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「そんなの・・・出来ないよ・・・。」
答えを返すまでズブ濡れのままのさやかから視線を逸らす事はしなかった。
ここで逃げられても困るし、さやかの為にも良くないと思ったから。
「うん、良かった。さやかはさやかのまま、さやかのイイトコは変わってなくて。」
そう微笑んで、僕は立ち上がる。
「さ、交代。やっぱり湯船に浸からないと、芯まで温まらないよ?」
ズブ濡れのままといっても、そこはもう温水なので心配はしないけれど、やっぱりシャワーだけだたと心もとない。
どれくらいの間、さやかが雨に打たれていたかは知らないけど、身体が冷え切ってるのは手を繋いだ時に解っていたから。
「アタシの良いとこ・・・か。」
僕に促されるまま湯船に浸かる。
僕は当然、浴槽の外だ。
「自分より他人を優先出来るのは凄い事だよ?」
自己犠牲の優しさ、献身っぷりには頭が上がらない。
だから、僕もどこかで彼女から目が離せないし、こうしているんだろう。
「それで失恋しても?」
「それでも。」
僕には絶対真似出来ないと思う。
誰かの痛みを肩代わりするような・・・。
肩代わりした痛みを浄化出来るわけでもないし、そんなの超能力か魔法でも使わないと無理・・・?
アホらし、土台の思考からしておかしいぞ、僕。
「アタシはどうすれば・・・ううん、みんなどうしたら幸せになれたのかな?」
「そんなの無理だ。美味しいお菓子・・・ケーキを丸ごと独り占めするか、割るかの話だろ?でも、事はケーキのように割り切れるもんじゃないんだから。」
要するに一人の最大級の幸せを求めるか、等分の小さな幸せを分かち合うかの違いだ。
でも、それって総量が変化しているわけじゃない。
「結局さ、恋愛においてはタイミングなんだよな。」
もし先にさやかが告白していたら、変わっていたかも知れない。
それは勿論、僕の恋愛に関してもきっと同じだと思うんだ。
「両方がフラれるってパターンもあるけど、まぁ、その場合、友情を取ったか、見る目がないかのどっちかだ。」
あ、BL系って場合もあるか・・・うん、ないとしておこう。
てか、想像したくない!
おえー。
「じゃっ、じゃあ、アタシとだったら?」 「勿論、さやか。」
考えるまでもなく即答だ。
「えっ?」
さやかは呆けた顔で僕を見つめてくる。
頭回ってないなコイツ。
「あのな、僕は相手の女子をよく知らないんだ、そしたらどう考えてもさやかを選ぶだろ。」
「あ・・・うん、そっか・・・。」
うん、やっぱりそこまで考えが回ってないな。
「あれ?でも、両方選ばないって選択肢もあるって、さっき・・・。」
ちっ、そこそこは回ってたや。
「それはない。よって僕はさやか一択だ。」
「アタシに・・・そんな価値あるかな?」
「さぁ?そんな価値なんて、後付けでもいいしね。」
じゃないとお見合い結婚とか成立しないし、一目惚れとかも成立しないので、後付けでもいいと思う。
「そっか・・・。」
「じゃないと、僕だってそんな価値ないぞって、最近、こんなような話を誰かと・・・あ゛・・・。」
ここまで夢中になっていた僕は、大事な事を・・・絶対に忘れてはいけない事を失念していたのを思い出した。
今まで生きてきた中で、最大の失態かも知れない。