旅を始めて三日目。
俺達は互いの旅の目的について話しをしていた。
「フィロは『ファリス王国』を目指してるんだよね?」
「はい」
北の大陸にあるファリス王国、ここからだと早くても一年ほどかかるだろうか。
賢者はここ数年で問題になっている魔物の凶暴化の原因を調べるために各地を旅をしている、その賢者がフィロなわけだが、二人で旅を始めたその日、彼女の目的地がそのファリスだと聞いていた。
ただそこに何があるかまでは聞いていなかった。
「ファリスに何かあるの?」
「何かあるというか、失踪した『エーデル』という女性を探しているんです」
エーデル、妙に気になる名前だった。
聞くと魔物の凶暴化はその女性の失踪と関係があるという。
「エーデルさんは私の師匠の妹さんなのですが、んー、何から話せばいいでしょうか」
少し悩むフィロ。
「そうですね……七年前になるでしょうか、その頃、師匠と二人で旅をしていたのですが、その師匠が突然倒れてしまって」
七年前、これは魔物が暴れ出した時期と重なる。
「治癒魔法も全然効かなくて……私、どうしていいか分からなくて焦ってたんです、そしたら何故か師匠は結界で延命を始めたんです」
「結界で、ですか」
「はい、自分が倒れた原因が分かっていたのでしょう、ですが師匠も私も魔力が尽きてしまって……結局結界を維持できず、そのまま亡くなってしまいました」
「そっか……」
「その時に言っていたんです、妹に何かあったかもしれないって、魔物の凶暴化についても言ってました、暴れ出すかもと」
自分が倒れた際に妹のエーデルの身を案じたというフィロの師匠、とするとエーデルは魔物の凶暴化だけじゃなく、そのお師匠さんが倒れた事とも関係あるのだろうか。
さらに魔物の凶暴化についても言及していた師匠の言う通りになったとなれば、確かにエーデルと魔物の問題には関係がありそうだった。
「師匠は隠し事の多い人だったように思います。
私は物心ついた時には既に師匠と一緒でしたが、妹さんがいた事もその時に知りましたし」
隠し事の多かったというフィロの師匠、物心ついた頃から一緒だったと聞くと、両親はどうしたのかと聞きたくなったが、今はエーデルの話を聞くのが先だろうか。
「エーデルさんの居場所もお師匠さんから聞いたの?」
「はい」
「そっか、でも失踪したっていうのは何で知ってるの?」
「それは……詳しく話すと長くなるんですが、私その後一度ファリスに行った事があるんです」
「もう行ったことあるんだ」
「はい」
なぜ既に行ったことのあるファリスを目指しているのかと不思議に思って、フィロを見てみると、少し浮かない顔をしているように見えた。
突っ込んで聞いていいか迷っていると、フィロは話を変えて俺のことを聞いてきた。
「リリーは護衛で生計を立ててるんですか? 特に行く当てはないって言ってましたが」
「あーいや、行く当てがないのはそうなんだけど、別にこれで生計立ててるわけじゃないよ、お金に困ってるわけでもないから」
「そうなんですか?一応報酬は払おうと思ってるんですが」
「報酬って、俺に?」
「はい、正式に契約したわけじゃありませんが、私が連れ出したというのもありますし」
報酬なんて考えてくれていたようだ。
確かに最初は半ば強引にフィロに連れ出されたような形だった、護衛で生計を立てているような人であれば、報酬も無しにこういった旅については来ないか。
ただ俺がその報酬を貰うのはどうなのだろうか、どうもそれは違う気がした。
「んー、一応俺も目的があって旅してるし、それに元々フィロを護衛しようと思って付いてきたわけでもないから、仕事じゃない以上報酬は貰えないよ」
正直この旅では見張り番くらいしかしていない、フィロにとってはそれで十分なのかもしれないが、俺に仕事をしてるつもりはなかった。
それに報酬なら既に別の形で貰っていると言ってもいい。
