勝己side
雄英体育祭は今、障害物競争を終え2回線の騎馬戦へ突入していた。
「ふふ。勝ち残れるのは1人だけなのにチーム戦させるなんて、ヒーローも酷い事をするね」
声のする方を見るとデクが部屋を出てきていた。
「よう緑谷。研究の方は良いのかよ」
「まあね。それにペットが寝ちゃってさ。1人でテレビを見ていてもつまんないから部屋から出てきたんだ」
そう言いながらもテーブルにノートパソコンを数十台並べて“再現”で手と目を増やしてタイピングをしている。
「何をやってるんです?」
黒霧がデクに質問するとニヤリと笑うと。
「煙草の火」
とだけ答えていた。
相澤side
俺は今、オールマイトさんと校内の警備をしている。
「相澤くん。校長の話について考えているのかい?」
「ええ。USJ襲撃の時、場義の言っていた飯田の家族関係や、オールマイトさんが参加する事を知っていました。つまりなんらかの手段で此方の情報を掴んでいたということです」
「つまり内部犯、スパイがいると考えているのかね」
「恐らくは、ですがね」
「だが、雄英高校の生徒たちや教師は皆、正義の心を持ってるよ」
「それは重々知っています」
だが、俺は受け持ったクラスで何十人も除籍してきた。
そのせいでヒーローへの道を辞めた生徒もいたと保護者からクレームが来たこともあった。
だが、半端な覚悟でヒーローになって命を落としたら元も子もないと説明してきた。
しかしそれでも恨みを買っているのは確かだ。
もしかしたら犯人はその除籍した生徒の関係者なのかもしれない。
生徒の1人を失って俺はそんな事を考えるようになっていた。
オール・フォー・ワンside
遂に雄英体育祭は決勝トーナメントに進んでいた。
緑谷出久を仲間にしてから僕自身は欲しい“個性”を容易に手にする事ができるようになってからは“個性”目線で仲間を選ぶことは全く無くなったが、それでも仲間は多い方が良いに越した事はないだろうね。
ドクターには。
「ヒーロー目指しているものが
等と言っていたが、僕と緑谷出久の意見は一致していた。
『人間、悪に堕ちるときは一瞬』と。
だが、僕が見ている限りではスカウトする価値のある生徒は見当たらないが、同じ考えでも緑谷出久は違う可能性で見ているのだろう。
さあ、誰をスカウトするんだろうね。
戦力重視か、能力重視。
もしくはカリスマ性や、もしくは…。
少なくとも僕には考えつかない基準があるのかもしれないね。
勝己side
「うん、これで完了だね」
デクはどうやら研究を一段落終えたようだ。
「完成したのですか?。私も知り合いから探索を頼んでいた人物が見つかったのでスカウトに行ってきます」
どうやら黒霧は出かけるようだ。
「そうなんだね。これから面白い光景が見れるかもしれないのに」
デクの奴は残念そうな言い方をするが顔は笑ったままだ。
「それは残念です」
そう言いながら黒霧は自分の“個性”を使って何処かへワープしていた。
テレビを見ると、雄英高校体育祭は決勝戦が終わってメダル授与が行われていた。
「メダル授与よ!!。今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!。我らがヒーロー、オールマイト!!」
ここでオールマイトを呼ぶのか。
優勝者は轟とか言う紅白の髪にオッドアイという風貌の生徒だった。
右手側から繰り出される氷だけで戦ってた奴だ。
「左手を使わないとか、舐めプでもしてんのか?」
「もしくは縛りプレイとかか?」
最後にオールマイトが轟に金メダルを授与し、締めくくろうとした時、観客席以外から拍手の音が聞こえカメラがその音の方に向くと、そこには青い髪にデスマスクを着け、首から下をマントで羽織った男がいた。
「俺にも祝わせてくれよ。優勝おめでとう。そして、生徒の1人にさよならとな」
「場ー義ー!!。僕はお前を絶対に許さない」
1人の生徒が両腕から水飴の様なものを分泌しながら向かうが。
「下がっていなさい、水野少年。彼に怒りを覚えているのは私もだ。生徒を1人殺しておいてよく姿を見せれたな」
すると青い髪の男は「ギャハハ」と笑った後。
「生憎だが、おれ様はお前らに捕まる程落ちぶれてないんでな」
そう言うとナイフを持った右手を自分の身体から分離させて攻撃しようとするがオールマイトが掴んで阻止していた。
「2度も生徒は殺させやしないよ!!」
だがその男はまだ笑っていた。
「生憎、おれは左利きなんでね」
「何を言っている」
その答えはすぐに分かった。
風に靡いたそのマントの下には奴の左手が無かった。
そして。
「ぐっ。うわぁー」
水野と呼ばれた少年にナイフを持った宙に浮かぶ左手が心臓を突き刺していた。
「早くリカバリーガールを呼んで」
過激な衣装で司会を勤めていた女性ヒーローが叫んでいる。
「貴様!!」
怒りを露にするオールマイトだが。
「残念だったな、ヒーローども。警備を強化したにも関わらず生徒の1人をまたしても殺しちまったんだからな」
そう言うと場義は自身の身体を目に見えない程のサイズにバラバラに分解して逃げ去って行った。
この事件を切っ掛けに、雄英高校の信用は更に落ちたらしい。