幕間② 〜突然の来訪者〜(エロなし)
念願の――なんて言ったらあらぬ疑いをかけられるだろうけど、大介から念願の手紙が届いた。
ご丁寧に写真を加工したハガキには、懐かしい親友の顔と、その隣でピースする白人の女の子が写っていた。
ポニーテールが似合う金髪の美少女だった。さすがアメリカ。日本では中学生くらいの女の子でも、スタイルはかなりセクシーである。
ただ手紙には彼女についての記述が一文字もなかったので、ただ単に通りすがりの現地の女の子にツーショットを頼んだ可能性もある。
大介は女の子に対しては本当にシャイで、声を掛けることすら躊躇するくらいだ。
ときにセックスを申し込むなど、暴走することもあるけれど。
「ダラスって、どこだ?」
手紙によると、大介はこれからイギリスへ向かう予定らしい。想定ではもうポーランドくらいだと思っていたので、旅は思うように上手く進んではいないようだ。
「次来るのはいつかな」
旅先の手紙の難点は、こちらからは返信の出しようがないことだ。
必ず大介からの一方通行で、僕からは返事のしようがない。
それは多分、大介の両親も同じだ。
実の親である大介の両親は、一人息子の海外旅行に少なからず心配を抱いているはずで、あまり自分の家族には頓着しないあいつは、友人には手紙を出しても家族には出していない可能性もあるのだ。
そんな坂上家を気遣って、僕はこの手紙を大介のおばさんに届けることにした。
少なくとも一人息子の無事がわかれば、仕事や家事が手につかないということはないだろう。
「え?」
しかしそんな坂上家の一軒家の前に、見知らぬ女の子が立っていた。
鮮やかな金髪が印象的な、白人の女の子だった。
赤いヘアゴムで束ねたツインテールが特徴的で、横顔はどこか憂いを帯び、翡翠色の瞳と相まって、どこか不思議な雰囲気を醸し出している。
まるで物語の世界から飛び出してきたような美少女。
家の前に置いたキャリーバッグを見るに、日本への観光客だろうか。
しかしこんな住宅街に観光スポットなどひとつもない。
道に迷っているのかと思い声を掛けようとすると、
“Hey guy. Do you know Sakagami's house?”
突然の英語に僕はたじろいだ。外国人なのだから日本語を喋らないのは当然なのだが、目の前の女の子が海の向こうから来たという事実を殊更意識してしまい、必要以上に緊張する。
今日日、外国人なんて珍しくもなんともないだろうに。
「さ、坂上って、大介んちのこと?」
“YES!! Daisuke!! Where is Daisuke?”
大介の名前を出した途端、少女の表情がパッと明るくなる。
やはりとんでもない美少女だ。詰め寄り方に遠慮がない辺りに、日本と向こうの文化の違いを感じる。
「大介の知り合いなの?」
まさかとは思ったが、彼女は大介を訪ねて来たらしい。あいつに外国人の友達がいるなんて聞いたことがないから、もしかして今回の旅行中に作った知り合いだろうか。
とはいえ僕も英会話は得意ではない。大介がイギリスに向かったところだということを教えるため、手っ取り早くあのハガキを差し出すと、
“Who is this girl...?”
傍目にも、彼女がワナワナと震えているのがわかった。
もしかしてまずいものでも見せてしまったのだろうか。
先程の太陽のような笑顔とは打って変わり、そこには西洋版の夜叉が立っていた。
「フーアーユー? ダイスケズフレンド?」
このままでは会話が進まないので、僕は思い切って聞いてみた。
もし大介の友達なら、同じ友人として何か力になれるかもしれない。
遥々外国に会いにきた友人が不在だったら、僕だって途方に暮れてしまうから。
“I am――”
するとその瞬間、少女がまっすぐ僕の目を見た。
その翡翠色の瞳はあまりに綺麗で、僕は思わず吸い込まれてしまうかと思った。
僕に彼女がいなかったら、多分、恋をしていたかもしれない。
“Daisuke's future wife.”
クールな表情で言い切った彼女を見て、僕が度肝を抜かれたのは言うまでもなかった。
あいつ、アメリカで一体何して来たんだ。
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