恋人の不知火を他人に抱かせる話 作:阿部
丹念に掃除を終えると、陽炎さんは風呂場へ向かった。ちょっと水の音がして、すぐに戻ってくる。口を濯いできたようだ。
「いや~楽しかったわ。責め甲斐があるね、義弟くんは」
「それは喜んでいいんでしょうか?」
「いいのよ~。ほんとに反応しない人だっているんだから。義弟くんとエッチなことするの、私楽しいわよ」
「ありがとう、ございます?」
「どういたしまして。といっても、まだ夜は長いけどね」
そういってベッドにダイブした陽炎さんは、言葉とは裏腹に淫らな印象を拭い去っていた。修学旅行で同室になったような、異性の友達という感じがした。
僕たちはしばらく他愛ない話に興じた。陽炎さんはエッチなことも言ったが、明らかに冗談めかしていて、あるいは世間話といった感じで空気を変えるようなことはなかった。
「ところで、不知火ってベッドじゃどうなの?エス?」
「そうでもないですよ。責めも受けも、まあ穏やかなタイプです」
「えぇ~じゃあ義弟くんどうやって性癖を満たしてるの?」
「それはまあ、お宝というやつで」
「ああそっか。うーむ。不知火に責め方を教えるべきか」
「実の姉から夜の指導は最悪じゃないですかね」
「あの子は必要だと思ったらちゃーんと訊ける子よ。実際、ちょっと教えたし」
「えぇ……」
「いくら私でもいきなりスワッピングから勧めたりはしないわよぉ~。こういうのが効くかもよって教えたりしてさ。義弟くんのお宝ラインナップが結構深そうだったからスワッピング誘ったけど」
「なんか、すいません」
「よろしい。義姉を敬いなさい」
にかっと笑った陽炎さんがベッドから立ち上がり、冷蔵庫へ向かった。グラス2つに水を注いで片方を僕へと渡してくれた。飲み足りないようで、彼女はもう一杯注ぎに行った。
その姿はとても生活染みていて、未だ服さえ乱れていない彼女がそうやって行動している横で自分は肉棒を丸出しにしている事実を今更ながら僕は意識した。
しっかりと服を着た女性の前で自分だけが恥部を露出している。まして、先ほどまでその女性に一方的に責められていたのだ。なんだかとても卑猥なシチュエーションな気がして、そのことに気付いた僕のペニスはむくりと鎌首を持ち上げた。
慌てて隠そうとしたが、遅かった。振り向いた陽炎さんが、にんまりと笑っている。
「義弟くんもしかして、羞恥とか露出とかでもイケちゃうクチ?」
彼女は冷蔵庫の前にある肘掛け付きの椅子をベッドの傍へ引っ張りながら言った。
「……まあ、嗜む程度に」
「それって、自分がってこと?それとも、パートナーがそういう目にあっちゃう方?」
「………………まあ、強いて言うならどっちもです」
「ふふっ、欲張り。でも、覚えておくわ」
陽炎さんは肘掛けの上に飛び乗った。ベッドに座っている僕よりも一段高い位置だ。そして、両足を上げた。スカートの奥、彼女の秘部を隠すスパッツがちょうど目の前に露になった。その光景に、僕はびっくりした。
「えへへ、義弟くん虐めてるうちに私も濡れてきちゃった」
言葉通り、スパッツの股間部分は一際濃い黒が拡がっていた。匂い立つようなその染みに、僕のペニスは完全にいきり立った。
「ほーら、義弟くん足開いて」
「いやでも」
「もう今更でしょ。私に足コキされたくない?」
陽炎さんは靴下の裾を引っ張り、パチンと放した。
「……されたいです」
「じゃ、足開いちゃおう。恥ずかしいシチュエーションで勃起しちゃったオチンチン、お姉ちゃんに見せて?♡」
もう抵抗する気力もなかった。足を開いて降参した僕を、陽炎さんは優しさを含んだ罵倒と挑発でねちっこく責め立て、意地悪く寸止めして、なすすべなく射精を請う僕に卑猥な命令をくだした。
「M字開脚して、太ももの裏から手を回して自分で抱えて」
とか
「寝取られマゾ宣言しちゃおっか♡そのポーズのまま、僕は寝取られマゾですって言ってごらん?彼女寝取られながら足コキされるの気持ちいいですって」
とか
