※この作品はR-18です。

ばいしゅん・ざ・ろっく!!   作:清姫

16 / 27
 最近、またコロナが流行り出したみたいで本当に嫌になってる作者です。
 皆さん、熱中症もそうですが、風邪やコロナも気を付けましょう。
 喉が渇いてなくても定期的に水分補給! 帰宅時はうがい手洗いこれ鉄則!!
 
 それはそれとして、そろそろ明日香君にも恋人作って貰ってストーリーを進めて貰おうと思ってるんですけど、虹夏とリョウどっちにしようかな?
 一応、最終的に虹夏かなって感じで書いてますけど、結束バンドメンバー全員と変る変わり恋人にとか、逆NTRもいれてとか、してみたいななんて思ったりして。
 
 誤字脱字はご愛敬。


#16 ラストダンスは悲しみに乗せて 後編

「......今開けま~す」

 

 のっそりと扉が開き、そこには部屋着姿の虹夏が立っていた。

 髪を下ろし、腰は曲がり、息は荒い、しんどそうな様子で何処か虚ろな目で僕を見る。

 マスクと冷感ジェルシートを装備でかなり限界って感じ。

 

「明日香君?」

 

 鼻声だ。

 

「お見舞いに来たよ」

 

 レジ袋を見せながら一言。

 

「悪いよそんな」

 

 手をプラプラさせながら覇気のない声で遠慮しているが、断っているようで断ってはいない感じ。

 性格的に断っているが本心では......みたいな?

 

「いいよ気にしないで。星歌さんは?」

 

「まだ、下で......仕事中、だと」

 

 途切れつつある言葉に、虹夏の辛さが伝わって来て思わず手を差し伸べふらつく身体を支える。

 

「ごめんね、しんどいよね。虹夏ちゃんは寝てて。ご飯作るから」

 

「......うん。ありがとう」

 

 何時もは遠慮する虹夏がすんなり受け入れてる所を見ると、かなりしんどいのだろう。

 可哀そうに。

 

 途中、リビングに荷物を置きつつ虹夏の部屋へ。

 室内は予想通り、女の子っぽい部屋――いいや、服にマンガ......所々毛色の違うモノがある。

 いやいや。部屋の事は今はどうでもいい。

 それより、目の前の友達をお世話しないと。 

 ゆっくりと丁寧にベッドに寝かせ、シーツを肩まで覆い上げる。

 

「雑炊とおうどん、どっちがいい?」

 

「んー......」

 

 シーツを頭まで被り、モゾモゾ動く芋虫虹夏。

 

「何か食べないとダメだよ?」

 

 反応を見るに食欲がないのだろう。

 困った、熱を出した時は兎に角栄養を取らないといけないのに。

 買ってきたモノの中から今食べれそうなものを思い浮かべる。

 

「プリンは?」

 

「んん。......それなら」

 

「持ってくるね」

 

 部屋から出ると、静かに扉を閉め。

 それから、速足で目的のモノを取って戻る。

 

「起き上がれる?」

 

「うん」

 

 掠れた声と共に、のっそりと起き上がる。

 目は虚ろで寝ているのか起きているのか分からない程瞼が閉じていた。

 そんな中、封を開けスプーンと一緒に渡そうと彼女を見ると。

 

「あー」

 

 小さく口を開く虹夏の姿が。

 これは、どうすれば? 

 一瞬固まり、考える。

 がしかし、直ぐに再び「あー」と催促する声が鼓膜を揺らし、硬直が解けた。

 

「はい、あ~ん」

 

「――あー」

 

 パクリと一口。

 数度咀嚼するとまた口を開き、せがむ。

 それを何度もしていく内に、遊里の看病をしているようで愛らしさを感じ自然と頬が緩む。

 鳥の子供みたい。

 可愛い。

 

「さ~いご」

 

「あーん。――......もっと食べたいかも」

 

「雑炊とおうどん、どっちがいい?」

 

「............雑炊」

 

 そう言い残すと上半身をフラフラ揺らしながら、最後にペタリとベッドに倒れてしまった。

 

「力尽きたか」

 

 キッチンへ行くと、片手鍋を取り出しそこに水を入れ火にかける。

 

「確か......あった」

 

 コンビニで買ってきたパックご飯を取り出し、そのついでに冷蔵庫から卵を一つ掴み、再び火の前に。

 本当なら炊き立てか、洗った米から作りたかったのだが、時短の為今回はパックご飯だ。

 

