紫羽のとの情事の後、特に道中何も起きずに帰宅した直刃は全員に「僕の部屋に来ないで」と断りを入れると、そのまま自室に引きこもった。
ベッドに伏せて、呻く。まぶたの裏には死んだはずの兄の顔と、削れていく紫羽の顔が焼き付いていた。
状況はあまり変わっていない。
けれど今日の出来事は悪魔に襲われたの一言では括れないほど大きなものだった。
『死神の王を辞めても構わない』
紫羽から告げられた選択肢は、直刃が今まで見ないふりをしてきたモノだ。配下のみんなを見捨てる選択肢だ。
紫羽は言った。自分であれば初代死神から直刃を隠し続けられると。
証を捨て、配下を捨て、紫羽と共にひっそりと何処かで暮らす。今の直刃の心境では、悪い選択肢には思えなかった。氷室達が付いて来ることを望むなら、紫羽はそれすらも問題ないと言った。
無論、死神の王が空席になる。次の王が決まり、直刃はすぐに彼女達に魔力供給が出来なくなるだろう。あくまで直刃の精子で魔力を補充できるのは証の力である。
そして死神達は悪魔を狩ることが出来なくなる。死神である以上悪魔を狩り続けることは義務であり、それが行わなければ『神』なる者の手によってやがて殺されるそうだ。
もって五年ほど。それが紫羽の示した答えだった。
五年。その間何者にも阻まれず、直刃は紫羽や、付いてきてくれる配下の死神と幸せに暮らすことができるのだ。
もしも初代死神の試練を達成できず殺されるような事になるくらいなら、本当に悪い選択ではないと思う。
でもその逃げは、直刃の考える幸福とはかけ離れる。別れの時間を早める選択肢だ。
「みんなと、ずっと一緒にいたいよ……」
それ以上は何も望まない。金も名声も地位も何もいらない。最低限の生活を彼女達と送れるだけで、それだけで直刃はどうしようもなく幸せなのだ。
悪魔を狩る目的が違う。人類の危機。依存しすぎ。
良いじゃないか別に。初代死神こそ死神と王の事を考えてなさすぎる。
自分達は種族は違えど人格を持った生命だ。命令をただ実行する機械じゃない。そもそも向こうは神様なんだからそんなマシーンは自分達で作ればいいのに、おかしな話だ。
「……」
いっそ叛逆してはどうだろう。証を手放さず、配下全員で姿をくらます。定期的には悪魔を狩る必要があるが、そこさえクリアすれば後はどうとでもなるだろう。
考えれば考えるほど、それが妥当な気がしてきた。人間はどうせ長くは生きられない。ならばその僅かな時間ぐらいそっとしておいてくれ。そう思うのは自分だけだろうか。
「でも……いや、これはダメだ……」
数秒考えたがすぐに首を横に振る。
悪魔を狩らなければならないというのがマズイ。どんな選択を取っても常につきまとう問題だが、素人目でもどう見ても悪魔達は強くなっている。この先何が起きた際に、初代死神の手を借りずに悪魔を倒していけるかは難しいところだ。
先日の不定の悪魔や、今日の棘の花の件もある。迂闊に選べる選択肢ではない。
それに何より、初代死神が王の証を無効化出来ないとも思えない。相手は仮にも神を名乗る人物だ、それくらいのルール違反は持っているかもしれない。
やはり紫羽の案か。もしくは素直に初代死神の試練を突破するか。
どちらにしても直刃の目的である、「ずっとみんなと一緒に」は叶いそうにない。ならばより長く生きていける方を選択したいが、さてそれはどちらなのか。
本当に、どちらが直刃にとって正解なのか。
「失礼しますわ、マスター……」
「……氷室さん?」
聞き慣れた声がドアの外から聞こえて、直刃は驚いた。
部屋には来ないでくれと告げたはずだ。それでも無視して来そうなアリアや朱雀ならともかく、氷室が来るのは予想外だ。
嫌な予感がした。
「あの、入ってもよろしいでしょうか……?」
「何か、あったんだね。入って」
「はい――マスター、雷歌が家を出ました。もうここには戻らないそうです」
