無事に頂上まで辿り着く事ができた。
そこから広がる光景はまさしく、天国と言っても良い程に素晴らしく、辺り一面が、野菜で覆われている。
「なるほど、確かに野菜天国という名に相応しい場所だな」
そう言いながら、俺達は先程までの疲れを取る勢いで、周りにある野菜を次々と食べていく。
周囲にあるきゅうり、大根、ブロッコリーなど、数多くの野菜はどれも新鮮で美味しい。
しかも、調理されていないはずのネギやかぼちゃもそのまま食べる事ができる。
それはまさしく奇跡の食事である奇食と言える。
「この素晴らしい景色に多くの野菜。
これ程、素晴らしい物はないだろう」
鬼頭さんの言葉に対して、俺も頷ける。
「それにしても、このポッドの中にいる人は結局、誰なんですか?」
めぐみんの言葉と共に、俺達はそのポッドの中にいる人物を見る。
赤い炎のようなショートヘアに露出の高い女性。
なぜ、あそこで女性が入っていたのか、疑問に思うよりも早く、そのポッドが開かれる。
「ここは」
「あっ、目が覚めた」
俺はそう言いながら、トマトを囓りながら言う。
「あなたが、私を」
「というよりも、本当に誰?」
俺は、そう質問した。
「私の名前はホムラ。
剣の担ぎ手を選ぶ者です」
「剣?」
「それって、さっきまで使っていたあれじゃないですか」
そう言い、俺達は振り返る。
「えぇ、そうですが、あれは」
「いやぁ、なんか持っていたら、熱いし、鉄板みたいだったから、つい」
赤い剣の上に、俺達は先程、取ったばかりのトウモロコシを乗せて、焼きトウモロコシにしている最中だった。
「えっと、まさか伝説の剣を、こういう使い方をする人がいるとは」
それに対して、ホムラは苦笑しながら言う。
「いや、基本的に、俺、剣は使わないから。
ここに来る途中で、ホムラが落ちないように使わせて貰っただけだから」
「私をですか?」
「当たり前だろ」
俺はホムラの返答に対して、頷く。
「あれが、伝説の剣だとしても」
「伝説の剣でも、人を救う事ができなければ、意味はないだろ。
殺すだけの剣は、俺は必要ない」
「まぁ、実際に、この男は剣が必要ないぐらいの戦闘能力を持っているし、我々の目的は剣ではない」
「と言いますと」
「ここにあるエアを食べる為に来た」
「エアを食べる為に」
その言葉に対して、ホムラは驚いたように見る。
「・・・あなたは、それを食べて、何をしますか」
「ただ、食べたいだけだ」
「それだけですか」
「それだけだ」
そう、はっきりと言う。
「・・・ある意味、真っ直ぐですね。
そういう真っ直ぐなあなたなら、もしかしたら」
それと共に、ホムラは俺を見つめる。
「彼女も認めてくれたら」
「んっ?」
それと共に、ホムラの姿は変わる。
先程までのショートヘアだった彼女は腰まで伸びるロングヘアに金髪であり、どこか気が強そうだった。
「あなた、この世界を救う気はまるでないの」
そう、俺に最初に問いかけたのは、それだった。
「というと」
「この世界は、今、魔王と呼ばれる存在に滅ぼされそうになっている。
それを、知っていながら、あなたは食事の方へと目を向けている」
「魔王の目的も分からずに全部を否定するつもりはない。滅亡も、酷く言えば、人間から見たらだ」
「えぇ、それは否定しないわ」
「だけど、俺がもしも怒るとしたら、食い物を命を粗末にする奴に対してだ」
「命を」
「あぁ、それだけは譲れない」
その言葉に対しては、鬼頭さんもめぐみんも頷く。
「私は世界中の奇食を食べるのは、そこで生きる人々の事を知る為。
そして、何よりも、食事は命を頂く行為。私自身は彼と共に食事をするのが楽しいから一緒にいますが、同時に命を粗末にするのは許せない」
「私自身、家が貧乏でしたので、腹が減る苦しみは知っています。そういう意味では、私は二人と同意見ですね」
その言葉が続く。
「・・・なるほど、食事馬鹿だとは思っていたけど、同時に命の大切さを知る人のようね。
力ばかり、拘る奴よりはマシかもしれないわね」
その言葉と共に彼女は、どこか納得したように頷く。
「私はヒカリ。ホムラと同じく、この地で新たな剣の担ぎ手を選ぶ者。
今日から、あなたが、その剣の担ぎ手よ」
「担ぎ手と言われても、俺、基本的に素手なんだが」
「そうね、そこはまぁ後々にね。
まぁ、今は何よりも、あなたが食べたかったエアを食べる為には、私の力が必要よ」
「エアを食べる為にだと?」
それには鬼頭さんは首を傾げる。
「こっちよ」
そう、ヒカリが案内をしてくれる。