玲音の実家からの帰り道
毎度思うことだけど、玲音の横にいると玲音の彼女って気持ちになってしまう。
玲音の両親が勘違いしたこともあって、玲音の両親の前では"お嫁さん"みたいな気分がして、恥ずかしかった。
純の両親にとっては、純は長男で一人息子なわけなので、純の両親の前では、自分は男だって気持ちが強くなる。だから、玲音を紹介する時は複雑だった。両親の前で玲音の彼女という気分にはなれない。
(違和感があるんだよな)
玲音の前にいる時の自分と両親の前にいる時の自分
どっちも同じで偽りのない自分なのに、どこか一致しない
(それをすり合わせていく事が必要なのかもしれない…)
両親に付き合ってるという事を打ち明けるには、やはり時間が必要だと思う。でも、玲音と一緒にいる時の素のままの自分を見せていければ、自然と打ち明けられる日が来るのかもしれない。
玲音はその辺、ブレる事が無い。玲音の両親の前でも、純の両親の前でも、同じようなスタンスで純の事を彼女のように大事に扱ってくれた。普段は、普通に男友達みたいな感じなのに、何かある時や純が甘えたい時は女の子にするみたいに優しく接してくれる。
(だから、玲音の前だと女の子のような気持ちになっちゃうのかな?時々、俺は男なのにって思うことがあるけど、そんなこと、玲音を前にすると、どうでもよくなっちゃうんだよな…)
マンションに帰り着いて、やっと力が抜けた。あんなに緊張して泣きそうになったのは、初めてかもしれない。でも、やっぱり、玲音のお父さんは、玲音のお父さんだった。心が広くて愛情が深い人でよかった。
「大丈夫?」玲音がちょっと心配そうな顔をしてる。
「あぁ。玲音のお父さんとお母さんが優しくて豪快な人でよかったよ」
「後は、純のご両親に打ち明けるだけだね」
「俺の両親に玲音を恋人だって告白するには、俺の心の準備が必要だから、もう少し時間ちょうだい」
「純が納得いくまで、いくらでも待つよ」
「ありがとう、玲音、愛してるよ」
「俺も純を愛してるよ!だから、俺の気持ちを信じて欲しい…」
玲音がさっき純の言った言葉を気にしてる事がわかる。
"玲音が普通に女性を好きになったら潔く身を引く"
それは、純がずっと気にしている事だった。
玲音の気持ちは信じているけれど、いつか変わる事があるかもしれない。
それでも、傷付く事を恐れて自分の気持ちに蓋をする事はできないから、覚悟だけは常に持っておこうと思っている。
「玲音の気持ちはわかってる」「純…」
玲音が純をきつく抱き締めて、キスの雨を降らせていく。玲音の愛を全身で受け止めながら、心の中でつぶやく。
(泣きたくなるくらい愛してる)
うっすらと純の目に涙がにじんだ。
END