見張り中の癒しのアレだ。乳を揉んで金まで貰ってしまう自分を想像する。
フィロが金で繋がる関係の方がいいと言うなら拒否はしないが、個人的にはそうでない方が嬉しい、そう思った。
「本当にいいんですか?」
「うん」
「そう、ですか……ずっとお金の話をしてこないから不思議に思ってたんですが。でもリリーの目的って?」
「あー、それは……」
目的。
俺の旅に当てはない、でも目的ならある。
昔の知り合いを探していたのだ。
少し昔の話になる。
五年前、これは俺の覚えてる中で一番古い記憶だ。
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目を開けるとボヤけた景色が見えた。
「おい……」
「……」
今まで深く眠っていたような、そんな気分から少しずつ意識が戻る。
気付くと俺は見覚えのない天井を見ていた。
「おい……大丈夫か?」
すぐ横で声が聞こえた。
声の方を向くと、若い男がいた。
「やっと起きたか」
少年と言ってもよさそうな見た目、この少年にも見覚えはない。
「だれ……?」
「あー、俺はその、ジェイっていうんだけど、お前が倒れてたのを見つけてここで休ませてた」
寝ていたような気分だったが、どうも倒れていたらしかった。
「……たおれて?」
「ああ、結界の中で倒れてたんだよ。何があったんだ?」
何があったか、そう聞かれても分からなかった。
「……」
「まだ意識がハッキリしないか?」
正直頭はボーッとしていた、グラグラ揺れているような感覚もあり、状況が全く分からなかった。
「分かんない……」
「何が分からない?」
「何で、ここにいるか……」
「それは俺達が運んだから、てそういう事じゃないか……思い出せないのか?」
思い出せない、思い出そうとしても頭の中は真っ黒だ、なんのイメージも浮かばない。
「自分の名前はわかるか?」
「…………」
名前を聞かれたはずなのに答えられない。
この時点で、流石におかしいと思った。
「どうだ?」
「分からない……」
ジェイに聞かれたこと全て分からなかった。
自分の名前すらも。そんな奇妙な感覚に焦りを感じた。
「そうか……んー、頭打ったみたいだったし、一時的なものならいいんだが……」
頭を打った、何も思い出せないのはそれのせいって事なのだろうかと考える。
「まあひとまずゆっくり休んでおくといい、一通り目立つ怪我は治癒したと思うけど、どこか痛むとこはあるか?」
「いや……大丈夫」
痛みはさほど感じない、どうやら怪我も治してくれたようだ、この少年は危険な人物ではないのかもしれない。そう思った。
「そっか、結構身体中の骨が折れたりしてたし、まだ痛むところがあったらすぐ言ってくれ」
「うん、ありがとう」
右も左も分からないような状況で不安になったが、命の危険はなさそうで少し安心できた。
俺が感謝をするとジェイは立ち上がり、「じゃあちょっと俺は外に行ってるけど、何かあったらすぐ呼んでくれな」と言って部屋から出ていった。
部屋で一人になり、体を起こして窓の外を見てみる、すると景色がゆっくり動いていた。
どうやら移動する馬車の中に居たようだ、グラグラ揺れるような感覚もそのせいだった。
その後も窓の外を見ながら、何とか思い出そうと頑張ってみたがダメだった。
もはや答えは一つ。
記憶喪失。
名前も含め、自分に関する過去の記憶が思い出せない。
他にも忘れている事があるかもしれない。
そこからはずっと外の景色をボーッと眺めていた。
一時間以上そうしていただろうか、外に行っていたジェイが戻って来た。
「記憶、どうだ?」
そう聞かれて首を横に振る。
「思い出せないか」
「うん」
「そうか……じゃあ、とりあえず俺達と一緒にくるか? ジア王国ってとこに向かってるんだが」
ジア王国、それがどこかも分からなかった。
でもついていく以外ない、降りたところでどこに向かえば良いかなんて分からないのだ。
