ある日の夜、クルビアの街を歩いていたドクターは人気のない路地裏へと連れ込まれる。相手はサリアの救援に行った際に出会った謎多き傭兵、ホルハイヤだった。
急に降って湧いてきたホルハイヤ×女ドクターのあれそれ。なんでも許せる人向け。
翠玉の夢のPVでサリアとホルハイヤのガチ恋距離に興奮しなかったものだけ源石を投げなさい。
気が付いた時、ドクターはクルビアのとある路地裏で壁と鼻先がくっつきそうな距離に立たされていた。
背中には、誰かがぴったりと密着している。背中にあたる柔らかな感触から、女性であることがわかる。
喉元に添えられた、白い指貫グローブを嵌めた手が、ドクターの頸動脈あたりを白いネイルでなぞる。
ぞっと背筋に走る怖気とは裏腹に、鼓膜を甘く震わせたのは、いつかこのクルビアで出会ったリーベリ女性のものだった。
「お久しぶりね、ドクター? こんな夜中に、護衛もつけずにそぞろ歩き?」
「……ホルハイヤ」
「覚えていてくれたのね。嬉しいわ」
ホルハイヤは黒と淡い青のグラデーションに彩られた、不吉な翼をはためかせる。
動くことも、下手に助けを求めることも躊躇われた。この得体の知れない女傭兵は、サリアとエリートオペレーター・Mechanistの攻勢をいなす実力と、危機感を抱かせる底知れなさを併せ持つ。ドクターがひとりでどうにかできる相手では、ない。
「一体、なんの用だ。クリステンに、私の暗殺でも命じられたのか」
「あら、私がクリステンと顔見知りなこと、あなたに言ったかしら。それとも、彼女かミュルジスが口を滑らせた? 人気者なのね」
「質問に答えてくれ」
「そう怒らないで。あなたを殺しに来たわけではないし、そもそも今は休暇中なの」
ホルハイヤはそう言って、フードを退かしてドクターの左耳を露出させた。
宝石のようでも毒のようでもある青のルージュを引いた唇が吸い寄せられる。ほんの僅かに漏れる吐息が、ピリピリとドクターを刺激した。
微かに漂う酒の匂い。酔っているのだろうか。
「偶然見かけたから、会いに来た……って言ったら、信じてくれるかしら?」
「無理だ。急に攫われて、路地裏に追い詰められたこの状況では」
「そう? じゃあ……」
「っ……!?」
ドクターは驚いて身を固くした。
ホルハイヤの空いた手がインナーウェアのジッパーを下げ、するりと内側に潜り込んできたからだ。
まるで内臓に蟲か何かを入れられたかのような、不気味な感覚。ドクターは奥歯を噛みしめてそれを押し殺そうとする。ホルハイヤはそんなドクターの反応を楽しむかのように、爪で内腿を軽く引っかいた。
ぴくっと微かに示した反応が、見逃されることはない。頬と下顎を一緒に撫でながら、ホルハイヤが問う。
「あなたに恋人はいるのかしら? プラトニックなお付き合いがお好み? リードする方が好き? される方が好き?」
「恋愛の話なら……っ、バーで女友達でも捕まえてやってくれ……」
「そうつれないことを言わないで。あなたとお話がしたいのよ」
妖しい笑みを口元に浮かべるホルハイヤの手は、いっそ優雅でさえある手つきでドクターの足の付け根をくすぐるように掻きむしる。
ぞわぞわと広がるむず痒さ。その余波が近くにある秘部にまで届き、ドクターを小さく身じろぎさせた。
そんな場合ではないというのに、否応なく顔が羞恥で熱くなっていく。本能的に逃れようとしても、ホルハイヤにがっちりとつかまってしまっていて、とても抜け出すことができない。
ホルハイヤは、まるで小動物をくすぐって遊ぶ小悪魔的な少女のように笑いながら囁いた。
「占いは信じる方? ロドスにも何人か、占いが得意な人がいるそうだけれど、あなた自身はどうなのかしら」
