欧州格闘技界の新星、"妖精"イリス・ルー。
銀髪碧眼の幻想的な容姿と比較的小さな身体ながら、格闘技の本場・欧州にて白星を重ねる天才。
通算戦績は14勝1敗。
今シーズンは無敗を誇り、最新のランキングでは欧州3位にまで登り詰めている。
しかし、ファンの間では14個の勝利よりも唯一の敗戦の方が印象に残っており、ネットで度々話題にされている。
それはイリスのプロデビュー戦となる試合だった。
中学時代、無敗でフランス大会3連覇を成し遂げた彼女は、高校でも圧倒的な強さを見せ付け、1年生ながら高校王者となった。
その実力が既にプロで通用すると判断した現在の事務所が彼女をスカウトしたのは2年前のことだ。
当時最年少となる15歳の若さでプロ入りを果たした彼女は、メディアからも注目されていた。
そして迎えたデビュー戦。
メディアの宣伝もあって多くのフランス国民が期待する中で行われた試合。
──そこでイリスは屈辱の敗戦を経験する事となった。
挑発を繰り返す対戦相手に終始翻弄され、自慢の顔を執拗に殴られ、更には股の間に無理やり
レフェリーが止めに入った時にはイリスの意識は既になく、対戦相手のエイヴァ・ヒューズは無様な姿をSNSに晒して彼女をこき下ろした。
一夜にして"期待のルーキー"から"無様な敗者"へと転落した彼女にはそれから我慢の時間が続いた。
衆人環視の中、処女を失った事で高校では好奇の視線を向けられ、ネットに晒された動画はイヤラしいビデオと同列に並べられて男性達に何度も再生された。
そんな状況はイリスが次の試合で勝利しても変わる事はなく、その後10連勝を重ねてようやく改善されていった。
今では格闘技界でも五指に入るスター選手である。実力的にもエイヴァを上回っており、最悪のスタートから見事にのし上がっていた。
イリスは現在、マンションの一室で先日行われたとある試合の映像を見てため息を吐いていた。
「──彼女、またこんな惨い事をしたのですね」
美しい顔を不快そうに歪めた彼女は、画面に映る自身にとっても因縁のある女性に目を向けた。
欧州ランキング6位の"悪役"エイヴァ・ヒューズと、東洋の島国から来たルーキー"人形姫"ヒサナ・ヒメジの一戦。
両者の過去の試合を見てその勝敗を察していたイリスは予想通りとなった試合という名の公開処刑を眺める。
致命的な一撃を受けてから機動力を失ったルーキーは、エイヴァに嬲り物にされた末、全裸でリングに横たわり、哀れな姿を晒していた。
これを行なったエイヴァと、それを予想出来なかったヒサナの関係者に怒りを感じる。
これからヒサナは自分が2年前に経験した以上の屈辱的な日々を送る事になるのだろう。
既にネットでは顔合わせ時の発言から無様な敗北までの彼女の動画をまとめた物が広まっており、完全にネタにされていた。
彼女の名前を検索すれば裸の画像が出てくる状態であり、15歳の少女にとって忘れられない敗戦となっただろう。
エイヴァは試合後のSNSへの投稿が問題視され、3ヶ月間の出場停止となったみたいだが少女の受けた被害に比べるとないようなものだ。
立ち直って今のイリスの様に成り上がる事が出来ればまだ良いのだが、ここで潰れてしまうのは想像に難くない。
「彼女の国の人がしっかりとフォローしてあげたら良いのですけど、ファンというのは自分勝手ですからね」
国の英雄だと持て囃しておきながら一度の敗戦で見限った者達を思い出す。
映像の中で目を見開いて失神するヒサナの姿にかつての自分を重ねたイリスは、しばらく悩んだ末、出掛ける準備を始めた。
★
姫路ヒサナはこの数日間、ホテルに引きこもって過ごしていた。
あの日。
試合が終わり、控え室に運ばれて意識を取り戻した彼女は、我慢出来ずに悔し涙を流した。
ほとんど何も出来ずに敗れた無力感。
多くの人に見られながら受けた辱め。
思い上がっていた事に対する羞恥。
──悔しくて、恥ずかしくて、遣る瀬無かった。
