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「・・・ほむらちゃん。」
僕は彼女に歩み寄る。
「別に僕は怒ってなんかいないよ?」
こんなに泣きじゃくる女の子を責めるような酷い人間じゃないつもりだ。
と、僕自身そう思いたい。
「たださ、その、ちょっとは言って欲しかったな。」
何が目的か解らなかったけれど、相談でも愚痴でも良かった。
だって、僕は・・・"僕達"はこんなにも彼女を心配してるんだから。
「私は・・・ただ逢いたかったの・・・。」
僕の声は届いているのだろうか?
彼女はずっと同じ事ばかり言っているようにしか聞こえない。
目の前に蹲る彼女の気持ちは僕には解らない。
だた・・・彼女は想いを叶えたかっただけとしか・・・。
僕は彼女の前に膝をついて、目線を彼女のそれに近づける。
「大丈夫だよ、大丈夫。」
何が大丈夫なんだよと突っ込まれたら、僕には答えられないけれど、でも、"今の僕なら"大丈夫。
相変わらず体調は最悪で、今にも倒れそうだけど・・・でも、大丈夫。
「僕はここにいるよ?」
優しく、彼女の心を壊さないように。
おっかなびっくり頭を撫でる。
一瞬、ピクリと彼女の身体が強張ったけれど、それを無視して撫で続けた。
「貴方に守られる私じゃなくて、貴方を守れる私になりたかったの・・・。」
それがこの現状を引き起こした真相。
「うん。」
僕は頭を撫でる手を止めない。
「解ってもらえなくてもいいの・・・だから、私、何度も、何度も。」
何処かでカチリと歯車が噛み合う音がして、彼女の言おうとしている事がおぼろげながら解ってくる。
同時にその音が、刻限を告げる時計の秒針のような気がして、僕を急かす。
「色んな可能性を探して・・・そうしたら、"来られた"の、ここに・・・。」
やっぱり彼女は、こことは別の場所から来たんだ。
そして、常に僕等を遠くから見続けていた。
パラレルワールドとかなんとかってヤツなんだろうか?
彼女は僕に逢いたい一心で世界を越えて来た?
「うん・・・その、ありがとう。」
その想いだけで、そんな事をしたんだとすれば・・・僕は想いの強さに感動する。
「まどかが、女の子とか男の子とか関係ないの。貴方が、貴方が"無事に貴方のまま"でいられれば、私はどうでもいい。」
縋りつくように僕に抱きついてくる彼女・・・暁美・・・ほむらちゃん。
細過ぎる彼女の身体から、仄かにいい匂いがする。
三色スミレの花の・・・。
"私を想って"
貴方がだけが私の想いを独占出来る・・・か。
でも・・・。
「ここなら・・・私は幸せになれる。」
でも、それは、本当のその相手は僕だけど、僕じゃなかったはずだ。
「うん、そうかも知れないね。」
僕は思わず彼女を抱き締める。
こんなにも、一人の人間に想われたらどんなに幸せだろう・・・。
(だから、君も応えようとしたの?)
心の中で告げた質問に返答なんてない、あるわけがない。
と、同時に僕は確信もした。
ここでの選択は強制されるものじゃない。
僕が、僕自身が自分で、責任も罪も負って、納得いくように自由に判断して選んでいいんだって事だ。
その為の手段は、今、僕のナカにある。