※この作品はR-18です。

恋人の不知火を他人に抱かせる話   作:阿部

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陽炎夫婦とスワッピングする話

 

 

 どうやったのか、とよく訊かれるがそんなことは僕にもわからなかった。初期艦としてずっと苦楽をともにした吹雪によれば、初めて会った時からそういう兆候は見え隠れしていたらしい。とりあえず断言できるのは、あの固っくるしくて意地っ張りで不器用で意外と鈍感でなによりとても愛らしい不知火という少女が、僕の恋人であるということだ。

 

「あれ、義兄さんやんか~。こんなところでどうしたん?」

 

 僕と不知火の関係は一応秘匿ということになっていたが、ごく一部を除いて共通認識のようにこの鎮守府で知れ渡っていた。

 

「不知火、食堂で寂し~くご飯摂ってたで。義兄さんとしては迎えに行かなあかんのとちゃうか~?」

 

 僕たちも悪かったのだろう。花見の後で告白してから、およそ夏に突入するまでの僕と不知火の会話は不自然を極めていた。あのっ、と言えば沈黙し、ところでっ、と言っては目線を外しあっていたのである。なにかありましたと白状しながら歩いているようなものだった。それでも、と思う。僕らの関係が広く鎮守府のみんなの知るところとなったのは、やたら多い不知火の妹たちが僕のことを義兄さんと呼ぶせいだ。

 勿論普段は司令と呼んでくれるのだが、からかい好きな子や純粋に祝福のつもりの子などがプライベートで呼び方を変えてくるのである。

 ちなみに、この目の前でにやにやしている黒潮は言うまでもなくからかい好きの方だ。

 

「今探してたところだよ。そっか、食堂にいるのか」

「むふふっ」

「……どうかした?」

「いや~?なんでもないで~」

 

 率直にめんどくさかった。不知火のお姉さんにあたる陽炎さんはこの鎮守府に所属していないので黒潮が最も不知火と近い姉妹ということになるのだが、こうも似てないものかとよく思う。不知火は真面目でちょっと不器用で愛らしいが、黒潮はマイペースで頭が回り、小憎らしい子だった。ここは鎮守府で、僕は提督である。ガツンと言ってやらねばならない、と決意を固めた。

 

「なにかあるのなら、はっきり言いなさい」

「ん~?」

「……言いなさい」

「……」

「……」

「……」

「……教えてくれ」

「……」

「……教えてください」

「……」

「……」

「……」

「……間宮アイスの食券」

「乗った」

 

 誤解のないよう断っておくが、別にへたれた訳ではない。ただ、不知火との交際を目指すにあたって、黒潮は幾度となく相談に乗ってくれ、様々なアドバイスを僕にくれたのだ。いわば盟友である。盟友のためならばちょっとの譲歩くらいしてもいいだろうと、僕は自分に言い聞かせた。

 

「ふふふ♪」

 

 渡した食券で成金悪役がするように口元を隠した黒潮は、流し目で僕を見つめながら笑った。

 

「ほーんま、チョロいなぁ司令はんは♡」

 

 そう言って、黒潮は食券に口付けした。僕は言い返そうとして、不意に訪れた肉体の変化に慌てて膝をたわませた。勃起してきたのである。

 

 

 中学生ぐらいの頃から、僕にはマゾヒストの性癖があった。なぜそういう性癖を持ってしまったのかはわからない。しかし、自覚した切っ掛けははっきりと思い出せる。

 クラスメイトのちょっと早熟な女の子が、ぺニスについて友達と話しているのを偶然聞いてしまったのである。今の彼氏は二人目で容姿にも性格にも不満はないがたった一つだけ欠点があるというのだ。それが、ぺニスが小さいということらしかった。

 おっきくなってもこれくらいしかなくてさ。

 そう女の子が言って、聞いた友達はこらえきれないというように笑った。盗み聞いていた僕の股間は、はっきり熱を持っていた。

 目の前の黒潮の顔が、親指と人差し指で彼氏のサイズを表現していた女の子と重なって、僕は慌てて目を逸らした。

 

「そっ、それで結局どういうことなのさ。不知火、なんかあったの?」

「んーそやなぁ」

 

 黒潮は指先を顎にあててちょっと思案すると、

 

「私室の洋服箪笥」

 

 と言った。なんのことかよくわからなかった。

 

「洋服箪笥がどうかした?」

「……二重床」

 

 一瞬遅れて、それから全てを理解した僕は、自分の血の気が引いていくのがわかった。

 

「あ、その反応やとほんまやったみたいやな」

「し、不知火が?」

「うん。悩んだ感じでご飯食べてるからどうしたんかな~って思って。それで話を聞いてみたら、司令はんのお宝を見つけてしまったと」

 

 僕のお宝というのは、いわゆる成人向けのビデオや漫画のことである。ダウンロード全盛の現代だが、昔ながらのDVDや本も僕は捨てていなかった。自分の性癖に刺さる作品というのは貴重なのである。

 そう、僕の性癖(・・・・)だ。マゾについてはまだいい。良くはないが、まだなんとか弁明の余地があるだろう。しかしあの中学時代の一件以降、僕の性癖はいくつかの要素は追加していた。そのうちのいくつかは不知火に、というよりパートナーに知られることが憚られるものがあった。

 

「その、不知火は何か言ってた?」

「司令はんの好みについて?」

「……うん、まあそう」

「それがなー教えてくれへんかったわ。というか、不知火もよくわかってなかった感じやなぁ。今さらおぼこでもないし、司令はん、もしかしてとんでもなくマニアックなタイプ?」

 

 不知火と僕は既に何度も行為を行っていた。ただ、僕らのバリエーションは口で慰めあったり体位を変えたりする程度で、それしか知らない不知火に僕のお宝の内容が理解できるとは思わなかった。

