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「ここなら、私も、他の皆も変わらないでいられる・・・貴方がいるから、貴方がいれば絶望しない。」
彼女にとって、それは暗闇の中の深い森を彷徨うようなものなのかも知れない。
けれど・・・。
「ほむらちゃん・・・まさか、その、皆の・・・。」
そんな中で僕がたった一つだけ恐れている事があった。
それは・・・。
「?」
「ううん、何でもない。」
果たして・・・と、考えて、彼女がそんな事をするだろうか?と考え直す。
想いだけで世界とか時間とかを越えて来た彼女が。
その時点で、僕の中の彼女への疑いは全て消えてしまう。
僕は立ち竦んで動けなくなっている彼女を立たせようと、彼女の腕に力を籠めるのと、彼女が僕の唇に自分の唇を重ねるのはほとんど同時だった。
薄い小さな唇。
微かに震えている。
一体それはどういう意味があったんだろう?
考えたって解らないけれど。
「ここでなら、誰も絶望しない。"夜"もこない・・・魔女はいないから・・・。」
じぃっと僕を見つめる瞳。
僕は彼女の言った事を考える。
半分も解らないけれど、そうだろうか?と。
絶望しない、負けない、挫折しない人生なんてあるだろうか?
いや、そうじゃなくて、不確定な未来にそうならないと誰が断言できるんだろう?って。
そのまま彼女の瞳を見つめていると、ふと、彼女が視線を逸らす。
「わ、私と、貴方だって・・・む、結ばれる事が出来る。」
「じ、自分からキスしておいて、そのリアクションはちょっとズルいんじゃないだろうか?」
「ごめんなさい。」
「謝らなくていいよ。」
僕は彼女の長い髪を触れて撫でる。
僕の知っているどの女性よりも柔らかくて滑らかだ。
赤面する彼女も可愛い。
この子にずっと触れていたいと思わせる何かがある。
僕は確実に惹かれていただろう・・・こんな出会い方でなければ。
「君に想われる、"鹿目 まどか"は幸せ者だろうね・・・。」
僕の言葉、その中に含まれた決定的なモノに彼女の瞳が驚愕と共に見開かれる。
その瞬間、僕は自分の中で渦巻いて止め切れなくなっていた奔流を吐き出した。
「確かに僕は魔法は使えない。僕は男だから、魔女にも魔法少女にもなれない。」
もう一人の僕の手から贈られた、大事な絆と記憶という贈り物を紐解くと、僕達を光が包み込んだ。
「だから、これは僕が起こす奇跡だ。」
そして、最初で最後の彼女の為だけの魔法。
「いっ、嫌ッ!もうやり直さない!もう、もうっ!!」
自分でも酷い事をしているんだって自覚がある。
でも、僕の夢に出て来たって事は、"そういう事"なんだとも思ってる。
「ほむらちゃん。何処かで"僕が"待ってるから。君が探している本当のまどかが。」
「どうして・・・。」
「・・・それが君にとって本当の幸せじゃないと思うから。辛くて苦しくて、逃げたくなるかも知れない。疲れちゃうよね・・・でも、僕は君に諦めて欲しくない。何より、この世界の何処かに存在するかも知れない暁美 ほむらに失礼だよ・・・。」
本当にこの世界に暁美 ほむらがいるかどうか解らない。
僕が女ではなく、男なように、何処かが違ってズレた世界なのかも知れない。
でも、彼女の為なら、僕はどんな嘘だってつこうと思う。
"まどか"を大切に想ってくれた人の為に。
「大丈夫。きっと何時か皆が幸せになれる僕達に逢えるから。僕も祈ってる。」
僕はもう一度彼女を強く抱き締める。
「大好きだよ、ほむらちゃん。きっと僕以上に、ほむらちゃんの知っているまどかも君の事が大好きだと思う。だから、僕はどんなになったとしても、君を送り届けてみせる。」
その為の魔法の準備は整っている。
「・・・まどか・・・ね、私達、こういう出逢いじゃなかったら、どうなってたかな?」
残った時間で必死に考えた彼女の口から出て来た言葉はそれだった。
もう彼女の目には涙は無い。
必死に我慢しているのかも知れないけれど。
「ん~どうだろ?友達にはなれてたと思うな。」
「かっ、か、彼女には?」
「とても魅力的な提案だけど、僕にはもう彼女がいるからなぁ・・・。」
「・・・私、彼女さんに負けないよ?」
おぉぅっ。
慄く僕にクスリと微笑むほむらちゃんは、ひっじょぉぉに小悪魔的だった。
「そっか。じゃあ、恋人同士になれてたかもね。」
どう考えても修羅フィールドが形成されるだろうけど。
この場合、タイトルは『マミ先輩とほむほむが僕を誘惑して修羅場過ぎて困る。』とか?
・・・開始数分で僕、死亡フラグだな、しかも回避不可イベント。
「じゃ、じゃあ、あったかも知れない未来を少しだけ・・・・・・お願い。」
僕はもう一度、彼女の頭を撫で、そして彼女に口づけをする。
ゆっくりと・・・。
「・・・ありがとう。まどか、大好き。」
「ありがとう、ほむらちゃん。」
光の奔流が彼女を包んで、天地を結ぶ柱になる。
「ばいばい・・・またね。」
にっこりと微笑み軽く手を振って、そして彼女の姿が掻き消えた。
「ばいばい、ほむら・・・ちゃん・・・。」
がっくりと膝から折れ、ついた手では自分の身体を支えきれずに僕は顔から地面に倒れ伏す。
そして、眼前に白い満月を見た。
「やぁ、来ちゃったよ。」
紅い目をしたソイツ、確か名前は・・・。
「キュウべぇ。」
メリークリスマスです。