彼女が部屋の中に足を踏み入れたと同時に、その報告が耳に入る。
直刃はもうどうしていいのかわからず、うなだれた。
ーーーーーーー
「ここが……?」
そびえ立つマンションは一目で高級マンションだと判断できる外観だった。エントランスから溢れる気品とも言うべきか、砕けて表現するならセレブ感。壁や床に使われている漆黒の石材がいかにもな高級感を醸し出していて、一人でいる時ならば決して入ろうとは思わない雰囲気である。
直刃は怯みながらも自信を鼓舞するように頷くと、自動ドアの中に足を踏み入れた。涼しいというより肌寒いといったレベルの冷気を受けながら、緊張の面持ちで先へと進む。
そしてすぐにその足は止まった。
「あれ、この自動ドア開かない……?」
エントランス内に設けられたもう一つの入り口。てっきり入り口と同じただの自動ドアだと勘違いしていたが、そのガラスの壁はピクリとも動かない。直刃は近づいたり離れたりを数回繰り返し、やがて近くに置いてある無機質なコンソールに目がいった。
どっと冷や汗が噴き出た。鍵が掛かっているのは覚悟していたが、まさかこんなところに鍵があるとは庶民の直刃には思ってもみなかったのだ。
これでは雷歌と話すことさえままならない。直刃は自分の考えの甘さを自覚し、愕然とした。
「……ど、どうしよう」
情けなくて涙も出ない。
直刃が住んでいる高級マンションは、こんなものはない。言うなれば直刃が一切の不便を感じないようにカスタムされたマンションであり、例外とも呼べるものである。一般のマンションがこういったセキュリティを設置してあるのは当たり前であり、直刃もそれは知っていた。
ただ、頭から抜けていたとしか言いようがなかった。間抜けにも程がある。
雷歌を連れ戻しに来たのにもかかわらずこの結果とは、自分自身が嫌になってくる。
「はぁ……」
ため息と共に後ろに下がると、直刃は諦めてエントランスから出ようとした。一旦出直すつもりだった。
「――今日も暑そうね」
だが、もう無理だと諦めかけたその時、透き通る様な美しさの美声が耳に飛び込んで来た。
音の発生源に目を向けると、そこには一人の少女がいた。
年は直刃と同じくらいか少し上、黒いドレスを身に纏い、優雅な立ち振る舞いでエントランスを歩いている。
その側には従者のようなスーツ姿の男。背丈はあまりないが、特徴的な白い長髪が只者ではない空気を醸し出していた。
そんな二人がエントランスを突っ切り外に出て行った。今の女の子綺麗だったなと思わなくもないが、それより重要な事が直刃の目の前で起きた。
ドアが開いた。それは今しがたの彼女達の記憶が吹き飛ぶくらいの衝撃だった。
考えてみれば誰か出るときに開くのは当然なのだが、直刃はそれどころではなかった。
自動ドアが完全に閉まる前に、直刃は小さな体躯をねじ込んで内側に侵入する。不法侵入だなんだと思ったが、このマンションには雷歌がいるのだ。問題はないだろう。
「よし、じゃあ行くか――」
氷室の情報によると雷歌はこのマンションの四階に住んでいるらしい。
出鼻を挫かれ早くも諦め気味だった直刃は気を取り直すと、エレベーターのボタンを押した。どうやら先ほどの少女が使ったためかすぐにエレベーターの扉は開いた。
途端に色んな香水が混ざった悪趣味な臭いが鼻につく。セレブ達はこんなものを撒き散らしながら過ごして何が自慢なのだろう。
顔を顰めながらも四階のボタンを押して直刃はじっと待った。市民と金持ちのギャップについては埋まらない溝がある事を十分に理解しているし、そもそもここにはこのギャップを味わいに来たのではない。
目的はただ一つ、雷歌を連れ帰る事。そのためにここに来た。
「……ん?」
さて一体どう言いくるめて連れて帰ろうと思考していると、エレベーターが四階に到達するかしないかといったタイミングで、がたんとエレベーターが揺れた。
