※この作品はR-18です。

ばいしゅん・ざ・ろっく!!   作:清姫

22 / 27
 こんにちは。
 右足を肉離れした三日後、左足も肉離れを起こした作者です。
 ミネラル不足と体温低下で寝ている時に起こるようですね、熱中症対策に何時もより低い温度にしていたのが原因みたいです。
 
 それはそうと、肝心な虹夏エレクトロですが......申し訳ありません。
 エチエチが入り切らず、前後分けさせて頂きます。
 つまり、次回もエチエチタイム継続!! という事でよろしくどうぞ。

 誤字脱字ご愛敬。


#22 虹夏エレクトロ 前編

「......」

 

「......」

 

 夜の街を歩く僕達。

 二人の間には会話はなく、だが指を絡ませて手を繋いでいるのを見たところ喧嘩をしている訳ではない。

 何とも不思議な光景に横を通り過ぎる人たちが疎らに振り返る。

 それを気にする事無く、一目散に目的の場所へと向かう虹夏。

 それにつられて、歩く僕。

 繋いだ手はピンと張る度に虹夏がやんわりと僕の手を引く。

 なぁなぁでついて来たが、僕が思った通りの事をするのなら......いいや、絶対にするだろうが、断らないとダメだ。

 

「にじ――」

 

 声をかけよう口を開くが、さっきの虹夏の泣き顔が脳裏に過ぎり阻まれた。

 

「明日香君」

 

「な、何かな?」

 

「ごめんね。強引に連れて来て」

 

 その声は観覧車を降りる直前の虹夏とは大違いな、しおらしい声音で僕を混乱させる。

 あの時の虹夏の顔は......リョウみたいだった。

 でも、リョウみたいに強引に連れて行かれてるって感じじゃないし......。

 

「......」

 

「先に言っておくね。もし明日香君が嫌なら私は何もしない。明日香君がこのまま帰ってもリョウとは今まで通り接するし、二人の間を引き剥がしたりしない」

 

 「リョウとは親友だしね」歩きながらそう言う笑顔の虹夏。

 自虐的な色が見えるその笑みは、僕の心に根付く罪の意識と言う花を芽吹かせるには十分だった。

 そんな顔されたら......。

 気持ちで圧される、足を止める事が出来ない僕は、心の中に残っている0.1%の正義の心が辛うじて虹夏を止めようと口を動かす。

 

「虹夏ちゃん......こういうの良くないよ」

 

 お前が言うな。

 きっと僕の事を知っていればそう言うだろう。

 でも、こんな形でするのは良くないのは確かだ。

 それに、今の僕は彼女持ちで虹夏としてしまえば浮気(・・)になってしまう。

 

「分かってる。......でも、でもね? 好きなの明日香君が。大好きなの......。我慢できないのっ」

 

 立ち止まり、手を離すと踵を返し僕の方を見る。

 頭を深々と下げ、話を繋げた。

 

「お願い。一回で良い。そしたら、私は私を納得させる。だから......明日香君。私に思い出を頂戴」

 

「やめてよ虹夏ちゃん」

 

 染まっていく。

 

「お願い」

 

 黄色へと。

 

「お願いします」

 

 純粋な。

 

「......分かったから。やめて」

 

 黄色に。

 

「いいの?」

 

 今の僕はどんな顔をしているだろう。

 きっと、酷い顔してるよね。

 虹夏から隠す為にリョウを利用して、今度はリョウを裏切ろうとしてるんだから......。 

 

 何処までも深みに落ちていく僕を見て、天国の両親に何て言われるか考えながら、夜空を見上げ虹夏と手を繋ぎ、目的の場所へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 手こずりながらもホテルの受付を済ませ、部屋の中へと入る。

 そこは前に行ったホテルと違い普通で、拘束台や性玩具と言ったいかがわしい物が並べられていない。

 一般的なホテルと相違ない内装と言って良いだろう。

 

「中は......普通だね」

 

「うん」

 

 好奇心に駆られ、室内を散策する虹夏の言葉に同意する。

 ポスッと静かにベッドに座った僕を見て、思い出したかのように顔を真っ赤にしながら僕の隣に腰を下ろす。

 

