」
「残念ですが、私にはあります。これ以上アニスを傷つけさせません」
「今更魔力を取り戻した所で、その負荷にその体が耐えられるとでも思っているのか?」
「……」
確かに、体が熱い。息が冷たい。手足が少し痺れて、まるで自分が膨張しそうになってしまっている。精霊契約者に戻った反動なのでしょうか。精霊達が見えるようになって、魔法が使えるように戻って、体がまだ慣れていないのですね。
それでも───。
「準備運動ぐらいにはちょうど良いでしょう。鈍ったカンを取り戻す程度ですが」
アルカンシェルを握っていると不思議と体も楽になる。無理矢理精霊を体に取り込む必要は無い。アルカンシェルを媒体にして、徐々に慣らしていけばいい。やはりアニスの魔道具は至高の一品だ。
「っ───!」
息を深く吸い込んで、身体強化。息を吐くと同時に地面を踏み込んで、相手とゼロ距離に肉薄し、なるべく強い斬撃と共に相手を吹き飛ばす。
「ぐっ!」
奴は受身を取りながらも私を睨みつける。だが、その顔は笑っている。何が面白いのか私には分からない。でも、アニスを苦しめた報いは今、受けてもらう。
「っ…ははっ!そうか。いいだろう。ディバイン。やはり手を出すなよ。あの女は俺が殺す」
「分かった、ならあっちの子を相手するよ」
「二対一でも構いませんが?」
「それはダメだよ。ユフィ。『私達』で戦うんだ」
嗚呼。知っている。この感覚を。
アルカンシェルが応えてくれる。
「王女と聞いていたが、やはりお前達は何処か王女とは違うな。特にその目つき。人殺しの目だ」
「お褒めの言葉と受け取っておきます」
嗚呼。満ちてゆく。体の中に満ちてゆく。
「それでこそだ!殺し甲斐がある!」
私の体に満ちてゆく。
「随分お盛んなようですねっ…!」
私の知ってる感覚が。
・・・・・・
「そっか、なら君の相手はやっぱりボクなんだね」
「………」
正気に戻った私はセレスティアルを構える。相変わらず、ちょっと気が緩むとこの刻印に飲まれてしまう。やんちゃなドラゴンで頼もしいよ全く。
なんて息巻いているとディバインが笛を吹く。すると吹き飛ばしていたハズの魔物がゾロゾロと集まってくる。ディバインは得意げな顔をして私と目を合わせる。
「君はこの魔物達にどれだけ持つのかな?」
確かに見た事ない魔物や今相手にするのは骨が折れるものもいる。でも、そんな事は関係ない。今はユフィと二人で戦っている。私に怖いものは無い。
「烏合の衆だね。そんなの」
セレスティアルが疼いている。
刻印が迸っている。
嗚呼。やっぱり私はどれだけ綺麗に着飾っても、こういうのが似合ってる。
・・・・・・
ユフィリアが魔力を取り戻し、戦闘を始めてからというのも着々と戻りつつある『魔法の感覚』。
発動詠唱、発動威力、応用法、ゆっくりとユフィリアの体に戻りつつあった。
「ぐっ…!」
ユフィリアの視界に映るもの。前まで見えなかったユフィリアの当たり前の景色が戻り始めてきた。辺に映る様々な色の光。ユフィリアが見えなくなっていたもの。
「クソッ!!!」
相手が肉薄するも関係なく。何事もないかのように、無意識で戦うかのように、目線を変えず、目の色も変えずに、ただ自分に宿る『精霊』を感じ取る。
「“ヒート・ブレイド”」
「っ!?」
唱えると同時に、アルカンシェルに炎が纏う。収束し、剣に留める。纏う刃は敵を焼き切る刃となる。男の魔具から生み出された腕翼の打撃を撫で斬るように、下からアルカンシェルを振るう。
「ぐぉぁっ!…ックソ!」
腕翼は切断される事は無かったが、男を数メートル吹き飛ばした。さらに受身を取りながら、体勢を立て直すと腕翼を振りかざし、黒色の魔力の弾を幾つか生成。再度腕翼を振るとそれらをユフィリアに向けて飛ばす。
「っ───?」
飛んで避けようと思ったが羽根か開けない。まだ完全に戻っていない体の魔力。魔法は撃てるがまだ魔力を通して羽根を広げて持続させるほど戻っていないらしい。先程ここへ来るために使った羽根もほぼ一瞬しか持続できなかった。
