エピソード0「僕がこのセックス旅行を始めた経緯」
“OH, MY GOD!! YES! YEEES!!”
僕の上で、とんでもなく美人の白人女性が腰を振っている。
艶やかな金髪と、凶悪なくらいの爆乳をゆさゆさと揺らして、一心不乱にアクメ顔を晒している。
“YES!! FUCK! FUUUUUCK!!”
どう見ても大人の女性が、僕にペニスを挿入されて甘えた嬌声を上げている。
白人女性だけあって背は高く、バストのサイズは規格外だ。にもかかわらず腰はとんでもなく細く、尋常ではないスタイルの良さを象徴している。お尻もめちゃめちゃ柔らかい。
僕は彼女の名前を知らない。
どこから来て、どんな仕事をしているのかも。
ほとんど皆無に近い英語力でかろうじて聞き取れるのは、オーマイゴットという神に叫ぶ言葉と、ファックという「犯す」を意味する単語くらいだ。
意思疎通もまともにできない。
でも僕らは裸で抱き合って、セックスをしていた。
ゴムを着けていないので、彼女の膣の感触が直接伝わってくる。
激しく腰を振りながら、彼女は僕の顔を自らの乳房に埋めさせた。
HカップとかIカップはありそうなバストに、僕の呼吸は遮られる。なんて柔らかいんだろう。こんなに張りがある爆乳なのに、マシュマロのように柔らかいなんて反則だ。
“AHH!”
それでも頑張って彼女のピンク色の乳首を咥えると、彼女は一際大きな嬌声を上げて、腰を振るペースを早くした。
彼女の奥がきゅっと締まるのがわかる。
肉棒が膣圧に咥えられ、今日何度目かの射精の気配が込み上げる。
“OH, I'M COMING!!!”
絶頂を迎えそうなのか、彼女が物凄いペースで腰を振る。膣壁の襞にカリ首を持って行かれそうだ。
脱毛したのか毛の一切生えていない女性器が、一心不乱に僕のペニスを咥えて離さない。びしょ濡れになった外国人ヴァギナが、卑猥な生き物のように収斂して僕の精子を渇望する。
“COMING!! COMING!!!!”
端正な顔がアクメに歪む。
爆乳を押し付け、僕に強く抱きついて来た彼女は、間違いなく昇天していた。
繰り返される膣の締め付けに促されて、僕もゆっくりと腰を振りながら、彼女の子宮に精液をぶちまけた。
子宮の奥に精液のシャワーが当たると、彼女の体が小さく跳ねた。
僕らは騎乗位で挿入したまま激しく抱き合い、どちらともなく舌と唾液を絡める。
どうして僕がこんな白人美女とセックスをしているのか説明するためには、三日前まで遡らなければならない。
それは僕が、日本を出発する前日のことだった。
◆ ◇ ◆
「それで、記念すべき百人目の女の子は誰だったんだ?」
近所のハンバーガーショップで遅い晩飯を食べながら、僕は友人の
拓真とは小学校二年からの付き合いで、今も同じ大学に通っている。要するに腐れ縁である。
「社会システムゼミの
「うわ、それまたレベルの高いとこ選んだな。文学部四マドンナの一人じゃん」
演習で同じになった瑛里華ちゃんは、ゆるふわヘアーと小柄な身体が特徴的な美少女だった。
誰に対しても人当たりが良いの女の子で、文学部四マドンナ――要するに文学部でトップ四に入る美少女だった。
(え、マジ無理なんだけど)
あの時の瑛里華ちゃんの顔が忘れられない。
普段は誰にでも笑顔を向ける彼女が、まるで性犯罪者にでも出くわしたような青ざめた顔で、全速力で逃げて行った。
「そりゃまた辛辣だな。何て言って告白したんだよ」
「好きです。セックスを前提に付き合って下さいって」
「そりゃ逃げられるわ!」
いつものように拓真は呆れていた。彼曰く、僕は行動がストレート過ぎるらしい。
「物には段階ってものがあるだろ。まずはライン交換。それから多人数での交流。その先に二人きりでの交流があって、告白はその後じゃないか」
その手の経験に慣れている拓真は、そこそこのイケメンで、彼女もいる。二十一年彼女のいない僕とは大違いだ。
「前のときもそうだっただろ。あのときは誰だっけ……たしかミスコンで優勝した――」
「
「そう。その西園さんにも初対面でいきなり告白して振られただろ。なんで同じことを繰り返すんだよ」
去年の大学ミスコンで優勝した西園楓さんは、校内でも一二を争うクールビューティだ。
僕からの告白を受けた彼女は開口一番「鏡見て言ってる?」という辛辣な言葉を残して去って行った。
「俺が女の子にライン聞いて、交換してもらえると思うか?」
僕は拓真のような垢抜けたイケメンでもないし、これといった取り柄もない。
大学三年にして未だ童貞で、生まれついた巨躯ゆえ柔道部員に間違われるが、運動もできない。
