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「きっかけは些細な事なんだ。」
昨夜のマミ先輩と同じような台詞を、僕は優しく微笑みながら言葉を吐く。
最初はそんな違和感は微塵も感じなかった。
"あの夢"を視るまでは。
そして、僕の部屋にもそれはあった。
「あの時計・・・。さやかがプレゼントしてくれた時計。でも、おかしいかな、僕は最近さやかにプレゼントどころか、誕生日も祝ってもらった記憶がない。」
何故だろう?
互いに時計を贈った、贈られた記憶があるってのに、それが何時の事だか覚えていない。
それどころか、部屋にある時計は時々その装いが違ったような気もしている。
「そもそも、僕は何時からさやかと幼馴染なんだろう?」
幼馴染というくらいだから、僕とさやかは家族同士の面識だってあるはずだ。
「僕は・・・僕の家族は両親と妹の4人と猫一匹の家族だ・・・だけど、ここ最近顔を合わせた記憶がない。」
杏子は朝、僕のベッドに潜り込むのに母の許可を取ったと確かに言っていたはずなのに・・・。
ないものがあって、あるものがない。
「そして最後に・・・。」
僕は自分を指す。
「さやかは僕を"アンタ"って呼ぶ。」
非常に不本意だけど。
「杏子は"アニキ"だ。」
小憎たらしいくらいに可愛い少女。
「そして、マミ先輩は"アナタ"・・・二人きりの時は自分の事を名前呼び捨てでと言った先輩が、僕をアナタと呼ぶんだ・・・。」
別にそれは不自然な事じゃないかも知れない。
ただ、3人が3人とも、僕の名を一度たりとも呼んだ事がない。
「何より、僕が自分の名前を思い出せない。」
思い出そうとしても、頭の中に靄がかかって認識できない感じ。
無理のない推理をしたいとこだったけど、そも叶わない。
だから、僕は一番簡単な方法を取る事にした。
「誰かが僕の認識をおかしくしてる。少なくても、僕が不思議に違和感を感じないように。だから、僕は君にも聞いてみようと思う。」
そして、それが一番確実だ。
さやかだけでなくクラスの皆からすら名前も呼ばれた事がないってコトは、よっぽどの寂しいヤツでもなけりゃいないだろう。
ならば、皆、何らかの仕掛けがあるって考えた方が自然だ。
だけど、転校してきて間もない彼女は別かも知れない。
理由はそれだけじゃないけど・・・。
「君なら知ってるでしょ?僕の名前を。」
僕は彼女を視界の真正面に捉えて離さない。
渋面を作る彼女。
「さぁ、僕の名前を言ってみて?」
女の子に向かって、脅すように声を上げるなんて普段の僕じゃありえないけど、とても大事な事だし、ありえない事づくしの現状なんだから、これくらい大目に見て欲しい。
「ほむらちゃん、お願いだから・・・。」
それでもそれ以上に強く出られないところがなんとも言えない。
「・・・まどか・・・貴方の名前は鹿目 まどかよ。」
滂沱の涙を流しながら、ほむらちゃんはその場に崩れ落ちる。
「ただ貴方に・・・逢いたかっただけなの・・・ただ・・・。」
うわ言の様にそう繰り返す彼女に、今度は僕の方が何と声をかけたらよいものかと考えてしまう番だった。
ほんっっっと、ベタで済みませんっっっ(泣)
ちなみに猫の名前は・・・いや、なんでもないです。