感情をあまり見せない事から人形と呼ばれていたヒサナだが、その時の姿はどこからどう見ても普通の女の子だった。
顔をくしゃくしゃに歪めてしばらく涙を流した彼女は、自分が驕っていた事を認め、この敗北を糧により強くなろうと決心した。
しかしその直後。
自身のSNSに寄せられていたメッセージを見てその決意は早々に揺らいでしまう。
『日本の恥』『二度と帰ってくるな雑魚』『負けるにしてもアレはないわ』『格上を煽ったんだから自業自得』『恥ずかしいからもう引退したら?』
といった、負けた事に対する誹謗。
『処女喪失おめでとう』『AVみたいな潮吹きだったよ』『試合中にイクとか雑魚マンなんですね笑』『イキ顔待ち受けにします』『これ姫の勃起した陰核(画像)』
といった、セクハラや嘲笑のメッセージ。
それらはこれまで賞賛ばかり浴びてきた彼女にとって初めて経験する"悪意ある言葉"だった。
心が弱っていた所にそれらを受け止める余裕のなかったヒサナは、それ以降ホテルにこもり、何をするでもなく過ごしている。
周囲の大人も今はそっとしておく事が最善だと判断した様で最低限の面会以外は彼女に会うことを控えてくれた。
──そんな日が3日続き、心の傷が少しだけ癒えてきた頃。ヒサナの元に1人の女性が訪ねてきた。
ドアを開けて入ってきた彼女を見てヒサナがまず抱いた感想は「綺麗な人」だった。
歳はヒサナより少し上だろう。
欧州でも珍しい白銀の髪と、碧い瞳。
儚げな印象を与える整った顔。
160センチくらいの身長に、コーカソイドらしく長い手脚をした彼女は、同性のヒサナでも見惚れる程の美貌を持っていた。
「……誰?」
ヒサナは少し警戒しながらその女性に声を掛けた。
あらかじめ来客についてコーチから聞かされていた為、不審者ではないと分かっていたが、他人にあまり興味のない彼女は目の前の女性が誰であるか知らなかった。
少し驚いた様子の女性は、「私もまだまだですね」と呟いてから名前を口にする。
「私はイリス・ルーと言います。これでも貴女と同じ格闘家なんですよ?」
そう言って優しく微笑んだイリスの姿は、とてもではないが闘いを生業とする人間には見えなかった。
「……格闘家。……私に何の用?」
「格闘家」という単語でエイヴァを思い出し、憂鬱な気持ちになる。
この欧州で活動しているなら彼女も自分よりずっと強者なのだろうか、とヒサナは考えた。
「私は色々な意味で貴女の先輩ですからね。もし困っているなら何か力になれないかと思って来たんですよ。──余計なお世話でしたか?」
「……そう。別に、困ってない」
「そうですか。あの……試合、拝見させて頂きました。残念でしたね。エイヴァさんは欧州でも上位の実力者ですからデビュー戦の相手としては少し厳しかったのかも知れません」
「分かってる。私はここでは弱い。──井の中の蛙だった」
ともすればヒサナの心の傷を刺激しかねないイリスの言葉。
しかし、彼女の優しげな雰囲気のお陰かヒサナはすんなりとそれを受け止める事が出来た。
イリスは、何か諦めた様にも見えるヒサナの様子に思い当たる事があり、続けて質問する。
「次の試合の日程は決まっていますか?」
「……その予定はない。私は格闘技を辞めるから」
ヒサナはこの3日間考えていた事を初めて口にした。
敗北を経験し、ファンの悪意を受け、心が折れてしまった彼女が選択したのは"逃げる事"だった。
このまま欧州にいても敗戦を繰り返す事は火を見るより明らかであるし、日本に戻っても以前の様にとはいかないだろう。
一度紙に付いた折り目は決して消す事が出来ないのだから。
元々格闘技が好きだった訳ではなく、才能があって勝つ事が出来るから続けていただけあり、そうでないのだと知ってしまった以上、続ける理由はない。
──そう、ヒサナは自分に納得させた。
「………………」
イリスは心配そうにヒサナを見つめる。
