1.
「あの、今更こんなこと言うのも、なんなんですけど……」
そう高橋が言うのを聞いて、優子は不安げな目で男を見た。
「なに……?」
すると彼は照れたように頭を掻きながら、気まずそうに続けた。
「あの、まさかこういう運びになるとは、全然思わなかったものですから、今、持ってないんです……あの、ゴムを」
それを聞いて、優子は緊張の糸が切れたようにふっと笑った。
「なんだ、そのこと……。あのね、実は私、大丈夫なんです。その……ピルを飲んでるから……」
男の顔に、安堵の表情が浮かんだ。
「だから……高橋さんの思うままに、してください」と言って優子は笑った。そして、彼の胸板にチュッと口づけて、
「ありがと」
と小さく言った。
会話の間に少し力を落とした陰茎を励ますべく、優子は高橋に口づけしながら、両手で男の乳首をくりくりといじった。男の快感を反映して陰茎がびくんと跳ね、優子の太股を軽く打った。それに応じるように優子は右手で陰茎をとらえ、ゆっくりとしかし力強くしごき出した。そして手が離れた右乳首を補うように、顔を落としてそこをチロチロチロと舐めた。
男の両の乳首と陰茎とが、優子の手と舌によって同時に攻め立てられている。「あぁっ……!」高橋は甘い声を上げた。
優子は視線を落として陰茎の様子を確認した――それは、文句なしに張り上がっていた。
「ああ……早く欲しいわ……それ……」優子は高橋の頬を両手で軽く挟むと、妖しく微笑んで挑発した。それは、数時間前まで一緒に登山をしていたあの優子とは、まるで別人格のように見えた。
「ね、横になって……」
言われるままに高橋が仰向けになると、優子はその腰元にまたがり、陰茎をそっと手に取って垂直に支えた。そして、そこへむけて腰をゆっくりと落としていった。淫靡な微笑みを浮かべて、高橋の目を見つめながら……。
仰向けになった高橋は、優子の花弁の入り口が自らの亀頭に接触するさまを吸い付けられるように見ていた。そして間もなく、亀頭は花弁の中にぬぷっ……と取り込まれた。優子が吐息を洩らすのが聞こえた。
女はゆっくりと腰を落とし続ける。高橋の男根がどんどん彼女の内部を犯していく。
三分の一ほどを飲み込んだところで、不意に優子は重力に任せるようにすとんと深く腰を落とし、男の陰茎を根元まで自分の内にとり入れた。「あぁんっ……!」性器同士が素早くこすりつけられる感触に、女と男は同時に深い歓喜の声を洩らした。
高橋のものをぐっぽりと咥え込んだ状態で優子はしばらく静止していたが、やがて再びゆっくりと腰を浮上させた。陰茎が半分ほど姿を見せたところで、また沈み始める。優子はまるで
「痛く……ないですか?」と動きながら優子は尋ねた。
「いえ、ちっとも……とても気持ちいいです。それに、こうして裸の優子さんを下から見上げてると……、とてもドキドキします」と高橋は答えた。
優子はにっこり笑うと、
「私も、気持ちいい……。じゃあ、もう少し動きますね……」
と言って、徐々に腰の動きを速めだした。男の目に、自分の陰茎が素早く見え隠れする。女の陰部が男の陰部を打つ、ぱたっ、ぱたっ、という音が響きだし……そのテンポが段々と速くなっていった。腰の上下運動に応じて優子は「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ」と小さく声を洩らし、両の乳房が縦に揺れた。その様子が高橋を欲情させた。
優子は男を見つめながら、
「高橋さん、エッチな顔してる……」
と嬉しそうに言うと、不意に動きを止めて、腰をゆっくりと高く上げた。陰茎が膣口から抜け落ちる。数瞬、膣口から滴る透明で粘質な液糸が、亀頭を細く繋ぎとめていた。
優子は高橋から降りると、背を向けて四つん這いになった。そして、
「こっちからも挿れて……」
と言って、腰をつんと上向けた。
慎ましやかな菊花と、その下で蜜を湛えて誘惑する花弁とが、一気に男の視線を惹き付けた。
2.
