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授業の間、僕は考え事をしながら漫然と板書をノートに書き写していた。
僕の席は教室の後ろの方だが、幸い1つ前の席が空いているので、板書が写し易い。
この席、いつから空席だったっけなぁ。
じゃなくて、ずっと考えてるのはマミ先輩の事だ。
そもそもの先輩と僕の関係。
才色兼備の先輩は、僕達の憧れで、いつも会話の輪の中、或いは話題にいるんだけれど、でも何か僕には寂しそうに見えて・・・。
確か、その日は罰ゲームかんかで・・・あぁ、それで告白したんだんだ。
僕は・・・。
『僕はアナタに淋しい想いなんてさせないように努力しますから、付き合って下さい!』
我ながら、言い切れなくて努力するって辺りがショボイ。
でも、そう言ったら、だ。
『私、これでも恋愛初心者なの。だから、よろしくね。』
先輩のその返事に、僕が玉砕するのを楽しみにしていた友人達は、顎が外れたかのようにあんぐり口を開けていたっけ。
ちなみに、僕もそのあんぐりした口が塞がらなかったうちの一人だ。
「それまでお手紙とかもらった事もあるけど、直接アタックしてきたのアナタだけだったの。それになんて言うのか、アナタの言葉にね、ほっとしちゃったの。」
昼休みに再び顔を合わせたマミ先輩は、その時の事を思い出してそう言った。
「ほっと?」
「うん、もう独りじゃないって。」
先輩は両親を事故で亡くして以来、独り暮らしらしい。
今はその時の保険金とバイトで生活しているそうだ。
「まぁ、誰だって独りだって思いながら毎日を生きていたくないですよ。僕だって嫌だ。」
気力だって湧いてこいないし、張り合いだってなくなる。
いちいちそんな風に過ごすなんて、どんな呪いなんだ。
「そうね。だから、うん、息が抜けなかった。」
「でしょうね。でも僕は今のところ勝ち組というか、リア充ですケド。」
こんな美人が僕の彼女とか、爆発しろ!と言われても仕方がない。
あまんじて受け入れますです。
「そぅ?私みたいな"普通の女の子"なんてそこらじゅうにいるわ。」
そこらじゅうにいたら、それこそ罰ゲームで告白とかならないと思います。
でも、その言葉を吐く先輩はまた淋しそうな顔をする。
「ねぇ、マミ先輩?」
ここで僕は覚悟ってもんをもう一度持たなきゃいけない気がする。
「あの時は、あぁ、言ったけど、僕はどうすればいいのかな?」
「どうって?」
正直、僕の方が中の中、何処にでも掃いて捨てる程いる人間だ。
スポーツが得意でもないし、勉強が出来るわけでもない。
勿論、才能や強い個性があるわけでもない。
先輩と比較にならない程に平凡で・・・。
「努力をするとは言ってみたけど、どうしたらいいか。どうしたらマミ先輩は喜んでくれるのか・・・。」
「そんなコト・・・いつも考えてるの?」
「うん。」
おかしな事を言うコね、と僕を嗜めるかのように、でもとても優しい目をして先輩は僕を見ている。
「マミ先輩がそこらじゅうにいる普通の女の子だとしたら、僕は普通以下の男の子になっちゃうわけで、その・・・。」
罰ゲームがきっかけだとしても、よく告白しようと思ったよ、自分。
「ん~、考えたら沢山あるかしら。」
「沢山?」
「そういう意味じゃ、際限ない・・・かな。」
「そんなに?」
そんなに僕ってダメな男の子なんだろうか・・・自信なくす。
「うん、私って情の深い女なのかも知れない。どうする?」
今度は僕の反応を面白がるような目で見てくる。
からかわれてるのかな、僕?
「ど、どうするも何も、す、好きですよ。マミ先輩が。」
ちょっぴり噛んだのが僕の残念っぷりを表しているけれど、この程度で想いを翻すなんて、本物じゃないと思うんだ。
「そう。うん、やっぱり私、情が深くて独占欲が強いのかも知れないわ。だから、アナタがいつも私のコトを考えてくれるだけで嬉しい。」
そういうものなのだろうか?
僕が心の中で疑問に思っていると先輩は再び口を開く。
「私、今日バイトがないの。だから一緒にディナーでもどう?」
「夕食?はい、喜んで!」
某居酒屋店員並みの気合いで声を上げる。
「クスッ、じゃあ、
「え゛?」
先輩のウチ? 一緒に夕飯を? 二人で?
「アナタを独り占めさせてもらうんだから。」
呆気にとられて固まる僕の耳元に席を立った先輩が囁く。
その言葉と吐息が僕にはとてもくすぐったくて、そして・・・ゾクゾクした。