恋人の不知火を他人に抱かせる話 作:阿部
人気のない廊下を、僕と陽炎さんはゆっくりと歩いていた。陽炎さんは焦らすように、僕はさっきまで見た光景の衝撃を反芻しながらゆっくりと歩く。
「どうだった、目の前でああいうことされて」
「凄い興奮しました……それと」
「ちょっとショック?」
「まあ、はい。いやそのショックも興奮の一部なんですけど」
「不知火のフェラチオ凄かったもんね。義弟くんじゃなくて、完全に
とんでもないことを朗らかに言いながら陽炎さんが笑う。
「一応言っておくけど、スワッピング続けたらもっと凄いことになるから覚悟しておいた方がいいわよ?」
「もっと、ですか?」
「私だって
「他ってその、た、例えば?」
「ん?うーん」
陽炎さんが受けた調教を不知火も受けることになるのだろうか。だとしたら、それはいったいどんな内容なのだろうか。
そう思って発した問いに陽炎さんはちょっと考え込み、それからいたずらっ気を乗せて僕を見て
「私さ、アナルもイケるんだよね」
なんて言うから、僕の心臓はどくんと跳ねた。
「それはその、生まれつき?」
「な訳ないでしょ。私のことなんだと思ってるのよ。ちゃーんと
陽炎さんが唇を尖らせながら、赤裸々に説明してくれる。それは陽炎さんの過去のことであったけど、僕の耳にはまるで不知火の未来のことのようの聞こえた。
「最初はセックスしてる時に小指とかで弄られてさ。そしたら気持ち良くなるとお尻も開くようになってきて、それからはローション使って指とかおもちゃとか。私も最初はえぇーって感じだったんだけど、ちゃんと段階踏むし、何より気持ち良くされた後だとなんていうの、心のハードル?みたいなものが下がっちゃってて
「堕とされたって」
「やっぱり前とは違うのよね、アナルって。本来そう使う部分じゃないから拒否反応出るし、弄られてると無理無理ーってなっちゃうから。それでも開発していくと気持ち良くなれちゃってさ。初めてオチンポ挿れられた時、拒否反応より先に快感がきちゃったのよね」
陽炎さんは蠱惑的に笑いながら話を続ける。
「四つん這いで後ろからアナル犯されてひいひい言わされてるとさ、誰だって思っちゃうでしょ。あぁ私屈服してるなぁって。もうこの人のモノなんだなって、ピストンされる度に頭に刻み込まれていく感じ」
そこで言葉を切って、陽炎さんは僕の股間へと手を這わせた。
「すっごい固くなってる。想像しちゃった?」
「うっ、は、はい」
「それって私を?それとも、不知火で想像して固くしてるの?」
「その……どっちもです」
「あははっ、欲張りめ。まあそんなすぐ後ろに手を出すことはないから安心してて良いわよ。一応、もしNGなら先に伝えておいた方が良いと思うけど」
陽炎さんが僕の顔を覗き込む。僕は首を振った。
「不知火次第、ということで」
「NGじゃないのね?」
「それは、はい」
「今の話を聞いてそれでもアナルOKって、義弟くんも筋金入りねー」
「……やっぱり不味いんでしょうか?」
「んー?別に不味いってことはないわよ。本気でハマっちゃうようなことは不知火に限ってないだろうし。まあちょっと、ベッドの上では
「不味いの基準、壊れてますね」
「お互い様でしょ」
そう言われると僕には返す言葉がない。
四つん這いの不知火がその肛門を性器へと変えられてしまって、先輩の巨根を深々と捩じ込まれて屈服している様を想像して興奮してしまうような僕は、間違いなくどこか壊れているのだろう。
夜の空気はどこか生温かった。呼吸の度にその空気が身体に行き渡り、僕の興奮に薪をくべているような気がした。
ブブっという音が生温い空気を震わせた。陽炎さんのスマホのようだ。画面を確認した陽炎さんがにやりと笑うと、僕の方へ見せてきた。どきりとした。先輩からの着信だ。