 沸々と煮立つ鍋の中にご飯を入れ、解れるまでかき混ぜる。

 その間。卵を溶き、味の源を用意する。

 

「よし」

 

 米がおかゆ状になるまで、かき混ぜると、火を弱め卵を投入味の源で味を付け、卵が固まるまで少し混ぜると。

 

「完成」

 

 トレイを探し出し、そこに鍋敷きと鍋、それから食器を乗せ持ち上げると、丁度そこに星歌が帰って来た。

 

「明日香君? 何でここに――あぁ」

 

 手に持ったモノを見た瞬間、合点がいったのか「ありがとな」と頭に手を乗せ、風呂場へと消えていった。

 

 

 

 

 

「虹夏ちゃん」

 

「......」

 

 反応がない。

 寝ているのを起こすのは悪いが、流石にプリンだけじゃ栄養が足りない。

 無理にでも食べさせないと。

 

 テーブルにトレイを置き。

 ベッドの脇に立つと、寝ている虹夏の肩を優しく揺らす。

 

「虹夏ちゃん。寝る前にちょっとでも食べて」

 

「......」

 

「虹夏ちゃん」

 

「......」

 

 身じろぐだけで、反応が返ってこない。

 今度は顔を少し近づけ。 

 

「虹夏?」

 

 流石に異性にこんなに近づいちゃダメだろ何やってるんだ僕。

 それも、好意を抱いてくれてる子に!

        

「んん――ん? 明日香君?」

 

 目を開き、僕を見る。

 奥歯を噛みしめ、平然を保ちながら。

 

「雑炊。出来たよ。置いとくから食べてね」

 

 半身を起こし、ジト目で僕の方を見ると再び倒れた虹夏。

 何か気に入らなかったような様子で、熱で顔を真っ赤にしながら言う。

 

「食欲ない」

 

「さっきはもっと食べたいって」

 

「なくなったの!」

 

 何時もの虹夏とは違う子供のような言動。

 頬を膨らまし、天井を見上げる虹夏を見て、困惑げに笑っていつつ考える。

 困った。

 これじゃあ、治るモノも治らない。

 

「一口でもいいから食べて? ね?」

 

「無理!」

 

「困ったな......」

 

 どうしようか、思案を巡らせていると。

 

「気付かないの?」

 

「? 何が?」

 

「さっきは食べさせてくれたのに、何で雑炊は『自分で食べろ』なの?」

 

「.......あ、ああ」

 

 ここでようやく、いきなり機嫌が悪くなった。

 「起き上がれる?」と虹夏を優しく起き上がらせると、テーブルに置いた土鍋の蓋を開き、取り皿に雑炊を入れると。

 

「はい」

 

「冷まして」

 

「ふぅーふぅー......はい」

 

「あん。......美味しい」

 

 さっきの不満げな顔は何処へやら。

 未だ体調は優れなさそうな顔をしてはいるが、先ほどとは明らかに生気の感じ取れる面持ちで満足気に頬張る虹夏。

 その顔を見たら、取り敢えずは大丈夫だろうと安堵した。

 

「もっと食べれる?」

 

「うん」

 

「ふぅーふぅー......あーん」

 

「んぐ。――明日香君」

 

「ん?」

 

「ごめんね。迷惑かけて......嫌いになったでしょ?」

 

 情緒のたがが外れ、感情が制御不能になっている虹夏。

 眉間に皺を寄せていたと思ったら、今度はしおらしい態度で顔を落としている。

 きっと熱のせいだろう。

 そう思いながら、雑炊を掬い冷ます。

 

「そんな事ないよ」

 

「嘘じゃない?」

 

「うん。ほんとに嫌いならこんな事しないよ」

 

「もぐもぐ――そ、そうだよね」

 

 気の抜けた笑いが部屋に木霊す。

 しかし、気の抜けた笑い声からは生気を感じる事が出来ず、未だ元気でずと言う感じだった。

 そんな弱弱しい虹夏を見ていると、擽られた母性本能が込み上げてくる。

 どうしたら元気になってくれるかな......。

 今まで人を励ました事なんてなかったから何て言って良いか分かんないよ。

 ここで思い出す遊里を看病した時の事。

 あの時は確か、治ったら遊園地に連れて行って上げるってお父さんが言ってたっけ......。

 モノは試しだ。

 

「風邪治ったらどこか行こっか」

 

「え?」

 