 サクランボのように染まった虹夏の顔。

 必然的に僕の顔も彼女と同じ色へ、それに伴い感情が相応しいモノへと変貌する。

 あれだけリョウにごめんって言ってたのに、虹夏の顔を見た時から何だか胸がムズムズする......ほんと僕って最低だ。

 

「まずは......どうすればいいんだっけ?」

 

「さ、先にシャワーにしようよ」

 

「そ、そうだよね。じゃ、先入って来るね?」

 

「......うん」

 

 そう言い残すと立ち上がり、早い歩みで風呂場へと向かった。

 虹夏の初々しい姿を見送ると、今度は徐々に熱が冷めたかのように、またリョウの事を思い出す。

 虹夏とリョウ。

 真逆の感情の間を揺れ動き、どうにかなってしまいそうだ。

 モヤモヤとした思いの中、ポケットから落ちた携帯が目に入る。

 

「ご飯作って来たけど......寂しくしてないかな」

 

 ふと思い浮かぶ最愛の妹の顔。

 ここ最近、バイトだ何だと家を空ける事が多くなった。

 きくりが家に居てくれる日は良いが、あの人も如何せんジッとしていられないタイプで割りと遊里一人の日も多い。

 口には出さないがまだまだ子供。

 きっと寂しい思いをしているに違いない。

 色々問題が片付いたら、何処か食べに連れて行ってあげよ、遊里お寿司が好きだし回らないお寿司屋さん......は無理だから回転寿司とか? 

 

 そうこうしていると、携帯が揺れる。

 手に取り受信ボックスを開くとそこにはリョウの名前が。

 

「ッ!」

 

 ビクリと一瞬身体を震わせた。

 鼓動が早くなり、息が詰まりそうになる。

 開こうかどうか迷う中、放っていても意味がないと悟り意を決しボタンを押した。

 

『どうだった?』

 

 短く簡潔なリョウらしい文。

 そんな、捻りのない文章に対しての返事を考える事が出来ない僕。

 『終わった』と言えば嘘になるし、『まだ虹夏といる』と言えばバレる。

 どっちにしてもリョウを裏切った事になる。

 それなら――

 

 カタカタと文章を打ち、送信した。

 

『後で話そ』

 

「直接話そう」

 

 それがいい。

 今日起こった事全て話そう。

 

「明日香君?」

 

「ッ!?」

 

 振り向くと、いつの間にかシャワーを済ませた髪を下ろした虹夏がバスローブ姿で立っていた。

 毛先には雫が滴っており、その姿は何処か妖艶で男の感情を高ぶらせる。

 

「誰に連絡してたの?」

 

 小首を傾げながら僕の隣に座る。

 

「......り、リョウに」

 

「ふ~ん」

 

 フワリと香る空気。

 リョウの時と同じ、肌に纏わりつく感じがした。

 

「あ、あの虹夏ちゃん! 僕もシャワーを」

 

 そんな雰囲気を感じ取り無意識に逃げようと携帯を閉じ、ポケットにしまい立ち上がる。

 が、立ち上がる瞬間に腕を掴まれ、反動でそのままベッドに倒れてしまう。

 そこに、ゆっくりと虹夏が跨り起き上がるのを防がれてしまう。

 

「に、にじ......かちゃん......しゃ、シャワー。先にシャワーを」

 

「いいよ。このままで」

 

「でも汚いし......」

 

 一日歩き回った僕の身体は汗で濡れており、緊張と体温で絶えず汗が流れている。

 そんな汚れた身体は完全に出来上がってしまっている虹夏には気にならないようで、顔を逸らすが、身体全体を覆いかぶせるように抱き着いて来た。

 

「もう、我慢しなくてもいいよね?」

 

「落ち着いて虹夏ちゃん、ね?」

 

 髪の毛から落ちる雫は顔に滴り汗と混ざり、荒い鼻息は僕の顔を優しく撫でる。

 今の虹夏はまるで目の前に餌を置かれ、『待て』をさせられている犬。

 今まさに目の前のエサ(・・)に飛び掛かろうとしており、それを僕が必死で宥めている。

 

「無理だよ。だってずっと待ってたんだから」

 

 胸の内に押し込めた感情が解き放たれ、自分でも制御出来なくなっているのか、普段はしないだろう行動で僕を翻弄した。

 

「に、虹夏ちゃん?」

 

「明日香君......明日香君」

 

