恋人の不知火を他人に抱かせる話 作:阿部
不意に陽炎さんが立ち上がると、イヤホンをオフにしてスピーカーの音量をあげた。部屋の中に不知火の嬌声と、責め立てる先輩の言葉と、2人の体重を受けて軋むベッドの音が満ちていった。
僕がなにも反応できないでいると、陽炎さんは自らのスカートの中に手を差し込み、下着を降ろした。艶を放つ黒のスパッツと、それに包まれた白いショーツが床に散らばった。目を白黒させた僕にいたずらっぽく微笑むと、僕の手を引いて陽炎さんは窓際へ向かった。
「いい天気。外は静かだね。演習は休憩中かな?」
縁に両手をついて、陽炎さんが言う。言葉の通り、晴れ渡った空の下で鳥の鳴き声がたまに聞こえるだけで、発砲の音はどこにもなかった。
「それとももう、演習は終わってるのかな?不知火は帰ってきてないけど」
『んやっ♡あっ、あっ、あっ』
「もしかしたら物陰に隠れてセックスしてたりして」
『不知火ちゃんさ、今どうなってるの?』
『はっ♡はっ♡どう、ってっ♡』
『だからさ、今不知火ちゃんは誰の何なのかな?』
「あり得るわよね。だって2人は」
『し、不知火は今、やっあ♡は、あぁ♡んっ、んっ、提督さんの、あっ♡セフレ、ですっ♡』
「セフレ、なんだもんね?♡」
振り向いて蠱惑的に笑った陽炎さんがしゃがみこむ。その手が僕のズボンを下げていくのを、僕は止められなかった。
「あのあと、不知火で3回イったんだっけ?わかりやすいなあ不知火は。私より1回多く、ってことよね」
下着まで下げられ、僕の性器が外気に晒される。もっとも、長い時間ではなかった。すぐに陽炎さんの口が僕のぺニスを根元まで包み込んだからだ。隅々まで舌を這わせるそれは、射精に導くというより全体に唾液をまぶしている感じが強かった。一通り終えると陽炎さんは立ち上がり、再び手をついた。最初よりも上体を低く、お尻を高く上げて。
誘蛾灯に誘われるように、僕は陽炎さんの腰を掴んだ。でもそこから先に進めなかった。臆病心と、コンドームがないことが僕の動きを止めたのだ。
「これで私も負けず嫌いだからさ~妹が3回で私が2回ってのはちょっとね。3回と3回なら角が立たないと思わない?」
「ですけどその、ゴムが」
「知ってるでしょ?ピル服用してるの。なんだかんだ軍だから色々ツテがあってさ」
それでも躊躇してしまう僕を、スピーカーから聞こえる音が後押しした。
『ほら、不知火ちゃん。ちょっと腕引っ張るよ』
『ん、ぁ。この角度、当たるところ変わる……』
『不知火ちゃんは今、俺のセフレだよね?』
『んっ、んっ、は、はいっ、んくっ♡』
『セフレなら、こっちにも協力してくれなくちゃな』
『はっ、んっ、んっ』
『こっち向いて。口、出して』
『はっ、んぷ、ちゅ、んちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅ、ん、ちゅぱ♡』
『俺がイくまで、そっちから口離すのはなしな。もし離したら本気セックスするから。ほら、舌』
『んっ、……ちゅ、じゅる、じゅる、ちゅ、ぱっ♡』
「ふふっ♡義弟くん、おいで」
なにも考えられず、僕は陽炎さんに挿入していた。その暖かさと、奥へとぺニスを誘うような襞の動きにすぐに射精してしまいそうになったけど、下唇を噛んで耐えた。
「ありゃ、すぐイっちゃうかと思ったのに。あはっ、早漏煽りできなくてざーんねん♡」
そんな言葉もなんとかやり過ごして、僕は腰を振り始めた。イメージに浮かぶのは、今も室内に流れている不知火の嬌声と、さきほど一瞬だけ見えてしまった陽炎さんの喘ぎ。それを手にいれたくて、僕は奥へ奥へとぺニスを押し込んだ。
