「レイプって何か分かる?トァン...」
放課後の教室、わたしとキアン、ミァハの三人しかいない空間でミァハはそう尋ねた。
聞きなじみのないその言葉にわたしたちは首をかしげる。
「強姦、凌辱、婦女暴行...そんな風に言い換えてもいいわ」
まるで歌うかのようにミァハは言葉を紡いでいるが、暴行という言葉が入っていることから物騒で反社会的なものであることは推測できた。
「何なの、それ?」
キアンが恐る恐る尋ねる。
「男の人がね、暴力や脅迫で女の子...に限った話ではないけれど弱者を無理やり犯すのよ。泣いても叫んでもやめてもらえない。身体と尊厳を踏みにじられて壊されるの」
ミァハがまるで自分がされたことのように真に迫った話し方をするのでわたしとキアンは黙って聴いているしかなかった。
「こういう倫理的に問題がある話は規制されてるから二人が知っているはずなかったね」
ミァハはこうした話をどこから仕入れてくるだろうか、やはりデッドメディアとなって久しい紙の書籍だろうか、などとわたしが考えているといつの間にかミァハがわたしの目を覗き込んでいた。
「ねぇ、トァンはもし自分がレイプされたらどうする?」
「おい、聞いてんのかてめぇ」
男の野太い声と後頭部に突き付けられた銃口の感覚でわたしは現実に引き戻される。そこにあったのは夕暮れ時の教室と友人たちではなく、薄汚れた狭い部屋と昔ながらのAKを携えた男たちだった。わたしが過去の記憶から戻ってきたことを確認して、わたしの目の前に立っている男が口を開く。
「霧慧トァン上級螺旋監察官。あんたは今日から俺たちの人質、生府との交渉材料だ」
数時間前、わたしはアフリカ某国の武装勢力との交渉に赴き、そこで捕らえられた。武装勢力の要求はこの地域に駐屯している医療軍の撤退及び生府の不干渉。
「それともう一つ、あんたには頼みたい仕事があるんだ」
そう言って男はズボンを下ろし、怒張したものをわたしの眼前に突き出した。何日も風呂に入っていないであろう、饐えた匂いが鼻を衝く。
「わたしに娼婦の真似事をしろってこと?」
無駄だとわかっていたがわたしは一応の抗議をしてみる。
「なに、大人しくやってくれりゃケツに銃口を突っ込んだりするような真似はしねぇよ。俺たちは紳士だからな」
わたしを囲んでいる男たちから笑いが起こる。拒否権はないらしい。
フェラチオの経験は無かったがわたしは恐る恐る舌を伸ばし、ちろちろとペニスを舐め始めた。恥垢まみれのそこを舐めるのは吐き気がしたが肛門を破壊されるよりはましだと思い、男に奉仕する。
「そんなんじゃいつまで経っても男はイケねーぞ!」
「もっと気合入れてしゃぶれや!」
男たちからヤジを飛ばされ、わたしはペニスを口に含む方針に切り替える。汗と塩の味が口の中に広がった。
「んぐ。んっ、ふっ」
処女のわたしとしては懸命に奉仕しているつもりだったのだが、稚拙な技術に苛立ったのか男はわたしの頭を掴むと一気にペニスを押し込み、そのままわたしの喉でしごき始めた。
「おごっ!?」
息ができない苦しみにわたしは男の股間から顔を離そうとするが、男の手はわたしをがっちりと掴んでいて苦しみから逃れることを許さなかった。そうしてしばらく喉を好きに使われた後、わたしが失神しかけたところで男は動きを止め、どくどくと欲望を吐き出した。
「げほっ、げほっ!」
男は床に倒れこみ、咳き込むわたしをサディスティックな目で見下ろしていた。ようやく正常な呼吸を取り戻したところで次の命令が下される。
「服を脱げ。ストリップみたいにいやらしくな」