 すぅーっと僕の匂いを嗅ぎながら、身体を擦り付け僕に匂いを染み込ませる。

 今までの相手の匂いを消すように念入りに、何度も。

 そして、シャツの襟を引っ張り隙間から匂いを嗅ぐ。

 ムワッと外へと流れる僕の匂い、その全てを鼻腔へ収めようと鼻息荒く吸い込む。

 勿論、擦り付ける行為はそのまま、虹夏の顔の筋肉は緩慢となり目頭がトロンと垂れている。

 それらを暫く行った後、気が済んだのか次の行為へと移った。 

 

「ん......ちゅ」

 

 キスだ。

 唇同士を合わせるだけの清いキスを味わうように......ゆっくりと。

 

「ん......ちゅぱ。それ、お姉ちゃんから貰った奴?」

 

「んん......られ」

 

 しゃべる余裕がなく、コクリと頷くと虹夏はキスをしながらチョーカーを外し始めた。

  

「ちゅ......はぁはぁ」

 

 首の後ろに手を回し、カチリと留め具を外すと身体を起こし、『今は私だけを見て』と言いたげな顔でチョーカーを見せつけ、投げる。

 

「あ」

 

 無意識に漏れる声。

 顔はチョーカーの方へと向くが、虹夏の手によってそっと顔の向きを戻される。

 

「もっとしよ? ――っちゅ......じゅる」

 

「んん!! じゅぞぞ」

 

 舌が入ってきた!

 気持ちいい......。

 己の節操のなさに嫌気がさし、死にそうになるが、そんな自己嫌悪の思考も直ぐに快楽によりかき消され、口の中で動き回る小さな舌に集中する。

 

「ん......ちゅ、気持ちいね......ちゅる......れろ」

 

「虹夏ちゃ......んん......じゅる」

 

 両方の手は恋人繋ぎで顔の横で拘束され、虹夏の腰は先ほどから何かを求めて絶えず動いている。

 互いが酸欠状態になるまで愛を交わし、僕の腹が虹夏の唾液でいっぱいになる程注がれた時、遂に僕の服に手をかけた。

 始まる。

 せめて僕が主導権を。

 そんな考えは直ぐに露へと消えた。

 

「初めてなら僕が――ん! れろ......じゅぞ」

 

「ダメ。私が上がいいの」

 

 上を脱がせ、下を膝まで下げるバスローブの前をはだけさせ裸体を晒す。

 

「どう?」

 

「......綺麗」

 

 染み一つない身体。

 大きい訳でも小さい訳でもない、バランスの取れた胸。

 何が秀でていると言う訳じゃないが、整っており、その全てがあるべき場所にある。

 そんな、均一のとれた美麗な身体に男の部分が反応し、硬くしてしまう。

 

「あ!」

 

「うれしい。私でおっきくしてくれたんだ」

 

 足をつき、僕の肉棒を自身の蜜壺へと添える。

 

「ま、待って! ご、ゴムしないと」

 

「ゴム? 何それ?」

 

「赤ちゃん出来ないように――避妊の為のやつ」

 

 半身を起こすとベッドの傍に置いてあった備え付けのコンドームに手を伸ばし、顔を赤くさせ説明をしながら自身のモノに取り付ける。

 

「はい」

 

 そして、再び倒れ虹夏に身を任せた。

 

「......そっか明日香君は」

 

 それを見て呟く虹夏。

 

 シャワーを浴びずに事に及んだ為、汗が噴き出すとより一層濃縮された匂いが溢れ出る。

 それが彼女の鼻腔に届き、避妊具を自身で取り付けそのままはだけた姿でベッドに倒れる僕の姿を見た瞬間、心の中に押し留めていた情欲が爆発した。

 

「明日香君!!!!」

 

「んん!!」

 

 突如として動き出した虹夏は、荒っぽく自身の中に突き入れ本能の限りに身体を上下させた。

 ワンストロークする度に、蜜壺から溢れ出した愛液が肉棒を伝い僕の下半身を濡らす。

 生まれて一度も受け入れた事のない肉穴は上下する度にキュウキュウと剛直を締め付け、出てから入ると全く別の快楽を味合わせてくれる。

 

「虹夏ちゃん!! もっとゆっく......あ!」

 

「あん! い! そんなの無理だよ!! くっ! ずっと待ってたんだから!!」

 

 肉と肉がぶつかる音に水音が混じりだした頃には虹夏もすっかりセックスの空気になれてしまい、初めてだからと色々導こうとしていた僕が逆に喰われる事態に。

 気持ちよすぎるよ。

 このままじゃ直ぐに!!