 バッと顔を上げ、僕を見る。

 余りの勢いに気圧され、狼狽えつつも話を続けた。

 

「や、山田さんも誘ってさ。どこか行こ「行く!」うぉ! びっくりした......」

 

「行く! 行こうよ!」

 

 言ってみるものだな。

 好意に付け込んでいるようで若干の罪悪感を感じたけど、これも彼女の為だ仕方ない。

 

「なら一杯食べて早く元気にならないとね」

 

「うん――あっつ!」

 

「あ、まだそんなに冷めてないよ」

 

 燦々笑顔の虹夏は僕から受け皿と匙を奪い取ると、大きな口を開き頬張った。

 

「二人がいいな......」

 

「ん?」

 

「うんうん。なんでもない!」

 

 

 

 

 

「じゃ、またね」

 

「うん、また」

 

「明日香君ありがとな」

 

「いえ。好きでやってる事ですから」

 

 二人に見送られ、扉を開く。

 が、外は虹夏のようにはいかない様で相変わらずの雨模様。

 

「明日香君傘持ってってよ」

 

「そ、うだね。うん、ごめん借りてく」

 

 先ほどとは大違いな動きで僕に傘を差し出してくる虹夏。

 それを横目に、ギョッとした様子の星歌はどこか面白く、思わずクスリと笑ってしまった。

 

「次来る時でいいからな」

 

「はい。それじゃまた」

 

「ああ」

 

「うん」

 

 荷物を持ち、外へ。

 傘を開きながら、外にPAさんが立っていないか警戒しながら階段を降りる。

 

「流石に......いない、よね?」

 

 キョロキョロしながら降りていると、濡れていた所に足を滑らせ――

 

「ッ!」

 

 前のめりに倒れてしまった。

 幸いにも、下から一段目であった為、濡れる以外に大した怪我はなかったが。

 

「......あ」

 

 傘の方はそうはいかず、ものの見事に上の親骨部分が折れ曲がってしまい、雨よけとしての機能を果たせぬほどボロボロになってしまう。

 

 雨を吸い重くなる服。

 水滴が頭皮に辺り、微弱な振動が頭蓋を揺らす。

 

 壊しちゃったんですけど! 借りて一分もたってないのにどうしよう......。

 戻ってまた他の傘借りる? いやいやまずは壊した事謝らないとでしょ。

 

 瞳をグルグルさせながら濡れるのを関係なしに脳内会議が白熱していると、不意に頭上からの雨が止んだ。

 

「何してんの?」

 

「山田さん」

 

 顔を上げるとそこには、フランクフルトを片手に僕に傘を差し向けるリョウの姿が。

 

「何でここに? 帰ったんじゃ」

 

 手で水を払いながら立ち上がりリョウを見る。

 問いに対し、彼女は手に持ったモノを被りつき咀嚼しながら肩に掛けたベースのケースに目を向け。

 

「こりぇ、んぐ、取りに言ってた」

 

「取りに?」

 

「欲しいベース。やっと入ったから」

 

「そうなんだ」

 

 そう言えばここに来た時、何時も持っている楽器ケースがなかったな。

 

「はっくしゅ!」

 

 思考がくしゃみで遮断され、意識を強制的に戻される。

 寒さで身体が震え、途端に服が重く全体にのしかかった。

 早く帰ってお風呂入ろ。

 

「じゃあまたね」

 

「ん? うん」

 

 幸い、ここから家まで歩いていけない距離じゃない。

 走って行けば何とかなるだろう。

 一歩足を踏み出し、前へ出る。

 

 ん?

 

 もう一歩前に。

 

「?」

 

 待てど暮らせど雨が身体を濡らす事はなく、以前頭上から雨水が跳ねる音が聞こえて来る。

 

「えっと......山田さん?」

 

「何?」

 

「何でついてくるの? 家逆でしょ?」

 

「送るよ。傘ないんでしょ?」

 

 くたびれた傘を指差し、そう言う。

 

「悪いよ。別に傘なしで帰れない距離じゃ――あ」

 

 楽器を思っていて重いだろうと気を遣い遠慮する素振りを見せるが、何か言うでもなくフランクフルトを食べきり櫛をゴミ箱に捨てると手を掴み引っ張る形で進み始めた。

 最初、提案を断った僕に対して気を悪くしたのかと思ったが。

 手を引く力は優しく、ちゃんと僕の歩く速度に合わせている所を見るとそうではないらしく。

 現に。

 