ヒサナの気持ちをこの世界で彼女ほど理解出来る人はいないだろう。
15歳でのデビュー、国民の期待、屈辱的な敗北。
そのどれもが彼女が2年前に経験したものだ。
その苦しみも、逃げたいという気持ちも痛いほど理解出来た。
──だからこそ彼女は面識もないヒサナの元を訪れたのだ。
「──強く、なりたくないですか?」
イリスはヒサナの目を見て問いかける。
嘘は見逃さないと、今ここで本音を曝け出せと言うように。
「自分を見限ったファンを見返してみたくないですか?」
「…………」
見返したいに決まっている。
お前達は見る目がないのだと結果で示してやりたい。
「自分は強いのだと、世界中の人に知らしめてみたくないですか?」
「…………ッ」
当然知らしめたい。
自分が弱者だと思われたまま終わるなんて嫌だ。
ヒサナは引き込まれる様にイリスの目を見つめ返す。
それにクスッと笑い、イリスは最後に訊ねる。
「────エイヴァさんにリベンジしてみたくないですか?」
答えは決まっていた。
「──したい……! 勝ちたい。あんな酷い事して、許さない。今度は私が、アイツをリングに沈めたい……! お前の方が弱いって、そう言ってやりたい……!」
抑えていた感情が溢れ出したのかヒサナの目から涙が溢れる。
心と身体に刻まれた痛みと屈辱。
自分が弱かったから仕方ないのだ、と。
そう自分に言い聞かせて忘れようとしていた非道な行為に対する悔しさが蘇ってきた。
ヒサナは涙を流したままイリスの言葉の続きを待った。
聞いて終わりではないのだろうと、そう言うように。
それに対しイリスは彼女の期待通りの言葉を告げた。
「ヒサナ。私が貴女を強くしてあげます。エイヴァさんを一蹴出来るくらい強く。欧州でも5本指に入るくらいに。貴女には才能がありますから。────ふふ。安心して下さい。半年前に彼女を10秒で沈めた私のお墨付きです」
そう言ってウィンクするイリスの姿は、やはり格闘家には見えなかったが、その言葉が嘘だとはヒサナには思えなかった。
これが"妖精"イリス・ルーと"人形姫"姫路ヒサナの出会いだった。
★
イリスに弟子入りしたヒサナは、まず3ヶ月間でこれまでの格闘スタイルを大きく見直し、大柄な相手に対する闘い方を学んでいった。
日本で数年掛けて習得した戦法は悉く否定され、新たに投げ技や絞め技、関節技を重点的に鍛えさせられた。
最初は大胆なスタイルの変更に不安を感じていたが、イリスとの模擬戦で数秒で失神させられた事で彼女を全面的に信じると決めたのだ。
体格がそれほど変わらないイリスからの敗北は、僅かに残っていたヒサナのプライドを砕き、彼女を上位者と認めるのに十分だった。
失神した際、粗相をしてしまった事で精神的にも彼女に逆らえなくなったという事もあるかも知れない。
ヒサナはイリスも驚くほどの早さで技を覚えていき、着実に強くなっていった。
そうして迎えたヒサナの二度目の試合。
そこで彼女は会場中から好奇の視線を浴びながらリングに上がり、以前とは全く異なる闘い方で見事に白星を勝ち取ったのだった。
それだけで世間の目が変わるほど甘くはなかったが、それでも格闘技に詳しい者達は彼女の確かな成長を見て取り、評価を上げた。
それは彼女が次の試合で通算13勝を上げる強者を圧倒した事で更に高まり、一度は見限った日本のファンも"女王"ヒサナの復活だと祝福した。
ちなみにイリスとの師弟関係は早々に世間に知られている。
と言うのも、初勝利の後にヒサナを取り囲んだカメラの前に彼女が飛び出し、それを暴露したからだ。
イリスが悪意あるメディアから自分を守ろうとしてくれたと理解しているヒサナは頭が上がらない思いだった。
メディアも、デビュー2戦目のヒサナと若手最強のイリスでは後者の方が注目度が高い為、そちらに食い付いていた。
それからもカメラのある場所ではイリスが常に付き添い、ヒサナを守ってくれた。
しかし、その所為でイリスのデビュー戦の事が話題になり、日本でもその時の映像が知られ始めている。
