「エスタス、デメンテ……」
一晩中のセックスを終えて、ディアナさんは呆れていた。
ディアナさんは自分の膣内から僕の精液を掻き出して、その量を見て唖然としている。
その数、十数回。
もちろん人生における最高記録だ。
射精しても射精しても、僕の息子は衰えず、放出される精液の量も落ちなかった。
結果的に、ディアナさんは子宮に信じられない量の精子を浴び続けることになった。
妊娠してもおかしくない。
むしろ妊娠しない方がおかしい。
そんな濃厚なセックスを経て、僕は覚悟を決めていた。
僕は今から、多分殺されるだろう。
あれだけ自由に彼女を犯し続けたのだ。
途中から、ディープキス、騎乗位、駅弁、対面座位、パイズリ、お掃除フェラ、アナル舐め、玉舐めと彼女もノリノリだったが、それはあくまでフリーセックスの文化に由来するもの。
彼女に逆らった僕は、例のショットガンで撃ち抜かれる。
それはもはや決定事項だ。
有り金を奪われ、命まで奪われて、僕は短い生涯をこの異国の地で終える。
父さん母さん、ごめん。
拓真も帰れなくてすまん。
でも僕に後悔はない。
死ぬ前にこんなにも気持ちいい思いをしたんだから。
むしろ命を差し出す価値があるくらい、極上のセックスだと理解している。
だからこそ僕は、逃げずに彼女を犯すことを選んだのだから。
「テルミー、ユアアドレス」
アドレス……?
おそらくは片言の英語を、僕はそう聞き取った。ディアナさんは僕から住所を聞き出そうと言うのだ。
「えっと……」
正直、迷うところもあった。
おそらくこれは、僕の家族から身代金を脅し取るということだ。
彼女のレイプした代償は、手元の一万ドルだけでは事足りない。
多分そういうことなんだろうけど、この期に及んで家族にさらに迷惑をかけるなんて。
「わかりました」
でも僕は、素直に日本の住所を書いていた。
家族に迷惑を掛けたくない。その気持ちも勿論ある。
でもそれ以上に、女性をレイプしてしまった代償は大きいのだと、男として反省しているのだ。
海外に来てから、自分のセックスに対する欲望が跳ね上がっているのを感じる。
本当はそういう俗世の行いから離れるために外国に来たのに、ロサンゼルスで偶然白人女性の娼婦とセックスをしたことで、僕の欲望の箍が外れてしまった。
今回のレイプのことも、日本での僕ならありえないことだ。
以前の僕なら振られたらすぐに諦めていたし、腹いせにレイプしようなんてことは思わなかった。
自分の中の野生が、目覚めている?
そんなバカな仮説も抱いた。
海外に来てから、僕は本能の赴くままに女性を抱いている。
それも爆乳巨乳の白人美女ばかり。
それは中米に来ても変わらず、現に僕は、目の前のディアナさんという大人の女性を一晩中レイプしてしまった。
その罪は果てしなく大きい。
僕はこれからどんな拷問を受けるのか。
はたまたすぐに殺されるのか。
どんな未来が来ても、僕は甘んじて受け入れるつもりだった。
それだけのことを、僕は仕出かしたのだから。
「え?」
しかし次の瞬間、予想外のことが起こった。
ディアナさんが僕から盗った全財産を差し出して来たのだ。
「ヴォルヴェ」
鳩が豆鉄砲を食ったような反応をする僕に、ディアナさんは落ち着いた口調で札束を差し出している。
意味がわからなかった。
僕は今から殺されるんじゃないのか?
ショットガンで殺される未来を想像していたのに、まさかお金を返されるなんて。
「ラピダメンテ!」
「わ!」
ディアナさんは僕の胸元に札束を投げつけ、ついでに脱いだ服を僕の股間に投げつけた。さっさと服を着ろというのだ。
「これって、つまり……」
ディアナさんは出口を指差していた。僕は解放されたのだ。
「でも――」
僕はまだ何も償ってない。
僕は彼女をレイプしたのに、何の罪滅ぼしもしていない。
「フェアウェル」
彼女は豊満な体に下着と衣服を纏い、例のショットガンとナイフを持って、僕より先に出口へと歩いて行ってしまった。
外へのドアが開く。
すぐ目の前には上への階段があった。やっぱりここは地下室だったのだ。
何かを言って、ディアナさんが振り返る。
背の高い、日に焼けた肌が健康的な、黒髪の女性。
ショットガンを肩に掛ける後ろ姿は、アクションゲームに登場する「戦う女性」そのものだ。
しかしそんな彼女の整った面差しに、ふと優しい何かが映ったような気がした。
上階から差し込む朝日に、それもすぐに掻き消される。
彼女は振り返ることもなく、そのまま階段を上り、
「シーユーアゲイン」
片言の英語を言って、薄暗い地下室を出て行ったのだった。
「助かった……?」
しばらく惚けた後、僕はようやくその結論に思い至った。
あれだけセックスをして、無傷。しかもお金も服も返されるなんて、いったい何がどうしたというのだろう。
しかし、考えていても仕方がない。
ディアナさんはもうここにはいないし、目の前を遮るものはもう何もない。
――旅を続けろ。
誰かにそう言われているような気がした。
目的も定かでないし、行き当たりばったりの旅だけど、
「…………出発するか」
僕は再び、自分の旅を続けることにしたのだった。
23~24日目 フアン・サンタマリーア国際空港~サンホセ市街
【移動距離】3km(中南米通算3km)
【手段】徒歩
【所持金】$8,382
【支出】なし
【残金】$8,382(未両替)
【これまでの経験相手(中南米)】1人
Diana Socías(29)