「うん、どうしたらいいか分かんないし」
「まあそうだよな……あーそうだ、とりあえずなんて呼ぶかだけでも決めとくか? 色々困るだろうし」
呼び方を決めようと言うジェイ、それもそうだ、いつまでも、おい、とか、お前、なんて呼ばれてたら不便だ。
「うん」
「よし、じゃあ俺が決めていいか? それとも自分で決めるか?」
「それは、決めてくれていいよ」
呼んでほしい名前もないしな。
「そうか、じゃあ」
そう言って少し考えるジェイ。
「リリ、とかどうだ?」
リリ。ちょっと女っぽくないか?とも思ったが、決めてくれと言った手前、文句言うのも違う気がした。
「うん、それでいい」
「よし、ひとまずリリな、さっきも言ったけど俺はジェイだ、よろしくな」
「うん、よろしくジェイ」
その後、道を進んでいくと、ジェイ以外にも何人か俺の顔を見に来た。
ジェイと同郷という女の子の魔法使いと、ガタイ良い寡黙な戦士の男。
魔法使いの子は『メイリィ』、戦士の男は『タイラス』というらしい。
ジェイから話を聞いたらしく、「大丈夫ー?」と声をかけてくれた。
「目を覚ましたとは聞いてたんだけど、具合はどう?」
「あー、うん、体は平気なんだけど……俺、名前も何も思い出せなくて……とりあえずジェイがリリって名前付けてくれたから、そう呼んで」
「そっかぁ、分かった、よろしくねリリ。でも君、もしかして男の子?いま俺って……」
「え?うん……男、のはずだけど」
男か? なんてよく分からない事を聞いてくるメイリィ。
今まで自分が男だと自然に思っていたのだが、そんな事を聞かれて、まさか女なのか!?と思って自分の体を確かめた。
男だった。
初対面の女の子の前で股間をいじる俺。
そしてどこを見ていいか分からない様子のメイリィ。
自分のイチモツを確認した俺は、若干気まずい中、コクリと頷いた。
「あー……ジェイ勘違いしたまま名前つけたな?ちょっと待ってね」
メイリィが窓の方に行って「ジェーイー! ちょっと来てー!この子男の子だよー?」と、外にいるジェイを呼んだ。
「お前男だったのか」
「うん」
「まじか、じゃあリリってのもなぁ」
「いいよ別に」
まあリリって男がいてもいいだろう、それに俺の場合ひとまずの仮だ。
「んー、そうかぁ?一応仮ではあるけどさ、あんま適当すぎるのも何かなぁ……」
そう言ってもう一度名前を考え始めるジェイ。
「リリア、リリイ、リリウ、エ、オ……リリオ、オ……オン、リリオン、リリオン……リリオン!とかどうよ?略してリリとかリリー」
結局愛称はリリかリリーなんだ、と思いつつ何となくリリーと言う響きにしっくりくるものがあった。
「うん、いい」
「よし、じゃあリリオンな、オリオンみたいな響きだな」
「オリオン?」
「あーいや、何でもない、にしてもそんなに髪が長いとパッと見女だなほんと、声も高いし、まあまだ声変わりしてないのか」
声変わり、当然のように自分の年も分からなかった、声変わり前というと十代前半くらいだろうか。
となるとジェイとそこまで変わらなそうだなと思った。
こうして呼び名が決まったところで、その後は俺が見つかるまでの話を聞いた。
昨日の夜明け前、見張りをしていたジェイが、遠目に見える崖下が淡く光っているのを見たという。
気になったジェイは、朝起きてきた仲間に報告し、想定していた道からは多少逸れるものの、その光の場所に向かう事にした。
そしてその日の昼過ぎにそこへ辿り着くと、結界の中で倒れている俺を見つけたのだと言う。
光の正体はその結界であり、俺のそばに落ちていた結界魔石が発動したものらしい。
「これがその魔石だ」
装飾にはめ込まれた青く透き通った綺麗な石だった。
きっとこの魔石が無かったら俺は見つからなかっただろう、そして意識がないまま魔物に襲われて助からなかったと思う。
「もう魔力は尽きてるからただの石になっちまってるが、持っとくか?