「ふふっ、結構いいところに当たってるよ、義弟くんのオチンチン。奥には届いてないけどね♡」
そんな僕の努力も、陽炎さんに煽りのネタを与えるだけだった。僕がなにを欲しているのか、それに届かなかったときどれだけ興奮するのかを彼女は知り抜いていて、僕の期待通りの言葉を投げてくれる。屈辱と、ある羞恥と、嫉妬と昏い興奮が混ざりあっていく。もう射精は目の前に見える。そんな時、陽炎さんが口を開いた。
「ねね、どんなセックスでイきたい?」
「どんな、って」
「普通も悪くないけどさ、こんなシチュエーションめったにないじゃない?ちょっと楽しもうよ」
「でも、なにがあるっていうですか」
「例えばさ、もっと自分勝手に腰をガンガン振るセックスとか」
「そんなことは」
「権利あると思うよ?だって義弟くんの彼女、私の
陽炎さんが、恐らくあえて強い言葉を使った。それはわかっても、心の底がぐつぐつとした。
「だから、鬱憤晴らすために私の身体を使うセックス。相手の女を、オナホみたいに扱うセックス、ありだと思うな。それとも」
ほとんど反射的に頷きかけた僕の胸に手をやって、陽炎さんはシャツを掴むと、自分も身を捩ってお互いの顔を近付けた。
「それとも――――ふふっ♡こうやって耳元でさ、私に煽られながら射精したい?」
「え?」
「いっぱい、いやらしくて、悔しくて、恥ずかしいこと耳に流し込まれながらマゾ射精しちゃうのって、どう?♡」
ドクンと、自分の鼓動が聞こえた気がした。
「自分勝手セックスしたいなら、身体起こして。それから好きなだけ私を犯して。もしマゾ射精したいなら、そのままでいて」
沈黙が流れた。後ろにあるタブレットのスピーカーからだけ、艶かしい声が続いている。
「ほら、いいの?義弟くん。私のこと、メチャクチャにしていいんだよ?」
『ちゅ、んっふ、ふっ、ん、ちゅ』
「そのままでいたら、仕返しできないよ?それどころかマゾ射精させられちゃうのよ?」
『ん、っぷ、ちゅ……ぱ♡』
「恋人同士揃って私たち夫婦にイジめられちゃうけど、いいの?」
『ちゅ、ちゅ、んあ、やっ♡あっ♡』
足に根っこが生えたような、重いというより張り付いてしまったような、そんな硬直が僕を襲っていた。頭では、身体を起こそうとしていた。できるとも思っていた。でも現実には僕の身体は、持ち主の意思を徹底的に無視していた。
でも、次は。次こそは、持ち上がるはずだ。そう意気込んだ僕の耳に、吐息がかかった。
「もうダーメ♡」
その声を、僕は絶望しながら聞いたような、大きな安堵に包まれながら聞いたような、不思議な気持ちがした。
陽炎さんが腰をゆっくりとくねらせながら、僕の耳に次々と言葉を流し込んでいった。嘲笑するような、詰るような、あやすような、とにかく色々な言葉で、僕の理性を焼いていった。
「不知火、奥突かれるの気持ち良さそうだったね。義弟くんとのセックスでああなったことある?」
「男の人の平均がわからないんだけど、これってどれぐらいなの?小学生ぐらい?あはっ、こどものオチンチンだね、それじゃあ」
「ちょっとMなぐらいの人なら、すぐ私に襲いかかったと思うよ?義弟くん、真正のマゾだね。どうしようもないかな~そこまでいくと」
「なにも大人しくしてなくていいのよ?今からでもその気があるなら、私のこと抑えつけてレイプしてみて?ま、義弟くんじゃ無理だろうけど♡」
「司令と不知火、今頃シてるのかな~。私も混ぜてほしいかも。あ、今度そういうプレイする?私と不知火が司令にハメてもらって、義弟くんはそれ見ながらオナニーしてさ♡」
「おっ、跳ねた。やっぱり、寝取られ系が一番効くね。良かったじゃない、不知火が司令のセフレに堕とされちゃってさ♡」