 

「う! 一人でするのとじゃ全然違う!! んッ!――ねぇ好きっていって!?」

 

「ッ!? そ、それは......」

 

「お願い! 一回だけ! 今日だけで良いから!!」

 

 『一回だけ』どこかで聞いた事あるセリフだ。

 しかし、あの人と虹夏ではその言葉の重みが違う。

 彼女のそのセリフに再びリョウの顔が脳裏に浮かび、快楽と罪悪感がちょうど半々といった割合で僕の中に存在する。

 

「くっ! で、でも......」

 

 渋る僕にこれじゃダメだと作戦を変更。

 腰を止め、前に枝垂れかかるように倒れると、ベッドに手をつき僕の顔を見つめながら話す。

 

「はぁはぁ――リョウの事思ってるんでしょ? だけど一回だけ。今日だけ。今晩だけでいいから......私の彼氏になって?」

 

「......」

 

 目を合わせまいと横を向く僕の頬に手を添え、優しく自身の方へ向かせるとそっと唇を落とした。

 

「ん......ちゅ。ね? お願い。......ちゅ......ん」

 

 それに合わせ、僕の肉棒が中に入ったままの腰を前後に揺らす。

 

「んちゅ......ッ! ん!」

 

 『一回だけでいいの』『今日だけで良いの』『演技でいいから』微弱な快楽を送られながら、キスの雨を降らされ、徐々に思考がピンク色へと変化していく。

 一回だけ......なら。

 

「いい?」

 

「......」

 

 コクリ。

 蕩け切った顔で、誰かに操られたかのように首を縦に振る僕。

 それを見て、身震いさせながら恍惚とした笑みを浮べ、再び上下運動を始める虹夏。

 承諾を得たことにより、更に一歩心の距離を近づけた。

 

「嬉しい! 大好き明日香君!」

 

「う! んっ!」

 

「ん、あ......明日香君も言って? ――好きって」

 

 パン! パン!

 

「す......好き」

 

 瞬間。

 ビリリと身体中に何かを駆け巡り、一拍遅れ快楽が数倍に。

 突然の事でどうしていいか分からず、虹夏の手を握る。

 

「虹夏ちゃん! ん! くっ!!」

 

「好きって言って!!」

 

 言いたくない。

 また、気持ち良いが増えちゃうかもしれないから。

 でも――

 

「好きっ! んんん!!!」

 

 この状況で言わないと虹夏がどうなるか分からない。

 だから、言った。

 そしてまた気持ち良いが溢れ出た。

 イキそう。 

 

 虹夏も感じたのか「一緒にイこ」とより激しく、腰を打ちつける。

 もう何が何だか分からない。

 自分が何を言っているのかも、今感じている望外な快楽の前では些末な事だと脳が判断したのだろう。

 

「好き好き好き好き!! 虹夏ちゃん大好きぃぃ!!」

 

「私も好き! 愛してるよ明日香君――イく! ッ!!!」

 

「ん♡ ――ッ!!!!!」

 

 達する瞬間、前に倒れかかり僕を抱きしめる。

 余りの快感に身体全体で暴れるように震え、橋のようにしなる僕の身体は上に乗っている虹夏が抑え込む形でベッドから落ちるのを防がれた。

 二人の快感の波が収まった後は、何も言わず何もしない。

 唯々荒い息使いが聞こえるだけ。

 

 どれだけの時間が経っただろう。

 

 自身で変化に気付かない程の速さで意識が定まり、顔を動かし周囲を確認すると何時の間にか買ってきた水を飲みつつベッド脇に座っている虹夏の姿が。

 

「......あぁ」

 

「水飲む?」

 

 僕に気付いたのか髪を揺らしながらこちらを向き、飲みかけの水を差しだす。

 間接キス......もう、そんな事どうでもいいか。

 

「............うん」

 

 仰向けのままポツリと呟く。

 すると、何故かペットポトルを自身の口へ。

 そして口に含んだまま髪を押さえながら僕の唇に。

 

「ん......こくこく」

 

