「ア、アイムハートブロークン」
そう告げると、アリシアさんは少し驚いた顔をしたが、やがていつものように優しい顔で、“You are O.K.”と微笑んだ。おそらく、女なんて世界中にたくさんいるから大丈夫という意味だろう。
この旅を始めて、旅の理由を聞かれることは幾度もあった。
僕は日本で百人もの女の子に振られ、その傷心を癒すためアメリカまでやってきた。
ハートブレイクという言葉に同情してくれる人もいれば、アマンダさんのように笑い飛ばす人もいた。反応は勿論三者三様だが、この国の人たちは心なしか寛容でいてくれる気がした。
普通、好きな人に振られたと言えば誰もが同情する。しかしそれが百人相手となると、日本だと「お前見境ないな」と呆れられるか、馬鹿にされるのがオチである。
しかしこの国では、百人相手に告白をしたガッツを褒めてくれる。それがお世辞やリップサービスであっても、少なからず馬鹿にされるよりは居心地が良く、それだけで僕はこの国に来たよかったと思うのだった。
“How about Carol?”
うちのキャロルなんてどう?
勿論冗談なのだろうが、その質問に僕は赤くなった。
昨日僕は、あろうことかキャロルに手コキを要求し、あまつさえ身体に精子までぶっかけてしまったのだ。
あれ以来、僕はキャロルとまともに口を聞いていない。怒っているというより、気まずくでまともに会話ができない感じだ。
どうしてあんなことをしてしまったのかと思うが、この国に来てからというもの、僕は自分の性欲を抑えられなくなっていた。
日本には多分、僕とセックスをしてくれる相手はいない。それはもう確信できる。百人にお願いしてもダメだったのだ。今更どう足掻いたところで無理だろう。
しかしこの国では、どういうわけかセックスができてしまった。
最初はただの美人局だったが、ゴミ捨て場で出会ったブロンド髪超絶美女に加え、リズやアマンダさんと、幸運にも僕は本格的なセックスをすることができた。
多分これは、価値観の違いだ。
この国の女性たちは、セックスに対するハードルが低い。
誰彼構わずというほどではないと思うが、それでも流れ者のアジア人である僕と行きずりのセックスを楽しめるくらいには、セックスについて寛容なのだ。
あれだけの巨乳美女たちが、僕に中出しまでさせてくれるなんて、まさに夢のような話だけど、事実として僕は彼女たちとセックスをしてしまった。
そして昨日はキャロルとも、それに準ずるような行為をしてしまったのだ。
無論、アリシアさんはそんなこと知る由もないだろう。知っていたとしたら間違いなく追い出されている。せっかく雇ってやった身元不明の日本人が、大切な一人娘に手コキをさせた挙句、ぶっかけまでしてしまったのだから。
「シ、シーイズトゥーキュート」
僕なんかと付き合うには、キャロルはあまりに可愛すぎる。リズもアマンダさんもそうだが、日本なら余裕で芸能人になれるクラスの容姿とスタイルを持っている。この国の女性の全員がそうではないけど、少なくとも上位クラスの容姿を持つ女性は、「日本の可愛い女の子」とは比較にならない。白人の女の子というだけで、やっぱり根本的に違っているのだ。
“You are so strong, too.”
あなただって逞しいじゃない?とアリシアさんは微笑んでくれる。昨日とは打って変わり、馬小屋でアリシアさんの手伝いをすることになった僕は、小屋の掃除や餌やりと、懸命に働いていた。
お金をもらうからには常に全力で、が僕のモットーではあるけど、昨日キャロルを穢してしまったことへの罪悪感が、今日の頑張りに拍車をかけていた。
この様子を見るに、やはりキャロルは昨日のことを言いつけていないのだろう。異性に手コキを要求され、ぶっかけまでされて思春期の女の子の反応は、「ママ! アイツは最低よ! 今すぐ追い出して!」か、泣き寝入りのどちらかだろう。
そしてキャロルは後者だった。
明朗快活で活発なところもあるが、心の中はお淑やかな女の子なのだ。昨日の出来事を話して自分の母親が傷つくことを恐れて、昨日のことを黙っているつもりなのだ。
僕をスタンレー農場に連れてきたのはアリシアさんだ。僕を信用して牛小屋でキャロルと二人きりにしてくれたのもアリシアさんで、そのことで娘が穢されたとなれば、当然アリシア本人も深く責任を感じてしまうだろう。
そんなキャロルの想いを汲み取って、僕にできることは、このまま黙って働き続けるしかない。
決してエロい気持ちにならず、二度と同じ過ちを繰り返さない。
そして貰える給料以上に働く。それぐらいしか、償いの方法が思い浮かばなかった。
“Hey, Jack! Return your house!”