「義弟くんにも言わなかったでしょ?そりゃ無理よねー。セックス絶対耐えきれないのわかっちゃったからセフレ宣言して見逃してもらったなんて、そりゃ言えないわよ♡」
「まあでも、不知火は義弟くんのこと愛してると思うわよ?心は、だけどね♪身体の方は、ふふっ、どうなっちゃってるだろうね?」
いつの間にか陽炎さんは腰を止め、言葉だけを紡いでいた。部屋に嬌声が響いていないことに今気付いた。映像は終わったのだろうか。
『俺と会う時はこれ持っとくこと』
『……なんですか、これ』
『俺用のコンドーム。制服にでもしまっておいて』
『そんなの……いら』
『俺がちゃん付けで呼んだ時にこれ持ってなかったらナマでヤるから』
『…………』
『わかった?』
『……はい』
『あいつに言うタイミングは任せるよ。精々喜ばしてやりな』
『もちろんです。……そのためのプレイですから』
『おつかれ、不知火くん』
嬌声の変わりに聞こえてきた会話で、僕は不知火の態度をすっかり理解した。そして今現在も不知火が、先輩用のコンドームを持ち歩いているかもしれないことも。
興奮がたぶん臨界点を越えそうになっていた。ほんの少しでも刺激があれば、きっと射精に達してしまう。その少しの刺激が与えられるかどうかは、陽炎さん次第だった。
「提督さん用のコンドーム、だってさ♡マジでセフレの扱いだね」
「陽炎さん、もうっ…………!」
「んふっ♡イきそう?腰、動かして欲しい?」
「は、はいっ……」
「昨日言った、マゾの人の話覚えてる?触られなくても、私に命令されるだけで射精できるようになっちゃった人」
「覚えて、ますけど、それがなにか……」
「ああなっちゃうともう私に逆らえなくなっちゃうの。そりゃそうよね。街中だろうと人の目があろうと、私の言葉だけで射精しちゃうんだもん」
陽炎さんはちょっと笑うと
「義弟くんはそうなっちゃダメよ?♡」
そういっていっそう僕の耳に近付いた。陽炎さんの考えがわかる気がしたが、もう逃げようがなかった。
「短小オチンチンバカにされたり、不知火が司令のオチンポに寝取られちゃったこと煽られたりしても、言葉で射精しちゃダメだからね?」
「1回イっちゃうと癖になるから。特に義弟くんみたいな真正マゾは、命令されたりするのに弱いからさ」
「言葉責めからの射精命令でザーメンぴゅっぴゅするの覚えちゃったらもう戻れなくなっちゃうかもよ?」
「オチンチン触られてもないのに腰ビクビクさせてザーメン漏らしちゃうの、恥ずかしいでしょう?」
「だから」
「ちゃーんと耐えてね♡」
ゾッとするほど艶やかに笑った陽炎さんが、尖らせた舌先を僕の耳へと差し込んだ。脳髄が溶けるぐらいに僕を蹂躙してから、耳と脳が直結してしまったようなそんな錯覚を起こさせて。そのまま耳にキスでもしているかのような密着した状態で、陽炎さんは容赦なく僕の脳へと言葉を送り込んできた。
「イっちゃえ♡司令のデカチンに不知火寝取られちゃって興奮するような寝取られマゾオチンチン、敗北射精しちゃえ♡情けない短小オチンチンの先っぽから、命令されてザーメンお漏らししちゃえ♡イっちゃえ♡ほら、イけ!」
ああ。そんな、呻きともとれない声とともに僕は陽炎さんの膣内へと射精した。結局腰が動くことはなく、言葉で射精してしまったのだ。目の前が真っ白になるほどの快感と興奮。なにか、とてつもないことになってしまったのではないかという、漫然とした不安。すべてが精子を押し出すかのように、射精した。
「あっ♡んっ♡……もう、生意気。射精はほんと凄いんだから。もっと余裕ぶりたかったのに喘いじゃったじゃない」