わたしは螺旋監察官の証である緋色のコート、その下に着ていた衣服を脱ぎ捨てて下着だけになる。せめてもの抵抗として命令の後半部分は無視した。
「さっさと全部脱げよ!」
罵声を受け、ゆっくりと下着を脱ぎ捨てた。乳房と陰部は手で隠していたが銃を強く押し付けられ、手を頭の後ろで組むよう言われる。一糸まとわぬ姿を男たちに晒したことで流石のわたしも羞恥心から顔が熱くなるのを感じた。
「美しい身体だ。この国の女じゃこうはいかない」
不摂生が祟って生府社会では荒れた肌と見做されるわたしもこの紛争地帯では美しい身体の持ち主らしい。
「そりゃどうも」
わたしは精一杯の虚勢を張ってみせるが、そうでもしないと膝から崩れ落ちてしまいそうだった。男は背後に回り込み、わたしの乳房を揉み始めた。指で乳首を弾き、首筋をつーっと舐める。背中から這い上がってくる寒気を堪えていると男の手が下腹部へと伸びてきた。クリトリスを愛撫し、薄く陰毛の生えたあそこをいじくりまわす。
「んっ...」
生理学的反応として女性器は湿り気を帯び、男の手との間に糸を引いていた。
「このくらいでいいだろう」
男はわたしを冷たい床に押し倒し、部下にわたしの足を開かせるよう命じる。足を閉じようとしたが男二人の力には抗えず、誘惑するような形で開脚させられた。男はペニスをわたしの性器にあてがう。何度か性器どうしを擦りつけ、ずぶずぶと押し込むように挿入してきた。わずかな抵抗を感じた後、ぷちんと何かが破れる感触があり、直後に灼けた鉄棒を突き入れられたような激しい痛みに襲われた。
「ぐっ..うぅ..!」
苦悶の表情と股から流れた破瓜の血を見た男は醜悪な笑みを浮かべた。
「お前処女だったのか」
「そうだって言ったら優しくしてくれたの?」
わたしは辛うじて笑みを返す。
「まさか。上級監察官様の初めての男になれて光栄だってだけだ」
そう言って男はわたしの作り笑いを押し潰すかのように激しく腰を振り始めた。ガクガクと身体が揺さぶられ、痛みと衝撃で再び気を失いそうになったわたしの頬を男が叩く。男の目は血走り、暴力と快楽に酔いしれていた。興奮を抑えきれない様子の男は片手でわたしの乳房をちぎれるほど強く揉みしだき、もう片方の手で部下から拳銃をひったくるとわたしの口にねじ込んできた。
「わかるか、お前の命と尊厳は今俺の手の中にあるんだ」
焦点の合わない目でまくしたてながら男はもうひとつのペニスのように銃をわたしにしゃぶらせる。やがて男はスパートをかけるように腰を加速させ、身体を密着させてきた。男の狂気に圧倒されていたわたしは全ての生物が性行為を行う目的は生殖することにあると今更思い出した。今すぐこの男を引き剝がさなければ遺伝情報の詰まった精液がわたしの子宮にぶちまけられるだろう。わたしが既に閉経した老女であればそれでも問題なかったろうが、不幸にもわたしは二十七歳の乙女であった。全身の筋肉に力を込めて抜け出そうとするが両手足を複数の男に押さえつけられた状態のわたしに逃れるすべはなかった。
「出すぞ...!受け取れ...!」
男はびくびくと痙攣し、わたしの中で性交の本懐を遂げた。熱いものが注がれるのを感じたわたしには最早なにかを言う気力は残っていなかった。しばらくわたしの膣の感触を味わっていた男はずるりと性器を抜き取ると先ほどまでの昂りが噓のように冷ややかな目で
「お前ら、その女好きにしていいぞ」
と言った。口を、乳房を、尻穴を、膣をハイエナのような男たちに貪られながらわたしは目を閉じ、自分の殻にこもることを決めた。