「っ、離せ……!」
ドクターは耐えきれず、股座まで伸びたホルハイヤの腕をつかんだ。
爪を立て、懸命に引き抜こうとするが、僅かに動かすことすらできない。それどころか、白く伸びた指先は秘書を滑らかに撫でまわし、ドクターに思いがけず鼻にかかった声をこぼさせた。
ホルハイヤは一瞬虚脱しかかったドクターの体を、壁に押し付けて完全に動きを封じ込める。さらにドクターの顔に触れていた手を彼女の口に差し込み、親指、人差し指、中指を使って舌を蹂躙し始めた。
時折硬質な音の混じった淫靡な水音が、ドクターの脳内をじわじわと浸食していく。まともな発声すら出来なくなったドクターを弄ぶように、ホルハイヤは秘部をくすぐり、柔肉を優しくほぐす。
「ぇ、ぁ、かっ……!」
「思った以上に可愛らしい声で鳴くのね。私以外に、誰が聞いたことがあるのかしら」
舌を軽く引き出してもみくちゃにし、耳に息を吹きかける。ドクターは肩越しにホルハイヤを睨みつけるが、抵抗としてはあまりにささやか過ぎるものでしかない。
ホルハイヤの顔があまりに近い。濁った空色をした瞳が、こちらを取り込んできそうだ。
互いに恐ろしく近い位置での見つめ合い。そこから先に目を逸らしたのは、ドクターの方だった。
「ん゛ぅっっっ……! ぁ……!」
秘部に触れていた指が秘芯に狙いを定め、包皮の上から強めにつねり上げたのだ。
さらに皮の隙間から忍び込んだ爪の先が、秘芯の先を突きまわし、軽めに引っかく。痛痒と快感の入り混じった火花は、容易くドクターを狂わせた。
「ゃぇっ、くぅぅんっ……!」
「痛い? あんまり経験はないようね。初心なのか、本当に何も知らないのか……可愛いわね。ますます興味が湧いてきてしまったわ」
秘芯をきゅっとつねり上げ、ホルハイヤはドクターの舌を解放した。
三本の指と舌の間で熱っぽくねばついた唾液が糸を引く。その間もクリトリスはつねり上げられたままで、ドクターは息も絶え絶えになりながら意識を保つので精一杯だった。
ホルハイヤは、ドクターの頬に口づけ出来るほどの距離で、小さく囁きかける。
「ドクター、私のものにならない?」
「は……? え……?」
視界端でぱちぱちと爆ぜる白い火花に邪魔されながらも、ドクターは自分の耳を疑った。
ホルハイヤの口元には変わらず笑みが浮かんでいる。だが、その目は笑っていなかった。
「私はあなたに興味があるの。ロドスの指導者としても、一個人としても。私と組んでみない? 面白いことになると思うのだけれど」
「……こと、わる……っ!」
「あら、そう」
飛びかけた理性を総動員して拒絶する。
それによりまた何かされるのかと眉間に力を入れるが、予想に反してホルハイヤはあっさりとドクターから手を離し、数歩後ろに下がった。
情けないことに、それだけで膝から力が抜けてその場にへたり込みそうになる。壁にもたれかかるようにしてなんとか立ち上がった姿勢を維持するドクターを、ホルハイヤは心底面白そうに眺め、ドクターの唾液まみれになった自分の指をぺろりと舐めた。
「残念ね。けど、今日のところはフラれてあげるわ。でも、諦めるつもりもないの」
「ホルハイヤ……君は、一体……」
「また会いましょう、ドクター。私のこと、忘れないでね」
ホルハイヤはひらりと踵を返す。ドクターはすぐに、壁を押しのけるようにして振り返ったが、既に彼女の姿はそこになかった。
足がガクガクと震え、その場に座り込んでしまう。数秒と経たず通りがかった警備員に、酒を飲み過ぎただけだと言ってなんとか誤魔化し、その場を立ち去ろうとする。
覚束ない足取りで帰路につくドクターを、ホルハイヤはビルの屋上から見下ろし、薄い笑みを夜に溶かして姿を消した。