珍しい細工もされてるし、何かの手掛かりになるかもしれないぞ?」
魔石には細工部分に衝撃が加わると自動で効力が発動するような仕掛けがあるようだとジェイは言った。
多分俺が崖から落ちて、その際に魔石の仕掛けも起動したんじゃないかという。
「うん、持っておくよ」
この魔石は俺を守ってくれた、そしてジェイに俺の居場所を伝えてくれた。
何か大事な物な気もするし、お守りがわりに持っておきたいと思った。
その後も俺の記憶が戻ることは無かった。
だがひとまずそれは気にしないことにした、気にしたところで思い出すわけでもない。
こうしてジェイ達の旅に同行する事になったのだが、その旅の中でまずジェイの強さに驚いた。
魔法はメイリィより多くの魔法を扱え、近接戦も、パワーこそタイラスには劣るものの決して弱くはなく、身のこなしも良かった。
俺は俺でジェイと同じくらいには動けたのだが、力が強いわけでもなく、さらには魔法が全く使えない事が分かり、撹乱役と魔力供給役として仕事をした。
魔法を使えない俺が魔力を溜め込んでも意味がない、ジェイやメイリィに使ってもらった方が良いと思ったのだ。
するとそこで俺が変わった体質をしていることが発覚した。魔力が異様に多かったのだ。そしてまずこれに喜んだのがメイリィだ。
「これなら魔法、使い放題じゃん!」
発覚してすぐの頃はそう言ってはしゃいでいたのだが、戦闘を重ねるにつれてこんな事を言いだした。
「リリと一緒に旅するとバカになりそうだね」
突然そんな事を言われ、ショックを受ける。なぜそんな事を言い出したのか聞いてみると、「だってこれじゃあ強い魔法ばっかり使っちゃうし、戦う時に工夫しなくなるんだもん」とのことだった。
それを聞いたジェイは、ハハハッと笑った後「分かる」と付け加えるように言った。
言わせておけば、と思って抗議の視線を送ると、二人は「ごめんごめん」とか「ワリワリ」なんて言って苦笑いしながら手を合わせてきた。
なんとも息が合っているようだった。
ちなみに話は逸れるが、ジェイとメイリィは多分いい感じの仲だ、ちょいちょい二人揃って姿が見えない瞬間があるのだ。
それ程遠くには行っていないだろうけど、見えないところでちゅっちゅしてるかもしれないので、俺やタイラス達も探しに行くなんて野暮な事はしなかった。
目の前でそんなことされても反応に困るしな。
そんなこんなで一月ほど旅をしてジア王国へ辿り着く、そして俺のことを知っている人間が居ないか探したいと言うと、ジェイが言った。
「それなら“ギルド“に行くといい、登録しとけば色々世話してくれると思うぜ」
ジェイのアドバイスに従って、新人の護衛としてギルドに登録しつつ人探しの依頼を出した。
ちなみにギルドは俺達のような護衛職に対してだけでなく、様々なサポートをしてくれる、仕事や人の紹介から製品の品質管理等々。
“酒場”なんて呼び方をする地域もあるようだが、それは元々『レイダ』という人物が経営していた酒場が母体となっているからという話だ。酒場がギルドになった経緯は、まあ今はいいだろう。
そしてそこで発行されるギルドカードは偽造も難しいため身分証明としても使われている。
これで護衛の仕事をしながら各地を回り、俺のことを知っている人を探そう、そう思った。
「髪切るの?」
俺が、肩まで伸びている髪を切ろうとしていると、メイリィが話しかけてきた」
「うん、別に長い方が良いとかでもないし」
「ふぅん、でも切る前に似顔絵でも描いてもらった方が良いんじゃない?知り合い探しにも使うだろうし」
「あーうん、それはもう描いてもらったから大丈夫」
ギルドに人探しの依頼を出す前にまず自分の似顔絵が必要だと思い、その依頼もしていた、それを使って人探しの依頼をしていたのだ。
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この人物に心当たりのある方は情報提供を求む。
情報提供料はイディア銀貨1枚〜5枚
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人探しの掲示板に自分の顔が張り出されている、本人はここにいるのに。
自分で出した依頼ではあるが何とも変な感覚だった。
ギルドの職員に連れられて掲示板に張り出している際には冷やかしにもあった。
『ハハッ!こいつなら見たぜ?今目の前にいるからなぁ!』と、くだらない事言ってくる野郎に絡まれたのだ。
カチンときたので、男の顔面にペッと唾を吐きつけ、持ち前の身のこなしでとんずらをこいた。
それから二週間ほど経っていた。