すわ地震か。
直刃は体を硬くした。
建物ごと震えるような振動が、エレベーターにまで伝わってくる。
まさか止まったりはしないだろうな。そんな考えは杞憂に終わり、無事に四階にたどり着く。
「……!」
気持ち焦って廊下に出ると、一際大きな揺れがマンションを襲った。とても立っていられるモノではなく、直刃は吹き飛ばされるように壁に激突する。
地震じゃない。
これは異常だ。直感がしきりに何かを訴えかける。
「雷歌……!」
配下の死神が危険だ。
言葉では説明できない感覚が直刃を急かす。
腰を落として揺れに耐えながら、感覚だけを頼りに雷歌の部屋を探す。部屋の場所なんて分からないが、いちいち確認している時間さえ惜しかった。
真四角の形をした廊下を走り抜ける。四つの角を何度も曲がり、視線を左右に走らせて異常を探すが、どの扉も閉まっていてとても雷歌を見つけるなどとは言っていられない。
諦めるつもりはないが、しかしどうすれば。不安に頭が占領される。
「――!」
食器が割れる様な音が、すぐ近くの扉から響いた。確証はないが直刃は一も二もなくドアノブに手をかける。もはや雷歌の事しか頭になかった。
扉はあっさりと開いた。
そして、素人にも分かる魔力の塊が、圧力が、直刃の体に叩き付けられた。肺から無理やり酸素が吐き出される。
「げほっ、げほ……ぐ、ぅぅっ……!!」
強い揺れと強大な魔力の影響で、直刃はフラフラと膝をついてしまう。締め付けるような空気が満足に体を動かす事を許さない。
それでも何とか力を振り絞って、直刃は玄関から重い足取りでリビングに向かう。
不安は見事に的中していた。
「な、何をして……!!!!」
リビングには簡素なテーブルと椅子、加えて二人の死神の姿があった。
全裸で全身からおびただしい量の血を流す雷歌と、それを見守る初代死神だ。
雷歌はまるで処刑されるかのように空中に張り付けにされていた。色気も何もあったものではない残酷な姿で、ただ死を待つかのように宙吊りにされていた。
それを無表情で見守るのは初代死神。彼女は腕を組み、爛々と輝くモヤのようなモノを体から立ちのぼらせて雷歌を見殺しにしようとしていた。
「雷歌!!!」
駆け寄って雷歌を助けようとするが浮いたままの彼女はビクともしない。直刃は言葉にならない悲鳴をあげて雷歌の両足を抱きしめる。
「――神の決定じゃ。これより此奴の今世を終わらせる、離れよ」
「な、何言ってるの!? ダメだよ、ダメ……!!!」
「……分からん小僧じゃのう。神が、殺すと、そう宣言しておろう。良い悪いではない、定まったのだ」
冷たい目で初代死神は直刃を睨んだ。心臓を鷲掴みにされたような、恐怖を感じる瞳で。
「ど、どうして……?」
すっかりへたれこんで、直刃は蚊の鳴くような声で問うた。
初代死神は鼻で笑う。
「はぐれというものはな、主に出会えなかったという言い訳が通る。無論、王と死神は魔力的な契約であり、主人と配下という関係上そんな事はあり得ないが、しかし神はそれをお許しになる」
――だが、一度配下になったものは違う。
「王からの離反は、死神のそのものの否定を意味する。王に仕え、
「存在、理由……」
「それに背くというなら、処罰するしかあるまい。残念ながら此奴とはお別れじゃ、金の王よ」
メキメキと雷歌の体が軋む。俯く彼女からの言葉は一切ない。これが別れの言葉の代わりだと言わんばかりだ。
――そんな馬鹿なことって、あって良いわけない。
「……初代死神、雷歌を助けてください」
「ならん」
「ッ……」
にべもない。跳ね返すような拒絶の意思に直刃は奥歯を噛みしめる。
「お願い、します……!」
懇願するように頭を下げる。幼女の足元に土下座をする。
何でもするから。お願いだから。彼女を助けてくれ。
恥も外聞もかなぐり捨てた直刃の姿を見て、そこで初めて初代死神の声に感情が表れた。