突然アリシアさんが男性の名前を叫んだのでドキリとしたが、どうやらジャックというのはスタンレー農場で飼育している馬の名前のようだった。昨日アリシアさんと僕が騎乗して帰ってきたのもこの馬で、スタンレー農場にはジャックを含めて三頭の馬がいる。
アリシアさんが厳しい口調でジャックに命令しているので何事かと思ったが、どうやらジャックが一頭の牝馬に対して発情したらしかった。
ジャックは牝馬の後ろに覆いかぶさり、強引にのしかかろうとしている。ただでさえ大きな馬が半立ちになって牝馬に覆いかぶさっているのだ。それだけでもうかなりの迫力があった。馬との間には頑強な柵があるとはいえ、軽く命の危険を感じるほどには圧巻な光景だった。
そして何より圧巻だったのは、いつのまにか露出されていたジャックのペニスだ。
当然ながら、僕ら人間のものとは全然違う。毛色に合わせてドス黒い色をしているし、怒張したペニスはもう一本脚が生えたのかと思えるくらいの逞しさだった。
こんなものを挿入されたら、牝馬はさぞかし痛がるだろう。そんな呑気なことを考えているうちに、ジャックと牝馬は行為を始めてしまった。
圧巻に次ぐ圧巻。
人間のようなひ弱な動物とは違う。
体重が合わせて一トンあるもの同士の本物の交尾だ。
ジャックの巨大なペニスが、牝馬のそれに挿入され、ジャックは激しく腰を振っている。
人間のように断続的なピストンが続くわけではないが、数度訪れるそのピストンは、戦争映画でも見てるみたいな迫力だった。
“Oh well.”
アリシアさんは振り返り、仕方がないわねというような口調で苦笑した。
母娘二人でやっている農場だ。計画性もなしに家畜が増えると色々と問題なのだろう。アリシアさんもまた、季節外れの発情期にまいっているという感じだった。
しかしこの状況には問題があった。
アリシアさんは慣れているのだろう。農場で働いているのだから当然だ。動物の雄と雌が同じ空間にいれば生殖行為が始まるのは必然だし、人間とは違って彼らが人目を忍ばすに“おっぱじめる”のも当然だ。
しかしながら、僕はこんなシチュエーションには慣れていない。
今目の前で、二頭の動物が交尾をしている。言うなればセックスをしている。他人(他馬)の情事を見せつけられているのだ。
そして馬小屋という密室空間にいるのは、まだまだ性欲旺盛な男子大学生である僕と、十代の娘がいるとはいえ、まだまだ魅力満載なMILF、アリシアさんだ。
ウェーブを抱いたブロンドヘアーは、艶めかしいという言葉がぴったりだ。
白人女性らしく背が高く、シャツの下の二つの膨らみはど迫力だ。
ジーズンがはち切れんばかりのヒップはモデルのように位置が高く、形も良い。
もし、この人を犯せたら――。
何度そう願ったかわからない。こんなセクシーな女性とセックスするのは全世界の男の夢だ。
彼女が人妻であるのはわかっている。
左手の薬指に光る指輪がその証拠だ。旦那さんが亡くなった今も結婚指輪をつけているのは、彼女が亡き旦那さんを愛している証拠であり、彼女が旦那さんに操を立てている証である。
そんな欲望を抱くことすら不敬。
僕にはそう思えた。
どんなにアリシアさんが女性として魅力的でも、どんなに魅惑的な身体つきをしていても、抱いてはいけない欲望だ。
しかも僕は昨日キャロルに対して罪を犯したばかりなのに、それを心の底から反省しているはずなのに、
“Oh......"