仕方ない、とユフィリアはアルカンシェルを握り、刀身に防壁の魔力を収束、アルカンシェル版マナ・ブレイドの完成させ、振りかざすと身体強化と共に魔力の球体へと突っ込む。瞬きの間に全ての球体を切り裂き、また男へゼロ距離となる。
「早いっ…だがなっ!」
それに怯む事無く男は腕翼の拳を握り、ユフィリアへ向かって叩きつける。その拳は避けられることは無くしっかりユフィリアを捉えた。手応えあり。岩を簡単に叩き潰せる威力の殴打を与えた男は笑みを浮かべた。
「…!?」
だが、腕翼の拳が離れない。引いても押しても動かない。確かにユフィリアは潰した。いや、『潰したハズだ』。しかし、よく見れば臓物が飛び散っていない。血溜まりも出来ていない。ならユフィリアは何処へ?拳を再度見直すと、刺さっている。一本の剣。
「なっ…!?」
立っている。ただそこに。何事も無かったかのように。アルカンシェルで拳を止めたユフィリアがそこに居た。微動だにせずユフィリアは男を見据えている。鋭い眼光。纏う魔力は増幅しつつ、背中には一枚靡く羽根。ユフィリアはその羽根を見ると呆れたように呟いた。
「…ようやく一枚ですか」
「何?……うぐうぉァ!!」
アルカンシェルを引き抜いて、高速の回し蹴り。また男を数十メートル程吹き飛ばして、歩を進める。自分の体が精霊契約者に戻っているはずなのだが、どうしても感情が抑えられない。怒りに身を任せてしまっているような感覚。まだ自分が人を捨てきれていない子供だと言うことを。
「化け物が!」
男は起き上がると、闇魔法を使う。地面の影から鋭い刃のような触手が何本もユフィリアへ襲いかかる。
「“ランドスピア”」
顔色一つ変えずにユフィリアは腕を振りかざすと地面から岩で出来た鋭利な槍が闇魔法の触手を全て受け止める。そして、そのまま拳を握ると受け止めていた岩の槍は岩の棘へと変わる。
「“ランドスピアレイン”」
再読腕を振りかざし、今度は岩の棘を男へ飛ばす。男は腕翼で幾つもの土の槍を薙ぎ払うと、自身の腕から腕翼へ魔力を転移、収束させる。爆発寸前の不安定な魔力の玉がその掌に完成した。
「『暗黒手・爆』…!」
「───!」
投擲された魔力の玉はユフィリアへ直撃した。が、その爆発は届かず、鉄壁の守りとなったマナ・シールドに防御される。
「っ…ならばっ!」
ディバインは再度魔力を収束。今度は腕翼の自体に魔力を収束させて、巨大な鉤爪を創り出す。
「『暗黒手・裂』!」
振り放つ鉤爪の斬撃は確かにユフィリアへ届いてはいる。だが、そのマナ・シールドは傷一つ付いていない。ましてや、ユフィリアはさっきから一歩も動いていない。
「なっ……」
「以前お相手した時は、あなた達の力を理解していなかった。ですが、戦っている内に少し分かりました。あなたのその力はただただ強大なだけ。大きな力を大きく振るっているだけのもの。それならば、こちらもただ単に全力で挑むだけの事です」
一歩。ユフィリアは歩を進める。
「精霊契約者を侮らないでください。魔力の大きさの勝負なら私にも自信があります」
そしてまた一歩。
「望み通り、尽きる程、お相手いたしますよ」
ユフィリアの眼光が鋭くなる。靡いています一枚の羽根はいつの間にか二枚に増えて、羽根の形を模していた。そうして構えたアルカンシェルの鋒が少し揺れると、ユフィリアは姿を消していた。
「消え───っ!?」
消えたと認識した頃にはディバインの片方の腕翼が切断されていた。
ユフィリアが目の前に居ない。だが気配は後ろ。ディバインは振り向く。
「!?」
すぐさま振り向いて攻撃態勢へ入ったが、そこにはユフィリアの姿がない。
「なっ…!?」
攻撃を繰り出そうとした反対の腕翼も既に切断されていた。
「その部分に痛覚は無いのですね。やはり、魔力でできたものでしたか」
また背後から声がした、振り向けばユフィリアがそこに居る。
『見えなかった』。
そんな程度で済ませられるような攻撃ではなかった。踏み込んだ跡すらない。まるで蝶のように舞い、蜂に刺されたような感覚。臨戦態勢に入る事すら遅い。アルカンシェルの鋒は既にディバインを指している。