「じゅる......じゅるるる――もっといる?」

 

「ちゅ......れろ――自分で飲むぅ」

 

「そう?」

 

 言いながらも、また虹夏が自身の口に。

 また同じように口元へ運んで来た。

 やめて。

 そう言おうにも、疲れと喘ぎ声により喉が枯れている為、断る事が出来ない。

 出来る事といったら、首を横に振りつつ「んーんー」と呻き声で拒絶の意思を示すくらいで。

 

「んーんーっ......ちゅっ! れろ」

 

 しかしそれも、手で頬を挟まれ徒労に終わる。

 

「ん......ぷはぁ! もういいいっ」

 

「れろ......可愛すぎるよ明日香君」

 

 結局ボトルの中の水が空になるまでそれは続き、最後には床に空のボトルが転がり激しい水音が聞こえるのみ。

 

「んー! にじ......ちゅろ......もう!」

 

「カワイイ......ん、ちゅ.......可愛いよぉ」

 

 痛い程心臓が高鳴っている。

 嫌というほど性を啜られたのに、発情する自分に驚きと共に呆れの感情が抱く。

 もう嫌......嫌なのに......。

 

「れろ......はぁはぁ。どうだった? 私上手く出来たかな?」

 

「......分かんないよ」

 

 僕の隣に寝ころび、横向きで僕の方を見ながら言う。

 ピンク色の吐息が肌を撫で、妖艶な雰囲気を醸し出している彼女を前にどうしたらいいか思い浮かばず、場当たり的に虹夏を背に横向きになる。

 だが、そんな事で今の虹夏が引く訳もなく、全裸のまま肌を密着させ呟く。

 

「リョウよりも気持ち良かった?」

 

 蒸れたうなじに鼻を押し付け、右指の先で僕の乳首をカリカリと擦りながら今度はリョウの名前を出した。

 

「ん! ......そんな事」

 

「えー本当に分かんない?」

 

「ちょ! あん.....っと!」

 

「言うまでやめないよ~?」

 

 そんなの分かんない。

 これは本心からの言葉だ。

 だが、虹夏が求めているのはそんな曖昧な事ではないだろう。

 敏感になった乳首をしきりにカリカリと擦られ、我慢できなくなった僕は「ごめんリョウ」と心の中で謝り、震える口で今の状況を逃れる為の魔法の言葉を唱えた。

 

「............虹夏ちゃんの方が」

 

 カリカリ。

 

「誰の方が気持ち良かった?」

 

「に! ん! 虹夏ちゃんの方が気持ち良かった」

 

 カリカリ。

 

「誰より?」

 

「そんなの!」

 

 瞬間、乳首を摘ままれ捻られる。

 頭に電気が走り、身体の表面がポワポワとあやふやになる。

 

「――んん! 虹夏ちゃんの方がリョウより気持ち良かった!」

 

 言ってしまった。

 何処までも不甲斐ない自分自身に対し、涙があふれてくる。

 それを見てやっと元に戻ったのか恍惚とした笑みを浮べた虹夏が何時もの表情へ。

 

「――!? ご、ごめんね! いじめたい訳じゃなかったんだよ!? 信じて!」

 

 乳首から手を離しそのまま抱き着くと、謝罪する。

 

「すん......うん、分かってる。わ、分かってるから......」

 

「でもやり過ぎたよね。本当にごめん」

 

「ううん。大丈夫だから」

 

 起き上がり、手の甲で涙を拭くと虚脱感から力を抜け俯く僕に「うーん」とどうしていいか悩んでいる虹夏。

 しばらくして、いい案が思い浮かんだのか「そうだ」と頭上の三角をピンと天へと伸ばし、何かを取り出した。

 

「お腹空いてない?」

 

 虹夏から手渡されたそれを見ると、料理のメニュー。

 そこにはハンバーグからナポリタンまで、レストランと遜色ない程のラインナップが連なっている。

 

「ここ頼んだらご飯持ってきてくれるんだって」

 

 リョウと行ったホテルはこんなのなかった。

 入る前に女子会プランの告知ポップがあったし、普通の人を呼び込む為かも?

