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「バカ!ヤメロ!」
どりゃあ、どのみちフラれるとしても、覚悟とか散り様ってもんがあると思う。
これは、このシチュエーションはどう考えても最悪だ。
「あー、うるせぇ。さやか、ちょっとアニキの口、閉じててくれよ。」
本気だ。
杏子は本気なんだ。
「むぐぅっ。」
すぐさまさやかに口を塞がれる。
「ゴメンね。でも、もし、ダメだったら、"この前の続き"してアゲルから。」
「ほひっ、ぼあえ、ぼんい゛でいいうえのが?」
おい、オマエ本気で言ってるのか?
そう言ったつもりなんだけれど、果たして通じてるのだろうか?
「半分・・・ちょっぴりは本気で。」
あ、通じてたや。
じゃない!
問題の大部分は杏子の方だ。
「あ、アンタ、コイツの彼女?え?あたしが誰だって?そんなのどうでもいいよ。本題は一つ。アンタの彼氏、あたし等が貰ったから。」
うわっ!本当にかけやがった!
「ん゛ーッ!!」
「もぅっ、静かに!落ち着いて!」
僕が声にならない声を上げて暴れると、何を考えたのかさやかが顔の上にお尻を乗せて!
「はぁんっ♪」
ちょっとえっちな物語とかだったら、気持ちいいとか凄い弾力とか思ったりする感じの羨ましい光景なんだろうけど、あれは嘘だ。
体重を乗せられたお尻は、重いし、痛いし、苦しいの三重苦だ。
これで喜ぶのは、余程の変態さんか、酸欠でおかしくなっているかのどっちかだ。
「よびぃー、ほげよっ!」
「やんっ、しゃ、喋らないで、振動がぁんっ♥」
当の乗っている方はそうでもないらしく、くねくねと身体を捩じらせてる。
「大丈夫、ちゃんと無傷で解放してやるからさ。ま、そん時ぁ、アンタじゃ満足出来ない身体になってるけどな。え?証拠?んじゃ、写メ送ってやるよ。それ見て尚、やる気があんなら彼氏ンちの部屋まで一言も声を出さずにくりゃいい。」
結局、僕は唸るだけで杏子の行動を阻止出来ないまま、彼女は電話を切ってしまった。
「ん?あ、あさやかズリィ!順番はジャンケンだぞー!」
「びゃんけんべっ、びべるばぁー!」
「はぁんっ♥」
ちなみにじゃんけで決めるな!と僕は言ったつもり。
僕の叫びに艶のある声が上がる。
「ま、いっか。とりあえず、さやか、一回下りて。じゃ、アニキ、撮るよー。はい、チーズっと。」
携帯からシャッター音が聞こえる。
何が悲しくて、自分がベッドに縛られている姿を、自分の携帯で撮られなきゃなんないんだろう・・・。
ヤバ、涙出てきそう。
「えと、これが証拠だ。自分のカラダと・・・んと、愛に自信があるなら・・・あー、30分後に、コイツの家にそっと入って来い~、玄関の鍵は特別に開けといてやる・・・っと。こんなもんでいっか。そーしんっと。」
なすすべもなく杏子の行動を見るしかない僕。
「ま、来ても来なくてもだな。」
「杏子・・・。」
「あの様子じゃ来るんじゃね?電話越しじゃ静かだったけど、ありゃ相当キてるな。どんな事してもアニキを奪い返しに来るよ、あはははは。」
「・・・その笑い方、どう考えても悪者のアレだよ・・・。」
「じゃ、ちょっくら鍵開けてくらぁ。」
杏子がしゅたっと僕とさやかに片手を上げて部屋を出て行こうとするが、今の杏子は大きめのシャツにパンツ1枚だ。
「そんな格好で出て行かないで欲しい・・・。」
多分、両親は自分達の寝室で寝ているだろうけど、万が一ハチ合わせでもされたら・・・。
「大丈夫、大丈夫。ママさんには何かあったら、アニキの嫁さんにでもなるって言ってあるし。」
「言ってるのかよ・・・。」
ダメだ。
笑い所も突っ込み所も解らない。
「ちなみにママさんは『あらあらそれはそれで楽しみだわぁ~。』って。」
朗らか過ぎる母を持つと、思春期の息子は会話一つもマトモに成立させるのは大変ですネ・・・。