「“エクスプロージョン”」
落ち着いた口調とは裏腹な威力の魔法。アルカンシェルの鋒より先の景色が焼け野原となる。ディバインは何とか反応して防ぎきったが、もはやその魔力の根源たる篭手は使い物にならない状態になっていた。
「馬鹿なッ…こんな…っ」
完全に精霊契約者に戻ってしまった。今のユフィリアの佇まいがそう感じさせる。背中の羽根は四枚になり、魔力の上昇が止まらない。溢れる力が目に見えてディバインを圧倒する。
「さぁ、まずは貴方の終わりを定義しましょう」
振り向いたその顔は冷酷で。
溢れる魔力は力強いなんてものではなく。
アルカンシェルに込められた魔力は大地を震わせ、木々がざわめく。
空へ浮かぶユフィリアはアルカンシェルを天に指す。
「馬鹿な……」
その圧倒的な力に男は立ち竦み呟くことしか出来なかった。
ユフィリアは男に対してもうなんの感情も抱いて居ない。道にあるゴミを取り除くように。人が蟻を気にしないように。ユフィリアはもうその男に対してなにも思わない。感じない。
『精霊よ。叫べ。』
天へ指したアルカンシェル。開いた蝶の様な羽根は輝きを取り戻し、鋭い刃の様に変化する。完全となったユフィリアに呼応するように大きくなる。
『精霊よ。唸れ。』
精霊達がユフィリアへ、アルカンシェルへ、集まって行く。赤、青、緑、黄、各色の精霊がユフィリアへ溶けていく。広がった羽根もその七色へ染まっていく。アルカンシェルへ魔力を込めると、魔石が全て輝き出し大出力の魔力の剣へと変わる。それはまるでドラゴン討伐の時、アニスが使用したリミッター解除のマナ・ブレイドの様に。
『響け。空へ。』
振りかざす。その七色の剣。
『“オーバー・ザ・アルカンシェル”』
煌めく虹の横一閃。
木々と共にディバインを薙ぎ払い、跡形もなく消し飛ばした。再度、アルカンシェルを振りかざして魔法を解除。羽根を展開してアニスの方へ向かった。
・・・・・・
「ほらほら!避けてるだけじゃ後がないよ!」
「ちっ…」
魔物の群れから距離を取りつつ、一体づつ確実に処理していく。両断した魔物は幸い跡形もなく消えてくれるので、数が増えることはないらしい。だが、確実に物量での体力消耗がアニスに響いている。なるべく素早く仕留める為に急所を的確に狙い刃を突き立てる。呼び出される魔物はどれもこれもアニスが見たことあるものばかりなのでそれほど苦労はしないが、物量が多い。そろそろ、『自分の力』では限界が来た。
「ん?立ち止まった…?」
アニスは逃げるのをやめて、その場に留まる。だが、魔物達がそれ以上先へ動かない。怯えているようでは無いが、何かを警戒しているような威嚇をしている。
「なにが…?」
「起きなさい、ドラゴン」
アニスが呟くと、突如周りが燃え盛るような魔力の高まり、そしてセレスティアルの刀身が赤くなりアニスの瞳がドラゴンのように鋭くなる。セレスティアルを構え踏み込んで橫一閃。魔物達を焼き切り、構え直してディバインへ距離を詰める。
「っ!?」
ディバインへ刃が向けられた瞬間。さっきまでアニスを拘束していたゴブリン二体が現れ、その刃を止めた。
「おっと、君らのことを忘れてた……ねっ!と」
ブオン、と空を裂く風切り音が出るほどの腕力。アニスは一旦距離を置くと、後ろへ回り込む。ゴブリンの巨体ではアニスのスピードには着いて来れない。背後を取り、ゴブリンの背中に刃を突き立てるともう一体の拳をゴブリンがそれをさせまいとアニスに棍棒を振るう。
「っと!」
身を翻し、避けた後、アニスは後ろへ手をかざした。
「その鈍重さは変わらないっぽいね。なら早く動ける私の方が有利だね!」
その言葉と共にやってきたのはアニスの魔法の箒。翼を生成出来るドレスを着ていないため、アニスが空を飛ぶには箒が必要だった。
颯爽と現れた箒を握り、綺麗なターンを描いてスケートボードのように乗り込むと、再度ディバインにセレスティアルの鋒を向ける。