高橋は左手を優子の腰のくびれに添えると、右手で陰茎の根元を持ち、女を征服する興奮を感じながら、その先端を、花弁の入り口にあてがった。花弁のやわらかさが、亀頭を通じて高橋に伝わった。優子の尻がぴくりと小さく震えた。
ゆっくりとした一定のスピードで、陰茎を一気に根元まで押し込む――優子の
騎乗位とはまた種類の異なる摩擦の刺激が、挿れる男と挿れられる女の双方を強く貫いた。二人は快感に震えながら、いま相手はどんな表情を浮かべているのだろうかと互いに想像した。
深々と挿し入れた陰茎を、高橋はまた同じくゆっくりとしたスピードで、亀頭だけが隠れる辺りまで引き抜いた。そして今度は、少しスピードを上げて挿し入れる。「あはぁぁんっ……!」優子から切ない声が洩れた。
四つん這いの優子を、陰部同士を接合した状態で高橋は見下ろしている。
軽く乱れた髪、うなじ、そして美しく縦の窪みが入った裸の背中が、あますところなく眼下にさらけ出されている。その下のくびれた腰、そして逆ハート型に丸みを帯びた臀部……そしてその果ての淫穴には自分の男根が鍵のように挿し込まれている。
男は興奮を表出するように抽送のスピードを上げた。パンパンパンパン!と畳みかけるように音が響く。「ああっ、ああっ、ああっ!」優子は枕に顔をうずめながら感じるままに喘いだ。高橋もまた快感に堪えかねて、抽送しながら苦しげな声を上げた。
二人は、しばらくの間その交わりにひたすらに没頭した。部屋には陰部同士を打つスパンッスパンッスパンッという音がたゆまず響き、女と男の快楽の声がその合間を縫った。
優子は、高橋の喘ぎ声に切迫感が増してきているのを察知した。そして後ろから突かれながら、荒い吐息の合間に、
「
「はい、もうそろそろ……近いです」と苦しげに答える。
「じゃあ……あの、私……」優子は陰茎を突き込まれたまま、男の方を振り向いて言った。
「最後は、向かい合った状態で……欲しいです」
高橋が陰茎をゆっくり引き抜くと、優子は仰向けになって寝そべり、男を見つめながら股を開いた。
高橋の視線は、女の艶めかしい顔から、乳房、腹、茂みへと移っていき、陰核と、その下で口を開けて待つ花弁とを捉えた。
女の腰元に体を移し、右手で陰茎を支えて、先端をゆっくりと入り口にあてがう。すでに男のものを何度も受け入れている膣道は、肉棒をするりと飲み込んだ。
膝を突き上体を垂直に起こした姿勢で、高橋は抽送を開始した。たっぷりと蜜を湛えた膣壁を肉棒がこすり上げながら往復する。目を閉じ、口を半ば開いた状態で荒く甘い吐息をつく優子を見下ろしながら高橋は腰を前後に動かす。視線を落とすと、自分の陰茎が女の中を気ぜわしく出入りするのがよく見えた。女の愛液を絡み取って、竿がぬらぬらと濡れている。
「チンポ……感じますか」腰を打ち付けながら男は問いかける。女はシーツを掴み目を閉じたまま、
「感じるっ、感じます……!」と答えた。快楽に引きつった美しい顔の下には、エロチックな首筋、そして鎖骨の線。更にその下には……。
高橋はおもむろに上体を倒すと、優子の左の乳首を甘く噛んだ。声にならない叫びが女から洩れた。そのまま乳首を激しく舐め回し、吸い上げる。もちろん腰元では陰茎の抽送を重ねたまま。ああっ、ああっ、ああっ……! 優子の喘ぎが繰り返されるのを高橋は頭の上で聞いた。
「キス、キスして……」女が懇願する。
高橋は頭を上げて、優子と見つめ合った。と、切なげに開くその口許に乱暴に舌をねじこんだ。舌を絡めながら、女の目がまた切なげに閉じた。
高橋のキスを貪欲に受け止めながら、優子は高橋の両頬を掌で愛撫した。この人と離れたくないと思った。
結合部では、二人の愛液が混ざり合って潤滑油となり、軽やかなピストン運動が優子を攻め立てている。
「高橋さん……好き、好きですっ……!」
「佐藤さん……僕も……っ!」激しく口づけしながら、二人は強く見つめ合う。
高橋が陰茎を挿し入れる速度はいよいよ増してきていた。優子は、絶頂を抑制しようとして男の体が細かく震えているように感じた。優子の耳に口づけする男の吐息が熱い。
もう間もなく、彼の射精を膣内に受け止めるのだ――そう思うと、女の鼓動が苦しいほどに高まった。優子は逃がすまいとするように男の肩にひしとしがみつき、両脚を男の腰に絡めた。絶頂が近いこと、そしてお互いがそれに気付いているということを、二人とも本能で理解した。
「ああっ、佐藤さん、佐藤さん……っ!」渾身の力で陰茎を女に突き入れながら、男は切なく女の名を繰り返す。
「んぁっ、あぁっ……優子……優子って呼んで……晋一さん……!」男の背中にすがりつきながら、女は求めた。
「優子さん、優子さんっ……僕、もうイきますっ……!」
「来て、晋一さん、来て、いっぱい
「あっあっあっ……うぅ……はぁっ!!」
「んンっ!!」
高橋の腰が一度、激しく震えた――しかし、なおも腰を振り続ける。優子はピストンを受けとめ続けながら、突き立てられる陰茎がビクッ! ビクッ! ビクッ!と振動しているのを感じた。
(
女は男の顔を愛おしげに見つめながら思った。そして陰茎の振動に合わせて亀頭から精液がびゅるっ! びゅるっ!と射出されているところを想像した。
高橋の腰に絡みつく優子の脚に、自然と力がこもった。
3.
