「それでな、アニキ。相談なんだけどサ。」
こっちが本題とばかりに・・・まぁ、本題なんだろうけれど、杏子は僕の腕を取って組むと僕を見上げる。
「相談?」
僕が何かを言う前に、さやかが聞き返す。
何故だか、杏子とは反対の僕の腕を取って。
「あぁ、前に相談に乗って欲しいって頼まれてたんだ。でも、さやかの前でいいの?」
相談というものは大抵プライベートな事なので、さやかに聞かれると困る事がないだろうかという確認。
「別に構わねーよ?」
ぐぃっと僕の腕が引き寄せられて、杏子と僕との隙間が埋まる。
・・・歩きづらい。
「む。で、どんなの相談って?」
同じ様に反対側からの力と、ゼロ距離のさやか。
・・・だから、歩きづらい・・・何だコレ?
「相談つか、とにかく会ってもらいたいヤツがいんだよ。話はそれからで・・・。」
「会う?」
何時、何処でだ?
難しい話じゃないといいけど。
「会うって・・・まさか、例の叔父さんとか・・・御両親?!」
「えぇっ?!」
さやかが不吉な事を言うから、どっと冷や汗が・・・会ってどうしろと?何と言えと?
娘さんとお付き合いしてます?あ、でも僕には彼女が別にいるんで・・・はっきり言って死ぬな、死んで償うしか・・・。
「違う違う。親とか、そんなのに挨拶なんてのは"もっと後で"いいんだよ。」
「そこは否定はしないんだ・・・じゃ、わたしの親とも・・・。」
「さやかの両親には普通に会ってるだろ、僕。」
ちなみに以前の事件以降は会っていないけど、会う度に彼女のお母さんからは、『ウチの子をよろしくお願いします。』と言われる。
何を、どう、よろしくと?
「あ、そか。」
このド天然少女めっ。
「話を戻すぞ?ソイツにはもう話がつけてあってさ、この先の公園で待ってんだ。」
なんですとぉ?!
「ず、随分と急だね、構わないけどさ。」
公園までは100mもない。
心の準備をする時間もないのか・・・。
「ったく、アイツ・・・大人しくしてろって言ったのに・・・。おーい!こっちだ!」
杏子が手を振って声を張り上げる。
公園の入り口にいた人影がこっちに手を振り返して、走ってきて・・・・・・あ、コケた。
「あーもーっ!」
盛大に転んだ人物を見て、杏子はぺしっと自分の額を叩く。
「ねぇ、顔面からいったよ?大丈夫かな?」
余りの盛大なコケっぷりにさやかまでが顔を顰める。
あれ程ではないけど、さやか、君もドジっ子ではいい勝負だと思うよ。
しかし、さやかの心配をよそに、その人物は再び猛然と駆け寄って来た。
小さい。
杏子よりも小さくて、幼い・・・幼女?
「紹介するよ、コイツは"ゆま"だ。」
「ちっ、千歳 ゆまですっ。」
緑の髪を左右で2つに束ねたセミロングの髪に蒼い瞳の少女。
どう考えても年下だろう。
それにしてもおっきな目をしてる。
「おはよう。僕は鹿目 まどかって言うんだ。」
「まどか・・・?」
何やら首を傾げているのは何故だろう?
ゆまは僕の顔をじぃっと眺めている。
「初めまして、あたしは美樹 さやかよ。」
と、思ったのも束の間、ゆまは杏子の後ろに隠れてしまった。
う~ん、小さい杏子の後ろに隠れられるってんだから、小さいんだな、このコ。
「うぉっ、大丈夫だって。こっちはあたしのアニキだからさ。」
何の躊躇もなくアニキと断言する杏子。
それもどうなのかと思う。
「ゆまのアネキのあたしのアニキだから、まぁ、つまりだ、ゆまのおっきなアニキだな。」
「全然違うだろ。」
そんな芋づる式に妹が増えるわけないだろ。
僕は、何時か妹が12人いるとか言われるのか?
「まぁまぁ、アニキに見てもらいたいのはコレなんだ。ゆま、ちょっといーか?」
そう言うと、後ろに隠れていた彼女を引っ張り出して、彼女の前髪をかき上げる。
「ひっ?!」
さやかが短い悲鳴を上げた。
それも無理ない・・・彼女の額に肉の盛り上がった、小さな丸い・・・火傷の跡。
「これは酷い・・・。」
もしかして、これと同じ傷が全身にあったり・・・するのか?
「これって・・・このコの、その、親が?」
まさかそんなと驚きの表情するさやかに対して、杏子は静かに頷く。
中にはいるんだろうな、そういう親ってのが・・・たまたま僕達が今までの人生で出会わなかっただけで。
でも、出会っちゃったからな・・・うん。
「ゆまちゃん?」
僕はその場にしゃがみ込んで、彼女の目線になるべく近づけた。
「よく我慢したね。でも、もう我慢しなくていい。僕が何とかするから。」
「アニキ・・・。」
でも、それがどういう事になるのかだけは教えなきゃいけない。
恐らく彼女からしたら、僕等も随分と"おっきなアニキ、アネキ"なんだろうから・・・。