ヒサナもSNSで広まったその映像を見てイリスの過去を知ったのだった。
姉の様に慕い始めていたイリスが自分と同じ様な恥辱を受けている動画を見てショックを受けたヒサナだが、そんな彼女にイリスは「お揃いですね」と笑っていた。
ヒサナがイリスと出会って半年後。
ヒサナは5連勝を成し遂げ、No.1ルーキーとして注目され始めている。
イリスの方は白星を3つ増やし通算17勝目。
欧州ランキングも2位に上げ、頂点が目前となっていた。
快進撃を続ける可憐な師弟の人気は日に日に高まり、デビュー戦の敗北を悪く言う者はほとんどいない。
その日、彼女達はヒサナの7戦目の相手と顔合わせを済ませ、会場となった施設の廊下を歩いていた。
「ヒサナ。また相手を挑発しましたね。それで痛い目を見たのに何故止めないのですか?」
イリスは隣を歩く弟子に苦言を呈する。
先程の会見でヒサナは対戦相手に勝利を予告し、見下す言動を取ったのだ。
多くの選手が行う試合前の挑発だが、イリスにはそれが気になった様だった。
「……向こうが先に挑発した。私を
「
「……イリスの事も馬鹿にした」
「はぁ……。私の事は良いんですよ。怒るなら私が自分で怒りますから、貴女はそんな風に挑発に乗るのを控えて下さい」
「善処する」
手の掛かる妹を注意する様な事を言うと、イリスは小さくため息を吐いた。
「──ッ!」
そんな時だった。
ヒサナは廊下の反対側から歩いて来る人物を目にして表情を強張らせる。
そこにいたのは2人組の女性だった。
片方の大柄な女性は初対面だったが、もう片方の金髪の女の顔は嫌という程見覚えがあった。
ヒサナ達に気付いた彼女は愉しそうに笑い、近付いくる。
「あら、久しぶりじゃない。非処女の妖精とお漏らし人形」
彼女──エイヴァは体格で劣るヒサナとイリスを見下ろしながらそう口を開く。
「私に処女を散らされた者同士で最近連んでるんですってね。傷の舐め合いって奴かしら」
「……うるさい。話し掛けるな強姦魔」
親しげなエイヴァをヒサナは睨み付ける。
その身体が微かに震えているのは植え付けられたトラウマのせいだろう。
半年前より遥かに強くなったが、まだエイヴァには届かない事をヒサナは自覚していた。
リングの上でないとは言えここで襲われたら、またあの時の様な屈辱的な目に遭わされるかも知れない。どうしてもそれを想像してしまう。
「どうしたの? もしかして私が怖いの?」
ヒサナの震えを見て取ったエイヴァは嗜虐的な笑みを浮かべ、その手を彼女の下半身へと伸ばす。
「…………ッ」
ヒサナはそれを見つめる事しか出来なかった。
エイヴァの手がスカートの中に入り込み、ヒサナの大切な場所を触る、その直前──
「──また絞め落とされたいんですか? エイヴァさん」
──隣から伸びて来たイリスの手がエイヴァの腕を掴んだ。
「あまり可愛い弟子を苛めないでくれますか?」
「……イリス・ルー。気に入らないわね。あの時ちゃんと潰しておけば良かったわ」
「すみません。貴女より強くなってしまったみたいで」
「──チッ」
珍しく相手を挑発するイリス。
その表情は儚げな笑顔であり、虫も殺せなさそうに見えるのだが、エイヴァは気押されたように距離を取った。
イリスはヒサナを庇う様に前に出るとエイヴァをしばらく見つめた。
そして、興味をなくしたように視線を移すと、今度はエイヴァと一緒にいた大柄な女の方に顔を向ける。
「こんにちは、ゾフィラさん。貴女がエイヴァさんと親しかったとは知りませんでした」
「そりゃそうだろう。俺がコイツと会うのは2回目だからな。大して親しくもないし仲良くなりたいとも思わねぇよ」
「……では、お仕事という事でしょうか?」
「さあ? それは言えねぇな」
イリスの問いに否定もせずに返す大女。
それが肯定であると理解したイリスは顔色を悪くし、更にヒサナを庇う様な姿勢を見せる。
