ヒカリの案内と共に向かった先にあったのは、巨大な木。
雲の上にあるとは思えない巨大な木であり、その全長1500mを超えるキャベツのような包皮型を思わせる実。
「これが、本当にエアなのか」
「えぇ、このエアから、僅かに出ている空気こそ、この世界の全ての酸素を作りだしています」
「この実、一つで?!」
その事実に、めぐみんは驚きを隠せない様子だった。
確かに、この実一つで数百年に実るそれは一つの惑星を大気で覆い尽くす程の空気が凝縮されており、実が熟して地面に落ちると大陸中の雲を吹き飛ばすほどの空気を放出して100色の虹を作り出すと言われている。
「えぇ、ですが、このエアはあと少しで役目を終えます。
だからこそ、このエアを終わらせる為にも、私が必要になります」
「むっ、先程の話からすると、エアがなければ、この星の酸素が無くなるのでは?」
「必要以上の酸素が地球に満たされたら、それは星の終わりを意味します。
歴代の勇者は、それを阻止する役割を持っています」
「なるほど、伝説の剣の役割は、そういう意味でもあったが」
「それで、歴代の勇者は調理には成功しているのか?」
俺は思わず気になる事を聞いた。
「歴代の彼らはエアを食材ではなく、儀式のように行っていました。
だから、調理というのはやっていないわ」
「だけど、調理には、ヒカリが必要なんだろう」
「えぇ」
俺の言葉に対して、ヒカリは頷く。
「非常に繊細な食材であり、圧倒的強者が近づけば瞬く間に腐ってしまう。
調理に関しても僅かでも手元が狂えば実が破裂してしまう恐れがあり、包丁を入れたそばから別の場所から火山噴火級の勢いで空気が漏れ出てしまう」
「それって、かなり危険じゃないですか!?」
「本来ならば実の中の空気を少しずつ抜きながら実を冷却し、旨みを閉じ込めるという方法だが、それでは抜けた分の旨みが無くなってしまう」
「それは、残念だが、それしかないのならば」
ヒカリの説明を聞いて、めぐみんと鬼頭さんは少し諦めている様子だったが。
「だったら、一箇所に大きな穴を空け、旨みを逃さないまま形を保った状態で実が落ちる瞬間全ての空気を一箇所から一気に抜けば良い」
「なっ、それは危険よっ、分かっているの!」
俺の言葉に対して、ヒカリは叫ぶ。
「危険なのは百も承知。
だけどここでやらなければ、誰がやる」
同時に俺の腰にアマゾンドライバーを出す。
今回もまた、本気を出さなければいけない。
一瞬の油断が失敗になる。
「アマゾン」
同時に俺はアマゾンオメガへと変身する。
「あなた」
「さぁ、どうすれば良い」
「・・・分かったわ」
その言葉と共に、先程までトウモロコシを焼いていた剣はまるで星を思わせる光の剣へと変わる。
「これで、あなたに予測を与える。
正確に、そこを突く抜けなさい。
ただし、一瞬でも油断すれば」
「あぁ、分かっている」
ヒカリの言葉に同意するように構える。
一瞬も、油断せず、予知で出た俺の姿を。
僅かな擦れもなく、放つ。
それによって、出来た最小限の穴。
そこから漏れ出る空気に対して、エアの実のうま味を閉じ込める為に、俺はヒカリから来る予知を最大限まで発揮させる。
「私の予知に応えて、ここまで動くなんて。
それにこの力、まさか、ここまで」
一瞬も油断もできない調理。
襲い掛かる風。
だが、やがて、それは終わりを迎える。
「ふぅ、終わったって、鬼頭さんにめぐみん」
「うぅ、危なかった」
「ヨッシーがいなかったら、私達は吹き飛ばされていたぞ」
そう2人は呆れるように言う。
「いやぁ、すいません。
とりあえず、出来ましたよ、今度こそ」
「これが、伝説の野菜」
「エア」
それを見て、2人は驚く。
「さて、分かっているわよね」
「あぁ」
同時にヒカリの言葉に応えるように、すぐに剣を構え、そのままエアを斬る。
光の速度で斬られたエアは、細胞を一切崩す事なく、そのうま味が完全に別れた形で一口サイズで切れる。
「それじゃ、食べるとするか」
「うむ」
同時に俺達はそのままエアを食べる為に、囲んだ。