陸樹は翔の特効薬のおかげで風邪をこじらせることなく、体調を回復する事ができたので、そのお礼を言いに、翔の店へ行った。
「陸樹!元気になったか?」
「ああ!翔のおかげでよくなったよ、ありがとな!」
龍介に会うのも久しぶりだ。
「陸樹さんが体調崩すなんて珍しいですね?もう大丈夫なんですか?」
翔は龍介に何も説明してないらしい。大人の会話の部分があるからだろう。
答える前に、ドアが開き、珍しく純と玲音が連れだって入ってきた。
「陸樹!もういいのか?」
「ああ!J、この前はサンキュ!玲音も」
「早く治ってよかったね」
「Jさん、玲音さん、久しぶりですね!
最近、全然顔見なかった気がしますけど、また忙しかったんですか?」
「龍介、久しぶり!ま、そんなとこ。テストはどうだった?」
純の質問に龍介が怪訝な顔をする。
「?テスト?あー、あれですね、まぁまぁでした」
龍介は、翔の顔を見て、なんとか話を合わせてくれた。
「なんだか、いつも以上にラブラブモードですね?何かいいことでもあったんですか?」
何も知らない龍介の的をつく発言に純と玲音が赤面した。龍介の観察力はすごい。
「実は、前に龍介が言ってたみたいな結婚を前提にした同棲っていうのを始めたから…」純が照れながら説明する。
「うわー♡幸せそうで羨ましいな!僕にも、早く運命の人が現れないかな!」
龍介が珍しくはしゃいで囃したてたので、ますます純と玲音が赤面した。
そんなやり取りを見ながら、陸樹は不思議と気持ちがざわつかず、落ち着いて受け止められている事に気がついた。
「そういえば、前に玲音のどこが好きなのかって聞いた時、誤魔化してたけど、今はどうなの?」
なんとなく、聞いてみたくなって陸樹が純に質問した。
純は赤い顔で
「きっかけは言えるけど、今となっては、良いところもかっこ悪いところも全部好き過ぎて、どこが好きとか言えない…」と大真面目に言った。
玲音も「確かに、恋愛感情を意識できるようになったのは遅かったけど、元々純の全部が好きだから、どこが好きとか言うのは難しいな」と言った。
純と玲音は目を合わせて、2人だけがわかるようなシンパシーを感じとってフフっと笑い合った。
周りに誰もいなかったら絶対熱いキスを交わしてるだろうというラブラブモード全開のオーラにあてられて、龍介が赤面した。
ハッとなった純が慌てて陸樹に
「そういうお前は、どんな人が好きなんだよ?」と聞いた。
陸樹はちょっと迷ったが
「そうだな…人の話を俯瞰で聞けて、優しく寄り添ってくれたり、裏表が無くて真っ直ぐでPUREな人かな?」と答えた。
すると純が
「それって、お前のことだろ!自分と似たやつが好きってこと?ナルシストだなーww」と笑った。
翔と玲音はぎょっとしたが、陸樹はなぜか合点がいったような納得した顔をしていた。
「そっか。そうなのかもな?ちょっと目線を変えるのもいいかもな…」
「自分と違うと思っても、実は本質が似てるってこともあるしな!固定観念に縛られない方がいいぞww
どっちにしても、陸樹は優しいから、陸樹の相手は幸せだろうな!」
純がニコニコしている横で玲音が冷や汗をかいているのがわかる。でも、陸樹はむしろ心が軽くなっていた。
純と玲音が帰った後、翔が静かな陸樹を心配して声をかけた。
「陸樹?大丈夫か?」
「あぁ。俺はJのどこが好きになったんだろうなって考えてた。よく考えたら、俺達はすごく似てて、魂が近いっていうか、分身みたいに感じてたんだよな。でも、そんな自分の分身みたいなJがホントに幸せそうな様子を見てたら、何か吹っ切れたっていうか、俺まで幸せな気持ちになれた気がした…
俺も自分の運命の相手を見つけなきゃなって気持ちになったよ。新しいスタートを切らないとな…」
「そうか…よく言った!じゃあ、乾杯だな!」
「僕も混ぜてくださいよ!あと、テストって何のことですか?ちゃんと説明して欲しい!」
3人で乾杯しながら、新しい出会いや自分の理想の相手について語り合う。
陸樹と龍介にも、きっと近い内に運命の相手が現れてくれるはずだ!こんなに気持ちのいい奴らなんだから、と翔は心から願ってやまなかった。
翔の店からの帰り道、玲音は純に聞いた。
「何で陸樹にどんな人が好きかって聞いたの?」
「んー?何かあいつの口からちゃんと聞いたこと無いなって思って。いつも俺の話ばっかで、あいつの恋愛の話聞いたこと無かったから。何か悩んでるなら相談に乗りたいし…双子の弟みたいな感じなんだよな、陸樹は」
「そっか。いい人が見つかるといいね」
「絶対モテそうなんだけど、何で恋人がいないんだろうな?」
玲音は苦笑した。
陸樹が熱を出したと聞いた時、もしかしたら自分達のことを聞いたからかもしれないと思って、心配だった。だから、純が一人で見舞いに行ってくると連絡してきた時も止める気にならなかった。不安はあったが、信頼していた。
案の定、純は何事もなく、ケロッとした顔で戻って来て、「思ったより元気だったし、翔の特効薬が効いて早く治りそうだ」と言っていた。
翔の言う特効薬が純のことだと玲音にはすぐにわかって、苦笑してしまったが、純が相変わらずの天然パワーを発揮して陸樹を癒やしてあげたのだろうと思った。
そして、今日、陸樹が不思議と吹っ切れたような様子だったので、心から安堵した。
陸樹にも幸せになって欲しいとずっと思っていた。
陸樹が幸せにならないと自分達も本当の意味で幸せにはなれないと感じていた。
でも、それは陸樹自身の問題で、自分達でどうにかできるものではないと思っていたのに、純の言葉が陸樹の心を動かしたみたいだった。
純の核心をつく言動にはいつも驚かされ、尊敬してしまう。さらにその言葉からは、玲音への想いも感じられて、より愛しさが募った。
マンションの部屋に帰り、やっと2人きりになると、待ち切れない想いに任せて、純を抱き締めてキスをした。さっき翔の店でそうしたくて堪らない気持ちになっていたが、さすがにみんなの前ではできなかった。
純が好きだという気持ちをどう表現したらいいかわからないくらいに、気持ちが溢れて純を求めた。
純は玲音の深くなるキスを受け止めながら、やはり玲音への愛おしさが溢れるのを感じていた。
ずっと陸樹が自分自身のことを考えようとしないのが気になっていた。純を心配してくれるのは嬉しいが、もう自分の運命の相手を見つけて欲しいと願っていた。ようやく、その気持ちが陸樹に届いた気がして、安心した。何故か、安堵と共に玲音への想いが溢れてきて、もっと愛して欲しいと思ってしまう…
2人だけの世界に浸りながら、お互いの存在を確かめるように愛を分かち合った。
END