また別の冷やかしに会わないよう、髪を縛りフードを深く被って過ごしていたのだが、結局情報提供者は見つからず、そろそろ旅に出ようかと思い、髪を切ろうとしていた。
「俺らは付いて行けないが、まあ気をつけてな」
ジェイとメイリィはジアの食材が目当てだったようで、そのまま滞在すると言うのでそこで別れる事になった。
「うん、色々ありがとう、本当に助かったよ」
別れ際、世話になった事に感謝すると、「困った時はお互い様だろ、気にすんな」と言って見送ってくれた。
本当に気持ちのいい奴らだったと思う。
彼らに拾ってもらって本当に良かった。
そしてそれから五年間、俺はどこにいるかも分からない知り合いを探して当てもなく旅をしていた。
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「記憶喪失ですか……」
そう言うフィロの後ろでは、数体の鳥の魔物が鋭い岩の槍で串刺しになって息絶えていた。
その地面には氷が張っていて、魔物の足を巻き込むように凍りついている。おまけに頭には小さな穴が空いていて血がドクドクと流れ出ている。
アイスフィールドにロックランス、そしてトドメのストーンバレット、フィロがよく使う魔法だ。
記憶を失ってジェイ達に拾われた経緯を、簡単に説明しているところで魔物に遭遇したのだ。
襲われたせいでまだ詳しくは話せていない。
フィロがロックランスを引っ込めると、ドサリと音をたてて魔物の体が地面に落ちた。俺達はその中から一番若そうな『コカトリス』を選んで解体を始める、二日連続で食べれる魔物に遭遇できたのは幸運だ。とはいえ昨日のレッドボアの肉も残っているので、あまり荷物に余裕はない。
そうして解体をしながら話を続けた。
「リリーが倒れていた周辺の地域には行ったんですか?」
「うん、一応その近くの街や村には行ったよ、けど何も分からなかった」
ジアを出た後、まずは自分が倒れていた場所から近い地域を周ったのだが、俺を知る人は見つからなかった。
「そうでしたか」
「まあ旅を続けていればいずれ会えるでしょう」
「それは確かに、でもその人探しの方はそこまで急いでいないんですか?」
「うん、焦って探す必要はないかなって感じ」
仮に見つからなかったとしても、今の俺を知ってくれてる人も居る。
もうそこまで昔の記憶に拘ってはいなかった。
「なるほど、でもこれで何となく理由がわかりました」
「理由?」
「はい、こうして旅に付いて来てくれた割にお金も要求しないし、目的地もなさそうな理由です」
「今まではなんで俺が付いて来たと思ってたんです?」
「最初は普通に護衛の仕事として来てくれたのかと思ってましたが、お金の話もしてこないので何か裏でもあるのかなと」
裏なんてないつもりだ、そう思った。
だから思ったことをそのまま言った。
「裏なんてないつもりですよ?」
「そうですか?」
「もちろん」
「でも裏のある人が、裏あります、なんて普通言わないでしょう?」
「いやまあ、それはそうかもしれないけど……でもそれじゃあどうすれば信用してもらえるんです?」
「それはー……」
「それは?」
「私にも分かりません」
笑いながらそう言うフィロ。
「分からないんですか……」
「ふふ、まあいいじゃないですか。こうして旅をしていればお互いを知る機会だってあるでしょうし、あ、卵ありますよ?」
話しながら卵を見つけるフィロ。
鶏肉に卵、なら今日は鶏肉の卵とじが良いだろうか、米があれば親子丼だな、なんて夕食のメニューを考える。
「このくらいで十分ですかね?」
「うん、これ以上は持ち歩くのも大変だし」
もも肉と胸肉を1キロずつ程収穫して保存する。残りは埋めておけば虫達の餌にでもなるだろう。
道端にそのまま放置するのはあまりよろしくない、他の魔物が集まってきてしまうからな。
もしこの後他の人間がここを通ったらきっと恨み言の一つや二つ言われるだろう、状況によっては何時間も立ち往生だ。まあ誰がやったかはバレないだろうがな。
「グランドクラッシュ」
フィロが魔法で地面を砕く、砕けた地面をどかすと大きな窪みが出来た、そこに魔物の遺骸を放り込み、上から土をかけた。
「行きましょうか」
魔物の処理を済ませて立ち上がる。
日も傾いて、あと二時間もすれば夜になるだろう。
旅は順調だ、二人での旅にも慣れてきた。
俺達は今日の寝床を探しに歩きだした。
十話くらいで完結するかと思って書いていましたが、もう少し長くなりそうです。
まだ自分でも、どれくらいの長さになるか分かっていませんが、楽しんでいただけたらと思います。