「行くよ!」
箒を一度踏みつけると一気に加速。大型のゴブリンの片方の首を獲る。あまりにも一瞬な事にディバインは目で追えなかった。
(速い…っ)
空を駆け抜ける箒星はほかの魔物にも追えない速度で飛び回る。狼の魔物が魔力の弾丸を放つも見事にそれをすり抜けていく。まるで流星のように空を舞うアニスを捉えられず、ディバインはまたしても接近を許してしまった。
「これでッ!」
「っしまった!」
アニスの一撃から逃げきれず、ディバインの笛が破壊された。
「僕の『ハーメルンの魔笛』がっ!」
「よし、これで魔物はもう呼べない!一気に……っ!?」
笛を破壊した直後、アニスが何かを察して高度を上げた。よく見ると周りの魔物たちはディバインに集まり始めている。ディバインを守ろうとしている訳でもない、全員牙を向けている。
「まさか…!」
「ひっ…!や、やめろ!来るな!!」
ディバインの声も虚しく、魔物達はディバインを食い殺した。
「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!!」
「うっ…」
散々魔物は倒してきたが、人が食い殺される場面はいつ見ても見るに堪えない。そして、ひとしきりディバインを食した魔物達は魔力を高めていた。ディバインの魔力を吸収したのかただの暴走か。小さい魔物達はさっきの巨大なゴブリン達を融合を始める。
「まさか!魔物が融合してるの!?」
「ーーーー!!!!」
木々よりも高く、ドラゴンのような大きさに変わった魔物はアニスをその気迫で圧倒する。
「こんな…まるでドラゴン…!?」
「ーーー!!」
「来るっ…!」
振り下ろされる拳をアニスはセレスティアルを極限まで硬質化して受け止める。
「っぐぅぅぅ!!!」
岩が落ちてきたなんて言えるほど優しい衝撃ではない。全身が砕けそうになり、その衝撃波で地面が陥没した。刻印を解放したセレスティアルでも持たない。アニスは受け止めながら考える。この巨大は魔物を倒す方法を。魔力が異常に暴走し、ドラゴンよりも強くなっている。しかし、逆に暴走してるせいで理性を無くしている。普段は魔法を使う魔物だが今は肉弾戦しか頭にないようだ。障壁の魔法を使っている訳では無い。ただ単に巨大になり体が硬くなっているだけ。
「ーー!!!!」
受け止め受け流すと、ついで飛んでくる第二撃。真正面からの殴打を再びセレスティアルで受け止め、箒の出力を最大にする。そうでもしないと受け止めきれず吹き飛ばされる。
「くっ……!うぅッッ…!!」
しかしそれでも、押し込まれる。ミシミシとセレスティアルが悲鳴を上げる。そうしてセレスティアルにヒビが入る。
「うそッ!?───ぁ!」
ヒビが入った事でセレスティアルが弱まり魔物に弾き飛ばされた。
「しまっ…うわわわ!」
弾かれたセレスティアルを目で追う暇なく魔物は拳を振ってくる。動きが鈍重なおかげで機動力が勝っている。しばらく動き回っていれば捉えられることはないが決め手が無くなってしまった。
「アニス!」
「ユフィ!」
そう悩んでいると調度良い所にユフィリアが戻ってきた。浮遊魔法でアニスの隣へ舞い上がる。
「そっちは終わったの?」
「ええ、ひとまずは。それよりもアレはなんですか?」
「ディバインの笛を壊したらああなった。多分暴走してるだけだとは思うんだけど」
ユフィリアが試しに一つ魔法を撃ち込む。しかしそれは軽く弾かれてしまい、全く効果がなかった。
「アレではドラゴンと変わりませんね」
「でも、今は暴走してるっぽいからただのでっかい魔物だね」
「ですが、あんなものをどうやって…それよりセレスティアルはどうしたんですかアニス?」
「え?ぶっ飛ばされちゃった☆」
テヘペロ☆、と頭をコッツンコ。ユフィリアはそれを見るなり深い深いため息を吐いた。アニスが突飛で奇天烈だと言うことを思い出したのではなく、これが終わったらセレスティアルを探さないといけない事にため息を吐いた。
「………1人で探してくださいね」