罠にかかったと喜ぶ無邪気な喜びが。
「――そうじゃのう。そこまで助けたいのなら、わしも鬼ではない。取引じゃ」
直刃は奥歯を噛み締めた。今はっきりとわかる、自分は初代死神にのせられた。それも相手のほとんど理想の形で。
それが悔しくてたまらなかった。けれど力のない直刃では雷歌を助けるにはこうするしかないのだ。
大きく息を吐いて呼吸を整える。
「……要求は、なんですか」
頭を上げ、次の言葉を待つ。
初代死神は嬉々として口を開いた。
「まずは……王の証をよこせ」
「えっ、でも、あれが無いと……」
魔力供給が出来ないじゃないですか。
そう続けようとすると、ギラと睨まれ口を開かせてもらえなかった。
「そして、もう一つ。此奴を二度と反逆しない様に徹底的に調教し、意思を奪え。お前の思い通りに動くよう、一から躾けろ。手段は問わん」
「……な、何を、言ってるんですか」
「期日は設けない――が、お主がいなければさぞ困る死神どもは多そうだな? 迅速に事を為さねばやがてくたばる奴も出てくるじゃろうよ」
「……」
もはや言葉も出せなかった。こんな事ってあんまりだ。彼女は僕たちをなんだと思ってるんだ。
「――ああ、それと忘れてはおらんだろうがお主には試験を受けてもらう。雷歌の後はお主じゃ、逃げるでないぞ?」
ニタニタと笑う初代死神に直刃は涙を浮かべながら、王の証を差し出した。
ーーーーーーー
初代死神が出て行った後、裸の雷歌をベッドに横たえると、直刃は部屋を見回し大きなため息を吐いた。
高級マンション故か凄まじい広さのリビング。そのリビングには本当に女の子の部屋かと思うほど何もない。
あるのはテーブルと椅子が一つずつ。それと、少し離れた所にこのベッドだけだ。
この家はリビングを含め四部屋あるが、ここ以外は人が住んでいた形跡は皆無で、家具の類は何一つ置いていなかった。
キッチンにあるのも、冷蔵庫と最低限の調理器具のみ。電子レンジすらない。
ここが雷歌の家。直刃は内心疑問でいっぱいだったが、それよりも状況を整理するのが先だった。
「……はぁ」
一つしかない椅子に座ると、またため息を吐いてテーブルに突っ伏した。
これから直刃は雷歌と二人でこの家で過ごす。他の死神とは会えない。初代死神が許さないそうだ。
雷歌を見事死神として使えるレベルまで持ち直せれば、休む間も無く今度は直刃が試験を受ける。死ぬかもしれない試験を。
「ちくしょう……」
じわりと涙が浮かぶ。
過度なストレス。直刃はテーブルの脚を蹴飛ばしながら何度もちくしょうと呟いた。
どうして自分だけこんな目に。理不尽、不公平、不条理だ。世界を呪う気持ちは溢れて止まらない。
何か悪い事をしたのだろうか。僕は何か大罪を犯したのだろうか。
どうして、どうして、どうして。
『どうしてって、それは一番お前がよく分かっているだろう?』
「……兄、さん」
頭から離れない、兄の不気味な笑顔。キシキシと怒りを押し殺した不気味な笑い声。
これが罰だとでも言うのだろうか。それならあまりにも――
「酷すぎるよ、兄さん……」
こんな事なら、死神達と出会わない方がマシだった。この世に未練なんてこれっぽっちもなかったんだ、あの時に氷室と朱雀に出会わなければ。
こんな絶望的な状態にはならなかった。だって二人に出会うまでは、既に絶望的だったから。
そう、絶望的だったのだ。
なのに希望が現れた。死神達が、皆が、直刃に懸命に尽くし、そして愛をくれた。
希望を味わってしまった。
「ちくしょう……」
漏れた言葉は誰にも届かず、一人の少年は涙で視界を歪ませた。
「直刃様……」
いつ目を覚ましたのか、雷歌がテーブルのそばに立っていた。
彼女はそっと直刃の手に重ねると、静かに口を開いた。
「逃げてください、直刃様。試練なんて受けちゃダメです。私の事はいいから……」