「義弟くん、ズボン脱いで。下着も」
「いや、ここ廊下ですけど」
「大丈夫大丈夫、この時間誰も通らないから。一度私と
「むしろ鎮守府での威厳とか大丈夫ですか?」
「ん~そっちはダメかも。ほら、はやく」
「せめて部屋まで行きません?」
「良いところ聞き逃しちゃうかもよ~?」
そう言いながら陽炎さんがスマホをフリフリと揺らす。ちょっと意地悪そうに弧を描く口元から見て、折れてくれそうにはなかった。
僕は左右を何度も確認して、思い切ってズボンと下着を一息に下げた。生温いと思っていた外気も服の中よりは冷たくて、性器が一瞬跳ねる。でもそれは本当に一瞬だった。手袋を外した陽炎さんの手が、すぐさまペニスを包み込んでくれたからだ。
「ふふっ、相変わらず可愛いね義弟くんのオチンチン。あっ、でも凄い熱い。それにもうガッチガチじゃん」
「あ、の」
「想像でこれなら、本当に不知火がアナル犯された時は凄いことになりそう。勝手に
「陽炎さん、それ」
「はいはい。スピーカーにするから静かにね」
片手で僕のペニスを優しく嬲りながら、もう片方の手で陽炎さんがスマホを操作していく。微かな音が聞こえたかと思うと、スピーカーモードへ切り替えたのかすぐにはっきりと聞き取れる音量になった。スマホを手近な壁に立て掛けると、陽炎さんはすかさず僕の後ろへと回り、身体を密着させた。
「すっごい音。立ちバックでやるって言ってたっけ」
そんな囁きが耳に届く。
その言葉通り、スマホからは激しい交わりの音が夜の闇を切り裂いていた。
ぱんっ。ぱんっ。ぱんっ。ぱんっ。
『あっ♡あっ♡や、つよ、い♡あっ♡あっ♡』
『きゅんきゅん吸い付いてくるよ、不知火ちゃん。そんな気持ちいいんだ?』
『やっ、だ♡あっあっ♡あっ♡知り、ません♡あっ♡』
『いやいや、わかってるでしょ。無意識でこれならそれはそれですごいエッチだけど』
『あっ♡あっは♡はっ♡はっ♡や、ぁ♡』
『ほら、ちゃんと腰あげて』
「
「そう、なんですか」
「うん。私も執務室でヤったことあるけど。最初は机に手を突いて、足もピンと伸ばして頑張るんだけど、気持ち良すぎていっつも途中から突っ伏したみたいになっちゃう」
『あっ♡あっ♡や、も、無理♡ああっ♡』
「突っ伏した状態で腰だけ掴まれてピストンされたりするともうすっごいよ。手も足もガクガクしてるから快感を上手く逃がせないしさ。なのに
スピーカーから聞こえてくる音が、陽炎さんが囁いてくる情報と合わさって僕の頭の中に像を結んでいく。
机に手を突いて、ペニスを受け入れるために高々と腰をあげた不知火が、先輩の一突きごとにその力を失っていく姿。
手が肘になり、やがて肘で支えることすらできなくなってはしたなく机に身を預ける姿。
そんな不知火が、まるでオナホのように腰を突き入れられ、快感を貪るための道具として使われてしまう姿。
どこまでが現実でどこからが行き過ぎた妄想なのか。そんな境界線すらあやふやになるなかで、音がちょっと緩やかになった。
『しかし本当に綺麗だよなぁ、不知火ちゃんの後ろ姿。肩から腰までの締まったラインも、その割には女の子らしく膨らんだお尻も。今まで見た中で一番綺麗だ』
『……陽炎に言い付けますよ』
『あいつなら、ウチの妹が一番綺麗で当然、ぐらい言うと思うよ』
「うーん大正解。それはそれとして後で蹴っ飛ばすけど」
『……別に、陽炎だって綺麗な背中をしています。それに脚も不知火より長いですし』
『勿論あいつも綺麗だよ。でもお尻の形は不知火ちゃんの方が良いな。この前も言ったけど』
先輩がからかうような声音を出す。
『今日誉めた時はローキックもらったけどね』