「もっと近づいて、明日香の肩濡れるから」

 

「あ、うん......ありがとう」

 

 ここは男の僕が持つ所ではあるが、悲しい事に身長は明らかにリョウの方が高い。

 それらの情けなさに加え、何時ものリョウらしからぬ気配りに、虚を突かれ何も言えなくなってしまった。

 

「......」

 

「......」

 

 雨の中。

 二人並んで歩く。

 何故だか繋いだ手はそのままだけれど、それ以外は何もない。

 会話も何も。

 

 無の時を過ごしていると自然と昔の事を思い出す。

 母と父の生きていた事を。

 そして、どうしようもなく悲しくなってしまうのだ。

 だから、こういう時は意識してその他の事を思い出すようにしている。

 そうすると昔の事を思い出さずに済むから。

 

『明日香く~ん お酒取って~』

 

『明日香く~ん 肩揉んで~』

 

『来月まで家賃まって!? このとおり! ――てかお金かしてくれない? ダメ?』

 

 ......最近は碌なことないな。

 首を振り脳内の小豆色の悪魔を振り払うと、今度は話題を振って会話を続かせる作戦に。

 

「ベース買ったの?」

 

「うん」

 

「へぇ......どんな?」

 

 ピクリと身体を震わすリョウ。

 「そ・れ・は」を合図に上からだけではなく、横からも雨を降らされる事に。 

 それも水ではなく言葉の、だ。

 

「メイプルとアルダーのラミネートボディー反りやネジりに強い5ピークネック構造ピックアップはクリアな音像を追及したハムキャンセルタイプ3バンドイコライザーを備えたアクティブ5コントロールシステム高い伝導効率で弦振動をボディに伝える新開発ブラスブリッジあ因みに誕生日の時に言ってたMMAHATRB1004なんだけどやっぱりどこにも売ってなかったんだだけど明日香の家で見た時からどうしても欲しくなって毎日楽器や回ってもしかしたらの事も考えてハードオプも通ってたんだそしたらようやく中古が入荷したら見に行ったらやっぱりプレミヤ価格がついててそれで――あ」

 

 髪が靡き、借りた傘が吹き飛ぶ勢いのマシンガントーク。

 しかし途中、何かに気付いたように会話を切り上げ、前を向く。

 

「ん?」

 

 気になり、歩速を僅かに上げリョウの顔を覗き込む。

 

「ごめん。ついシュバっちゃった」

 

 珍しく大人しい態度のリョウ。

 今と言い、傘の時と言い、まるで別人のようだ。

 皮を被った別人と言われた方がまだ信じられる。

 ......いやまぁそれは今は良いや。

 

「別に良いよ」

 

「え?」

 

「全く興味ないって訳じゃないし、知らない事を知るのは好きだしね」

 

 優しさで嘘。

 ......を付いている訳ではない。

 事実、知らない事を知るのは好きだし、星歌の一件もあって楽器はそれなりに興味はある。

 ちょっぴり早口だけど、それ以外はリョウの話はまぁまぁ楽しい。

 

「......そう」

 

 少し驚いた素振りを見せるリョウは、こっほんっとワザとらしく咳払いをして説明を続ける。

 今度はゆっくりとした口調で息継ぎありだ。

 途中、雑談を交えながら聞くリョウの説明は聞きやすく面白い。

 結局最後まで手は握ったまま、家に到着。

 色々、考える事はあったけど、......ちょっと、ほんの少しだけこの日は何処か家までの道のりが短く感じた。

 ......気がする。

 

「笑ってる?」

 

「ッ......笑ってない」

 

 あ、顔赤くなった。

 

 

 

 

 

『ただいま線状降水帯が発生し、東京都全域に大雨と風――』

 

 玄関。

 この上なく水分を含んだ衣服で床を水浸しにする僕達。

 きくりと遊里はもう寝ているようで、電気は消え、遠くから時計の音が聞こえるだけ。

 

「うぅ~気持ち悪い」

 

「......」

 

 腰を下ろし、靴を脱ぐと足の不快感を拭う為に靴下に手をかける。

 リョウは水を滴らせながら、一度髪を払うとさっきとは大違いの無の顔で一言。

 

「......じゃ、帰るから」

 

「死ぬよ?」

 

 リョウお泊り確定。 

 

 

 

 

 

 次回『#17 雨音』......見て下さい。




 感想、評価貰えれば執筆速度UPします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。