ゾフィラと呼んだ女性をエイヴァよりも警戒する彼女の姿に、ヒサナも緊張を強める。
身長190センチ近くあるゾフィラの存在感は凄まじく、憎きエイヴァより彼女の方に目が行ってしまう。
自分の本能が彼女から目を逸らすなと告げている様だった。
「貴女の仕事が私と関係のない事を願いますよ、ゾフィラさん」
「お前なら俺を返り討ちに出来るかも知れねぇぞ? イリス・ルー」
「そうかも知れません。ですが、出来るなら試す機会すら訪れないで欲しいです」
そう言って数秒間、視線をぶつけ合った2人は、どちらからともなく目を逸らす。
「──行きましょう、ヒサナ」
「……うん」
ヒサナ達が再び歩き始めてもゾフィラとエイヴァは何も言わず、道を譲った。
だが、すれ違う瞬間、イリスへ憎悪の目を向けるエイヴァの姿と、そして、同じ様に新しいオモチャを見る様なゾフィラの目がヒサナの不安を煽った。
★
ゾフィラ・エック。
欧州ランキング1位の選手だ。
非公式のエキシビションマッチも含めると通算の戦績は49勝3敗。
金の為ならどんな相手とでも闘う守銭奴であり、ついたあだ名が"傭兵"。後ろ暗い事も行なっているという噂もある人物だ。
リングの上で卑劣な行為をするエイヴァが"悪役"なら、リングの外で卑劣な行為をするゾフィラは純粋な"悪"だろう。
その実力は欧州どころか米国にさえ並ぶ者はいないと言われていた。
彼女の喫した3つの黒星も男性だったり、5連戦の5人目だったりと特殊な相手のみである。
これらの情報をイリスから聞いたヒサナは嫌な予感を抱かずにはいられなかった。
イリス曰く、
彼女達の目的が何であるか不明だが、自分達と無関係であると楽観視する事は出来なかった。
──そしてその不安は、イリスとエイヴァの試合が急遽決まった事で一層大きくなる。
エイヴァ側の希望で組まれる事となったこの試合。
実力でイリスに劣っている彼女が何も企んでいないとは思えなかった。
★
迎えた試合当日。
因縁の2人の対決であり、事前の顔合わせでも火花を散らし合っていた事から注目度の高くなったこの試合。
各種メディアの予想ではイリスの圧倒的な有利となっていた。
ヒサナも師の実力は十分理解しており、普通に考えれば負けるはずがないと考えている。
しかし、自分の中の不安が消える事はなかった。
予定より遅れて会場入りしたイリスは、心配するヒサナに「大丈夫ですよ」とだけ告げ、控え室を後にする。
その様子が普段と違う事に気付いたヒサナだったが、イリスも緊張しているのだろうと深くは考えなかった。
いつも通り控え室のTVから試合を観るヒサナ。
彼女の心配を他所に試合開始のゴングは鳴らされ、イリスとエイヴァは激突した。
数分後。
「……やっぱりおかしい」
ヒサナはTVを見てそう呟く。
試合は彼女の予想に反してエイヴァが押しているように見えた。
イリスは明らかに普段通りのパフォーマンスが出来ておらず、中途半端な攻撃をしてはカウンターを入れられるという展開が多くなっている。
スピードもなければ、力もなく、関節技を掛けても無理やり解かれてしまっていた。
誰の目から見ても明らかな不調に、観客も騒ついている。
これほど苦戦するイリスの姿をヒサナは初めて見た。
その不調の原因が何であるか分からず、出来る事もないヒサナはただ、イリスの勝利を願って見守る事しか出来なかった。
──そんな時だ。
「失礼するぜ。──ああ、良かった。ちゃんといるな、
突然、部屋のドアを開けて入って来た大女、ゾフィラ・エックはヒサナの姿を見つけてニヤリと笑った。
ヒサナがいるのはイリスの選手控え室だ。
彼女の関係者以外の立ち入りは禁止されている。
だが、目の前の女性はそんな事など気にした様子もなかった。
まるで自分の部屋だと言わんばかりに堂々と入室して来た彼女は、唖然としているヒサナの隣に座るとその肩に手を置いた。
それだけでヒサナの身体の動きのほとんどが封じられ、逃げ出す事も出来なくなる。