 ......そう言えば、お昼は吐いたら悪いと思って殆ど食べてなかったっけ。

 料理のサンプル写真が目に入ると腹部から可愛らしい音が。

 

「お腹......空いてる、かも」

 

「じゃあ頼んでみようよ! 私がお金だすからさ。ね?」

 

「......うん」

 

 空腹には勝てず、涙声のままで頷くと。

 虹夏はバスローブを、僕はシーツで身体を覆うとソファに二人肩を並べ何を食べるかで話合う。

 

「明日香君何食べる? ――私はね~しらす丼が食べたいな~」

 

「......ハンバーグ」

 

「それだけでいい? もう一個くらい頼む?」

 

 知り合いの前で泣いてしまった恥ずかしさと行為後特有の急激に性欲がなくなった状態とが相まって、どうしようもなく一人になりたい気分。

 それなのに、虹夏のまるで母親のような甘い優しさが心を蕩けさせ、ナイーブになった隙間に浸透し『一人になりたい』から『甘えたい』にシフト。

 そんな自分を認めたくなく、シーツを頭まで被り、ソファの上に足を三角にし座る。

 

「......ポテトも」

 

「うん。一緒に食べよっか」

 

 甘えたい甘えたい甘えたい。

 でも、認めたくない。

 彼女でもない女の子とこんなことして、泣かされたのに。

 その上......その上甘えたいだなんて!!

 

「――ッ!?」

 

「え~とこの電話で......」

 

 慣れないルームサービスに苦戦する虹夏は羞恥で悶絶しながら身体を震わせる僕に気付いていないようで、料理を注文した後も何やら話しており「メイ.....服も――」などと数度言葉を交わし。

 

「受け取り方は......はい。分かりました。じゃあお願いします」

 

 「ふぅ」と大袈裟にため息をこぼすと、ぴょんぴょん跳ねながら僕の隣に。

 

「部屋の前の受け取り台? に置いてくれるんだって」

 

「そう、なんだ......」

 

「楽しみ~♪」

 

 未だに虹夏と楽しく話せるような精神状況ではなく、どうしようか考えた結果。

 

「ぼ、僕も服着て来る」

 

 顔を隠しながら、体液でドロドロになった己の服を一瞥しハンガーでつるされているバスローブへ足を向ける。

 

「じゃあ、着替えてくるね?」

 

 これを持って風呂場に隣接している脱衣所兼洗面所へ。

 が、しかし目的の場所まで後半分の距離という所で待ったの声がかかった。

 

「ここで着替えればいいじゃん」

 

「え?」

 

 どっかで見た事あるぞこれ。

 まさかこの流れは。

 

今は(・・)恋人、でしょ?」

 

 髪を下ろしたその姿は星歌そっくりで、虹夏のその風貌も相まってあの時とダブって見える。

 モノ言わぬ圧。

 どうせ、ここで断っても言い任されて結局は着替えさせられる。

 なら――。

 

「分かった......けど、あんまり見ないでね?」

 

「うん」

 

 と言いつつ、一瞬たりとも視線を外さない虹夏。

 普通逆じゃん。

 心の中で毒を吐きつつ後ろを向くと、シーツを床に落とす。

 シュルル......と布と肌が擦れる音。

 背中から臀部にかけて、桜色の肌ビラが散っており、誰かの所有物かどうか直ぐに分かる。

 

 ハンガーを外し、ローブを羽織る。

 前を止める為、やや前傾姿勢になる際突き出したお尻を、同じく前傾姿勢で食い入るように見つめる虹夏。

 

「見ないでって言ってるのに......」

 

「ごめんごめん。つい、ね? それよりこっち来て」

 

「もう......」

 

 気持ち冷めやらぬ中、虹夏がポンポンと叩く場所に腰を落とす。

 すると、突然虹夏が倒れ、横に寝転がる。

 

「虹夏ちゃん?」

 

「あ~」

 

 「頭撫でて~」ふにゃふにゃ声で言う。

 まぁそれくらいなら......。

 恐る恐る掌を虹夏の頭にのせ、滑らせるように撫で始めた。

 

「ん~......明日香君からお母さんの匂いがする」

 

「お母さんの匂い? それって」

 

「明日香君とお母さんの匂いってなんだかにてるんだよね~。だから、すっごく安心する」

 

「そうなんだ」

 

「お姉ちゃんに自慢しちゃおっと」

 

「......」

 

 言えない。

 お姉さんの方が先に膝枕を堪能したなんて。

 一人で戦々恐々していると、不意にパシャ! と電子音が。

 横向きで器用に僕の顔をスマホに納め、画面を見て満足気な虹夏。

 

「ねぇ写真は......」

 

「え~いいじゃん。今日だけだから~」

 

 「お願い。ね?」そう言うともう一度パシャ! 