結局僕は、また女性の前でテントを張ってしまっていた。
異性と二人きりの空間で、別の“カップル”がセックスをしているのだ。不可抗力と主張する権利だけは認めて欲しい。そして不幸なことに、僕のペニスは他人に勃起がバレやすい方だった。
要は無駄にサイズがデカいのだ。
この大きさのせいで周りに勃起がバレて、変態扱いされたことは数知れず。日本では使うことがなかったのも皮肉な話で、仲間うちでは「無冠の帝王」だの「ウドの大木」だの茶化されるのが定番だった。
でもこの状況はまずい。
アリシアさんはキャロルみたいに、気付かない振りをしてくれることもない。がっつり股間を凝視していて、もはや言い逃れできない状況だ。
キャロルと気まずくなった上、アリシアさんとも気まずくなったら、僕はもうスタンレー農場には居られない。
十日間働いてくれと言われたときは戸惑ったが、よく考えたら英語もロクにできない旅行者を雇ってくれる場所はそうそうない。この場所でのアルバイトを逃したら、次はいつ働けるかわからないのだ。
「ソ、ソーリー。ごめんなさい」
ここはもう素直に謝るしかなかった。途中で日本語になったのはテンパったからだ。それだけ僕は焦っていた。
ここは事態を丸く収める以外ない。キャロルのときみたいに暴走したら、今度こそ逮捕されるかもしれない。
“Don't worry. It's unavoidable.”
多少戸惑ってこそいるが、アリシアさんは冷静だった。反応としては、息子のオナニーを目撃してしまった母親だった。男の子だから仕方がない。そんな感じの対応だ。
話はそれで終わるはずだった。
アリシアさんが話を終わらせ、僕らはまた仕事に戻る。事勿れ主義は大人だから出来ることだ。ティーンエイジャーには難しい。
するとアリシアさんは、僕には聞き取れない英語で何かを呟いた。
単語の意味はわからないが、ニュアンス的には同情に近い気がする。
しかし次の瞬間、僕は完全に頭が真っ白になっていた。
あのアリシアさんが、僕の股間を擦り始めたからだ。
「ア、アリシアさん……?」
突然の出来事で、状況がまったく理解できない。
どうしてアリシアさんが僕の股間を擦っているのだろう。
彼女には旦那さんだっているのに。
そもそもこの話は、僕が謝ったことで終息したはずなのに。
これがアマンダさんのような女性なら、冗談半分でやっているのは理解できる。結果として彼女とは数時間に渡ってセックスしてしまったが、きっかけが「日本のシャイボーイをからかってやろう」という企み程度でしかなかったことは、僕にだって想像できる。
しかし相手はアリシアさんだ。あのキャロルのお母さんなのだ。
冗談やノリで男のペニスを触るような性格じゃない。
“Please relax.”
そう言って、アリシアさんは僕のジッパーを下ろした。すると社会の窓からはち切れんばかりに勃起したペニスが飛び出してくる。アリシアさんにズボンの上から擦られて、どうしようもなく興奮していたのだ。
“What...?”
露出した男性器を見て、しばらくアリシアさんは唖然としていた。ちょっと擦ったぐらいでこんなに勃つの?と思われているのかもしれない。僕は多分早漏ではないが、童貞を卒業して間もないので女性からの刺激にはすこぶる弱い。
「ア、アリシアさんっ……」
僕の口からまた情けない声が漏れた。しばらく目を丸くしていたアリシアさんが、それでも恐る恐る僕の裏スジをその可憐な舌で舐め始めたからだ。
人妻ではあるが、たどたどしい舌遣いに、彼女がこの手の行為に慣れていないことが伝わってくる。普段は聖母みたいな佇まいの彼女なのだ。ひょっとしたら男性経験も旦那さん一人だけだった可能性がある。
“F...Feel good?”
アリシアさんが、遠慮がちに質問してくる。それだけで彼女の自信のなさが現れていた。こんなにセクシーな身体をしているのに、はち切れんばかりの爆乳とお尻を持っているのに、彼女は性行為に自信がないのだ。
アマンダさんやロスのブロンド女性とは違う。彼女たちは二人ともペニスの扱いに慣れていた。
しかしアリシアさんは違うのだ。
むしろ男からのリードを必要としている。
「て、手を使ってしごいて下さい。それと舐めるだけじゃなくてちゃんと棒を咥えて」
アリシアさんに性的な命令をするなんてかなり恐縮だったが、このままでは拉致があかないので自分なりの希望を伝えることにした。
言葉が日本語なのはご愛嬌だ。そんなに細かいリクエストを伝えられる英語力は持ち合わせていない。
“O...O.K.”
