※この作品はR-18です。

エスペラント→キミが視る夢。   作:鵜飼 ひよこ。

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生きていれば絶望だってする事もある。

「とりあえず、学校に行こう。」

 

 この傷が全身にあるのだとしたら、完全な虐待だ。

いや、全身になくても虐待だろう。

学校の保健室から、児童相談所と警察に連絡してもらおう。

それと病院にも・・・。

この火傷の跡は、綺麗に全て消す事は出来ないだろう・・・皮膚移植するにしても、どれだけ大変か。

移植しても毛根がない皮膚になると思うし・・・。

もし・・・と、そう思ったところで、額に手を当てると自然に力が入る。

 

「何を馬鹿な事をっ。」

 

 今、一瞬だけ、一瞬だけど"魔法があれば"と思ってしまった。

・・・何て卑しいんだ、僕は。

 

「アニキどうした?」

 

「ううん、ゆまちゃん、髪乱れちゃったね。あとで僕が直してあげるからね。こう見えても杏子のヘアスタイリングだってしてるんだぞー。」

 

 努めて明るい声を出してみたけれど、心の中はなんというか罪悪感で一杯だった。

 

「"まどか"くん?」

 

 あぁ、一番聞きたかった声が僕を呼ぶ。

頭を振って、ようやく立ち上がる。

 

「おはようございます、"マミ先輩"。」

 

「おはよう。皆、どうしたの?」

 

「・・・実は・・・。」

 

 説明はさやかがしてくれた。

その間の僕は、自分への情けなさとイライラを処理するのに必死だったからだ。

 

「・・・アニキ、ごめんな。」

 

「謝るな、杏子。僕は杏子のアニキだぞ。」

 

 かろうじて杏子と彼女への言葉が僕を支え、突き動かす。

 

「そう。で、まどかくんはどうしたいの?」

 

 事情を聞き終えた先輩は開口一番、僕の結論だけを聞いてきた。

 

「僕ですか?」

 

「そうよ?貴方の意思が大切よ?」

 

 参ったなぁ、先輩は僕を1ミリだって疑ってないや。

 

「ゆまちゃん?」

 

 事の成り行きと、僕達の顔を交互に見ながら、不安そうにしている少女。

僕に出来る事は・・・。

 

「僕は君が痛い思いをしないようにこれから行動する。でも、そうしたら、君は御両親に会えなくなる。それでもいい?」

 

 事が明るみに出れば、良くて児童施設での監察・保護。

傷の程度によっては、恐らく・・・いや、きっと親は逮捕されるだろう。

 

「わたしは、キョーコのお兄ちゃんを信じる。」

 

「まどかくんはそれでいいの?」

 

 いいのか?と聞かれたら、よく解らないけれど・・・僕はゆまちゃんの手を取る。

瞬間、ゾクリと背筋を駆け抜けるモノがあった。

と、同時にあぁ、そういう事かと思う。

彼女の小さな儚げな手を握って・・・。

 

「ゆまちゃん、きっと君にはこれから色んな事がある。多分、大半は厳しい現実ばかりだ。でもね、それは皆程度が違っても同じ。僕だって、杏子にだって、さやか、マミ先輩にも。」

 

 そして、ほむらちゃんにも。

 

「でも、絶望に染まっちゃったらダメだ。それじゃあ、何時か本当に動けなくなる、何も出来なくなる。だから、一人でどうにもならなくなったら、今日の事を思い出して?今日みたく声と態度に出すんだ。」

 

 そうすれば少なくとも、"あんなコト"にはならない。

誰かが絶望を糧にするというなら、絶望に変わる芽を刈り取る存在に僕はなりたい。

 

「・・・うん。」

 

 頷くゆまちゃんに微笑むと、僕は彼女手を優しく引く。

 

「とにかく、学校だ。杏子もちゃんと学校行けよ?」

 

「へーい。」

 

 ・・・本当に行くんだろうな、全く。

呆れつつも、杏子を先頭にマミ先輩とゆまと僕で並んで歩き出す。

後ろからはさやかが続く。

 

「・・・・・・何かこうしてると親子みたいね?」

 

「そうですか?僕とゆまちゃん、そんなトシ離れてないと思うんですけど?」

 

 少なくとも杏子の言ったように兄妹の範疇かと・・・。

 

「そうね、でもあと10年くらいしたら、こうなってるのね。」

 

 そう言うとマミ先輩は自分の下腹部を擦る。

とても意味ありげに・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 固まる全員。

一瞬の静寂。

 

 

 

 

 

 

「い゛ぃっ?!」

 

 か、身体中の毛穴が開いて、冷や汗がドバっと出た。

 

「まさかっ!先輩?!」

 

「ヲイヲイ、マジかよ!」

 

 僕の反応より多少大人しめだが、充分な驚きでさやかと杏子が目を剥く。

 

「冗談よ。だといいなぁって、妄想♪」

 

 勘弁してください・・・。

まだ少し早過ぎる。

・・・けど、ハラボテのマミ先輩か・・・・・・それはそれでエロいよな。

は?!いかんいかん、さっきから段々とアブノーマルに流されてる?

 

「マミがその気なら仕方ねぇなぁ。アニキ、あたしらも頑張るぞ?」

 

「何がだよ!」

 

「ナニをだよ。」

 

 むっ、難しいぞ、日本語!

ん?後ろから袖が引っ張られる。

・・・後ろは、さやかだな。

 

「わ、わたしも、それなりに頑張る・・・カラ。」

 

「だから、何をだよ!」

 

「えと、ナニを?」

 

 お~まぁ~え~らぁ~っ!

 

「・・・・・・一度、きちんと番号を振ろうかしら。」

 

 マミ先輩まで意味不明なコトを・・・。

声を上げる気力も打ち砕かれた。

全く、ゆまちゃんの前で・・・。

 

「ゆまちゃん、こういう大人になっちゃダメだよ?」

 

 このコだけは杏子に毒されないようにしなければ・・・。

 

「でも、ゆまちゃんみたいな可愛いコなら、欲しくなるわよね?」

 

 にっこりと微笑みながら、マミ先輩がゆまちゃんの頭に手を伸ばす。

 

「巨乳は敵。」

 

「へ?」

 

 今、なんか、予想外の鋭いツッコミと拒否反応が・・・。

その証拠に、マミ先輩は伸ばした手を空中で静止させたまま、固まっている。

 

「あっはっはっ。いいぞ、ゆま。そうだ巨乳は敵だ、ウシチチは滅べってな。」

 

 す、既に手遅れかも知れない・・・。

 

 

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