動きを止め、走り終えた後のように荒い息をつく男の顔を、女は下から見上げた。二人は目を合わせると、穏やかなキスを一つ交わした。
高橋は陰茎を優子から引き抜いて、優子の隣に横たわった。二人は顔を横に向けて黙って見つめ合っていた。
ふと、優子は膣口の辺りに生暖かい感触を感じた。思わずそこに手を伸ばす。
高橋の出した精液が、自分の中からとろりと洩れ出ているのだった。
(すごい……)
いつぶりとも知れぬ、この感覚――いま優子は、乙女のように感動を覚えていた。
(私、ホントに、
優子は中指を膣に少し入れて、精液を絡め取った。そして手を自分の顔の前に掲げ、指に付いた白濁した液体を興味深げに眺めた。
「いっぱい、
「はは……夢中になってしまって……」高橋は気まずそうに言葉を濁す。そして、手をテーブルの方に伸ばし、ウェットティッシュの袋を取って一枚、二枚と引き抜き、優子に差し出した。
「これ、どうぞ……」
「ありがとう」
優子は精液の絡んだ指にチュっと口づけると、唇に付いた精液を舌で舐め取った。そして、ウェットティッシュで指を拭き、次いで陰部を拭った。高橋も一枚取って、自分の陰部を拭う。
「なんだか、拭き取って捨ててしまうのが勿体ない気がします……初めて、私の中で
「佐藤さんは……」
「優子」、優子は微笑みながらたしなめるように言った。
「……優子さんは、その、イけましたか……?」高橋は不安げに尋ねる。
「私は、イき……は、しなかったみたいだけど……、でもすっごく気持ちよかったですよっ、最後まで」と、優子は明るく答えた。
「そっか……でも、じゃあ、アフターケア、させてください」
そう言うと、高橋は優子に口づけした。無論、優子もそれに答える。しかし高橋はそのままおもむろに頭をかがめると、優子の秘部を口淫し始めた。と同時に、親指の腹で陰核をゆっくりと指圧する。
初めは驚いた優子だったが、間もなく、目を閉じて甘い声を立て始めた。「あ……キモチいい……!」両手が自らの乳房へと伸び、乳首を弄びだす。
やがて、
「……あっ……イクっ……はぁんっ!」
という短い嬌声を発して、女は果てた。
4.
行為を終えて、二人はベッドの中で隣り合っていた。優子の腕が高橋の腕に絡んでいる。高橋は天井を見上げていた。優子は高橋の方に顔を向けて、彼の短い髪を撫でる。
高橋が誘うように優子の方へ腕を伸ばすと、優子はその胸元へと潜り込んだ。
「眠たい?」男の裸の胸に抱かれながら、優子が小さく尋ねた。
「いや……、そんなには。でも……、明日がありますからね、しっかり寝て体力を回復しないと……」そう、明朝にはハードな下山が控えている。二人でまた、一歩一歩歩くのだ。
「一緒に、寝ましょうね」と優子は囁いた。当たり前のことだったが、その当たり前のことをきちんと確認したい気分だった。高橋は言葉で返事をする代わりに、優子を抱く腕の力を強めた。抱きしめ返す優子。
「……でも、これじゃ眠れませんね」と言って、高橋は小さく笑った。確かにきつく抱きしめ合ったままで寝ようとするのはヘンか……と、優子も笑った。そしてお互いに、少し力を抜いた。
二人は黙ったまま互いを見つめていたが、やがて、優子の方が口火を切った。
「……おやすみなさい」
「おやすみなさい」
ささやかなキスを一つ交わすと、二人は枕に頭を乗せて、目を閉じた。
――ところが。
目を閉じてみると、どこかから物音が聞こえてきていることに二人は気付かされた。
隣室からの、あの音だ。
(あぁん、それイイっ……あっあっ……サトシ、イイよ……!)
(こっちは……?)
(あんっ! あぁ……両方されるの、すっごくいい……!)
二人は目を開き、呆れたような顔で向き合った。
「……二回戦、始まったみたいですね」
優子が言うと、二人はくっくっと笑った。
(あぁ、エッチ気持ちいい……ね、もっと、パコパコしてっ……!)壁越しに響く声が、どんどん高まっていく。
その遠慮ないよがり声に煽られたように、優子は高橋の肩を抱き、その口をゆっくりとキスで塞いだ。男も、それに応える。
高橋の舌をねっとりと味わいながら、優子の手がゆっくりと彼の陰部へ……再びむくむくと勃起を始めた彼の肉棒へと伸びていった。
【つづく】