 

「……どうだろうね、うん……そんなにかな?」

「そっかぁ。ま、安心してーな。司令はんがどんな性癖でもうちらは受け止めてあげるから」

 

 冗談めかして黒潮が笑った。優しさから出た言葉だろうが、もし本当に僕の性癖を知ったら彼女たちには受け入れられないだろうなと思った。不知火のことを大事にしている彼女たちには。

 

 僕はいつ頃からか、寝取らせに興奮するようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 不知火は食堂にいなかった。既に食事を終えて、執務室へ向かったらしい。

 しばらく吹雪が務めていた秘書艦は、彼女が改二改造を受けて前線に立つ機会が増えたことから不知火に替わり、それ以降は僕の個人的な欲求もあってずっと不知火が務めている。陽炎型改二が開発実装されて以降不知火はうちの駆逐艦エースといえる実力者になっていたが、それでも僕が手放さなかったのだ。よくよく考えればその頃から僕の恋慕は鎮守府のみんなに察されていたのだろう。

 執務室は明かりが点いていた。僕は戦々恐々としたが、いつまでも扉の前をうろついている訳にはいかなかった。意を決して室内に飛び込むと、机に向かっていた不知火が弾かれたように顔をあげた。

 

「司、令。あの」

「ごめんっ!不知火!」

 

 僕が声を張って謝ると、不知火は目を白黒させた。何に対してのごめんなのか、僕にもよくわからなかった。しかし、不知火の顔に困惑や不安が浮かんでいるのを見て、僕は謝らずにはいられなくなってしまったのだ。

 

「ごめんなさい。不安にさせた」

「そんな。勝手に物色した不知火に責任があります」

「上官じゃなく、恋人として言ってるんだ。僕が悪い」

「いえ、不知火が」

「不知火に物色されても僕はなんとも思わないよ。僕が悪い」

「しらぬ」

「僕が悪い」

 

 不知火は口をパクパクさせて、それからその波立つ海のような瞳をまっすぐに僕に向け、僕が逸らさないと見ると小さくため息をついた。

 

「こういう時、司令はズルいです。普段はあんなに押しに弱いというのに」

「弱くない」

「黒潮にいつもたかられているではありませんか」

「彼女は戦友さ」

「それを言ったら全員戦友だと思いますが」

「勿論そうだよ。ただ、黒潮と共にしたのは不知火攻略の戦いだからね」

「……バカ」

 

 不知火は頬を染めてそっぽを向いた。これも黒潮直伝である。意外と鈍感かつ打たれ弱いところのある不知火には真っ直ぐストレートの言葉が効くのである。

 

「本当、こんな時だけ強くなるんですから」

「僕はいつも強いし威厳があるよ」

「ありません。司令が力強くなってくださるのは、艦娘たちが傷付いた時と黒潮の悪知恵に乗っかっている時です」

「不知火に告白した時もね」

「……いつか黒潮を徹底的に追い詰めなければなりませんね」

 

 不知火が明後日の方向を睨んだ。その先にいるであろう黒潮を睨み付ける横顔には、もう不安の影は消えていた。それだけで僕は安心した。

 

「とにかく、僕の失態だ。ごめんなさい。許してくれますか?」

 

 頭を下げた。許してもらえるまで、あげる気はない。

 

「……許すも許さないもありませんよ。少々戸惑ってしまっただけです。その、少しマニアックというか、驚きというか。司令がマゾh」

「僕が悪かったです。勘弁してください」

 

 不知火が、その鈴のような声を鳴らして笑った。責任感からか普段は低めに抑えられているその声は、本当に愉快な時には小さくころころと鳴るのだ。その笑いを聞いて、僕はようやく顔をあげた。なんだか今さらに冷や汗が垂れてきた気がする。

 

「はぁ~安心した。本当に焦った」

「別れるとでも言われると思いましたか?」

「正直ね。その、ほら、自分で言うのもアレだけどちょっとね……」

「まあ、それについては思うことがない訳でもありませんが」

「本当にごめんなさい」

「司令が、その、不知火に好意を持っていてくださることはよくわかっていますから」

 

 不知火はまた頬を染めた。ほんと可愛いと思う。

 

「そうだね。僕は不知火が好きだよ」

「またからかって……」

「今のはそういうのじゃなくて、思ったことを言っただけだよ」

 

 不知火はちょっと顔を俯かせ、それから空気に吸い込まれたようなか細い声で「……不知火も、お慕いしています」と言った。

 たまらなくなって僕は不知火を抱き締めた。書類仕事は夕食前であらかた終わらせてあり、残りの書類は明日に回しても問題はない。

 口付けをした。そっと腕に抱いたまま仮眠室に向かおうとすると、不知火が口を開いた。

 

「司令は、不知火のことを愛していてくださいますね?」

 

 僕は頷きながら、不知火の発情を悟った。

 これは黒潮も知らないことだが、不知火はある程度以上の状態になるとひどく素直で言葉を隠さなくなる。だから実は、ベッドではかなり積極的になってくれるのだ。翌朝枕に顔を押し付けながら悶えるまでがセットである。

 

 不知火はしばらく口をもごもごさせた。しかしこの不知火という艦娘は、ここぞと決める時の決断力はすごいものがある。僕が不知火の言葉を待っていると彼女ははっしと目を開き、

 

「司令の私物について、不知火には理解を越えるものがありました」

「……うん、そうだね。そうだろうね……」

「ですので、申し訳ないとは思いましたが少し相談(・・)をさせて頂きました。こういったことの不理解は良くないことを招くと思いましたので」

「そっか、相談……相談?」

「ですので、司令

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          スワッピング、というものはご存知でしょうか?」

 

 

 

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