無意識にぺニスを抜くと、僕はベッドに座り込んだ。陽炎さんも歩いてくる。その股間から、僕の放った精が溢れていた。
「へっへっへ~♪気持ち良さそうですね旦那」
「どういうキャラなんですか……」
「いやーほんと義弟くん射精すわね~。すっごい溢れてくる。あ、お掃除してあげるわよ」
「……あの、ほんとに癖になったりします?」
「ん?ちゅ、ぱ。なにがー?」
「その、命令されてっていうの」
「あー。んふふーどう思う?」
「……ちょっとなりそうです」
「あはは、だーいじょうぶよー。ほどほどにしてればね」
もう一度僕のぺニスを頬張ってから、陽炎さんはいつの間にか再生の終わっていたタブレットの電源を落とした。
「映像、あとで焼いてもってくるね」
「最初の陽炎さんのは」
「プレイエリアの外です」
「VRゲームじゃないんですから……」
昨日も思ったが、陽炎さんのプレイ中とそれ以外のギャップというのは凄い。本当に目の前の少女が、さきほどのあやしい色香を放っていた人物と一緒なのか不安になるほどだ。
「そりゃ、切り替えはしっかりしないと。特殊なプレイしてる分私たちは特にね」
「そういうもんですか」
「そ。司令も切り替え凄いよ。普段は私に急かされてヒーヒー言って反論もしてこないけど、ベッドじゃ私をヒーヒー言わせてるし」
「はあ」
「義弟くんたちも、あんまりプレイ中の私たちを引きずりすぎちゃダメよ?特に義弟くんは」
「僕、ですか?」
「不知火はまあ別にだけど、義弟くんは長年溜め込みすぎた性癖をバンバン発散してる訳だから。下手したら、私に寝取られちゃうわよ?」
洒落にならない話だった。自意識過剰と言ってやりたいところだが、陽炎さんが魅力に溢れているのも、僕の性癖をピンポイントで刺激してくれているのも事実なので笑えない。
「ま、ほどほどにね。ほどほどに」
「陽炎さんのプレイもあんまりほどほどではなかったような……」
「なにいってんのよぉ。こちとら慣れてるんだから。加減はお手のもんよ」
「本当ですか」
「疑り深いなー。その証拠にほら」
陽炎さんがズイっと身体を寄せる。口が耳元へときた。
「ほら、勃起してみなさいよ♡短小オチンチンちゃんと勃起できたら足コキでお漏らしさせてあげるから♡私の命令よ、勃起しなさい♡恥ずかしい勃起オチンチン、私に見せて♡」
「とまあこんな命令をしてみても勃起したりは…………」
「…………」
「…………」
「あの……陽炎さん?」
「…………まあ、マゾ奴隷になったとしても寝取られたのとは違うから」
「陽炎さん!?」
そんな感じで馬鹿な話をしながら、初めてのスワッピングは終わった。
開いた扉が良いものなのかどうか、僕にはまだ判断がつかなかったけれど。先輩と陽炎さんというパートナーを得たことはきっと幸運だと思う。なにより、こうやってスワッピングを行った今も僕の中で一番の宝物が不知火である事実が微塵も揺らいでいないのがはっきりとわかって、単純に嬉しかった。不知火も同じ気持ちでいてくれたら。そう思いながら、どうやら休憩が明けて再び演習が始まったらしい外を僕は眺めていた。青い、空を。
「で、どうする?足コキしたげよっか?」
「イかない程度でお願いします。不知火との約束があるので」
「いや、いいけど……生殺しじゃない?」
「約束は守りますから」
「ふーん。それはそれとして足コキはされたいってこと?」
「……まあ、そんな感じです」
「よーし、義弟くん寝っ転がりなさい。お姉ちゃんの足コキで地獄の寸止めを味わわせてあげるわ♡あとついでに手で責めてくれるとお姉ちゃん嬉しいかな」
「あ、じゃあこっちへどうぞ」
外ばかり見ていられないのも提督の宿命なのである。艦娘のケアも職務のうちなのだ。