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「さ、さ、さやかさん?!杏子ッ!」
さやかの思い切った動きに、僕は上ずった非難の声を杏子に上げる。
「別にあたしは強制したワケじゃないし。」
僕の非難も何処吹く風だ。
「それに新しい恋をするのだって本人の勝手だろ?なっ、さやか?」
そう振られたさやかは、今にも顔から火が出るくらいに真っ赤だ。
血管切れたりしないよね?
「解らない。」
「は?」
「解らないよ!もうっ!」
嫌な予感がした。
初めてさやかとお風呂に入った時の、あの晩と同じような・・・。
「今まで好きだった気持ちは何だったのかな?嘘だったのかな?」
「そんなわけないよ。」
あれ程真剣に考えて、悩んで、苦しんで、傷ついて。
「でも、今、こんなコトしてる。違う男の子と。やっぱりあたし嫌な
僕はさやかが解いたバスタオルごと片手で彼女を抱きしめた。
もう片方の手は、彼女の目を覆い隠すように置いて。
「なぁ、杏子?本当に嫌なヤツは自分を嫌な人間て言うか?」
「ん~?言わないんじゃね?」
良かった。
ちゃんと杏子はさやかを元気づけようとしてくれてる。
「そういう人間は他人の為に必死になったり、傷ついたりするか?」
「そういう人間は、大抵真っ先に逃げると思うぜ。」
さやかのすすり泣く声だけが、ずっとお風呂場に響いている。
「じゃ、そんな一生懸命なさやかの事を、杏子は嫌いか?」
「嫌いになるワケねぇよ。」
ま、そうだよな。
「じゃあ、アニキは?」
「ん?」
僕?
「そういうオンナはウザいか?好きになれないか?」
ビクリとさやかの肩が大きく震える。
気づけば泣き声も治まっていた。
それはまるで僕の反応を伺っているような・・・。
「どうして?そんなに愛情深い女の子、嫌いなわけないでしょう?」
「流石、アニキ。」
杏子は笑顔でサムズアップ。
「だとよー、さやか良かったな。」
「・・・。」
「さやか?」
泣き声は止んだが、さやかは無言のままだ。
「どした?」
杏子が首を傾げて僕を見るが、僕にも解らないので首を傾げる。
互いに鏡合わせのように首を傾げて、なんだコレ。
「・・・あ、あのね・・・。」
「ん?」
「なんだよ?」
ピクリとも動かなかったさやかが深呼吸を一つして・・・。
「んと・・・すっごい硬いのが当たってるの・・・その、お尻になんだけど・・・。」
ぬ?
ノォォォォーッ!
「だ、だって、しょうがないだろう、み、密着してるんだから!」
「ぎゃははははっ!良かったじゃんさやか、ペッタン同士でもアニキを反応させる魅力はあるってコトで。」
どんだけツボにハマったんだよと突っ込みたくなるくらい杏子がひーひー言いながら笑う。
何か言い返してやりたいとは思うけれど、現状がこんな有様なので・・・。
「ペッタン同士ってのは、ちょっと嫌。」
そうだぞ、少なくとも杏子よりは圧倒的にある!と心の中で言い返すしか出来ない。
「まぁ、いいじゃんか。さやか、こっち来いよ。一緒にアニキの背中を流してやろうぜ?」
「いや、別にそれは・・・。」
魅力的な提案だけれど、遠慮しておきたいかな。
理由としては、全身泡だらけになった杏子が、未だにそれを流してない辺りが・・・。
「うん。」
僕が声に出す間もなく、さやかは立ち上がって浴槽から出る。
さっきのどたばたで、バスタオルがズレてしまって杏子よりも一回り大きいお尻を僕に向けながら。
「はい。」
そして言われるがっまに杏子からボディソープのボトルを受け取る。
嫌な予感が的中しそうな悪寒しかしない。
「さぁ、アニキ、カモーン♪」
「あのね、杏子、僕は君のそのイタズラの延長というか、境界線の緩さというか、ブッ飛び加減を常々どうかと思っているよ・・・。」
「か、か、かもーん?」
顔を真っ赤にしてさやかが杏子の真似をしたところで完全に脱力して悲鳴を上げた。
「さぁ~やかぁ~。」
似ているから引きずられる。
似ていないから腹立たしくなる。
それが二人の関係。