※この作品はR-18です。

エスペラント→キミが視る夢。   作:鵜飼 ひよこ。

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A.掬って、救って。

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「おかへり~。」

 

「ただいま。」

 

 僕達二人が出会った教会。

そして、杏子を拾った場所で彼女は今日も横になっていた。

 

「お、いいね。」

 

 杏子の口にはポッキーが一本突き立っていた。

 

「食うか?」

 

「きょ、杏子が食べ物を分けるだと?!なんという天変地異の前触れだっ。」

 

「失礼なっ!一本くらいならいーよ。」

 

 抗議の声は上げるけど、一向に起き上がる気配すらない。

僕は椅子の背もたれから覗きこむようにして、そのぐうたらっぷりに溜め息が出てきた。

 

「さんきゅ。」

 

「んー。」

 

「・・・・・・。」

 

 礼を言っておいてなんだけど、杏子が口に咥えたポッキーをそのまま僕に向かって突き出してる・・・。

 

「あのねぇ・・・。」

 

 流石にね、乗れる冗談と乗れない冗談がある。

僕は彼女の口に咥えられたポッキーを手で引っこ抜くと自分の口に放り込んだ。

 

「ちぇ。」

 

「舌打ちするなよ。」

 

「だって食うんだったら、結局間接キスなのは同じじゃん。」

 

「あ・・・。」

 

 そこまで考えてなかった。

ついつい妹感覚で接してしまってるからかなぁ。

でも、あのまま食べていたら間接キス以上になりそうな気したんだけど・・・。

 

「あ、目を瞑った方が良かった?んじゃ、特別にもう一本。」

 

 そう言うとさっきと同じ動作を目を瞑ってしてくる。

相変わらず・・・アホの子だな。

 

「全く・・・。」

 

 結局、口を近づけてポッキーに齧りつく。

勿論、半分からパキッと音を立てて折って食べた。

残った半分はというと、何やら不満げな顔をした杏子の口の中へ消えてゆく。

 

「・・・なぁ?アニキ?」

 

「ん?」

 

「アニキってバカな程お人好しだよな?」

 

「バカは余計だ、バカは。」

 

 自分よりちみっこい杏子に言われると、何故だか余計に腹が立つ。

 

「こんなあたしに構うくらいだからな。やっぱりアニキから見ると、可哀想なヤツに見えるか?」

 

「は?」

 

 長椅子の上に胡坐をかきながら上半身を起こし、僕に目線を合わせぬまま呟く。

 

「あたしを連れて帰って、イイコトしたなー自分、とか?」

 

「おい・・・。」

 

 何言ってんだろ、コイツ。

僕を怒らせたいという意味じゃ、哀れに見えるかも知れないけど。

 

「それとも、簡単にヤれそうだから・・・とか?」

 

 面倒くさい。

一瞬でも真面目に考えようとした僕がバカだった。

あ、さっきバカって言われたっけ。

 

「杏子は、自分が好きなように生きてるんだろ?」

 

「悪いか?」

 

「悪いと思うのか?」

 

 最初からこういうやり取りの方が杏子らしいし、僕としても楽だ。

 

「いいや、全然。」

 

 なら問題ない。

問題なんて最初からない。

勝手に問題にしようとするから、互いに溝が、距離が出来る。

僕はぐるりと椅子を周って、彼女の正面に立つ。

 

「他人にとやかくは言われたくないね。」

 

「僕もだ。」

 

 なので、彼女の足の下に腕をねじ込んで、自分側に倒して持ち上げる。

 

「うぉっ。」

 

「だったら、理屈的に僕が僕の好きなようにしたって、とやかく言われる筋合いはないんじゃない?僕は杏子を今日も連れて帰る。杏子と過ごしたいから。」

 

「う゛・・・。」

 

 杏子はついと僕から視線を逸らす。

完成形お姫様抱っこに対して、それしか逃げ場がないからだ。

いや、暴れて拒絶する事は出来たけど、杏子はそれをしなかった。

 

「あ、あたしだって拒否権はあるんだよ・・・。」

 

「そうか・・・じゃ、"ウチに帰る"よ、杏子。」

 

「・・・・・・うん。」

 

「あ・・・でも、この体勢はちょっとな・・・。」

 

「?軽いけど?」

 

「そこは空気読め!」

 

 どうやら、そういう問題じゃなかったみたいだ。

 

「あ、空気読まないついでに・・・。」

 

「?」

 

「僕は杏子みたいな可愛いコに出会えて良かったよ?」

 

 目を逸らしたまま、赤かった杏子の顔が更に赤くなった気がする。

 

「う゛・・・・・・いっ、言ってろ、ばぁーかっ!」

 

 

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