「ほら、ちゃんと窓からオチンチン出して。お、義弟くんのでもなんとか窓枠ぐらいは越えれたね。偉い偉い♡じゃ、そのままオチンチンシコシコしちゃって。だいじょーぶ、誰もいないよ。多分ね♡」
なんてことをさせられて、最終的には姿見の前で自分の恥ずかしい姿をしっかり意識させられながら、陽炎さんの足で射精まで導かれた。
「う~む、自分でも自分のSっ気に驚く」
「なにいってるんですか……」
余韻もようやく落ち着いた頃、僕と陽炎さんはまた最初のようにベッドで横並びになっていた。
「ドMの人もいてさ、もっとアレなことした経験もあるけど、初回からこれは初めてかな」
「もっと酷いのがあるんですか……」
「調教って感じでね。最終的にはその人、触ったりしなくても私に命令されるだけで射精してたな」
「それは、その」
「義弟くんもそうなってみる?」
瞬時に否定しようとしたが、僕の口はもにゅもにゅ動いただけだった。そうなってしまった自分が脳裏を過ったのだ。
「だいぶ欲望に素直になったわね。よきかなよきかな」
「はあ」
「それじゃそろそろ本番、しよっか」
そういって陽炎さんは制服のタイに指をかけた。
「あの、陽炎さん。もう時間が」
そういって、僕は枕元の時計に目をやった。24時。当初の予定の2時間を僅かに過ぎている。
「そうね。でもまあ、大丈夫だと思うわよ?司令絶対延長させるって言ってたし」
「え?」
「もちろん無理やりとかじゃなくてね。時間ギリギリになったら、イク寸前で焦らすの。チンポ浅いところだけ擦ったりして」
陽炎さんの言葉は実体験が籠っているのか、とても生々しくその光景を僕に想起させた。
「そうやって時間迎えて、どうする?って。もうちょっとだけ延長して気持ちよくならない?って誘うのよ。ちょっとでも延長しちゃったらもうゲームオーバー。わけわかんなくなるぐらいイカされて、2時間でも3時間でもセックスさせられちゃうの」
「それってあの、実体験、ですか?」
「それと、今までのスワッピングでの経験かな。司令が延長するつもりの時は絶対そうなったわよ。もちろん中には悪い奥さんもいて、自分から誘ったりしてたけど」
鼓動が早鐘を打った。まさか、そんな。しかし陽炎さんの表情にことさら嘘をついて煽っているような感じはなかった。
「だからさ、まだ時間あるしセックスしようよ」
「い、いや、でも」
「でもじゃなーい。大丈夫だって、義弟くんの大事な不知火、今頃寸止めから解放されてわけわかんないぐらいヨガってるから♡」
言っているうちに陽炎さんもノッてきたのか、声はどんどん艶を増し、淫らになった。
「司令のデカチン一番奥まで挿れられて、義弟くんのことなんか思い出せなくなっちゃってるよ♡パンパンってされて、自分がイクことと射精してもらうこと以外なにも考えられなくなってるって」
「そんなことは」
「あるの♡今までの旦那さんも信じない人多かったけど、最後にはみんな理解してたよ。ああ、自分の奥さんは司令のセックスに負けたんだって♡プレイを越えた延長時間、その時間だけは完全に寝取られちゃったんだってね♡」
僕は迸る妄想と目の前の現実に目をくらくらさせながら陽炎さんの言葉を聞いていた。興奮しきった陽炎さんはシャツのボタンを開け前をはだけた。慎ましやかだがハリのある胸に、純白のブラジャーが眩しかった。ひとつキスをかわし、現実とも非現実ともとれない中で交わろうとしていた2人を、ノックの音が止めた。
「司令、あの、開けても構わないでしょうか?」
聞き間違えることなどないその声は、間違いなく僕の最愛の人のそれだった。陽炎さんが呆然としていた。
「嘘。不知火、ほんとに?」
「陽炎?いるのですか?司令?」
僕たちは我にかえって、まるで浮気中にパートナーが帰宅してきたみたいに急いで服を着た。もっとも、ボタンを留めるだけで済んだ陽炎さんは間に合ったが、僕はパンツをなんとか履いたところで不知火は入ってきた。
不知火の表情を見て、僕は息を飲んだ。
夜でもはっきりとわかるくらい紅潮した肌は、興奮の熱をまったく放出できていなかった。火照った頬の上にある瞳は、上気を受けて潤んでいる。擦り合わせた内腿には汗ともつかぬ液体が一筋走っていた。透明なその雫は、やはりいくらか粘性を含んで見える。誰が見てもわかるくらいに、不知火は発情を溜め込んでいた。