『当たり前です。セクハラじゃないですか』
『でもこの前は喜んだでしょ?』
『…………喜んではいません』
『いや、喜んでたよ。バックで突きながらお尻綺麗だねって誉めたら嬉しいですって』
『……提督さんが無理矢理言わせたんじゃないですか』
『じゃあ嬉しくなかったの?』
ぱんっ。ぱんっ。
『んっ、んっ、あっ……嬉しくないとは、んっ、言いませんけど』
『嬉しかった?』
『んっんっ……まあ、それなりには、あっ、あっ』
『不知火ちゃんのお尻、すごい綺麗だよ』
『あっ、あっ、あっん、あ、やっ、ぁ』
『背中も白くてすべすべだし、お腹周りもちゃんと筋肉がついてて締まってるよね』
『あっ、あっ、あっ、あっ♡やっ♡あぁ♡』
『こうやって見てると肩からお尻まで綺麗に流れてて、芸術品って気までするな』
不知火はちょっと表情や言葉選びに不器用なところがあるけれど、決して無愛想な訳ではない。むしろ律儀で、施されたら必ず返そうとする思いやりに溢れた子だ。その不知火にとってこんなに一方的に誉められるのは息が詰まってしまうような、苦手な状況だろう。
恐らくはそんな状況を解消しようとした、半ば反射的に出た言葉だったはずだ。
『あっ♡んっ♡そ、の……提督さんのも、凄いと、思いますけど。や、待ってください、今のは、あっ♡』
『待たないよ。俺の何が凄いって?』
『ち、違、あっ♡あっ♡あっ!♡』
『ほら、言わないともっと激しくするよ。何が凄いの?』
先輩が問い詰める。快楽と誉め殺しに翻弄され続けていた不知火に、その問い詰めから逃れる力は残っていなかった。
『…………オチンポ、凄い、ですっあっ♡やっ♡あっはげ、し♡あっ♡言、った、言いました、からぁ♡』
『全然足りないよ。どこがどう凄いの?』
『か、たい♡です♡すごく♡あっ♡それに、あっ♡形も、反り返ってて、んっん♡っは♡』
『他には?』
『んっんっんっ♡や、すごい、熱いですし♡それ、に』
言葉が途切れる。
不知火の躊躇の意味は、よくわかった。それは僕と先輩の絶対的な差で、そこに言及するのはどうしても比較をさせてしまうからだ。
でも当然、先輩は許してくれなかった。
『あっ♡あっ♡あっ♡』
『ほら、あとは』
『あっ♡やっん♡あっ♡…………おっきい、です』
『何が?』
『や、だから……提督さんのオチンポ、おっきくて凄い、ですっあっ♡んっ♡んっ!♡んっ!♡』
『不知火ちゃん、最高だよ』
『んっやぁ♡あっ♡あんっ♡あ、っや♡や♡あぁ!♡』
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!と。
今までで一番激しいピストンの音は、快楽の頂点を目指して一気に昇ろうとしているのをはっきり表していた。
「こっちも激しくしてあげる。声、ちゃんと我慢してね?」
陽炎さんが囁き、宣言通りに手の動きを速める。場合に寄っては少し痛みを伴いかねないほどの扱きが、敗北感と屈辱と興奮に奮い立つ今の僕のペニスにはちょうど良い。
大きいのが凄い。それはとても単純で、そして僕にはどうしようもできない、決定的で覆しようのない雄としての優劣だった。
『あっ♡あっ♡イ、きそう、あっ♡あっん♡』
『大きいの好き?』
『あっん♡や、っや♡です♡いやっ♡』
『駄目だよ、ほら、ちゃんと言わないと。俺の、大きくて凄いんでしょ』
『あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡』
『大きいの、好きなんだろう?』
先輩が執拗に問い掛ける。そこには絶対にその言葉を言わせようという意志がはっきりしていて。哀れな獲物となってしまった不知火は決して逃れることができないのだと、通話越しの僕にさえも明確にわかってしまった。
