純にとうとう陸樹の気持ちがばれた翌日、玲音は一人で翔の店にやってきた。
純は、なんとか事実を受け入れる事ができただけで、しばらく陸樹に会うのは無理そうだった。翔の店に行くのも恥ずかしいというので、玲音が事情を説明しにきた。
陸樹に会わないように、だいぶ早い時間だ。
玲音の顔を見ると、翔が驚いた顔をした。
「珍しい時間に来たな?一人か?」
「あぁ、翔、聞いてくれよ!純にとうとう…」
「Jが何だって?」
「げっ?!」
玲音が素っ頓狂な大声を上げて、飛び退った。
「り、陸樹?!」
トイレから戻ってきた陸樹は、大げさなリアクションで驚いてる玲音に不審感を顕にしていた。
「あ、時間が無い、やっぱ帰るわ!」
慌てて帰ろうとした玲音を陸樹が捕まえた。
「ちょっと待てって!!あからさまにおかしいだろ!何だってんだよ?!Jがそんなに怒ってるのか?ホントに瑠美ちゃんとは何も無いって!」
(あー、もう、俺って、嘘つくのが何でこんなに下手なんだろう…昨日と言い、今日と言い…今まで隠し通せたのが奇跡だったんだよな・・)
「はぁー、今日はまだ陸樹に会いたく無かったのに…、何かもう、ゴメン…」
「おい、おい、こわいんだけど?」
「…純にばれた」
「な、何が?」
「陸樹の気持ちが…」
「ええーっ?!!!」陸樹と翔が叫び声を上げた。
「な、なんで、今更?ジェ、ジェイは何て?」
「さすがにショック受けてるけど、一応、受け止める事はできたみたい。でも、しばらく陸樹に会わせる顔がないから、来れないって」
「俺はもう気にしてないから、Jが気に病む必要は無いって言っても、ムダか…」
「直接会ったらどんな顔したらいいかわからないだけで、一応、大丈夫みたいだよ。昨日は、ちょっと大変だったけど、立ち直ったと思う」
「Jは、まだ友達でいてくれそうかな…」
陸樹の顔には苦悩の色が浮かんでいる。純が傷ついたことを心配しているのだ。
「純も心配してたよ。陸樹に悪かったって思ってるけど、陸樹の優しさはちゃんと伝わってるから、大丈夫。いつも通りの純に戻るには少し時間が要ると思うけど、待ってあげて欲しい」
「Jが変に気を使ったり、苦しんだりしてなきゃ、俺はいいんだけど・・そうだな…俺達の三角関係にちゃんと終止符を打つには、通らなきゃならない道だったのかもな…」
陸樹は、純への気持ちは墓場まで持って行こうと一度は決意していたが、伝わった事を嬉しく思う気持ちもあった。純を傷つけたくは無かったが、どこかできちんと清算すべき問題かもしれないと感じていたのだ。
「そんなわけで、翔、真琴の次回のライブの打ち合わせは俺が代わりに出るけど、当日は、純が自分でやるって言ってるから!」
「わかった!真琴と駿にはうまく言っとくよ」
玲音はホッとした。本当は陸樹にどう切り出したものか、翔に相談するつもりだったのだ。心の準備が全くできてなかったので、純の気持ちをどこまで伝えられたかわからないが、思いがけず陸樹に打ち明ける事ができた。これで、陸樹との影の恋敵関係も終わり、ただの友達でいられるのだ。
陸樹が安堵した様子の玲音にブスっとした顔を向ける。
「それはそれとして、何で純にバレたんだよ!お前、何言ったんだ?!」
「お、俺は何も言ってないよ!純が自分で気が付いただけで…」
「そんなわけあるか?!あんだけ匂わせても全く気が付かなかったのに!」
「ホントだって!ただ、隠し事をしてる罪悪感で挙動不審だったかもだけど…」
「やっぱり!さっきもすげー挙動不審だったぞ!」
「ご、ごめん…だって、嘘つけない性格なんだよ…」
困り顔の玲音と陸樹がやんや言い合ってるのを眺めながら、翔は目を細めて笑っていた。
(陸樹の長かった恋路も一旦終着駅に着いたな。これで、新しい恋路をまっさらな気持ちで始められるだろう。玲音も隠し事がなくなって安心したようだし。"雨降って地固まる"ってやつかww)
この後、玲音には、遅れてやってきた龍介にもう一度状況を説明して、再び陸樹にネチネチ文句を言われるという苦行が待っていたのだった。
END