「うわ〜ん!ごめんよユフィ〜〜〜!」
箒に乗りながら器用にユフィリアに泣いてすがるアニス。そんな二人を意に返さない魔物は再度殴打を繰り出してくる。
「ーーー!!!!」
「ッ───!」
「おっと!」
ユフィリアとアニスは左右に別れて回避する。
「ですが、セレスティアルも無いとなるとどうするのですか!私の最大火力も詠唱には時間がかかります!」
「それは大丈夫!試作品を試したい!」
「試作品!?」
アニスは地面に降り立つと箒を持ち構え直す。
「私の魔道具を甘くみないでね!」
アニスは箒を棒術のように回して柄を持ち構える。
「セレスティアルが無くても私は戦えるんだよ!」
「ですが、それは飛行用の魔道具では…?」
いつもは飛行の為に使っている魔法の箒。箒の部分に取り付けられた魔道具から出力を変える。
「それだけじゃないよ!出力系を放出から照射に変更!」
箒から何かが組み替えられる音が鳴る。
「これでアイツをぶっ飛ばす!」
槍のように箒を構えるアニスにユフィリアも後ろから背中を支える。またあの時の、ドラゴン退治の時のように。
「行きましょう。あんなものを王国に近づける訳には行きません!」
「うん!ちゃちゃっとお掃除しちゃおうか!ユフィ、箒に魔力を充填して!」
「はい!」
充填された魔力は箒を通して目の前に球状の塊として現れる。目の前の魔物の半分程の大きさとなり、二人は反動を受け止めるため足を踏ん張り、ユフィリアは羽根を展開する。
「行くよ!」
「はい!」
「喰らえぇぇぇ!!!“マナ・ブレイズキャノン”!!」
「ーーーー!???!!!?!!」
放たれた一筋の閃光は魔物を消し飛ばし、雲を突きぬけ空へ駆け抜けていった。まるでそれは流星のように。七色の光が消えると、二人は緊張が解けてその場にへたり込んだ。そして、二人で顔を見分けると一拍遅れて一斉に吹き出した。
「あっはははは!見た、ユフィ!?とんでもない威力だったね!」
「はい…また、凄いものを作りましたね。アニス」
「えっへへ〜。こういう事態を想定した武器だったんだ。一回撃って終わりなんだけどね」
ボロボロになった空飛ぶ箒。推進力となっている部分が吹き飛んでおり、見るからに使い物にならなくなっていた。アニスが密かに開発していた魔道具。
『魔力充填式出力自在調節機能搭載型推進力砲撃変換機構・通称【マナ・ブレイズキャノン】』。
マナ・ブレイドとセレスティアルを失った事を想定して開発した魔道具。空飛ぶ箒の推進力を砲撃に変換する魔道具。それは威力次第では“エクスプロージョン”にも負けず劣らない。刻印の魔力を変換しても耐えられるよう設計されていたがユフィリアの無尽蔵とも言える魔力には耐えられなかった。
「ユフィも元に戻って良かったよ」
「アニスもご無事で何よりです」
「うん。本当に…っ…良かったっ…」
「アニス…?大丈───っ!?」
俯いたアニスへ寄り添うと、セリフを言わせて貰えず抱きしめられると同時にその唇を奪われる。
「っ…!?っっ…!!」
いきなりの事にユフィリアは少し慌てるが、離れた顔を見るとアニスは本当に泣いていた。
「ユフィ…」
「はい。アニス。私ですよ」
「本当に怖かったんだからァ…!ユフィが死んだかもって思って…っ」
また泣かせてしまったのでしょう。ユフィリアは思う。自分でももうこの暖かな温度を確かめられないと思っていた。自分だけ消えるつもりでいた。けれど、魔道具がまた繋げてくれた。自身とアニスをまた繋げてくれた。ボロボロになって泣きじゃくっているアニスを見て再び微笑んで。お姫様抱っこでかかえる。
「え、ちょ、」
「さぁ、帰りましょう。『ハンター』の件も、セレスティアル探しも、箒も治さないと、やる事は沢山あります」
「もぅ〜。ユフィはせっかちだね」
「早く戻った体に慣れるためにも、アニスにも頑張ってもらわないと行けませんからね」
「え……と、それはどっちの意味かな?」
「さぁ。どっちでしょうか」
「あはは………」
その後に、ユフィリアからたっぷり絞られたのはまた後の話。