技術以前の圧倒的な腕力。
この化け物が自分と同じ競技の選手である事がヒサナには信じられなかった。
「なんだ。エイヴァの奴、まだ勝負を決めれてねぇのかよ。満身創痍の相手にこのザマじゃ直ぐに下の奴らに追い越されるだろうな。お前もそう思わねぇか?」
ゾフィラはTVに目をやり、つまらなさそうに呟く。
ランキング6位の選手をそんな風に言えるのは彼女くらいのものだろう。
ヒサナはゾフィラに対する恐怖を感じながらも、今のセリフに聞き流せない言葉があり、思わず聞き返した。
「……満身創痍って、イリスの事?」
彼女の不調の理由はそれなのか。
どうしてそれを貴女が知っているのか。
そんな疑問がヒサナの中に生まれる。
「ああ、そうだ。さっき俺がボコったからな。手加減したんだが、もしかしたら何処かしらの骨にヒビがいってるかもな」
「……なっ、う、嘘」
「残念ながら本当だぜ。エイヴァの奴に依頼されてな。家を出たところを襲ったんだ。まあまあ強かったぜ、お前の師匠はよ」
「そんな……」
そう言ってゾフィラはTVに映るイリスに視線を向ける。
ヒサナはゾフィラが言っている事が本当だと直感的に理解した。
彼女とエイヴァならそれをやりかねない悪どさと、出来てしまえる実力がある気がしたのだ。
目の前の大女は、あのイリスを負傷させ、自身は何のダメージもなくこの場にやって来たのだろう。
「……何の為に」
「ん? エイヴァが依頼した理由か? そりゃ勝つ為だろうぜ。アイツは弱い癖にプライドが高ぇからな。1年前に負けてからずっと計画してたみたいだぞ」
「……恥知らず」
「同感だな。だが、お前は師匠の心配をした方がいいぜ。エイヴァの奴、相当恨んでたみたいだしな。俺にも細かく注文してきたくらいだ。──これ見るか?」
ゾフィラはスマホを操作して動画ファイルを開くと、ヒサナに見せ付ける。
「──ッ!」
そこには地面に倒れるイリスの姿が映っていた。
身に付けていたワンピースや下着は側に散らばり、全裸を晒した彼女は身体中に痛々しいアザを作っている。
浅い呼吸を繰り返しながら、侮蔑するような目を撮影者に向けているが、もはや抵抗する体力もないのだろう。
そんなイリスに近付いた撮影者は、足を上げ、彼女の剥き出しの女性器を踏み付けた。
「ッッ──」
直視出来ずに目を逸らしたヒサナの耳に、尊敬する師の悲鳴が聞こえた。
それで動画は終わったらしく、静かになる。
「これで信じたろ。最低限試合出来るくらいには抑えてやったんだが、あの状態でエイヴァの奴を手こずらせるんだから大したもんだ。────それも限界みたいだがな」
ゾフィラの声に釣られてTVを見ると、そこにはエイヴァの蹴りを喰らってリングに倒れるイリスの姿があった。
まさかの展開に会場が騒然としていたが、混乱しているヒサナにはどこか遠く聞こえた。
しかし、そんな彼女の様子などお構いなしに、ゾフィラはその手を動かし始める。
「──ッ!」
「ちなみに俺が受けた依頼の対象にはお前も含まれてんだぜ? 人形。最近調子に乗ってるからイジメてやれってよ。まあ、具体的な指示はねぇから軽く辱めるだけにしてやるよ」
そう言うとゾフィラはヒサナのスカートとその中のショーツを脱がし始めた。
そして彼女の下半身を露出させると、女性器を直接弄り始める。
「……ゃ、やめて」
恐怖に飲まれたヒサナはそう口にするのが限界だった。
しかし、当然それでゾフィラが止める訳がなく幼い割れ目を上から下へとなぞり続ける。
ヒサナには、日本の女王だという自負だとか、師の窮地をどうにかしようという思いだとか、そんなものは一切なく、ただ生物的な絶対強者を前に無力な小動物の如く震える事しか出来なかった。
「脚を広げろ」
ゾフィラがそう命令すれば即座に脚を大きく開き、ガニ股に近い体勢で彼女の指を受け入れる。
「胸を見せろ」
そう言われれば、服をブラジャーごと捲り上げて小さな乳房を差し出した。
