64_
「どうしたの?」
傍らに全裸で立っている女性が僕に問う。
「いや、夢が現実になる瞬間って、こういう事なのかなぁって。」
薄暗い部屋の中でもマミ先輩の身体は白いと解るし、綺麗だと思う。
放課後、上機嫌のマミ先輩に誘われるがままに僕は彼女の家へと来てしまった。
「なぁに、それ?」
僕の言葉に微笑むと、彼女は僕の頬に口付けをして、そのまま歯を立てる。
「痛いでしょう?」
「どっちかというと・・・くすぐったい?」
夢が現実になる瞬間というけれど、実はこれ自体が夢なんじゃないかと思う時もある。
きっとそれは・・・。
「・・・時折、今の状態を考えて凄く不安になります。」
「それは私も一緒。お揃い、ね?」
そんな事でお揃いになっても、なぁ。
「この前、さやかに説教されました。その、僕だけ皆に置いてかれて独りになるんじゃないかとか、そんな事をよく考えて不安になるって言ったら・・・。」
「それはそうよ。私だってお説教したくなるわ。一人だけで落ち込まれたら、二人でいる意味ないもの。」
「えぇ、まぁ。」
「何をさやかちゃんが言ったのか解らないけれど、多分、私も同じような事を言うと思うの。」
そう言うとマミ先輩は僕を抱きしめて、ベッドに座らせる。
「もっと私に甘えて?私ならアナタの傍にいるわ。」
確かに言葉自体は違うけれど、中身の意味合いはさやかと大して変わらなかった。
「はい、そうします。」
「ん~、じゃ、今日はコレ、どうしましょうか?」
マミ先輩が僕の眼前に四角い包みを出す。
それを見た僕の脳裏に過ぎった言葉は、"明るい家族計画"だ。
あれって、本当に自販機とかで売ってるのかな?
「えと、それは・・・マミ先輩にお任せします。」
「いいの?私に任せちゃっても?」
どういう意味だろう?
ニコニコしているマミ先輩は、何やらすっごい楽しそうだ。
「うん。」
「そ。」
短く答えると、マミ先輩はその包みに見向きもせずに後ろへぽいと投げ捨てた。
「じゃ、いーらない♪」
クスクスと笑う先輩。
「いいんですか?」
「うん♪さやかちゃんがお説教したのなら、私はう~んと甘やかしてアゲル♥」
いいんだろうか?
いや、心から嬉しいけど。
「それに別に困らないもの。」
「へ?」
「目立つようになったら、学校を休まないといけないけれど、貯金はあるし、なんとかなるもの。」
・・・女性ってやっぱりすべからく
片目を瞑ってウィンクするマミ先輩に僕も何故だか微笑む。
「だから、好きな時に好きなだけ出してね、"旦那様"♥」
最初からそう思ってはいたけれど、僕は一生この人には敵わないんだろうなと心から思った。
まぁ、男なんて皆、一生女性には頭が上がらないんだろうと思う。
ほとほと格好悪いわけだけど、どうせなら格好悪いついでに・・・。
「うん。今夜は寝かせないよ、"マミ"。」
と、一度は言ってみたものの、やっぱりどうにもこうにも締まらない言葉を吐いて、僕達は笑い合う。
こんなに穏やかに、心に余裕を持ったえっちなんて、今の今までなかったんじゃないだろうか?
そんな事を思いながら、僕は彼女を抱き締めてもつれるように倒れ込んだ。
なんだかんだで、用意周到なマミ先輩です。