※この作品はR-18です。

エスペラント→キミが視る夢。   作:鵜飼 ひよこ。

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A.優しさは罪の薫り。

 12_

 

「よし、ここまで来れば大丈夫だ。」

 

 余裕ではないけど、安全圏内。

ようやく繋いでいた方の手を離す。

 

「ぁっ。」

 

 小さな呟きが聞こえて、さやかは握っていた方の手を見つめている。

当然、おかしな点はない。

 

「ありがとう。さやかの"お陰で"遅刻しないで済んだ。」

 

 結果的にだけど、僕は嘘は言っていない。

さやかに嘘はつけない。

つくわけにはいかないと僕は半ば無意識レベルにそう思っている。

 

「え?う、うん。じゃなくて、ううん、お礼なんていらないよ。」

 

 呆けていたさかやが、はっとなって今まで見つめていた手を横に大きく振る。

本当に可愛いなさやかは。

 

「あ、あれって例の先輩・・・。」

 

「・・・へ?」

 

 校門まで数百メートルの地点、そこに特徴あるロール髪の少女が立っている。

胸元のリボンが上へと押し上げられているのを見ても、マミ先輩その人だ。

但し、その表情は見えない。

距離の問題じゃない。

彼女が少し俯き加減だったからだ。

 

「あ、あたし、先に行ってるね!」 「んなっ?!」

 

 友よ、僕を置いてゆくのかっ?!

捨てられた犬のような目でさやかを見るが、彼女はさっさと走り去ってしまう。

そういうしている間にも、僕と先輩との距離はつまっていく。

 

「・・・随分と・・・。」

 

 何処から出ているのか解らないけど、はっきると通る声。

声の大きさはそれほど大きくないのに。

 

「・・・仲が良いのね。」

 

 ゆらりとほぼゼロ距離にエンカウント。

僕、マミる?!ん?マミるってなんだ?

 

「い、いや、そりゃ昔から良く知る幼馴染なんで・・・。」

 

 言ってからそれがどうした?と思った。

全く以って理由にすらなっていない。

これはいかん、良くない。

 

「手をつなぐ程に?」

 

 は、反論が的確過ぎるぅ~。

 

「手を繋ぐとさ、安心するよね?」

 

 僕は先輩の手を取った。

一瞬、ビクリとなったけど、そんな事は気にせずにそのままきゅっと握り締める。

うん、先輩の手も温かい。

これはきちんと動機を説明しないとな。

 

「さやかもそうしないと不安定になるんだ・・・誰もさやかを見ていないから。そう、さやかは時々思い込む。本当は僕じゃなくて違うヤツがいいんだろうけど・・・。」

 

 誰もさやかが臆病な事を知らない。

知っているはずの"本当の幼馴染"は、彼女の心を想いを何も見ていない。

いや、うん、それは当然で・・・人間はたった一人の心の内も解るはずがないんだ。

 

「まぁ、ともかくアイツには他に"好きな幼馴染"ってのがいて、うん、なんていうか、僕は緩衝材みたいなもんかな。」

 

「私にとって、アナタが私の"中身"なの。」

 

「ありがとう。でも、緩衝材もなきゃないで、中のモノは壊れちゃうんだよ。」

 

 何処まで包めるのかなんて解らない。

幼馴染には一生包んであげられるだけの地位も資格もない。

 

「ズルい・・・アナタは優し過ぎる・・・。」

 

 俯いた少女にどう対応したらいいか解らないけど、どうにも愛しさが込み上げてきて、彼女の額にくちづけする。

 

「それもズルい。」

 

 顔を上げた先輩は、口を尖らせてはいたけれど微笑んでいた。

 

「あはは・・・て、あれ?マミ先輩、ソコ、何処かにブツけた?」

 

「え?」

 

 小首を傾げたまさにその首に、うっすらと真一文字の赤い線が見える。

鬱血したかのような・・・正直、気味が悪かった。

 

「赤くなってるよ?」

 

 気味の悪さ、嫌悪感を払拭するかのように僕は彼女の首筋に唇を押し当てる。

 

「んっ・・・もぅ、めーよ?」

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