一瞬でも躊躇して目の前の化け物の不況を買うのが恐ろしかったのだ。
ゾフィラはヒサナの陰核の皮を剥いて露出させると、それを指先で弄り始める。
それが気に入ったのかその体勢のまま再びTVに視線を映した。
★
イリスは疲労とダメージでまともに動かなくなった身体をエイヴァに弄ばれていた。
寝技に見せかけた状態で、レフェリーの死角からズボンの中に指を入れたエイヴァはイリスの女性器を執拗に愛撫する。
手慣れた彼女の指遣いは悔しいくらい気持ちが良くて、イリスは恥ずかしい場所を少しずつ解かされていった。
先程から指を挿入される度に聞こえる水音は間違いなくエイヴァにも聞こえているだろう。
それが悔しくて情けなくておかしくなりそうだった。
「……いつまでこれを続けるつもりですか?」
「なぁに? 早くイかせて欲しいのかしら?」
「御遊びに付き合うつもりはないと言っているんです」
「そうなの? オマンコはこんなに大喜びだからもっとして欲しいのかと思ったわ」
そう言ってエイヴァは愛液で濡れた指をイリスに見せ付ける。
しかし、それを無視されると再びズボンの中に指を入れ、今度は別の場所を触り始めた。
「────ッ」
「クリトリス、すごい勃起してるわよ。まるでオチンチンみたい」
エイヴァは固く尖った陰核を摘むと、上下に擦り上げる。
それによって、ただでさえ膨らんでいたクリトリスは、更に大きくなり、ツンと上を向いて勃ち上がった。
自然と包皮も捲れ、敏感な部分を晒したそれをエイヴァは嬉々としてシゴく。
その刺激にイリスも堪らず嬌声を漏らしてしまっていた。
イリスはその後、ズボンを脱がされ、下半身を晒されてしまう。
観客は彼女の濡れそぼった女性器と、勃起したクリトリスを見て歓声を上げた。
エイヴァはイリスの脚を掴んで限界まで開かせると、観客に見せつける様に陰核をシゴき始める。
力なく身体を投げ出したイリスは、顔を背けてその恥辱に耐えるしかなかった。
★
ヒサナは今日3回目となる潮吹きをさせられ、身体を跳ねさせていた。
ゾフィラの指を飲み込む彼女の割れ目はヒクヒクと震え、その快感を相手に伝えている様だった。
しかし、その本人の顔は涙に濡れており、「……許して」と何度も繰り返している。
大き過ぎる快感。
望まない絶頂。
蓄積する疲労。
それらが齎らす恐怖はヒサナの心をへし折ってしまった。
他の人が見れば、格闘家がイクのが怖くて涙を流すなど情けないと思うかも知れないが、彼女はまだ15歳の少女なのだ。
身体の反応を支配される恐ろしさに未熟な精神が耐えられなかった。
ゾフィラはそれでも手を緩めず、更に二度絶頂を強要する。
最後は号泣しながら失禁したヒサナの姿を動画に収めると、彼女は満足気に笑うのだった。
「さて、向こうも終わりだな」
ゾフィラがTVに目を向けると、そこには正に今、潮吹きをしているイリスの姿が映っていた。
両手で顔を押さえ、嗚咽を漏らす彼女はエイヴァの指で陰核を潰され、下半身を跳ねさせている。
そして、それが収まった頃、チョロチョロと金色の液体を漏らし始めたのだった。
★
「はぁい。それじゃ笑いなさい。綺麗に撮ってあげるから」
試合後、控え室で合流したイリスとヒサナは、エイヴァに命じられるまま、ポーズを取って壁際に並んでいた。
服は一切身に付けておらず裸体を晒した2人は、脚をガニ股に開き、両手の指で自らの女性器を左右に広げている。
そのまま腰を突き出すという屈辱的なポーズを強要された彼女達だが、エイヴァの背後に控えるゾフィラへの恐怖から逆らう事が出来ず、言われた通りにしていた。
そのまま引き攣った笑顔を浮かべた所を写真に撮られた2人は、遂に我慢できなくなりその場に崩れ落ちて涙を流し始めた。
「この写真をばら撒かれたくなかったら、二度と舐めた口を利かない事ね」
エイヴァはそう言うと部屋を出て行くのだった。
結局いつものこのポーズ