34_
「ふぅん。ま、いっか。じゃ、さやか交代。」
そう言うと杏子は湯船から立ち上がる。
目の前で立ち上がられたもんだから、視界一杯に杏子のお尻。
肉付きのない、ただしっかりとした筋肉はあるせいか、お尻の両側がえくぼのようにヘコんでいた。
「~♪」
鼻歌交じりで足を上げて、ゆっくりと浴槽の縁を跨ぐ。
その間にもお尻を僕の方に向けたまま・・・いや、突き出しているようにも見えた。
当然のように入ってきた時と同じかそれ以上に、彼女のぴったりと閉じられたワレメもしっかりと見えてしまう。
「ほら、狭いんだからさやかは早く入る。」
「え、あ、お邪魔します・・・。」
それ、何か違うだろと突っ込む間もなくさやかが入れ替わりに湯船に入ってくる。
お陰で、僕が出るタイミングをなくしてしまった。
バスタオルに全身を包まれた彼女は、杏子と違って入浴する時も露出が少ないんだが・・・。
「ちょ、ちょっと待て!」
「ひゃんっ・・・い、い、今のって?!」
顔を真っ赤にしながら、杏子と同じように僕の膝の上に腰を下ろしたさやかが僕を振り返る。
「尻でスリスリしてやると喜ぶぜ、"アニキの"。」
「杏子!」
一切僕達の方を向く事なく、何が起きたのかを推測して無責任な発言をする杏子をようやっと僕は嗜められた気がする。
「・・・そう・・・して欲しいの?」
「しなくていい!」
そりゃ、大きくなったのは仕方ない、不可抗力だと思って欲しいけれど、別にさやかに何とかしてもらいたいワケじゃ・・・ちょっとはあるけど。
「結局さー、決めてたってコトだろ?」
「ん?」
杏子はボディソープを泡立てて腕に塗りながら呟き始める。
「告白たって、きちんとフラれる為に行ったんだろ?きちんとケジメをつけに。て、コトはさ、少なくても告白しに行く覚悟を決めた時、その前にさやかの恋は終わってたんだよ。」
「・・・それは・・・違うよ。」
「違わねーよ。」
泡は杏子の上半身を覆ってゆく。
「じゃあ、どうやって告白しようって決められた?」
「え・・・。」
「何がさやかの背中を押した?」
その言葉にさやかは背後にいた僕を見る。
少し困ったように。
「ついでにもっと言うと、何でフラれた後にここに来た?」
「報告しに・・・。」
「何で?」
「何でって・・・。」
「何で、"他人"のアニキに報告しなきゃなんないんだ?」
全部の答え、全部の原因。
それは紛れも無く僕を端に発している。
僕に背中を押され、だから僕に報告しに僕の所へ来た。
「それって他人は他人でも、"近しい他人"だろ?でも、それじゃあ一緒に風呂なんて入る理由にはなんないんだ。解るだろ?」
とうとう泡が全身に行き渡って、そこで初めて杏子はさやかの方に顔を向けた。
「さやかはもう他人とか近しい他人の距離じゃ満足出来ないのさ。そんで幼馴染だとか、そんなアヤフヤな区切りじゃ我慢出来なくなった。」
「杏子、前にも言ったよ?人の思っている事や考えている事を暴露して得意げになったり、勝手に判断したりするのは、あまりいい趣味じゃない。さやか本人は何も言ってないんだからさ。」
その気持ちはその人だけのモノ。
他人なんて介入しちゃけないもんなんだ。
そういうのを何て言うんだっけ?尊厳?
「アニキはコイツを甘やかし過ぎなの。優しいのと甘いのって区別がつき難いけど、全然違うんだぜ?」
何故、僕の方がダメなコみたいな目で見られなきゃなんないんだろう。
でも、それを言ったら僕に対する杏子への言動だって甘い気がするんだけれど・・・僕は杏子を見る。
「・・・解ったよ。じゃ、あと一言だけ。」
「?」
今度は何を言うつもりだ?
「もし、仮にあたしの言った事の一部でも正しいとしたら、だ。"バスタオルが必要な理由"ってナニ?」
え?
そういう結論になるの?!
「意味解んないよ、杏子・・・。」
途中まで理論的だったのに。
帰結するのはそこですか・・・。
「そんなの恥ずかしいに決まってるからだろ?杏子と違って恥じらいがあるんだよ。」
呆れる僕の言葉に杏子は、憮然とした表情をしている。
「でも、あたしは恥ずかしくても、好きなアニキに見られるんだったら構わない。」
「?!」
「ま、この身体でガッカリされるかも知れないと思ったけど・・・。」
ニヤリと笑って僕を見たのは、僕が反応してしまった事に関してだ。
「そこはアニキの身体が素直ってゆーか、正直で良かったよ。」
「あ・・・。」
さやかのお尻が、僕の股間を撫でるように動く。
何かを・・・あー、僕のモノを確かめるように。
「OK?」
念を押すように杏子がさやかにウィンクすると、さやかは頷く。
そして僕の膝の上に座ったまま、身につけていたバスタオルを解いた。