「司令、しつこくなかった?よく帰ってきたわね不知火」
「なにを言っているんですか。最初から2時間と決めていたでしょう」
「そりゃそうなんだけど……」
「司令に、2時間で帰ると約束しましたから」
僕はたまらなくなって不知火を抱き締めた。不知火はちょっと驚いたみたいだったけど、すぐに抱きしめ返してくれた。目を閉じて、心地良さそうに。
不知火の肩の向こうで、陽炎さんが舌を出しながら自分の頭をこてんっと叩いた。それから手を振って、音もなく扉を開いた。
手を振り返すべきかと思ったが、どうしても不知火のぬくもりを離したくなくて僕は目礼をした。それでいいんだという風に陽炎さんはひとつ頷き、部屋を出ていった。
僕と不知火は二人っきりで、言葉もないまま長いこと抱き合っていた。次第に、不知火がもぞもぞとしだした。僕は彼女がとっても疲れているかもしれないことに思い当たった。
「ごめん、不知火。疲れてるよね。休むかい?」
「いえ、それより」
抱き合ったまま顔だけ離して、不知火は鼻をひくひくさせた。そこで僕はもうひとつ、とっても嫌なことに思い当たった。シャワーはおろか、消臭剤さえ使っていない。
「……それで司令、陽炎には何回出したんですか?」
ジト目で僕を見上げながら彼女はそう訊ねた。
「いやー出したというとちょっと語弊があるというか」
「屁理屈はいいです。何回ですか?」
セックスには至っていないことを僕は告げようかと思ったが、それは凄いズルいことな気がするし、何より僕と陽炎は間違いなく性的接触をしていた。陽炎さんたちが言うところの浮気である。言い逃れをするのは男らしくない。僕は堂々と声を張って不知火に告げた。
「…………2回です……」
「なるほど、2回も陽炎に、なるほど。では、不知火とは3回以上ですね」
「え?」
「ですからこれから、司令には最低3回は不知火を愛していただきます」
発情しきっている不知火は恥ずかしげもなく宣言した。普段なら僕も飛び付いただろうが、焦らしに焦らされ性癖をピンポイントで刺激されての射精は、2回でも僕をヘトヘトにしていた。熱に浮かされた時はわからなかったが、冷静になった今では陽炎さんと本番に突入できたか怪しいものである。
「僕もそうしたいのは山々なんだけど」
「なんですか」
「いやあの、先立つものがないというか、モノが勃たないというか……」
「む」
不知火が僕の股間に手をあてた。布越しの刺激は心地よかったが、僕のペニスが勃起する気配はなかった。
「むむむ」
「ほんとに、僕もしたいんだけど……」
申し訳なさに思わず頭を下げた僕を見て、すかさず不知火が耳元へ口を寄せた。
「司令♡」
「え、なに?」
不知火の手は、動きを止めずに僕のモノを刺激し続けている。
「提督さんは、不知火のことをいっぱい犯してくださいましたよ?♡3回射精した後でも司令よりずっとおっきなオチンチン、いえ、オチンポで不知火のことをがんがん突いて、おまんこを司令のサイズから提督さんのサイズに拡張しながら、不知火のことをめちゃくちゃにイカせてくださいました♡」
僕は頭が真っ白になった。股間を撫でながら、不知火が嬉しそうな声をあげた。
「勃起、しましたね♡」
言葉の通りだった。想像もつかないような淫らな台詞に、僕はたまらず勃起していた。
「なんとなくコツは掴めました。なるほど、これは今後の営みにおいて非常に有用ですね。陽炎や提督さんに色々教授してもらって助かりました」
ひとりでふむふむと頷いて納得すると、不知火は僕を優しくベッドに突き飛ばした。手早く服を脱ぎ捨てながらベッドに這い上がると、彼女はにこっと笑った。
「3回と言いましたが、4回でも5回でも不知火は構いませんので。勃起する限り」
正直言って朝日が拝めないかもしれないと思った。まあ、それも悪くないかもしれない。こんな魅力的な娘とそうなってしまうならば。
僕は不知火にキスをしながら、自分でパンツを脱いだ。