 確かに、虹夏には今日だけしかないし......でも、彼女持ちでこんな事。

 リョウに何て言えば。

 

「うぅ~」

 

 この先の見えない結末に苦悩しつつ、虹夏の頭を撫でる。

 

「ん~お母さん」

 

 その言葉を最後に虹夏は眠りこけてしまった。

 

「......」

 

 膝の上で小さな寝息を立てる彼女を見下ろし、絶えず頭を撫でながら僕は考えた。

 虹夏の事を考えた。

 日中は学業、夕方からはアルバイトと家事。

 思えば、彼女と僕の境遇は似ている。

 一つ違う点を挙げるとするなら、頼れる大人がいたという事。

 

「......違う」

 

 そうじゃない。

 幾ら、頼れる人がいたとしても母親がいなくなったと言う事には変わりない。

 母親とは、心の支えになってくれるべき存在。

 それは例え家族であっても代えがたいものであり、簡単に変えられるものではない。

 現に、こうして僕への想いを自身で抱え過ぎて暴走している。

 そう考えれば、僕と虹夏は同じだ。

 

「......きっと遊里も」

 

 一度、遊里と話そうか。

 妹は妹で悩みや簡単には言えない事があるだろう。

 それを引き出して、聴いてあげるのが兄である僕の役目だ。

 

 そうこう考えていると、虹夏に遊里に似た可愛げを感じ取れた気がして、少しだけ気が楽になった。

 

 

 

 

 しばらくして料理が届き、虹夏を起こしてから二人肩を並べてご飯に。

 

「ん~! 結構おいしいねこれ」

  

 僕と同じでお腹が空いてたのか、テンポよく食べ進める虹夏。

 勝手な思い込みだがこういった場所の食べ物は冷凍食品のような出来あいの物を出すものかと思って期待してなかったが。

 

「うん」

 

 サンプル写真と同じくレストランとなんら遜色ないクオリティ。

 値段はやや高いが、それでもこの手のホテルで食べれるなら納得いく。

 

「もぐもぐ」

 

「――そう言えば、食べ物持ってきたとき何か持ってなかった?」

 

「んぐ!? ――ごほごほ!! あーあれね......後のお楽しみにだよ?」

 

 誤魔化した。

 

「痛いのは嫌だよ?」

 

「ッ!? そんなことしないよ!」

 

 やや声を張り上げる虹夏。

 そのまま、更に距離をつめ肌が触れる程近くへ来ると、僕に言い聞かせるように言う。

 

「来た時も言ったと思うけど。明日香君の嫌な事はしたくないから。嫌なら嫌って言ってね?」

 

「う、うん......分かった」

 

 ああなっていても一応は僕の気を遣ってくれていたのだと思うと、どれだけ自分の事を好いていてくれてるのかを自覚し、少し気恥ずかしくなってしまった。

 

 甘い雰囲気が流れ、目と目が合う僕達。

 二人、視線は外さずそのまま虹夏が顔を近づけ。

 

 これじゃ本物の恋人じゃん。

 

「ん......っちゅ」

 

「ちゅ......へへ。しちゃったね」

 

「散々してたじゃん」

 

「そうだけど。こうして落ち着いた状態でしたのは初めてだから......なんか良いね」

 

「......」

 

「あ、ご、ごめんね! 答えにくいよね――さ、ご飯食べよ!」

 

「うん」

 

 こういう話をする度に、胸が苦しくなる。

 そして、それと同時に何とか虹夏の事を満足させて上げたいと思うように。

 

 リョウ......後で謝るから。

 

 不意打ち気味に隣で再び箸を持つ虹夏の唇に。

 

「ちゅ......」

 

「ん!? ......ちゅ。えっと......」

 

「い、まは恋人だから............」

 

 茫然とする虹夏。

 暫く、そのまま固まりやっと理解したのか。

 

「うん!」

 

 はにかんだ笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 次回『#23 虹夏エレクトロ中編』んちゅ......ちょっと虹夏ちゃ......んん!!




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