諭すような口調。彼女なりに直刃の身を案じ、そして最大限にマスターを思っての言葉。
分かっている。分かっているが、それでも怒りしかなかった。
どこにもぶつけられない、もどかしくて、最悪の、怒り。
ついぞ、愛する家族に隠す事は出来なかった。
「……僕は雷歌を助けにきたんだ」
呟くというよりは、いっそ責めるような言い方だった。
直刃は顔を上げると、雷歌を見つめる。感情を込めた視線に彼女は怯んだように顔を背け、唇を噛んだ。
すぐに自分の失敗に気がついた。違う、こんな事を言いにきたんじゃない。
彼女に笑って欲しくて、彼女に帰ってきて欲しくて。だからここに来たのに。
これじゃあ何をしに来たのかわからない。初代死神の罠にハマって、逃げられない檻に閉じ込められに来たような。
それに証が奪われてしまっては、もう打つ手はない。逃げるという選択肢自体は無意味になってしまった。
本当に、何もかもうまくいかない。
「……」
「……」
気まずい空気。直刃はだんだんと思考が億劫になって来て、すっかり苛立ちを隠そうともしなかった。
対して雷歌は、まるでこの世の地獄のような顔をして、ただ黙って俯いていた。
無音。心がざわつく、なんとも心地の悪い無音。針のむしろに落とされた方がまだマシな空気の中、先に動いたのは雷歌だった。
「直刃様」
硬い声音の雷歌に思わず目線を向けると、彼女は自分の大きな乳房を片手で弄びながら、くちゅりと空いた手で股ぐらに指を差し込んでいた。
そして誘うように足をガニ股にすると、早く犯せと言わんばかりのゆっくりと腰振りを始める。
揺れる女体。乳房や尻が静かにバウンドする。肉付きの良い肉体が、ただ直刃のために踊っていた。
「私には、こうする事しかできません……」
「……」
「あなたの悩みを解決することも、あなたの脅威を討ち果たすことも……私のちっぽけな力では出来ません」
「……雷歌」
雷歌は泣いていた。目から涙を流し、そして恐らく、彼女の心も泣いていた。
「ですが受け止める事は出来る。直刃様の怒りを、この体で受け止める事は出来る……」
――どうか犯して。乱暴に、不器用に、力任せに、怒りのままに。
「直刃様の怒りが収まるまで、私はあなたの肉便器になる。それしか私に出来る事はありませんから……」
「……」
言葉を失った。
そんな悲しい事を言わないでと、痛いほど叫びたかった。いや、以前までは直刃なら、すぐにその言葉を否定しただろう。
今だって否定してあげたい。そんな事はない。君は大切な家族だと抱きしめてあげたかった。
ただ、何故だろうか。この瞬間に限って、直刃は彼女を犯したくて仕方なかった。
どうしようもないこの感情のはけ口を、彼女へと定めてしまった。
嗚呼、分かっている。こんな事をすれば自分はひどく後悔するだろう。それこそ死ぬほど後悔するに決まってる。
けれど何故だろう。今の直刃は感情を優先せざるを得なかった。
もう何もかも、どうでもよくなったのかもしれない。
例えこれで地獄に堕ちるとしても、人として何か大切なモノを失うとしても、心底どうでも良かった。
「……雷歌」
「……はい」
直刃は股間を膨らませながら立ち上がると、雷歌の目の前まで近寄った。
国民的アイドルの端正な顔立ち、タプンと良い形の巨乳、何度も腰を打ち付けた柔尻。
「……ぅぅ」
――ごめん、雷歌。
「ぅ、うわあああああああああっっっっ!!!!」
気がつくと直刃は雷歌を押し倒していた。涙を流し、感情のまま、性欲のまま、女体を貪る。
どうして放っておいてくれないのだろう。自分はもう十分失った。ただ氷室や朱雀達とともに居たいだけ、それ以上は何も望んでいないのに。
どうして自分だけこんな不幸なんだろう。
直刃は泣きながら雷歌を犯した。
何度も何度も、狂ったように肉棒を突き刺し、彼女の腹が裂けるほどの欲望を吐き出した。
それを止める者は、誰もいなかった。