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「おかへり~。」
「ただいま。」
僕達二人が出会った教会。
そして、杏子を拾った場所で彼女は今日も横になっていた。
「お、いいね。」
杏子の口にはポッキーが一本突き立っていた。
「食うか?」
「きょ、杏子が食べ物を分けるだと?!なんという天変地異の前触れだっ。」
「失礼なっ!一本くらいならいーよ。」
抗議の声は上げるけど、一向に起き上がる気配すらない。
僕は椅子の背もたれから覗きこむようにして、そのぐうたらっぷりに溜め息が出てきた。
「さんきゅ。」
「んー。」
「・・・・・・。」
礼を言っておいてなんだけど、杏子が口に咥えたポッキーをそのまま僕に向かって突き出してる・・・。
「あのねぇ・・・。」
流石にね、乗れる冗談と乗れない冗談がある。
僕は彼女の口に咥えられたポッキーを手で引っこ抜くと自分の口に放り込んだ。
「ちぇ。」
「舌打ちするなよ。」
「だって食うんだったら、結局間接キスなのは同じじゃん。」
「あ・・・。」
そこまで考えてなかった。
ついつい妹感覚で接してしまってるからかなぁ。
でも、あのまま食べていたら間接キス以上になりそうな気したんだけど・・・。
「あ、目を瞑った方が良かった?んじゃ、特別にもう一本。」
そう言うとさっきと同じ動作を目を瞑ってしてくる。
相変わらず・・・アホの子だな。
「全く・・・。」
結局、口を近づけてポッキーに齧りつく。
勿論、半分からパキッと音を立てて折って食べた。
残った半分はというと、何やら不満げな顔をした杏子の口の中へ消えてゆく。
「・・・なぁ?アニキ?」
「ん?」
「アニキってバカな程お人好しだよな?」
「バカは余計だ、バカは。」
自分よりちみっこい杏子に言われると、何故だか余計に腹が立つ。
「こんなあたしに構うくらいだからな。やっぱりアニキから見ると、可哀想なヤツに見えるか?」
「は?」
長椅子の上に胡坐をかきながら上半身を起こし、僕に目線を合わせぬまま呟く。
「あたしを連れて帰って、イイコトしたなー自分、とか?」
「おい・・・。」
何言ってんだろ、コイツ。
僕を怒らせたいという意味じゃ、哀れに見えるかも知れないけど。
「それとも、簡単にヤれそうだから・・・とか?」
面倒くさい。
一瞬でも真面目に考えようとした僕がバカだった。
あ、さっきバカって言われたっけ。
「杏子は、自分が好きなように生きてるんだろ?」
「悪いか?」
「悪いと思うのか?」
最初からこういうやり取りの方が杏子らしいし、僕としても楽だ。
「いいや、全然。」
なら問題ない。
問題なんて最初からない。
勝手に問題にしようとするから、互いに溝が、距離が出来る。
僕はぐるりと椅子を周って、彼女の正面に立つ。
「他人にとやかくは言われたくないね。」
「僕もだ。」
なので、彼女の足の下に腕をねじ込んで、自分側に倒して持ち上げる。
「うぉっ。」
「だったら、理屈的に僕が僕の好きなようにしたって、とやかく言われる筋合いはないんじゃない?僕は杏子を今日も連れて帰る。杏子と過ごしたいから。」
「う゛・・・。」
杏子はついと僕から視線を逸らす。
完成形お姫様抱っこに対して、それしか逃げ場がないからだ。
いや、暴れて拒絶する事は出来たけど、杏子はそれをしなかった。
「あ、あたしだって拒否権はあるんだよ・・・。」
「そうか・・・じゃ、"ウチに帰る"よ、杏子。」
「・・・・・・うん。」
「あ・・・でも、この体勢はちょっとな・・・。」
「?軽いけど?」
「そこは空気読め!」
どうやら、そういう問題じゃなかったみたいだ。
「あ、空気読まないついでに・・・。」
「?」
「僕は杏子みたいな可愛いコに出会えて良かったよ?」
目を逸らしたまま、赤かった杏子の顔が更に赤くなった気がする。
「う゛・・・・・・いっ、言ってろ、ばぁーかっ!」