世界の終わりに朝が来る。
まさに今、火に包まれようとした少女がいた。
戦場にいる少女もいた。
火山の大地に横たわる少女。
蛇や角の生えた冠をかぶったり、褐色の肌や、熊耳を持った少女なんてものもいる。
緑の髪、膝を抱える、虚ろな瞳。
時が刻々と進んでゆく中で、願いが絶望に変わる。
でも、絶望が願いを生んだり、絶望から希望が生まれる事だってあるんじゃないか?
箱は開けてみなきゃ解らないんだし。
君達は独りじゃない。
何時か必ず、"僕"が行くから・・・。
「あ・・・。」
ゆっくりと彼女から切り離されていく。
正確には現実に戻る。
どうやら、これが"最後の夢"なんだと確信しながら。
「・・・て、生きてる?」
しかも見慣れた僕の部屋の天井だ。
帰って来られ・・・た?
「?!時計は?!」
解ってはいたけれど、時計は金属のフレームの簡素なモノだった。
終わちゃったんだ・・・何もかも・・・。
「違うな・・・元に戻っただけだ・・・。」
完全にゼロになったワケじゃない。
今までの事は僕の記憶の中になる。
勿論、皆への想いも。
そうと決まったら、早く学校に行かなきゃ。
"もう一度マミ先輩に告白する"為に。
結果はこの際関係な・・・ん?
「う、そ・・・だろ・・・。」
布団が有り得ない感じで盛り上がってる・・・そんな・・・まさか・・・。
震える手を伸ばして、掛け布団を一思いにめくる。
「ふぁっ、眩しっ?!アニキ、おはよぉ・・・。」
「きょっ、杏子?!」
え?!何で?!どうして?!
「どした?怖い夢でも視たのか?」
グレーのスポーツブラにス○ーピーのバックプリントがされた同じくグレーのボクサーパンツ姿の杏子が、きょとんとした顔で僕を見ている。
その表情をすぐさま笑みに変えて・・・。
「大丈夫だよ、アニキ。夢は夢だ。
杏子が僕を抱き締める。
背の小さい杏子に抱き締められると、何か構図がおかしい。
「それに
「まどかアニキ・・・か・・・。」
元に戻ったと考えていいんだろうか・・・そもそも、その元のっていうのが、何なのかが解らない時点で、何も断言する事が出来ない。
「ん?んー・・・。」
僕の反応が微妙だったのか、杏子は何やら考え込んでいる。
考え込んでいるのが、どういう事なのかすぐ様解らないくらいに僕はボケていたんだと思いたいけど・・・。
「んと・・・一発、シとく?」
「大概、オマエも学習能力がナイッ。」
コツンと彼女の頭を叩いたところで、居間からだろう、母が僕と杏子を呼ぶ声が聞こえる。
ある意味で日常だ。
・・・杏子の発言がなければ。
この惨状を日常と僕は呼びたくないっ。
「なんだよ、もぉ。ノリが悪いなぁ。手っ取り早く元気になれっかなぁって思っただけじゃん。」
「自重という言葉を辞書で引いてみるといい。」
僕の子言葉に苦笑すると、杏子は意外とあっさりベッドから飛び降りて、すたすたと部屋の扉へと歩いていく。
「ま、何にせよ、大丈夫そうで良かった。あ、そだ、まどかアニキ?」
「ん?」
「前、言ってたコトって覚えてっか?」
「前?」
珍しく杏子が殊勝な態度を取るものだから、すぐに思い出す事が出来た。
というより、杏子がそんな態度を取るのはソレしか思いつかない。
『今度でいいから、相談に乗って欲しいコトがあるんだ。』
その時の真面目な彼女の顔からして、僕にも何かしら強い負担が出て来る事なんだと思う。
「あぁ、大丈夫。僕は杏子の味方だしな。間違ってたら、間違ってるって言うし。」
それが本当の味方というものだ。
「じゃ、とりあえず、"見せたいモノ"もあるから、メシ食って、先に出ててくれ。」
出ててくれもなにも、ここは僕の家で、僕の部屋なんだけどなぁ・・・。