不知火も、敗北が決まっているのはわかっただろう。そして彼女は気高かった。どんな状態でも、その意志をはっきりさせるだけの力を持っていた。
『……司令のが一番好き、なんです。本当に』
『うん。大丈夫、わかってるよ。不知火くんがあいつのこと大好きなのは』
表面的には予防線でも張ったかのような言葉には、しかし僕への深い愛が溢れるほどに篭っていた。
一瞬だけ、先輩が間男役の振る舞いを投げ捨て、友人としての顔を覗かせるぐらいには。
ピストンの音が再開し、激しさを増す。
スワッピングをしていると思う。僕は不知火を愛しているし、不知火も僕を愛している。背徳は、その土台の上にしかないものだと。
それがわかっているからこそ、不知火は不貞の言葉を口にし、僕は寝取られの快楽を享受できるのだと。
『あっん♡あっ、ん♡あっ♡好き、あっ♡好きです♡ん、っん、あ♡奥までくるおっきいオチンポ、あんっ♡好き♡』
『俺のが良いんだね』
『あっ良い♡良いです♡固くて、反り返ってて、熱くて♡あっ♡あっ凄♡おっきい♡んっ♡提督さんのオチンポ、好きっ♡あっイき、そう』
『俺もだよ。一番奥でイかせてあげる』
『あっ♡凄い♡奥、までっ♡んっ♡んっ♡あん♡』
『奥でイきたい?』
『イきたい、ですっ♡あっ♡』
『恋人のじゃ届かない一番奥でイかせて欲しい?』
先輩が攻め立てる。不知火に背徳の宣言をさせようと、その雄としての力を持って腰を振るう。不知火にそれに抗う術はなかった。そして勿論、抗う必要もなかった。僕はその宣言を聞きたくなくて、同時に心底から聞きたくてスワッピングをしているのだから。
『イかせて、欲しいですっ♡司令のオチンチンじゃ届かない一番奥♡提督さんのおっきいオチンポでっ♡突いてっ♡あっ♡不知火のこと、イかせてっ♡くださいっ♡』
『いいよ。イけ。ほら、イけっ』
『あっん♡あっ、イっちゃう♡んっ♡奥まで、すごい♡イクっイクっ♡提督さんのオチンポすご、いあっ♡好きっ♡イクっ♡イクっ♡イっっっっ♡』
「ふふっ、イっちゃえ♡」
不知火の甲高い喘ぎが頂点に達した時、陽炎さんもその手で僕のペニスを扱く。両手を握り合わせて、根元からカリ首までを激しく前後する。そして僕の限界に合わせて、ぎゅっとペニスを握り込んだ。
不知火の溶けきった声と、陽炎さんの甘い囁き。そして手の温かな感触。僕は何も考えることができなくなりながら、射精した。思わず声をあげそうになり、陽炎さんが僕の口を手で抑えた。もう一方の手は精液を残らず吐き出させようと、射精後のペニスを扱き続けている。赤子をあやすようなその手付きに身を任せている僕は、誰かに見られたらきっととてもみっともない姿だっただろう。そんな考えすらスパイスになりながら、だんだんと優しくなっていく陽炎さんの手の動きに僕は一層身を委ねた。スマートフォンの向こう側で荒い息を吐いているであろう不知火のことを思いながら。
「さーて部屋に移動したい訳だけど」
通話も切った後、陽炎さんがそう言いながら廊下の床を見た。
「……本当にすみません」
「いやいや、私もつい場の雰囲気に流されちゃって。しっかし相変わらず凄い量よね、義弟くんのザーメン」
「……なんかこう、清涼飲料水に見えたりしませんかね?」
「うーん無理。どう見てもザーメンです」
「ですよね……」
「よしっ、雑巾!あとバケツ!」
プレイというのは大変なのである。陽炎さんが以前言っていた日常と非日常の切り替えは、なんとも締まらない形でだんだんと上手くなっていた。掃除も。
実験作ですので、こういう用語あるよ!とかこういうルビ振りがいいよ!みたいなのありましたら指摘して貰えれば修正します