アリシアさんが扱きやすいように、僕はズボンもパンツも脱ぎ捨てた。アリシアさんが咥えやすいようにやや中腰になりながら、彼女の口に男根をゆっくりと咥えさせる。
「ああ……やっぱり凄い……」
アリシアさんの口の中は柔らかくて、温かくて、唾液の湿り気がとんでもなくいやらしかった。
フェラの動きはぎこちないが、それでも人柄なのか懸命に舌と顎を動かしてしゃぶってくれるので、十分過ぎるほど気持ちよかった。
やがてアリシアさんは、手を使って僕の男根を扱き始めた。フェラよりは手コキの方が慣れているのか、口遣いよりはぎこちなさも少なくなっている。
「ああ……それいいです、アリシアさん」
あまりの気持ちよさに声が出る。
まさかこんなことになるなんて。
キャロルのミルキングに続いて、今度はあのアリシアさんに手コキフェラしてもらえるなんて。
気持ちよさにつられて、僕の腰も自然と動いてしまう。意図せずアリシアさんの口を犯している形になり、とんでもない興奮が背中を駆け抜けた。
僕は今、白人女性の口を犯している。
しかも相手は、すこぶる美人の人妻だ。
娼婦や美人局ならいざ知らず、まさか人様のものをこんな風に好き勝手できるなんて。
「アリシアさん、このまま口の中に出していいですか? それともぶっかけられる方がいいですか? あなたの娘みたいに」
日本語がわからないのをいいことに、少しゲスっぽい発言をしてみる。そんなことは露も知らず、アリシアさんは一生懸命僕の肉棒をしゃぶっている。
ご奉仕。
そんな言葉がぴったりなくらい、甲斐甲斐しいオーラルセックスだった。
「ああっ! アリシアさんっ! 出るっ!!」
情けない声とともに、僕は男根を引き抜いた。このままアリシアさんの喉奥に射精したいという気持ちもあったが、それ以上に彼女を穢したいという想いが鎌首をもたげたからだ。
射精の寸前に引き抜かれたペニスから、大量の白濁液が発射される。もはや水鉄砲のごとく飛び出した精液のシャワーは、アリシアさんの美しい顔と豊満な胸元を一瞬のうちに穢してしまった。
“Oh...”
精液まみれになったアリシアさんが、呆然とした顔でこちらを見つめている。
その途端、僕は自分が何をしたのか理解した。
僕は、僕を雇ってくれた雇用主に、
キャロルという娘を持つ母親に、
エドガーさんという夫を持つ人妻に、
欲望の白濁液をぶっかけてしまったのだ。
極上の背徳感の直後、とんでもない罪悪感が僕を襲う。
僕は、なんてことをしてしまったんだろう。
"I'm O.K. Don't worry."
必死に謝ろうとする僕を、しかしアリシアさんは慈愛に満ちた微笑みで制した。
男の子なんだから射精ぐらいするわよ。そんなことを言いたげな瞳だった。
キャロルといいアリシアさんといい、この人たちはどこまで寛容なんだろう。
それに引き換え僕ときたら、すぐに欲望に流されてとんでもないことをしでかしてしまう。
母娘にそれぞれ顔射なんて、強欲にもほどがある。
“You are lovely. Be confident.”
その言葉と笑みで、僕はようやく、アリシアさんが失恋した僕を慰めてくれているのだと気付いた。
なんて優しい女性なんだろう。
たかが失恋大学生を慰めるために、彼女は僕にフェラまでしてくれたのだ。
タオルで僕の精液を拭き取って、彼女は何事もなかったように仕事を再開する。そんなところまで、アリシアさんはキャロルとそっくりだった。
普通、いきなり精液なんてぶっかけられたら怒られるのに。というか怒られるだけでは済まないのに。彼女たちは何事もなかったように仕事を再開する。
しかもアリシアさんはキャロルとは違い、その後も普通に僕と接してくれた。
それがどんなにありがたいことなのか、僕は身をもって知ることになるのだ。