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釈然としない。
自宅の、僕の部屋の、そのベッドの淵に二人の女の子が仲良く座ってる。
しかも、長年の付き合いかのように打ち解けあった状態で会話をしながら、時折笑う。
さやかが思った以上に元気に見えるところは評価したいけれど、何故、部屋の主をガン無視とか、何故そんなに親しげなのとか、疑問が超加速で通り抜けて、意味不明だ。
「つか、さやかはもっと怒ったり、我が儘言ってもいいんじゃね?イイコちゃんスギ。」
「そうかなぁ?でもね、彼には幸せになってもらいたいの。」
「いや、言いたいコトは解っけど・・・。」
さやかのコイバナの結末を聞いて、杏子は渋い顔をしている。
別に、元々そういうカウンセリングみたいな会話が出来るヤツじゃないし、そこまで杏子に期待するのは酷だ。
「それで貧乏クジ自分から引くなんてさぁ・・・。」
報われなくても誰かの為に祈りを捧げるのは、そんなに悪い事なんだろうか?
「・・・杏子、たとえそれで自分が貧乏クジを引いたとしてもさ?それを笑ったり、どうこういう資格は誰にもないんだよ。それは、その痛みを含めてその人だけのもので、解るわけないんだ。」
所詮、他人事なんだから。
どこまでいっても、その人自身にはなれない。
推測する事は出来ても、声に出してまで批評するもんでもないんじゃないかな。
きっとその人だけの痛みは、いつかその人だけの思い出に変わるかも知れない。
大切な。
僕は仕方なく、本当に仕方なく、楽しげに談笑していた二人の前に中腰になると、出来る限る優しいと思える声で語りかける。
「でも、僕に出来る範囲なら何でもするよ?」
僕はさやかではなく、杏子の目を見て言った。
ここで"何でも"の前に"出来る範囲"というのがついているところが我ながら情けない。
情けなさ過ぎて、口から出た台詞が独善というか偽善的な気分さえしてくる。
「あ~。」
僕から顔を逸らし、でも目線だけをこっちに向けたまま、杏子は口元をポリポリと掻く。
非常にバツの悪そうな表情をしている。
「うん、なんとなく解った。ここにも進んで貧乏クジを引きたがる"アニキ"がいたや。」
「なにお~っ!」
このヤロォじゃなかった、女性だからメロォか?
いや、そんな事はどうでもよくて。
さっきから、さやかにも僕にも言いたい放題じゃないか。
「ぷっ、あははははっ。」
僕達のやり取りにさやかが突然笑い出す。
何事かと思って僕と杏子はぎょっとしながら、互いにさやかを見る。
「なんか、二人共、本当の兄妹みたいだなぁ。いいな、羨ましい。二人共ありがと。」
今、果たして僕は、僕等は褒められたのでしょうか?
今度は杏子と僕とで見つめあう。
とにかく、僕等のやり取りはさやかのツボに入り易いという事は理解した。
・・・・・・だが!
さっきの僕に対する発言は許せないので、両手で杏子の頬をつねる!
そして引っ張る!
「なにふんだひょー!ひたひひゃへーか。」
柔らかくて、意外に伸びそうだな、コレ。
「ふむ。痛くしてんだ。」
そのまま引っ張った頬をぺちんと離すと、涙目になった杏子はその部分を懸命に擦りだした。
「おー、いってぇ。家庭内暴力反対~っ。」
ベッドから飛び降りるようにして立ち上がると、僕から逃げるように勉強机のある反対側へと向かう。
そして、机の上にあった携帯をむんずと掴むと、躊躇なく無造作にさやかに放り投げた。
「っと。」
いきなり投げたにも関わらず、器用にそれをキャッチしたさやかは、杏子にその真意を目で尋ねる。
「とりあえず、それでウチに電話しなよ。んで、"今日は泊まってくる"って言え。」
「は?」
その声は、言われた方のさやかではなく、僕の口から出た言葉だった。