※この作品はR-18です。

エスペラント→キミが視る夢。   作:鵜飼 ひよこ。

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A.独りがイヤだから。

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 授業の間、僕は考え事をしながら漫然と板書をノートに書き写していた。

僕の席は教室の後ろの方だが、幸い1つ前の席が空いているので、板書が写し易い。

この席、いつから空席だったっけなぁ。

じゃなくて、ずっと考えてるのはマミ先輩の事だ。

そもそもの先輩と僕の関係。

才色兼備の先輩は、僕達の憧れで、いつも会話の輪の中、或いは話題にいるんだけれど、でも何か僕には寂しそうに見えて・・・。

確か、その日は罰ゲームかんかで・・・あぁ、それで告白したんだんだ。

僕は・・・。

 

『僕はアナタに淋しい想いなんてさせないように努力しますから、付き合って下さい!』

 

 我ながら、言い切れなくて努力するって辺りがショボイ。

でも、そう言ったら、だ。

 

『私、これでも恋愛初心者なの。だから、よろしくね。』

 

 先輩のその返事に、僕が玉砕するのを楽しみにしていた友人達は、顎が外れたかのようにあんぐり口を開けていたっけ。

ちなみに、僕もそのあんぐりした口が塞がらなかったうちの一人だ。

 

「それまでお手紙とかもらった事もあるけど、直接アタックしてきたのアナタだけだったの。それになんて言うのか、アナタの言葉にね、ほっとしちゃったの。」

 

 昼休みに再び顔を合わせたマミ先輩は、その時の事を思い出してそう言った。

 

「ほっと?」

 

「うん、もう独りじゃないって。」

 

 先輩は両親を事故で亡くして以来、独り暮らしらしい。

今はその時の保険金とバイトで生活しているそうだ。

 

「まぁ、誰だって独りだって思いながら毎日を生きていたくないですよ。僕だって嫌だ。」

 

 気力だって湧いてこいないし、張り合いだってなくなる。

いちいちそんな風に過ごすなんて、どんな呪いなんだ。

 

「そうね。だから、うん、息が抜けなかった。」

 

「でしょうね。でも僕は今のところ勝ち組というか、リア充ですケド。」

 

 こんな美人が僕の彼女とか、爆発しろ!と言われても仕方がない。

あまんじて受け入れますです。

 

「そぅ?私みたいな"普通の女の子"なんてそこらじゅうにいるわ。」

 

 そこらじゅうにいたら、それこそ罰ゲームで告白とかならないと思います。

でも、その言葉を吐く先輩はまた淋しそうな顔をする。

 

「ねぇ、マミ先輩?」

 

 ここで僕は覚悟ってもんをもう一度持たなきゃいけない気がする。

 

「あの時は、あぁ、言ったけど、僕はどうすればいいのかな?」

 

「どうって?」

 

 正直、僕の方が中の中、何処にでも掃いて捨てる程いる人間だ。

スポーツが得意でもないし、勉強が出来るわけでもない。

勿論、才能や強い個性があるわけでもない。

先輩と比較にならない程に平凡で・・・。

 

「努力をするとは言ってみたけど、どうしたらいいか。どうしたらマミ先輩は喜んでくれるのか・・・。」

 

「そんなコト・・・いつも考えてるの?」

 

「うん。」

 

 おかしな事を言うコね、と僕を嗜めるかのように、でもとても優しい目をして先輩は僕を見ている。

 

「マミ先輩がそこらじゅうにいる普通の女の子だとしたら、僕は普通以下の男の子になっちゃうわけで、その・・・。」

 

 罰ゲームがきっかけだとしても、よく告白しようと思ったよ、自分。

 

「ん~、考えたら沢山あるかしら。」

 

「沢山?」

 

「そういう意味じゃ、際限ない・・・かな。」

 

「そんなに?」

 

 そんなに僕ってダメな男の子なんだろうか・・・自信なくす。

 

「うん、私って情の深い女なのかも知れない。どうする?」

 

 今度は僕の反応を面白がるような目で見てくる。

からかわれてるのかな、僕?

 

「ど、どうするも何も、す、好きですよ。マミ先輩が。」

 

 ちょっぴり噛んだのが僕の残念っぷりを表しているけれど、この程度で想いを翻すなんて、本物じゃないと思うんだ。

 

「そう。うん、やっぱり私、情が深くて独占欲が強いのかも知れないわ。だから、アナタがいつも私のコトを考えてくれるだけで嬉しい。」

 

 そういうものなのだろうか?

僕が心の中で疑問に思っていると先輩は再び口を開く。

 

「私、今日バイトがないの。だから一緒にディナーでもどう?」

 

「夕食?はい、喜んで!」

 

 某居酒屋店員並みの気合いで声を上げる。

 

「クスッ、じゃあ、私のウチ(・・・・)で。」

 

「え゛?」

 

 先輩のウチ? 一緒に夕飯を? 二人で?

 

「アナタを独り占めさせてもらうんだから。」

 

 呆気にとられて固まる僕の耳元に席を立った先輩が囁く。

その言葉と吐息が僕にはとてもくすぐったくて、そして・・・ゾクゾクした。

 

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