そんな男がセックスをしたいと思ったら、彼女を作るよりセフレを探す方が手取り早いと思ったのだ。
そのセフレすら、一度も作れたことはないけれど。
「そんなの、やってみなけりゃわからないじゃないか。『101回目のプロポーズ』なんていう有難い格言もある」
「それ格言じゃないだろ」
僕がこうして振られたとき、拓真は彼女との約束よりも優先して僕を慰めてくれる。
嫌味でもなんでもなく、こんな気遣いをされたら女の子の気持ちは傾くだろうなと思った。
「とにかく、妙なこと考えるなよ。お前の良さをわかってくれる女の子はいつかきっと出てくるから」
「妙なこと?」
拓真は打って変わって真剣な口調で言った。
こんな顔つきをするのは、高校サッカー部で全国大会を掛けたトーナメントの決勝以来だ。
ちなみにそのとき僕はサッカー部マネージャーの女の子に恋をしていて、その子は拓真に恋をしていた。“百人斬られ”のうちの一人だ。
「自殺とか、失踪とか……」
物騒な単語に言葉を濁す。
どうやら拓真は、自暴自棄になった僕が自殺すると思ったらしい。
確かに百人目に振られた今日はある意味で記念すべき日だが、そこまで追い詰められるほど絶望はしていない。僕がモテないのは生まれつきだ。
「そんなことするわけないじゃないか」
僕がその旨を伝えると、拓真は心の底から安堵したように脱力していた。
本当に、僕は素晴らしい友人を持ったものだとつくづく思う。
「ただ、せっかくなんで旅行に行くことにしたんだ」
「え?」
テーブルの上に、僕は一枚の航空券を置いた。
アメリカ・ロサンゼルス行き。
片道切符だ。
「知見を広げるために、世界を一周してくることにした。期間は夏休みが終わるまでの二ヶ月間」
資金は居酒屋のバイトで稼いだ貯金がある。デートに行くような彼女もいないので、その額は大学生の貯金とは思えないほど膨れ上がった。
ちなみにその居酒屋の同僚に告白したこともあるが、「寝言は寝て言え」と笑顔で一蹴された。
「世界一周とは……こりゃまた壮大な傷心旅行だな」
拓真は心底感心しているようだった。本当は拓真も誘いたかったが、これは傷心旅行だし、彼には恋人もいるので遠慮したのだ。
「それで、いつ出発するんだ?」
「明日の朝一。その日の夜にはアメリカだ」
正確には日付変更線を跨ぐので変わってくるかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。
世界の色んな街や文化を目にすれば、百人相手に振られたことなどどうでもよくなる気がする。
自分の悩みなど実にちっぽけだと、自覚するのがこの旅の狙いだ。
「そうか。じゃあ次に会うのは二ヶ月後だな……」
不意に、拓真が寂しそうな顔をするのがわかった。
人気者の拓真には彼女も友達もいるのに、なんだか罪悪感がこみ上げてしまう。
「そんな寂しそうな顔するなよ。お土産たくさん買ってくるから。アメリカのでかいハンバーガー買ってきてやるよ」
「二ヶ月もあったら腐れるだろ」
そんな風に笑いあって、僕らは夜通し語り合った。
小学校の頃の馬鹿話。
中学の酸っぱい思い出。
高校での苦労話。
これだけ思い出話を貯め込んだら、道中ホームシックになることもない。
そう思えるくらい。たくさんたくさん語り合ったのだった。
「向こうでは生水に気をつけろよ。大金持ち歩いちゃダメだからな」
結局、僕と夜通し語り合った拓真は、わざわざ空港まで見送りに来てくれた。
今生の別れでもないのに。
朝から彼女との約束もあると言っていたのに。
「なんだか母親みたいだな」
昔から、拓真は僕の友人でありながら、保護者のようなところもあった。
馬鹿で向こう見ずなところのある僕を放って置けないらしい。
「お前みたいなデカい息子を産んだ覚えはないよ」
そう言って、拓真は搭乗ゲートの前で手を振っていた。
こうやって帰りを待ってくれる人がいなければ、当て所のない世界一周になど出たりはしない。
親友の寂しそうな笑顔に後ろ髪を引かれながら、僕は機上の人となった。
今から二ヶ月後、再会した友人に、ありったけの土産話を聞かせるために――。
初日
【旅程】日本~アメリカ(ロサンゼルス)
【手段】飛行機
【所持金/手持ち】1,006,681円/203,114円
【支出】
空港までの電車賃 -1,219円
ロサンゼルス行き航空券(片道) -82,570円
空港の出発ロビーで買ったペットボトル飲料 -160円
【残金/手持ち】922,732円/119,165円